青の炎 (貴志祐介・角川書店)小説
☆☆☆☆☆
こんなにもせつない殺人者がかつていただろうか
普通の生活を送っていた櫛森秀一の家だが、母親の分かれた再婚相手が突然戻ってきてから、その日常が崩れ去った。
傍若無人な振る舞いをするその男に憤りを感じる秀一だったが、ある事件のあと、その怒りは殺意にかわる。
櫛森秀一は父を殺す決意をした。愛する妹と母のために。
その心を満たすのは、鮮やかなブルーの炎。
最も深い思索を表す色。
だが、その冷たい色相とは裏腹に、青の炎は、赤い炎以上の高温で燃焼する。
この本は俺ごときが感想を書いてはいけない気がする。
感動する。
その行動を取らざるを得なかった秀一と、それにより生じるさらなる問題。
あの結末は、最初から最後まで家族を守ることを考えて行動したことによる必然なのか。
ただ、俺のいえることは一つだけだ。買って読め。
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カムナガラ 1〜3 (やまむらはじめ・少年画報社)漫画
☆☆☆
一・二巻までは前世の記憶だとか異世界からの侵略だとかでお腹いっぱいな感じがしていましたが、三巻に入ってだんだんと面白くなってきた気がします。
まだ物語の途中だし、ちょっとは予想もはいるのですが、この記憶と事実の食い違いってのはいつか自分でも書いてみたいテーマだったりするわけで……。
まぁ、儀式官だとか秘密機関だとか、その辺りはいかにもすぎていまいちスキになれないんですけどね。
さてさて、これからどうなりますか。
そうそう、小田切行緒と武弥香奈多って同じ人?とか言ってはダメですよ?
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クリムゾンの迷宮 (貴志祐介・角川ホラー文庫)小説
☆☆☆☆☆
目が覚めるとそこは一面が鮮やかな深紅色の世界だった。
そこにいたるまでの記憶を取り戻そうとあたりを見回す藤木芳彦は、足元に携帯用ゲーム機を発見する。
「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」
他に何をしていいのかもわからないのでゲーム機に表示される指示にしたがいチェックポイントへとたどりつくと、そこには同じように記憶を失った人々がいた。
手に入れたアイテムを分配しあってから、再びゲーム機の支持に従い東西南北のグループに分かれて行動を始める9名の男女。
あるものは食料を、あるものは情報を、そしてまたあるものは武器を求めて……。
それは血で血を洗う凄惨なゼロサムゲームの始まりだった。
怖いです。
黒い家を読んだときに本当に怖いものは幽霊とかお化けとかじゃなくて、凶器を持って追いかけてくる普通の人間だなぁと思ったのですが、その恐怖を究極にまで高めたのがこの作品かと。
サバイバル生活の中、極度の飢えを体験した人間は、薬物の効果もあり食屍鬼グールへと変貌していく。
知恵を持ち武器を持つハンターに対し、こちらにある唯一のアドバンテージは情報という形のないものだけ。
食屍鬼は刻一刻と距離を縮めてくる。
こちらのとりえる手段は、諦めるということしかないのだろうか……。
一級の恐怖を味わえ、しかもサバイバル生活の知識までついた気分になれるというお得な一冊でございます。(02/08/16)
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黒猫の三角 (森博嗣・講談社文庫)小説
☆☆☆☆
Vシリーズ文庫化第一弾ってことで、このシリーズは自分で買おうかと思っていたのですが、金欠に苦しんでいるうちに友達が貸してくれたのでこのシリーズもまた友達に頼ることになりそうです。
S&Mシリーズと同様に「天才対天才」でシリーズ開幕となるわけですが、やっぱり「すべてがFになる」のほうが面白かったんではないかと。
いや、確かにストーリーとか個々のキャラクタとか例の森哲学とか十分に一つの作品としては面白いんですけど、なんかトリックで納得できない点がひとつありまして……。(酒本のみた・・・ってやつ)
ま、また森哲学を堪能できるということで、次巻以降の文庫化も楽しみであります。
S&Mシリーズみたいに無性にタバコが吸いたくなったりもしないので身体にも安心だし(ぉ
同タイトルで角川書店から皇なつきが漫画をだしていますが…正直オススメはできないですね……。
「すべてがFになる」のときのように、頭の中で完全にキャラクタができていたわけではないので、その部分でのショックは少なかったのですが、やっぱり小説を漫画にしたときに現れる欠点が例にもれずでちゃってるなぁ、と。
値段的にも小説の方が15円高いだけなんで、時間に余裕のある人は小説を買う事をオススメいたします。(02/09/12)
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シンプル・プラン (スコット・スミス・扶桑社ミステリー)小説
☆☆☆☆☆
ある雪の日の夕方、墜落した小型飛行機の中にパイロットの死体と440万ドルの現金を発見した三人組。
一度その金を保管し、ほとぼりがさめた頃に三人でわけるためにごくシンプルな計画をたてた。
だがその時からすでに悪夢ははじまっていたのだった…。
人物の心理描写がとてもうまいと思います。
目先の事しか考えられない二人のせいで、計画が失敗に終わるかもしれないという主人公の焦りや、問題を処理するためにさらなる問題に足を突っ込まなければいけないということに対する葛藤など、読んでいてまるで自分の気持ちのように感じてしまいました。
新しい事件が次から次へと起きるので読んでいてまったく飽きることもありませんでしたし。
俺なら10%の確率くらいなら大丈夫な方にかけると思いますけどね。
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スキップ (北村薫・新潮文庫)小説
☆☆☆☆
17歳の一ノ瀬真理子は、眠りから覚めたら42歳の桜木真理子になっていた。
抜け落ちた35年はいったいどこに行ったのか、という話。
肉体はそのままに頭の中でだけで起きる時間跳躍、ってな所で、どうしてもタイム・リープを思い浮かべてしまうんですけど……。
両方とも刊行時期が同じなんですよね。
桜木真理子として目覚めた後、だんだんと自分の置かれている状況を把握していく課程などはいったいこれからどうなるのだろうとわくわくして読めたのですが、どうも途中から単なる学園ものに変わってしまっている気がします。
若い心をもった教師の話を書けばこんな感じになるんじゃないかなぁと。
それでも、自分の置かれている状態に背を向けずに立ち向かっていく様子なんかで書かれている女性の強さなどは興味深く読むことができましたが。
…あれってハッピーエンドだと思っていいんでしょうか?
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銭 (鈴木みそ・エンターブレイン)漫画
☆☆☆☆
突然事故にあい生死の境を彷徨う主人公の前に現れたのは、銭勘定が大好きな幽霊だった!?
自分の逸失利益の計算を突然始める女幽霊ジェニーが、お金の意味というものが気になり漂い続けていることを知った主人公は、ジェニーを病院から外に連れ出しお金の本質を知る旅にでる。
いのちの値段だとか、漫画やアニメ業界の値段についての話は面白かったです。
普段何気なく読んでいる漫画ですけど、雑誌を作るにはいくらお金がかかるのか、作家に入る1ページあたりの原稿料っていくらくらいなのか、何冊売れればどのくらい利益がでているのか、そんなこと全然知りませんよね?
そんな裏側の金の流れを隠さずにぶっちゃけているのがこの漫画です。
金の流れだけでなく、アニメーターがどのように出世していくのかなど、業界裏話なども知ることができるので面白い。
ただ、単行本の後半ほとんどを占めているコンビニの話が、お金や裏話のことよりもストーリーを軸においてあるせいで、事故死や漫画やアニメの話ほど読んでいて「へー」と思うことが少なかったのが残念ですね。
うまくストーリーに絡ませて裏話なんかもしているのですが、個人的にはストーリーよりももっと銭のことを知りたかったなぁと。
でもこういう裏話を知りつつアニメや漫画なんかを見ると、また違った感想を持てるようになったりもするので、結構後々のことなんかも考えるとお得な漫画なのかもしれませんね。(03/11/22)
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そして二人だけになった (森博嗣・新潮文庫)小説
☆☆☆☆
やっぱりこの作品でも独自の森哲学は健在で、読んでるだけで賢くなった気になれます。
で、肝心のストーリーなんですが、ちょっとだけ内容に触れるので未読の方はご注意を。
叙述トリックを使った作品に今まで数多く出会ってしまったせいで、ちょっと変わった書き方をしているとすぐにそれを疑ってしまい、結果最後の意外性が薄れてしまうというのはよくあることだと思います。
世間で高い評価を得ている貫井徳郎の慟哭を読んだときも、やはり途中でトリックに気づいてしまい、それほど面白かったとは感じられませんでしたし。
この「そして二人だけになった」も慟哭と同じように二つの視点を交互に書くことによってストーリーを進ませているので、それを利用したトリックを使っているんだろうと予想できてしまいました。
実際にそのトリックにより、事態は収束に向かって行ったので少し物足りなく感じていたのですが、しかしそこは森作品、さらにもう一つ驚きの事実が!ってな感じで、予想もしない事実に驚かされてしまいました。
良質の叙述トリックを使った作品がそうさせるように、読み終わった後またその事実を踏まえた上で読み直してみたいと思いましたね。(03/03/14)
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ターン (北村薫・新潮文庫)小説
☆☆☆☆☆
夏の午後、ダンプと衝突事故を起こした真希は、自宅の座椅子で目を覚ました。
3時15分。いつも通りの家。いつも通りの外。
夢かと思ったのもつかの間、この世界には真希一人以外誰も存在しないことに気がつく。
しかもその世界ではどんな一日を過ごしても、定刻を過ぎると一日前の3時15分に戻ってしまう。
ターン。
いつかは帰れるの?それともこのまま?
そして150日が過ぎた午後、突然、電話が鳴った。
最初は変わった書き方で読みづらいなと思っていたけど、なるほど、そういう意味だったんですね。
映画化されたらしいですが、そのあたりをどう表現しているかが一番気になったり。
これもスキップと同じく、強い女性というものを描いた作品だと思う。
何をやっても一日前に戻ってしまう世界において、一日前に持っていけるのは自分の記憶だけ。
そんな気が狂いそうな世界で、自分なりのルールをつくり、元の世界に帰る方法を考える。
当然自分一人で。
途中から繋がる電話や、後半登場するもう一人の住人など、スパイスの利かせ方もよく最後まで楽しく読むことができました。
む〜、映画、みたい。
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タイム・リープ あしたはきのう (高畑京一郎・電撃文庫)小説
☆☆☆☆☆
鹿島翔香。高校2年生の平凡な少女。ある日、彼女は昨日の記憶を喪失している事に気付く。そして、彼女の日記には、自分の筆跡で書かれた見覚えのない文章があった。”あなたは今、混乱している。若松くんに相談なさい…”
若松和彦。校内でもトップクラスの秀才。半信半疑ながらも、彼は翔香の記憶を分析する。そして、彼が導き出したのは、謎めいた時間移動現象であった。”タイムリープ…今の君は、意識と体が一致した時間の流れの中にいない・・・”
この本を初めて読んだのは中学の時だろうか。感動した。泣くとかそういった感動ではなく、物語の構成が素晴らしいと思い、震えた。
こういったプロットが素晴らしい作品を読むと、自分でも小説が書いてみたくなる。まぁ、無理だが。
若松くんがひたすらかっこいいです。
俺もこういった知的な人間になりたいものである。まぁ、無理だが。
この本はページあたりの文があまり多くないので、小説慣れしていない人でも苦になることなく読み終えられると思いますよ。オススメ。
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大誘拐 (天藤真・創元推理文庫)小説
☆☆☆☆☆
一度刑務所に入った人間が社会復帰を果たすには元手、つまり金が必要だ。
その金を得るための手段として誘拐をたくらんだ三人組は、県内はおろか全国に聞こえる資産家である柳川家当主であるとし子刀自の誘拐に成功する。
監禁場所で自分に掛けられる予定の身代金が5000万円であることを三人組から聞いた刀自は、冷たい声でこう言い放った。
「あんた、この私を何と思うてはる。私はそない安くはないわ。きりよく百億。それより下で取り引きされたら、末代までの恥さらしや。ええな。百億やで。ビタ一文負からんで」
そんな額の紙幣、捕まらずに受け取る方法は考えつかない。
しかし人質であるはずの刀自がなぜか協力を申し出て・・・。
刀自の目的とは何なのか?そして誘拐は成功するのか?
次々に起こる一見回避不可能に見える問題を華麗な手口で解決していくので読んでいてとても爽快な気分になることができました。
単純にそういった問題の解決方法を考えながら読んでもいいし、刀自の目的について深く考えてみるのもいいし、事件を通して三人が成長していく様を見てみるのも楽しい。
結構昔の作品だけど、読みやすいですよ。
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多重人格探偵サイコ 1〜7 (田島昭宇×大塚英志・角川書店)漫画
☆☆☆☆☆
連続バラバラ殺人事件に自分の恋人を殺害された小林洋介刑事。
犯人を追いつめ会話するうちに、彼の中のもう一人の人格"西園伸二"が目覚め犯人を射殺する。
"雨宮一彦"として刑期を終えた彼はそのプロファイリング能力をかわれて伊園犯罪研究所で働くことになり、犯人の左目にバーコードの入っている各事件に関わっていく。
事件に深く関与する「ガクソ」とはなにか、彼の本当の人格は誰なのか、そして彼の左目に入ったバーコードの示す意味は・・・。
これでもかというくらい人が死ぬ、死ぬ、死ぬ。しかも死体の表現が激しく、掲載紙である角川書店がその掲載を懸念したほど。
手足をちぎってポカリのゼリーみたいなモノにつけたり、脳味噌に花を植えたり、デザートイーグルで腹に大穴空けたり・・・。
しかもそのすべてをまったく隠すことなく載せてしまうのだから、角川書店が悩むのもわかる。
この漫画を読んで一番に思うのはその死体描写の強烈さだが、この漫画の面白いところはそのストーリーだろう。
主人公の主人格からして謎だし、その他にもこれでもかというくらい謎、謎、謎が。
しかもそのほとんどが解決していないし・・・。
とにかく続きが楽しみな話である。
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奪取 (真保裕一・講談社文庫)小説
☆☆☆☆☆
1260万円という借金をヤクザに作ってしまった友人を助けるために偽札作りを決意した主人公。
今までの偽札作りという概念を一新したアイディアにより、目標とする金額を手にすることはできたのだが……。
二転三転するストーリーや、細かな印刷技術の描写やそれを克服していく過程、ハードボイルド的なヤクザとの駆け引き、自動販売機を相手とした小さな犯罪の豆知識、などなど、楽しめる要素が満載です。
それにユーモアたっぷりのエンディング。
確かに同じような終わり方をしている作品もいくつかありますが、そこにも細かなスパイスをきかせていて面白いです。
ぜひ横に壱万円札を用意しながら読んで欲しい作品ですね。
俺の財布には千円札しか入ってなかったがなー(;´д⊂)(03/04/30)
Amazon.co.jpで購入(上巻)(下巻)
Hyper Hybrid Organization 01-01 (高畑京一郎・電撃文庫)小説
☆☆
エンジェルハウリング2巻を探しにファンタジー系文庫の書棚を物色していたら高畑京一郎の新刊が発売されていたので当然購入。
まだ一巻なのでなんとも言えないのですが・・・う〜ん、いまいちかも。
どうも『黒い覆面集団』とか『ガーディアン』とか『改造人間』とか、ネーミングが格好良くありません。
まぁ、それは置いておいてストーリーの方なんですが、って全然進んでねぇじゃん!
一冊使っておいてほとんど話が進んでいないので解説のしようがないような…。
2巻以降に驚くような展開を期待しています。
どうも高畑さん、ダブルキャスト、HHOと不作が続いているような…。
クリス・クロスとタイム・リープは文句なしのできだったと思うので、またそれくらいのパワーのある小説を書いて欲しいですね。
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僕らの変拍子(冬目景・ソニーマガジンズ)漫画
☆☆
収録作品
僕らの変拍子
幽霊のいるまち
現国教師RC-01
醒めてみた夢
銀色自転車
こんな感じ
六畳劇場
なんかな〜、いまいちです。
僕らの変拍子と銀色自転車はまあまあ面白かったですけど、どうも他の作品はどこかで見たようなものだったり、勢いが中途半端だったりしてスキになれませんでした。
ボクの思う冬目さんの作品の面白いところは、日常、もしくは日常をベースとした非日常のなかでの決して大げさではない主人公の気持ちの移り変わりなんかをたんたんと描いていくところなわけで、この中でそれにあたるのはさっきあげた二作品くらいしかなかったと思います。
まぁ、初期作品集なので、冬目節となるソレがまだ完成されていなかったというところでしょうか。
それでもやはり、先ほどの二作品には冬目節が現れているので、イエスタデイをうたってや羊のうたを読んで面白いと感じた人は読んでみて損はないと思いますよ。
あと、現国教師RC-01はマルチの話。
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魔性の子(小野不由美・新潮文庫)小説
☆☆☆☆☆
母校に教生としてやってきた広瀬は受け持ったクラスの中で一人異質な雰囲気を放つ生徒「高里」を発見する。
高里をいじめたりからかったりする者は、ことごとく報復ともいうべき不慮の事故にあって怪我を負うのだという。
『高里は祟る』
幼い頃神隠しにあったという高里に奇妙な親近感を覚え、事件の謎を解こうとする広瀬だが、ついにその広瀬の目の前で死者がでる。
級友の死を高里の祟りだと信じるクラスメイトは高里をつるし上げるが、それは新たな「報復」への幕開けにしかならなかった……。
同作者のシリーズ十二国記の外伝にあたる作品です。
「黄昏の岸 暁の天」で蓬莱に流された泰麒は、蓬莱、つまり日本でいったい何をしていたのか、という話。
でも「黄昏の〜」はおろか、十二国記シリーズ開始よりも、本書が出版された時間の方が早いんですよね。
ということはこれを書いた時点で十二国記シリーズをどう展開していくのかすでに頭の中にはあったということか……。
で、感想なんですけど、十二国記外伝として読んだ場合は面白いんですけど、シリーズを全く知らずに読んだ場合はどうだろう。
十二の国だとか麒麟だとか王だとか、シリーズわかってて読むとニヤニヤできる単語がいっぱい出てきて非常にいいんですけど、それを知らないと「はぁ?」で終わっちゃいそうな……。
確かに高里に付きまとうなんだかわからない現象により死者が続出し、その毒牙が主人公広瀬にも襲い掛かる…なんてのはホラーとして面白いのかもしれませんけど、最後の最後まで結局その現象ってのが何だったのか明かされないまま終わってしまうので、ちょっとすっきりしないかもしれません。
人の内面の汚さだとか、故国喪失者同士の心の交流、最後に交わした約束、など本書だけでも面白くはあるのですが、やっぱりどうせだったら十二国記を読んでからこっちも読んだ方が面白いと思いますね。
とりあえず十二国記読んで「おいおい、"もはや泰麒は世界に敵する者であり"とか書いてあるけど、一体何やらかしちゃったんだよ!」なんて思った人は読んでおいて損はないと思いますよ。
内容はホラーですけど、廉麟の存在とかわかってると怖くありませんしw
まぁ死体描写や精神的に追い込まれていく様なんかは確かにホラーって感じだったりはしますが……。(03/11/29)
追記
と思いきや、十二国記読む前に本書読んだ人のレビューみて、あーそういう楽しみ方もあるのか、と。
確かに高里を覆う現象の原因が一体どこにあるのか、なんかを考えながら読むのも楽しそうですねぇ。
本書の純粋な楽しみ方としてはそっちの方が正しそうですし。
十二国記読む前と読んだ後と、一粒で二度美味しい作品ですね。
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未来のゆくえやまむらはじめ短編集(やまむらはじめ・少年画報社)漫画
俺的には☆☆☆☆☆
収録作品
最後の夏
最後の夏〜Second take〜
まつりの景色 PART-1〜3
よるのむこうに
肩幅の未来
OUR DAYS〜されど我等が日々〜
なぜだか自分でもよくわからないのだが、この中の「肩幅の未来」がものすごくスキだ。
特にこれといった起伏もないただの日常の話なのだが、この話のためだけに単行本を買ってしまった。
まぁ、彼女の置かれた環境が少し普通の環境とは違うのだが・・・。
高校のときに学校でこの話を読んだのだが、ほかに何人も読んでいた人はいたにも関わらず、こんなにこの話を気に入ったのは俺だけだったし、単行本を買ってから何人かに読ませたが、その中にも俺と同じ感じ方をした人はいなかったようだ。
「この話読んだことあるぜ!」って人は感想を聞かせて下さい。
最近こういった日常の話がスキかも。
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無限の住人 1〜11 (沙村広明・講談社)漫画
☆☆☆☆☆
「血仙蟲」により死ぬことの出来ないからだになった旗本殺しの万次は、100人の仲間を斬った償いに1000人の悪党を斬る事を決意する。
「逸刀流」に両親を殺された凛は用心棒として万次を雇い、「逸刀流」を皆殺しにするための旅に出る。
どっかのるろうに漫画とは違ってガンガン人が死ぬ。画力も素晴らしいので、アクションシーンは読んでいて気持ちがいい。
ストーリーも、ただ主人公が悪を斬るっていうようなものではなく、逸刀流側にも明確な理念があったり、別の組織の無骸流が出てきたり、完全に狂気に支配された男がでてきたりして飽きないし。
百琳といい槇絵といい、女性がいい感じ。11巻で天津が槇絵の捜索を頼んでいたし、もしかして12巻あたりで槇絵さん再登場ですか!?やたらと楽しみです。
しかし、全部読んでみて思うのだが、万次ってあまり強くないんじゃ・・・?
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名探偵の掟 (東野圭吾・講談社文庫)小説
☆☆☆
推理物での「お約束」を皮肉しまくった問題作。
主人公が名探偵と捜査一課の警部というこれも「お約束」なのだが、たまにそのふたりは小説世界を飛び出して会話を始める。
ダイイングメッセージの不自然さを指摘する名探偵に対し「あまり詳しく説明すると読者に見抜かれてしまうではないか」と気づかない振りをすることを進める警部や、「アリバイ崩しのトリックの複雑さを読者が理解できるわけがない」という探偵に「読者は最後の謎解きを聞いてなんとなくわかったような気になれば満足なんだ」と答えたり。
短編形式で密室殺人だとか見立て殺人だとか孤立した山荘でなんかの殺人が起こるのですが、それを皮肉たっぷりの会話をまじえながら解決していきます。
「そんな金があるなら殺し屋でも雇ったほうが早いんじゃ?」「そんなご都合主義な!」などなど。
普通の推理物に飽きてきた人にお勧めですね。
てかコレ読んでからかまいたちの夜2やったら「うわぁ」って思った……。
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余の名はズシオ 1〜4 (木村太彦・角川書店)漫画
☆☆☆☆☆
大陸を統べる帝国の第一王位継承者であったズシオ王子だが、敵国に帝国を滅ぼされ追っ手に命を狙われていた。
自分をかばう血のつながりのない姉をみて、帝国を取り戻し王位につくことを決意したズシオ。
大陸の平和は破られズシオ達の旅が始まる!!
頭が悪い。
常識はずれのズシオと、ひょんな事からズシオ逃亡の協力者とされてしまった瑠璃家の織りなすどたばた劇なのだが、ズシオのぶっ飛び加減が最高。
読んでいるうちに何となくオチはわかってしまうのだが、それでも十二分に笑えるのはテンポの良さが最高だからだろう。
2巻に入りアンジュの魔眼のせいで勢いだけの漫画になってしまうかと思ったが、3巻に入ってまた1巻のノリに戻ってくれたので嬉しい。
個人的には1巻と3巻がスキ。電車の中で読んだら死にそうになった。