Fate/stay night another story
――A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM――
霧越カズト
その戦争は終わった。
幾人もの敗者がいて、たった一人の勝者は無く。
生き残った者は、勝者の証たる聖杯を砕き、自ら勝者であることを否定した。
それゆえ、勝ち残ったものに与えられる栄誉、力はどこにも行かず漂ったままに。
そしてもうひとつ、"それ"の願いも行き場無く彷徨う。
機は熟していた。
力は満ち、拠り代となる娘も、あとひとつスイッチが入ればその力見せ付けることができたはず。
行き場をなくしたものは留まり、澱む。
しかし、"それ"はその澱んだ滓さえ消えゆくのを感じていた。
自分をこの世界に繋ぎとめていた絆――彼女との契約が薄れていくのを感じていた。
いや、正確にはもうその絆は完全に切れていた。
彼女と自分を繋いでいた一端、自ら蟲と成り果てたあの生き物が死んで、彼女との絆は切れた。
もう、彼女からの魔力の供給は無い。
自分は消える。
動かしようの無い事実。
魔力の供給無しにこうしていられるのは、ここが特殊な場所であるから。だから、魔力の消費が極端に少なくて済んでいるから。
それでも消えてしまう。
怖かった。
世界中の罪悪をこの身に受け続けてきた。だからこそ、そうした生き方をしてきたからこそ、こうして呼び出されたのだ。
――呼び出したのは誰?
誰でも良い。
けれど、呼び出された自分がやらなければいけないことはひとつしかない。
それは――復讐。
いつの世の中でも、自分はそうして存在することしかできないのだから。
だからこそ――消え去る前に、自分が存在したという証明を
この世の中に、恐怖を、絶望を、悲しみを――その為に、力を――!
"それ"は闇の中で、孤独に求め続けている。