ヤマハが1974年に発売したステレオパワーアンプ。自社開発のV-FET(SIT)を使用した全段FET構成のパワーアン
プということで,非常に話題になった名機です。当時のヤマハの高い技術力,オーディオに対するアグレッシブな姿勢を
象徴する1台でした。B-1の最大の特徴は,上記のように自社開発のV-FET(縦型FET,ヤマハはSITと称していた。)を全段に採用したオ
ールFETの独創的な回路構成にありました。V-FETは,3極真空管にも似た動作をする電圧制御素子で,MOS FET
とはまた違った魅力を持った素子でした。当時,ヤマハが新技術開発事業団の委託を受けて開発したヤマハ自慢の素子
でした。さすがに量産が難しい面があったのか,続いて発売されたB-2などでは,バイポーラトランジスタとの併用の回路
とされていました。それだけに,このV-FETアンプ第1号機,B-1にかけられたヤマハの並々ならぬ意欲(恐らく,それは
V-FETの魅力を知らしめようとしたものだったのでしょう。)が感じられたアンプでした。入力端子からの信号経路は0dB利得の前段増幅段(フィルターアンプ)をもち,ランプルフィルター,レベルコントロール,リ
モートコントロールのためのインピーダンス変換機能を持っており,この前段増幅段はもちろんオールFET構成でした。ま
た,リアパネルのスイッチで,このフィルターアンプをバイパスさせることもできました。ドライブ段は,これも全段FETで,初段Dual FET差動回路。カスコード接続で安定度と高耐圧を実現し,直流電圧のシ
フトをも兼ねた一石三鳥の効果をねらった2・3段の差動回路という三段差動構成で,終段ソースフォロアの直結ドライブ
回路になっていました。出力段は,ドレイン損失300WのジャンボなV-FETを使ったシングルプッシュプル構成で,並列
使用をせずに片ch150W(8Ω)の大出力を得ていました。同じ頃ソニーから発売されていたV-FET使用パワーアンプ
のTAN-8550が中間増幅段にバイポーラトランジスターを使用し,V-FETトリプルプッシュプルで100Wの出力であった
ことから考えると,驚異的な出力段でした。この出力段でもう一つ特徴的だったのは,NチャンネルのV-FETが2個使わ
れたSEPP OCLという構成になっていることでした。これは,Nチャンネルと揃ったPチャンネルのパワーFETがなかな
か出来上がらなかったので純コンプリメンタリー構成がとれなかったためでしたが,その点でも真空管アンプに通じると
ころがあったユニークなアンプといえました。
この大出力の出力段を支える電源部は完全左右独立型で大型の電源トランスを2個搭載した強力なものでした。
B-1は「BASIC AMP」と称され,単体でも高性能パワーアンプとして使用できましたが,専用のコントローラーUC-1が
用意されていました。このUC-1は,10kHz一波でも指示誤差2dB以内という高精度なピークパワーレベルメーターを搭
載し,個別にレベルセットできる5組のスピーカーセレクタを内蔵したコントロールパネルで,本体に装着して使用するだけ
でなく,1ユニット5mの専用の延長コードでリモートコントロールユニットとしても使用できるというユニークなものでした。
B-1はヤマハらしくデザイン的にも秀逸で,UC-1を装着しない状態の業務用機的なノーブルなデザイ ンの美しさと,
UC-1装着時のパワーアンプらしいスタンダードなデザインにもなるというものでした。
以上のように,B-1は回路の上でも,素子の上でも,デザインの上でも,機能の面でも,非常に個性的 で,しかも完成
度の高いパワーアンプでした。その音は,全域にわたって歪み感が無く,ローレベル再生時のニュアンスの 表現に優れ
つつ,ハイパワーアンプらしく筋金入りのエネルギー感をも併せ持つという大電流V-FETのSEPPの 威力をまざまざと
見せつけたものでした。V-FETを使用した世界初のハイパワーアンプとしてヤマハの70年代を代表す る,まさに名機
だったと思います。
以下に,当時のカタログ及び広告の一部よりご紹介します。
冴え立つ純粋の音。
ここでも高純度のFETです。
5×1014個/cm2以下。これがヤマハのFETの極低不純物濃度です。
最も純粋なFETを使ってあり,しかもフィルタアンプを含むすべての 信
号系路をFETで純粋にまとめていることで,最も純粋にFETの音を 味
わっていただけます。
つまり,オーディオアンプの素材として実に理想的なFETを貫いたこ と
で次元の高いハイパワー・ハイフィデリティに出会えます。
出力段は,ドレイン損失300Wの大出力縦型FETをシングルプッ シュ
プルで用いて,至純の回路で150W+150Wを得ています(電源は
両ch完全独立方式です)。
ドライブ段は,これも全段FETで,三段差動,終段ソースフォロアの 直
結ドライブ回路です。
すべてをFET化したことでここでは素子自体の音色や歪みのモードの
混合が避けられて,特性的にも音色的にも理想的な高純度が得られ
ています。
FETという新しい素材の可能性を最も厳しく追及することで,従来の 素
子では達し得なかった新しい世界に確実に登ることができた高い完成
度のFETアンプです。
| 出力段 | ヤマハ縦型FETによるSEPP回路 |
| ドライブ段 | 全段FET(ヤマハ製)による三段差動・終段ソースフォロア直結回路 |
| バイアス安定化回路 | ブリッジバランス型 |
| フィルターアンプ部 | 全段FET(ヤマハ製)ゼロゲイン低出力インピーダンス回路 |
| パワー段用電源 | L・R独立のトランス及びケミコン(15,000μF×2)×両ch |
| ダイナミックパワー
(1kHz,歪0.1%) |
360W(8Ω) |
| 実効出力
(両ch,20〜20,000Hz,歪み0.1%) |
150W+150W(8Ω/4Ω共) |
| 実効出力
(両ch,1kHz,歪み0.1%) |
160W+160W(8Ω/4Ω共) |
| パワーバンドウィズ
(IHF,歪み0.5%) |
5Hz〜50kHz(8Ω) |
| ダンピングファクター | 80(8Ω) |
| 全高調波歪率
(両ch,100W時,8Ω) |
0.02%(1kHz),0.06%(20kHz) |
| 全高調波歪率
(両ch,1W時,8Ω) |
0.02%(1kHz),0.03%(20kHz) |
| 混変調歪率
(70Hz:7kHz=4:1,100W,8Ω) |
0.04% |
| 周波数特性
(1W,8Ω) |
5Hz〜100kHz(+0,−1dB) |
| 入力インピーダンス | 100kΩ |
| 入力感度 | 775mV |
| レベル可変幅 | 18dB(775mV〜6V) |
| 残留雑音 | 0.3mV |
| SN比 | 100dB |
| ランブルフィルターfc | 10Hz,−12dB/oct |
| 入力端子 | NORMAL-DIRECT(SW切換) |
| 出力端子 | 1-2-3-4-5(B-1単体の場合は1のみ) |
| 寸法 | 460W×150H×390Dmm |
| 重量 | 37kg |
| ピークメーター部 | −50dB〜+5dBまで表示するピークVUメーターとメータードライブ回路 |
| スピーカー切換部 | 5組のスピーカー切換SWと左右独立レベルコントロールボリューム |
| その他 | パワーインジケーター,オーバーロードインジケーター,サーマルインジケーター |
| B-1との接続 | 直接B-1前面に実装,または,別売専用コネクターコードにて接続使用 |
| 仕上げ | ブラックアルマイト,梨地仕上げ |
| 寸法 | 460W×150(+5)H×83(+50)Dmm |
| 重量 | 5.5kg |
※本ページに掲載したB−1の写 真,仕様表等は1975年のYAMAHAの
カタログ及び広告より抜粋したもので,日本楽器製造株 式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・ 引用等することは法
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