「星の名前」 「ホラ、あれあれ。あれが織り姫星。」 まだまだ小さな手で指差す方向には、天の川が見える。 が、星座地図と首っ引きにも関わらず、まだ星の見当がつかないらしい。 「あぁん?も〜どーれーだーよ、ほくとぉー?」 ウロウロとさ迷う二人の指に、足もとの乙女や望遠鏡を覗いているエリスは、既にあきれて口を出さない。 ★★★ 『今夜は七夕で、星見町のお祭りがあるんだよ。』 と、教えたのは、GEARパイロットの吉良国だった。 『七夕とは、一体何のことです?』 都合よくいつものメンバーと一緒にいたためか、七夕を知らないのか、祭に行った事は?、ないの?もったいなーい。等の声におされ、なんとその場で祭へとゆく事になったのだった。 ★★★ 待ち合わせは夜7時。 が、しかし。 浴衣に着替えて、嬉々として銀河宅のドアを叩いた北斗、スバル、エリス、そして吉良国にかわって保護者アルテアの4人はそこで足止めをくってしまった。 約束の時間に銀河の家の扉をたたくと、銀河の宿題がまだ終わっていなかったのだ。 その宿題も、北斗とエリスが答えを教えてしまえばそれで済むのだが、それを二人は良しとしない。 ああだこうだと、銀河に理解させようとしている二人を余所に、はじめて地球のお祭りへ参加するスバルとアルテアは暇を持て余していた。 何気ない会話を言葉すくなに交わす二人は、事後処理の為にGEARに長期滞在しているためか、自然とその手の話しになってしまう。 そこで、ふとスバルは頬に指を当てて考えるそぶりを見せた。 「そういえば、七夕のベガとアルタイルとは、北斗の『母さん』…姉上と兄上の名前の由来なのですか?」 良く似ているものだから、と伏し目がちに言う姿は普段の大人びた少年には見えない。 「そうだ。」 とアルテアは答えして、ふ、と空を見上げた。 「見えるか。こうV字を描く様に並ぶのが『わし座』で、端の一番明るい星がアルタイルだ。そしてこっちの…」 浴衣の袖から腕を伸ばして手を大きく動かす… 「…天の川の反対側の明るい星が『こと座』のベガだ。」 今まで、こちらの星で生活するためだけに便宜上知っていた知識…星の名前が、香の香りとあいまって不意にスバルの胸に迫る。 地球とアルクトスほど距離に隔たりのある惑星同志なのに、同じ名前の星があるという不思議…。 「遠くの星どうしだというのに、不思議なものだな。」 アルテアの目は夜空に注がれたままであったが、その言葉はスバルの心中を代弁しているかのようだった。 「こんな話しを知っているか?人類というのはもとは一つの星から派生したのだという…」 黙ってアルテアの隣に立ち、その言葉の意味を考える。 …元はひとつの星の。 その説はとても、及びもつかない程遠い昔の出来事に違いない。 それでは、どこかで…どこか遠いところでこの地球に住む人々と繋がっているのではないかと、夢見るような心地になる。 「私達だけではない。お前もだ。『星は昴』という日本の古典を知っているか。」 言うまでも無く『枕草子』の一節だが、スバルは自分と同じ名の星が、有名な古典で美しいものとして例えられているとは知らない。 アルテアの説明を聞いていると、スバルは頬の辺りがくすぐったいのを感じた。 ああ、自分は嬉しいのだ、と気が付くと、目の前のアルテアも微笑んでいる事に気がつく。 二人、にこりと目を合わせるとまた空を見上げた。 ★★★ 「アルテアさん、スバルー!もう行くよ!」 いつの間に、にわか天体観測が終ったのだろうか。 七夕祭にむけて、階下から銀河のかけ声が聞え、騒々しいが気合いも十分。 「ああ、二人とも早くおしよ。祭ははじめてなんだろ?楽しんできな!」 威勢良くミドリに送りだされて夜風に飛び出すと、みんなが待っていた。 示された坂道の向こうに天の川と、祭の明るい光がのぞいていた。 END (2001年7月22日:8月27日) 6500HITリク『アルスバ』とのことでみかちさんに捧げました。…が、七夕ものということで七夕企画にUPさせていただいてました。ノーマルサイトらしい『アルスバ』(笑) そして、みかちさんに挿絵をいただいてしまいました!こちら★ 矛盾解消のため書きなおしをしていたら印象がずいぶんかわってしまった…ような。(8/27) |
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