今まで血管腫に関して、沢山の問い合わせを頂きましたが、
その中でも特に多く頂いた質問の中からいくつかをこのホームページでお馴染みの
なべちゃんせんせの過去の書き込みよりUPさせて頂きました。
少しでも参考になればと思います。
なべちゃんせんせご協力有難うございましたm(__)m
■ 基礎講座 ■ なべちゃんせんせ 2001年8月23日(木) 記事番号:101
日本で『血管腫』と呼ばれているものは数多くあります。やれ『単純性』だの『海綿状』だの『苺状』だの・・・皆さんごちゃ混ぜになって何が何だかわかっていないのでは? 血管腫と言われているものには大きく分けて2種類があります。ひとつは血管の細胞が増えて固まりになっている、本当のできもの(これを腫瘍という)。苺状血管腫はこの典型例で、血管の内側にある細胞(内皮細胞といいますが)が生後から勝手に増殖して勝手に死んでいくというおかしな経過をたどります。典型例では生まれた直後には薄い斑点があっただけなのに生後2週間め頃から増殖し始め、1歳頃をピークとして徐々に消退していきます。日本人では小学校に上がる頃に60-70%の人は消える、と言われていますが、色が薄れても膨らみが残っている人もいるし、膨らまなかったけれど色が消えない人もいます。主観が入りますので『消えるよ』と安請け合いしない様にしていますが。 もうひとつは血管の先天奇形です。毛細血管の先天奇形であれば『単純性血管腫』静脈の先天奇形であれば『海綿状血管腫』リンパ管の先天奇形であれば『リンパ管腫』あとはそれらの混合型(Klippel-Trenaunay SyndromeとかParkes-Weber Syndromeとかいう特殊な名前がついているものもあれば、動静脈奇形のようにわかりやすいネーミングのものもあります)であります。 これらは先天奇形でありますので残念ながら様子を見ていてもまず消えません。何か秘伝の膏薬をぬれば正常の細胞になるわけではありません。異常な血管を潰すかとってしまうしか方法はないようです。ほったらかしにすると、異常な血管細胞は少しづつではありますが増殖する能力がありますので、大きくなっていきます。 治療に関してはそれぞれ病態が異なりますので異なる治療戦略をたてる必要があります。
■ なべちゃんせんせ 2001年9月1日(土) 記事番号:147
血管腫の患者さん一般に やってはいけないこと
1:医者をころころ変えること
2:前にかかった医者の悪口を言うこと
3:自分自身で処理しきれないほどの情報を集めること
4:医者の知識を試すこと
5:あきらめること
6:ほったらかすこと
やるべきこと
1:自分の状態を把握し、理屈で理解すること
2:定期的にかかり付けの医者のところに行くこと
3:治療のためにかかる手間と時間を惜しまないこと
4:安易な気持ちで治療しないこと
5:病気のことをよく知っている医者を探してGetしておくこと(これが一番難しい)
静脈の奇形(俗に海綿状血管腫といわれているもの)であれば拡張している静脈をほったらかすとうっ血をきたし、足ならばむくみ、体ならば腫れて血管の外部に「瘢痕組織」なる硬い線維組織を作ります。これが続くと周辺が全部かちかちになっていわゆる血の巡りが悪くなる、という状況を作ります。潰瘍ができれば、血の巡りが悪いので当然直らず、潰瘍ができなくても「痛い」「うずく」等々不定愁訴と呼ばれる多彩な症状を起こし得ます。予防がすべて。中年おばさんの足によくできる静脈瘤の治療と同じように弾性ストッキングはかかせません。
■ なべちゃんせんせ 2001年8月24日(金) 記事番号:106
単純性血管腫について。原因は毛細血管の数が増えているのではないと思います。けんかする時や緊張した時、顔色が青くなるでしょう?あれって交感神経が優位になるので毛細血管が収縮して青く見えるのですが、単純性血管腫の場合には血管ができる時にこの神経系統の接続が悪い、または神経の数が少ないという状況にあり、いつも血管が開きっぱなしの状態にあります。だから赤いんです。つながっていない神経を血管につなげる事はまず無理です。したがって治療はつぶすかとるか、どちらかですがレーザーは潰す方の代表選手です。欧米でも第1選択です。レーザーと言うものは人工的に作ったある波長の光です。単純性血管腫の場合、ダイレーザー(色素レーザー)というレーザーを使用しますが、これは血管の中に流れている赤血球の中のヘモグロビンと言う蛋白質に吸収されるような波長に設定されておりますが、吸収された光エネルギーはそのまま光として保存できないので熱に変わります。その熱で血管の内側の細胞を焼いてしまおう、というのが理屈です。ただしこのレーザー光は皮膚の表面から1mm程度までしか物理的に届きません。それより深い所にある血管には届かないのです。だからレーザー治療はやる前に一部組織を採ってどの深さに異常な血管があるのかたしかめればやるまえに効果があるかどうかわかるのでしょうが、ちょっとねえ・・切除したくないからレーザーする人多いですもんねえ。私の所ではこんな説明をして、やってみなければ効くか効かないかわかりませんと言っているんですが。
単純性血管腫が海綿状血管腫に変化しないか、という問いに関してはNoです。海綿状血管腫は血管の外を包む膜と筋肉の一部が作られていないので、そこの部分に圧力がかかると膨らむ、という状態であって、単純性血管腫とは発生原因が異なります。遺伝子の異常に関しては単純性血管腫は現在私の友人でベルギーにいるMiikka
Vikkula先生が検索中です。私からも患者さんの血液を送りましたので日本人にも共通する遺伝子異常が発見されるのは時間の問題でしょう。海綿状血管腫に関しては彼がすでに2種類の遺伝子異常を報告しています。Tie-2とKRIT1といいます。ついでに苺状血管腫に関しては私の患者さんで家族例がありましたのでそれを調べてもらう手はずになっております。遺伝子の異常を調べる意義ですが、例えば単純性血管腫の場合、足から太ももまで全部まっかになっている患者さんがいますが、毛細血管の奇形であるにもかかわらず、骨の長さが少し反対側より長くなる場合があります。どーして?とまあ、このような疑問を解いて、その予防を薬を飲むとかしてなんとかできないか、というのがその主たる目的です。
海外に行けばもっといい治療方法があるのでは、という人が稀にいらっしゃいますが、それは私には疑問です。自分が日本でアジアの国々からいらした患者さんの治療をしていても、ボストンにいた時にアメリカ人がアジアの人たちの治療をしているのを見ていても、人の持つ価値観というものは国によってずいぶん異なるというのが実感です。患者が期待している事と医者がやろうとする事にギャップを感じ、疑問に思うことはいっぱいありました。日本人の心は日本人にしかわかりません。韓国人の心は韓国人にしかわかりません。日本に近いから価値観は同じだろうと思っても微妙に異なります。だから日本の患者さんは日本でいいお医者さんを探すのが一番いいと思います。探すのが大変、というのは確かにありますが。
■ なべちゃんせんせ 2001年8月23日(木) 記事番号:98
硬化療法は欧米では教科書に載っているいたってスタンダードな治療方法です。日本ではなぜか行われておらず、やっている施設は数限られています。私の施設も含めて学会でよく出してくるところって6-7箇所くらいかなあ・・・血管腫というものにはいろいろなものがありますが、日本で海綿状血管腫といわれている静脈の先天奇形とリンパ管腫とよばれているリンパ管の奇形に対して行われていることが多いです。内容はいたって簡単、異常な血管に直接針を刺してアルコールを入れて細胞を壊す。こういう方法ですが。実際の手技は結構難しくてやっている方は大変なんですよ-
■ なべちゃんせんせ 2001年8月23日(木) 記事番号:97
苺状血管腫は遺伝することはまずありません 私の患者さん500人程度いますがその中でたった1家系だけお母さんと娘と息子とお母さんの妹にある、という状況でした。めったにありません。遺伝に関する情報を提供するのは遺伝子というものが究極のプライバシーですので、診察して診断して家族と直接会って話すようにしていますのでこの位で勘弁してください。 苺状血管腫はなぜできるか、という問いに関してはものすごく長い話になってしまいますのでやめておきます。 どうして血液は寒いと黒くなって暑いと赤くなるのかな?(・_。)?(。_・)? これがその仕組みだっ!!ってほどの確証のあることは知りませんが、赤血球が黒く見える時は、酸素を離して二酸化炭素とくっついているときだと思います。普通は流れている赤血球の全部が酸素を離して二酸化炭素をもらうわけではないので、酸素とくっついている赤血球の色が優位に見えて赤い、というはずですが 1:寒くなると交感神経が優位になって血管が縮む 2:血管が縮むので末梢の血管に流れる赤血球の量が減る 3:赤血球の量が減ると酸素と二酸化炭素の交換をする赤血球の比率が上昇する 4:結果として二酸化炭素とくっついた赤血球が増えるので黒っぽく見える こんなところではないかと思いますが、断定できるものではありません あしからず。
[465] なべちゃんせんせ 投稿日:2002/03/23(Sat) 14:12 [関東]
赤あざに使用するレーザーは現在色素レーザーといって、保険の適応になっているレーザー治療であります。以前の機種は大きくて重くて水冷式で出力の変動が激しくて扱いに苦労することが多かったのですが、最近の機種は小さく軽く、一発一発の照射面積も大きく、早く、安くといい事づくめですが、赤あざのレーザー治療をされる患者さんが特定の病院に集中する傾向があるため、CTとかMRIのようにどこの病院にでもある機械というわけではありません。
事実わたしが仕事していた埼玉県では稼動している赤あざレーザーは埼玉県立小児医療センターと防衛医大にしかなく、多くの患者さんは東京まで行っているというのが現状ではないでしょうか。
レーザーの効果は術前に保証ができません。よく「私のあざは一度レーザーを打てば直るの?」と聞かれますが、レーザーというのは人工的に作られた一定の波長の光で、それゆえ進達距離が決まっています。色素レーザーであれば皮膚表面から約1mmしか届きません。それより深い部分に血管腫が存在していれば物理的に光が届かないから効かない、ということになります。でも1mmより深い部分にあるのかどうか決定するためには一部分皮膚を切らないとわかりませんので、「ちょっと皮膚をとらせて。」ということになりますが、それって嫌ですよね。だから私の場合は「確実に薄くはなるけど、全部消えるかどうかはやってみないとねえ・・・」と言っています。レーザーになれた人が3回照射しても効果がないときは別の方法(別のレーザーにするとか手術するとか)を考えたほうがいい、という論文もありますので、コストパフォーマンスを考えると3回やって薄くならない場合はいたずらに続けても仕方ないかな、と思います。虎ノ門病院の皮膚科の先生が言われていたという最新のレーザーというのは波長を自由に変えられ、進達距離を深くできるV-beam、またはV-starというレーザーのことでしょう。そのレーザーであれば、今は赤ら顔の治療に使用されていて、現在のところ医療用として健康保険がきく治療ではありませんので、あまりおおっぴらに言わないほうがいいかもしれませんね。
ちなみに私のところでもやる予定があります。大学の倫理委員会、業者との交渉中ですのでいつからやるって確約できませんが・・・そのレーザー、照射した後黒くならないんですよ。すごいですねー
参考までに
血管腫関係の患者における医者の探し方講座
1:子供の疾患の治療に慣れている医者の方がいい(外来に行けばそのお医者さんの患者に子供が多いかどうかはすぐわかる)
2:長期スパンで治療方針を立ててくれる医者がいい(一回の治療で終わるものはない。何回かの治療をするとなると子供の成長も考えないと。子供の成長に合わせて何をしていくか、それを考える医者の治療にハズレはあまりない)
3:ひとつのやり方に固執しない医者がいい(全部の患者の治療が硬化療法でうまくいくわけがない。手術の方が良い場合もあるし、何もしない方が良い事もある。色々選択肢をもっている医者が『これがいいでしょう』というのが一番良いように私は思うが)
4:科にこだわらない。疾患を良く知っている医者がいい(小児外科でも形成外科でも血管外科でも整形外科でも何でもいい。要は病気を良く知っている人が治療方法にも詳しい。)
血管腫の治療というのは山登りと同じで色々な登頂ルートがあります。どのルートを通って頂上を目指すのか、決めるのは親の役目。われわれ医者はそのルートを提示して、そこに来た登山者に対して精一杯の手助けをするのです。よござんすか?山は登らなければいけないんです。そして多くの場合はひとつの道しかいけないんです。遠くから『おーい、どの道が一番いいんだー?』なんて言っていても答えは帰ってきませんよ。実際にその場に行かなければ登ろうとするルートの感じはわからないし、登った人の具体的な話も聞けないんだから。
[333] なべちゃんせんせ 投稿日:2002/02/08(Fri) 23:07 [関東]
血管腫と日本で呼ばれている疾患には大きく分けて2つのカテゴリーがあります。一つは血管を構成している細胞が増えている物(これを腫瘍と呼ぶ。癌などはその代表例)で俗に苺状血管腫と言われている疾患がこれです。もう一つは血管の先天的形成異常(血管奇形)で胎児の時に形態が異常な血管ができてしまったもので、単純性血管腫(毛細血管の先天奇形)、海綿状血管腫(静脈の先天奇形)、リンパ管腫(リンパ管の先天奇形)などがこれに当たります。
血栓ができる物はこの中の海綿状血管腫ですが、異常な静脈の中でできた血栓はまずどこに飛ぶかと言えば心臓に行きます。それが肺に行ってまた心臓に戻り、動脈を通って脳や手足などに行くことになります。従って、肺というフィルターを通らないと脳には血栓は行かないわけですので、手足の血行を促進したら血栓がそこから脳の血管まで飛んだ、というのは心臓や肺に孔があるような特殊な環境下でしか起こりえないことになります。手足の血行が悪いのは心臓が悪かったためではないのですか?それですと心臓に血栓ができることがあって脳にも飛びますよ。肺には飛ぶことがあります。喘息みたいにゼーゼーするのですが、私の患者さん(海綿状血管腫だけで何十人もいますが)で実際に血管腫があるために血栓が飛んで肺梗塞になった人は1人しかいません。確率低いですね。流れていくうちに溶ける?なんてことでもあるのでしょうか。私もその理由はよくわかりません。そういうわけで発生頻度が著しく低いので、予防策は別に何もしていません。あるとすればアスピリン(小児用バファリン)をごく少量飲んでもらうのがいいのでしょうね。ボストンの偉い先生がそう言ってました。
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