たけしの遺伝子
よい北野
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 ZEEBRA featuring AKTION“Neva Enuff”と『BROTHER』
佐藤公哉(相談役)

映画『BROTHER』での、兄貴・山本と再会したての頃のケンは、佇まいから着こなしから見事にB-Boy(※)フレイヴァーを発していて、やはりロス・アンジェルスのチンピラというとどうしてもB-Boyっぽくなってしまうのかな、と映画を見た時には思ったものだったが、その後各誌のインタヴュー記事などを見るうちに、これは元々のケンこと真木蔵人のパーソナリティーによる部分も大きいことが判った。サーファーにしてB-Boy、そんな真木がたけしに引き合わせたのが、当代一の人気ラッパー、ZEEBRA。ワルの匂いの強さでは右に出るもののいないラッパーである彼が、『BROTHER』にインスパイアされて一曲作るというのには(実は何か絡みがあって関わったんじゃないの?的な)邪推を寄せ付けない必然性が感じられる。果たしてその一曲“Neva Enuff”は、『BROTHER』の世界に肉迫しつつ自らの存在感もまったく損なわれていない、優れた仕上がりになっている。
ここでは、“Neva Enuff”で初めてZEEBRA、そして日本のヒップホップに触れたたけしチルドレンの皆さんに、主に歌詞について語りつつ、ZEEBRAとヒップホップについてのビギナーズ・ガイド的に展開してみようと思う。
(※)B-Boyは元々“Break Boy”つまりブレイク・ダンスのダンサーを指すコトバだったそうだが、今ではヒップホップに関わるひとたちの総称として使われている。ちなみに女性の場合は“Fly-Girl”。

「ド派手にかまそうぜ/誰のシマだか知らねえが 荒らそうぜ
日本人 ナメたのが間違い/マジダリぃ ザコどもは ハジきゃ良い」
と、いきなり景気のいい宣戦布告で始まる。まァこの辺、とりあえずハッタリかますのはヒップホップのライム(歌詞)の常道で、別に『BROTHER』にインスパイアされなくてもZEEBRAなら歌いそうな一節ではあるのだが、「シマを荒らす」「日本人ナメたのが……」といった辺りは、『BROTHER』からのインスパイアド・ソングならではの言葉遣いと言っていいだろう。

「確かに負けたぜ 戦争じゃ/だけどDISらせねぇ 今の現状は」
“DIS”はヒップホップ用語で、非難するとか中傷するとかいった意味。

「俺らタフでハードな国際派/まさに選び抜かれたトップファイター
即 階段 ダッシュで駆け上がる/一人取りゃ取り分も跳ね上がる
自信あんのにゃ やっぱ訳がある/て言うか 世の中 成せば成る」
この辺り、ぐんぐんのし上がって行く時の、映画前半の山本を想起させずにはいられない。

「だから 俺とお前と 他の兄弟/がっちりぶん取るぜ でかい商売
ミミッチィ夢なんて 見てねえぜ/ここまで来ちゃ 後には引けねえぜ」
ここでいよいよ“兄弟”というコトバも出て来る。
“商売”という言い方をラッパーたちはよく使うけれど、これはニュアンスとしては“ビッグ・ビジネス”ぐらいのところで、より大きい場所で真剣勝負をしてやるぜ、ということで理解していただければいいだろう。

さてサビである。
「One for the brother Two for the murder/取られりゃ取るぜ 返す親の仇
ガッチリ掴むぜ でけえパワー・・/満足かって? いいや まだまだ
One for the brother Two for the murder/取られりゃ取るぜ 返す親の仇
引くに引けねえのが 男の性/逃げ出すかって? いいや まだまだ」
一般にヒップホップの歌詞というのは「俺がナンバーワン、奴らにゃ負けないぜ」みたいな歌詞が多いのだが、その“奴ら”ってのは一体誰なわけ?ってことを気にし出すと聴けなくなってしまうものが多い印象がある。なので私などは、これはもう歌舞伎とかと同じく“型”を楽しむものなんだ、と割り切って聴くことにしている。そうやって聴くと日本のラッパーたちはみんな素晴らしい型を持っているので、とても楽しめるのだが、やはりできることなら、攻撃的なライムである以上、“奴ら”、つまり攻撃対象は明確である方がいい。そしてでかい敵ならでかい程聴き手も盛り上がれるというものである。
“Neva Enuff”の攻撃対象はアメリカ。非常に明確で大きな敵だ。『BROTHER』を媒介することによって、ここでのZEEBRAのスタンスはよりクリアになっている。だから聴き手も、ハッタリに白けることなくいっしょに盛り上がることができる。
そうやって、入り口で躓くことなく入り込んでしまうと、ドスの効いたZEEBRAのラップは実に魅力的だ。彼は自らのアルバムに『The Rhyme Animal』(直訳すると“韻踏み獣”か)と名づけるだけあって、押韻に関しては卓抜したセンスを持っているだけに、『BROTHER』の世界を彼なりに昇華して、彼なりの言いたいことを堂々と言い放つ男っぷりの良さにはホレボレとしてしまう。

2コーラス目ではAKTIONこと真木蔵人がラップを披露している。彼はこの曲のプロモーション・ヴィデオのディレクターも務めているそうだ。かなり本格的なラップなので、私は最初、AKTIONというのは誰かZEEBRAの仲間のラッパーかと思っていたのだが、まさか真木本人だっとは。そんな風に勘違いしてしまうくらいの、“俳優の余技”を遥かに超えた堂々たるラッパーぶりである。


以下、印象的な歌詞をいくつかピックアップしてみよう。

「俺ら お前の英語 解んだぜ HA HA/人種差別にカンカンだ」
このくだりからはやはり例の名台詞「F@@king japぐらい判るよ馬鹿野郎」を連想せずにはいられない。

「てめえの運命と サシで勝負だ/ゴールは ムショか 頂上か
今更 ビビッてたって だらしねぇ/どうせ振り向いたって 何もありゃしねぇ
Yeah 一度しかない人生だ/でかい賭けに出なけりゃ 意味ねぇな
つまらねぇそんな人生を 生きてぇか/ダイナミックに ビッグに 死にてえか」
全体的には、ここでのZEEBRAのスタンスは、加藤雅也演じる白瀬に一番近いような気がするのは私だけだろうか。

『ビートニクラジオ』の『BROTHER』特番でたけしさんがZEEBRA、そして日本のヒップホップ・シーンの現場に触れた感想を話しているのを聞いて、ZEEBRAの出世作となったドラゴン・アッシュへの客演作“GRATEFUL DAYS”での有名すぎる一節、
「俺は東京生まれHIP HOP育ち/悪そうな奴は大体友達」
というフレーズを思い出さずにはいられなかった。それと同時に、「あっ、やっぱたけしさんにも匂いで伝わるんだ」と妙に感動したりした。
たけしさんはその時、成人式のバカや十代の犯罪などに触れ「ああいうのとは違う骨の入ったワル」みたいな言い方でZEEBRAたちを評していたが、確かに言われてみれば、成人式バカにしても佐賀のバスっ子にしても、ちっとも“悪そう”じゃねェんだよな。簡単に言えばカッコ悪いということだが、そんなんじゃない、一本筋の通った美学を持った今どきの不良の代表格みたいな存在のZEEBRAが、『BROTHER』へ反応してくれたというのはとても興味深い。とにかくたけしチルドレンの皆さんも一度“Neva Enuff”にじっくりと耳を傾けてみて欲しい。

さて最後に、これをきっかけに日本のヒップホップを聴いてみようと思われた方のために、とりあえず入門編として五枚程選んでみよう。どれか一枚でも彼らの世界に触れてもらえたら幸いである。

●『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』NITRO MICROPHONE UNDERGROUND
まずは今一番旬なアルバムから。総勢八名のラッパーからなる大所帯ユニットのデビュー・アルバムには、得体の知れない猥雑なパワーが漲っている。

●『病めるブッダの無限の世界』BUDDHA BRAND
実力では現在ナンバー・ワンと言っていいのがDev-Large率いるブッダ・ブランド。満を持して昨年発表されたこの二枚組アルバムに彼らの歴史が網羅されている。バックトラックはメロウなものが多いので初心者の方も安心して楽しめるだろう。男前なDev-Large、それを支えるCQ、独特の存在感を示すNipps、三者三様の持ち味で迫るラップも聴く者を飽きさせない。

●『fun-key LP』スチャダラパー
さて、今や大御所的存在のSDP。ブッダらの登場に反応してか、それまでのコミカルな持ち味を抑え、グッとシリアスに、ヒップホップにこだわって作ったこのアルバムをここでは挙げて置こう。

●『THE★GRAFFITIROCK '98』YOU THE ROCK
ユニクロのCMでもおなじみユウ・ザ・ロックは、気の置けない兄貴といった存在。親しみやすいキャラクターで最近はあちこちで引っ張りだこなのでご存知の方も多いだろう。彼の代表作。

●『続・悪名』オムニバス
現在ではZEEBRAに続いてドラゴン・アッシュにフィーチャーされたことで名が売れたラッパ我リヤも参加していた96年の傑作オムニバス。ふたりの天才ラッパー、TwigyとRinoの曲はとにかく必聴。

その他、ZEEBRA本人の作品をもっと聴きたいという方は、ゴージャスなサウンド・プロダクションを得てオリコンでもトップ5に進出した最新作『BASED ON A TRUE STORY』や、DJ HASEBE feat.ZEEBRA/MUMMY-D名義でのヒット・シングル“MASTERMIND”を収録したDJ HASEBEのアルバム『HEY WORLD』辺りから入ってみるといいだろう。

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