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YAMAHA B-5
NATURAL SOUND STEREO POWER AMPLIFIER
¥250,0001979年にヤマハが発売したパワーアンプ。当時ヤマハのパワーアンプの中でも最大の出力を誇るハイパワー
アンプでした。シンプルで控えめな外観が示すように,大出力ながら荒々しさを抑えた品位のある音を求めた
ヤマハらしい1台でした。初段は,ローノイズHigh-gm Dual FETによる平衡送り出し差動増幅回路にカスコードブートストラップ回路
をアセンブリーした構成になっていました。このDual FETは,ローノイズでgmの高い2つのFETの電気的,熱
的特性を揃えて同一パッケージに収めたもので,初段の素子として安定した特性を持っていました。
プリドライブ段は,カスコード接続カレントミラー回路によるプッシュプル差動増幅回路となっていました。このカレ
ントミラー回路は,A級のプッシュプル動作をするため,高調波歪みが低く抑えられていました。
初段とプリドライブ段のFETには5mA以上の電流が流され,過渡的な応答性が高められ,TIM歪みなどの過
渡的な歪みも抑えられていました。出力段は,新開発の「リニアトランスファ回路」を採用した3段エミッタフォロア,High-ft トランジスターによるピ
ュアコンプリメンタリー・トリプルプッシュプルのDCアンプ構成となっていました。High-ft トランジスターを3段
構成として十分な電力ゲインを広帯域にわたって得るとともに,各段ともB級動作領域でのキャリア放電速度を
早め,高域での周波数特性,歪み特性の改善を図っていました。
「リニアトランスファ回路」は,バイアス電圧は固定しておいて,並列接続したパワートランジスタの各動作点を
ずらせて,合成特性を2乗特性に近づけてリニアな総合伝達特性にするもので,なめらかな電流波形とクロス
オーバー歪の少ない低歪率特性を実現するものでした。プッシュプル回路で問題となるスイッチング歪みに対
しては高速スイッチング特性のHigh-ft トランジスターを,クロスオーバー歪みに対しては「リニアトランスファ回
路」でという形になっていました。
このトリプルプッシュプルで使われているHigh-ft トランジスターは,最大コレクタ損失(Pc)150W,最大コレ
クタ電流(IC)15A,耐圧(Vcbo)180Wという大電力型でありながら,高域限界周波数(ft)がNPN型の2SC
-2707で90MHz,PNP型の2SC-1147で70MHzと非常に高くなっており,スイッチング歪みの大幅な低
減とすぐれたリニアリティを実現していました。また,通常のパワートランジスターのケースが鉄であるのに対し
銅ステムを採用し,取り付けネジからソケットまで銅製として,磁性体を採用することによって生じる歪みを抑え
ていました。このパワートランジスターをトリプルプッシュプルで使用した場合トータル損失900Wで700Wもの
出力を取り出すことが可能で,出力240W+240W(8Ω)に対して余裕を持って使用されていました。
さらに,巨大なヒートシンクに低い熱抵抗で取り付け,十分な放熱効果を確保し,ファンなどの強制空冷の必要
をなくしていました。
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電源部は,レギュレーションの良い大容量のトロイダルトランスと新開発のオーディオ専用アルミ電解コンデン
サーを搭載していました。この新開発のアルミ電解コンデンサーは,世界で初めてポリプロピレンケースを採
用したオーディオ用アルミ電解コンデンサーで,アルミ箔中を流れる電流によって放射される電磁界へのアル
ミケースの悪影響を抑え,電極箔を従来の約半分に低倍率化,高速電解液の採用,リード引き出し本数を50
%増しなどの改良が施されており,インピーダンスの低減を実現したものでした。さらに,ヤマハカスタムのオー
ディオ用マイラフィルムコンデンサーをパラレルに接続して,高域での電源インピーダンスの上昇を抑えていま
した。
B-5の出力段(電力増幅段)は3段ダーリントン接続ですが,1段目のエミッタフォロアの電源をプリドライブ段
の±80Vの定電圧電源より供給し,2段目のドライブトランジスタへは±B級電源より±10V積み上げた電源
より供給するようになっており,広いダイナミックレンジを確保していました。
さらに,初段・プリドライブ段からなる電圧増幅段には左右独立したローカル定電圧電源を設け,L・R間のクロ
ストークを抑え,他の信号からの影響も抑えていました。銅ステムHigh-ftトランジスター,オーディオ専用アルミ電解コンデンサーの他,パーツやコンストラクションの面
で音質重視の設計がなされていました。
主要回路のパーツにはちっ化タンタル抵抗,ポリプロピレンフィルムコンデンサー,マイカコンデンサー,通常の倍
の厚さである70μ厚銅箔を使用したプリント基板,2mm厚のバスアースなどが採用され,金メッキ入出力端子
も搭載されていました。
コンストラクションでは,中央に大型のトロイダルトランスと大容量電解コンデンサーを配置し,左右対称設計で
左右のヒートシンクを合理的に使用したシャーシレス構造となっていて,大出力アンプながら比較的小型の筐体
を実現していました。機能的にはシンプルで,スピーカー出力はA,B2系統で,前面のスイッチで切り換える方式がとられ,DCアンプ
としてDC漏れがプリアンプからある場合に備え,マイラーフィルムコンデンサーを挿入してDC成分をカットできる
ACモードも装備され,入力端子はDC,ACの2種類が設けられていました。また,背面にL・R独立の入力レベル
コントロールが装備されていました。以上のようにB-5は,比較的大きさを感じさせないシンプルでスマートな外観の中に,大出力と音の品位を両立
させようとしたヤマハらしいパワーアンプでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎電流歪みを低減した
新開発銅ステムHigh-ftトランジスタ
◎High-ftトランジスタによる
ピュアコンプリメンタリィトリプルプッシュプル出力段
◎合成伝達特性をリニアにする
リニアトランスファ(バイアス)回路
◎ポリプロピレンケースを用いた
新開発オーディオ専用アルミ電解コンデンサー
◎大容量トロイダルトランスと新開発ケミコンによる
レギュレーションの良い電源
◎ドライブ段積み上げ電源
◎ローカル定電圧電源
◎大型ヒートシンク
◎Pcリミッタ
◎DC検出&SP保護回路
◎DC/AC入力専用ピンジャック
◎照光式スピーカースイッチ
◎L・R独立の入力レベルコントロール装備
| 定格出力 | 8Ω・20Hz〜20kHz・歪0.005% 240W+240W
4Ω・20Hz〜20kHz・歪0.01% 350W+350W 8Ω・1kHz・歪0.003% 250W+250W 4Ω・1kHz・歪0.005% 350W+350W |
| パワーバンド幅
8Ω・100W・歪0.02% |
10Hz〜100kHz |
| ダンピングファクタ
8Ω・20kHz |
200 |
| 入力感度/インピーダンス
8Ω・100W |
1V/25kΩ(470pF) |
| 周波数特性 | MODE DC・8Ω・120W
10Hz 0dB 1kHz 0dB 100kHz −0.7±0.5dB MODE AC・8Ω・120W 10Hz −1.5±0.5dB 1kHz 0dB 100kHz −0.7±0.5dB |
| 全高調波歪率 | 10Hz〜20kHz・120W・8Ω 0.003%以下
10Hz〜50kHz・120W・8Ω 0.007%以下 100kHz・120W・8Ω 0.01%以下 |
| 混変調(IM)歪率
60Hz:7kHz=4:1・8Ω・120W |
0.002%以下 |
| SN比 IHF・Anet work
Vol MAX・RL=8Ω |
123dB以上 |
| フィルタ | −6dB/oct・fc=6.4Hz |
| チャンネルセパレーション(8Ω)
|
1kHz 100dB
20kHz 95dB 100kHz 70dB |
| 定格電源電圧・周波数 | AC100V・50Hz/60Hz |
| 定格消費電力 | 560W |
| 外形寸法 | 435(W)×182.7(H)×361.5(D)mm |
| 重量 | 20.9kg |
※本ページに掲載したB-5の写真,仕様表等は1979年4月のYAMAHA
のカタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式会社に著作権があり
ます。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
で禁じられていますのでご注意ください。
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