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窓の外はまるで雲の底が抜けたような有り様で、
傘があっても気休めにしかならないような酷い天気だった。
真っ暗な深夜、時折明るくなって雷の音がした。
その稲光の度に窓枠に引っ掛けてある照るてる坊主が、
首吊り死体のような影を部屋に落とした。
エアコンの風と僅かな雷の揺れが、ゆるゆるとてるてる坊主をそして影を揺らす。
「踊れ踊れ、首吊り坊主、明日は天気にしておくれ」
2002/12/27
電話が鳴ったんです。
大体夜中の3時ほどでした。
この時間に電話、と言うのはちょっと普通じゃありません。
その時私は丁度怪談話を乗せてあるサイトを読んでいて、
思わず背筋が凍ります。よくあるパターンは
死んだ人からの電話とか、それとか鏡を見たら
そこには血だらけの女がとか。
私がそんなことを考えている間にもベルは鳴り続けています。
あぁ、どうしようどうしよう、私は大いに慌てますが、
しかしこの部屋には私しか居ないので誰か他人を
犠牲にすることも出来ません。
もう相当な回数コールしたはずなのに電話は一向に切れる気配を
見せません。時間的にもこの夜中にこれだけコールして出ない
なら普通諦めます。と、言う事は余程の一大事か、
あるいはついさっきまて覗いていたサイトの中にある
世界が目の前にあることになります。
選択肢は三つあります。
無視するか、モジュラージャックを引っこ抜いてしまうか、
もしくは電話にでるか、です。私は必死に考えます。
まず最悪なのはモジュラージャックを抜いてしまうことです。
抜いてもし止まればそれはとても大事な用件であった普通の電話、
と言う事です。そしてもし止まらなければそれは
間違いなくマトモな相手に繋がる電話ではありません。
ただの電話を放置するならともかくそのオカルトすぎる
電話を放置して寝息を立てられるほど私は気丈な人間ではありません。
つまりは結局出なければいけないのであり、退路を塞がれる分だけ
心理的に損です。
残るは正体不明のまま寝息を立てるか。
あるいはすぐに受話器を引っ掴み、相手を確かめるか。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、どっちも嫌だ!。
私は手近にあったスチールラックのパイプを
力の限り握り締め、受話器ごと電話を粉々にします。
気味の悪い音を立てて機能を停止した電話をみて、
私はやっと胸を撫で下ろしました。
あぁこれで、安心して寝れ、その時
私の後ろで携帯電話がコール音を上げました。
ファニーな展開。
2002/12/27
「衛生兵ッ!、衛生兵はどこだッ!!」私は大声というよりは半ば絶叫していたが、しかしその大部分は銃撃と砲撃と戦車の駆動音で掻き消され、僅かに帰って来る返事は悲鳴と助けを求める声だった。私におぶさっていた軍曹は次第に呼吸を荒くし、見る見る顔が青くなっていた。急がなければ、いや、もう急いでも助からないかもしれない。衛生兵、私が叫ぼうとしたその瞬間、私の顔の僅か横を敵のライフル彈が駆け抜け、私の肩口にあった軍曹を頭を木っ端微塵に吹き飛ばし、さっきまで軍曹だったものの肉片が爆裂し顔にこびり付く。私はすばやくポケットをまさぐると中からデリンジャーを取り出し、自分のこめかみに押し付けた。
2002/12/10
もう何日も固形物を食べていない。
最後に肉を喰った日は足の指まで使って勘定したとしてもとうに足りなくなっていた。
それもこれも借金のせいだ。私は財布を覗き込むが、
中には数個の硬貨と僅かな紙片(レシート)しかない。絶望的な気分になる。
ちょっとした出来心からそれは雪達磨式に増え、
気が付けば臓器は担保の二文字に摩り替わっていた。
大いなる愚行。
そんな私にチャンスが訪れたのは一週間前だった。
先立つ物が無くなった私は浅はかにもパチンコ屋へ赴き
運良く数日間の糧を得る筈が、僅かな希望だった漱石三枚は
残酷にもお札投入口の薄い闇に飲み込まれ二度とは帰ってこなかった。
その帰り道、薄暗い路地を歩いている時だった。
いつもの路地を曲がった先にある古びた電信柱、その下に猫が捨ててあったのだ。
ここら辺は昔から猫が多い土地で捨て猫なんて珍しいような
ことじゃないし大したことでもなかった。しかし、私は釘付けになった。
猫が可愛いとかそんなじゃなくて、その子猫は三毛猫だったのだ。
子供のころ三毛猫を飼っていたことがふと思い出され次の瞬間私は子猫を
抱き抱えていた。連れて帰ろう、こんな所じゃ寒すぎる。
私は子猫を懐に入れそして言いようの無い違和感を感じた。
こいつはまさか、いや、もしかして。何かがゆっくりと確信へと
変わり私は歩調を速めた。
小汚く狭苦しい四畳半、それが私の城だった。
私は酷く狼狽していた、激しい動悸と嫌な汗が背中を伝う。
手には子猫が抱かれていた。玄関の鍵を閉め深呼吸をし確認する。
それは確かに三毛猫でそして間違いなくオスだった。
一瞬意識がフェードアウトし、そして強烈な速さでまた回転を始める。
本物の三毛猫のオス!そうあの超高額で取引されるラッキーキャットだ!
間違いないが、しかし、いや本当は。そんな変な昂揚感が
私を支配し容易には現実を受け入れようとしない。
金の心配はもういらない、多分2,3年は遊んで暮らせる飯のネタだ。
ふって沸いた突然の幸福、まるで宝くじに当たった様な気分で
最高にハッピーだった。
しかしたった一つだけあの子猫をお金として見ている事が、
まるで泥棒をしたような気がして僅かな良心が少しばかり痛んだ。
だからと言う訳じゃなかったが、
私はその子猫に「ポチ」と名前を付けることにした。
名前を付ければ商品じゃなくなるような、そんな気がしたからだ。
それから数日たち、ポチは私によくなつき撫でるとごろごろと喉を鳴らして
すりよってくるようになっていた。いつか換金してしまわなければいけない
ことは分かっていたが、いつのまにか芽生えた手放したくという思いは
日増しに大きなものになっていた。
そんなことを考えているとポチが足元にやってきて何かを訴えているようだった。
見やるとミルクを入れていたポチの皿が空になっている。
私はコンビニへを走った。ポチにミルクが上げたかったと言うより
何も分からないで自分にすりよってくるポチを見るのが辛かったからだ。
とは言え家に置いておく事もできなかったから、私はポチを抱きながら走った。
もうすぐコンビニが見えてくるその時だった。
突然ポチは暴れ出し抑える私の手をすり抜けた。
そして車道へ、ここからはあっという間だった。
驚くほど早くブレーキ音が鳴り響き続いて硬い音が聞こえた。
あぁそんなと思う間も無く空を舞うポチが目に入る。
まるで何が雑巾でも落ちるような音を立てて地面に落下したポチは
ぴくりとも動かない。死んだのだ。あぁ何て事!、
私が替わってやれたらどんなにいいだろう。そう思った瞬間
意識が遠のき体から力が抜けて行く。強烈は虚脱感に抗う事ができない。
気がつくと私はポチになってた。体中が激痛を訴えている。
薄く開いた目からは走って逃げる自分が見えてたが、
激しく傷ついた体は自体の把握を許さない。
体からはとめどなく血が流れ力が失われていくのが分かった。
私は薄れ行く意識の中で最後の力を振り絞り断末魔の悲鳴を上げた。
それは僕が生きた証明のように僅かに響いて少しの間虚空を去来した。
「にゃー」
2002/12/8
今幸せを溜めて置けばクリスマスも乗り切れる気がするんだ。
ジョナサンがそう言って笑うと、僕もこれは夢じゃないんだと思えた。
隣りでは同じ様にシェイディが笑っている。
僕らは今空の上にいる。恐らく地上3000メートルほど。
真っ白に塗られた前時代の戦闘機がけたたましい轟音を響かせ雲を切り裂く。
機体の翼にはトナカイをあしらったマークと床が抜けないか
心配になるほどのナパーム弾が詰んであった。両方僕らの手作りだ。
僕らは真っ赤な服を真っ赤な戦闘服を来ていた。この日のために髪も真っ白にした。
ドライヤーで切れて飛ぶ自分の髪を見るのは切なかったが、
それ以上に言い知れぬ多幸間を感じていた。
そしてそれは僕以外の二人もそうだった。僕らサンタになるんだ。
恐らく後数分すれば航空局か何かから警告があるだろう。
しかし、僕らの目の前には既にキラキラと光る町が見えていた。
例えスーパーマンが居たとしてももう間に合わない。
カタコンベで会おうッ!
そう叫んで僕らは別れた。
轟音を轟かせ落下する戦闘機と焼夷弾、辺りは瞬く間に火に包まれた。
そしてパラシュートの僕ら。重装備を響かせ僕が大地に降り立つと
僕の周りには悲鳴と怒号が満ちていた。
僕の顔は酷く醜くそして楽しそうに歪んでいただろう。
僕は叫ぶと銃の引き金に手をかけた。
プレゼントはこれからだッ!
ぼくをつきうごかすただしい感覚。僕は、そして僕らはそれらに支配されていた。
女が倒れていた、傍らには男が立っていた。
「彼女を助けてくれ、僕ならどうなっても構わない」と男は言った。
女の腹部からはおびただしい量の血が溢れていた。あれではとても助からない。
男は僕の足にしがみついてきた、何かを必死にまくし立てるが、
言葉は不明瞭でそのほとんどが聞き取れない。
恐慌状態だった。僕は黙って男の足を打ち抜いた。
そんな偽善者のプロパガンダに扇動されやがってッ!
僕たち人類は今つがいであることを棄てパーソナリティの解放をしなければ
成らないんだよ。イデオロギーを磨け、それが出来ないなら、今すぐ
ここで死ねッ!
男の髪を鷲掴みにして僕は怒鳴りつけた。
すると男は鼻水を流して泣き出し始めた。
ッチ、心の中で舌打ちし僕は引き金を引いた。「粛清を」
乾いた音で命が一つ消えた。
僕らのことをカルトと罵る輩もいる。
しかしそれは誤認だ。僕らは悪魔を崇める様なことはしないし、
教祖のようなものも居ない。僕らは自然発生的に共鳴したのだ。
それは1の次が2であることと同じくらい自然なこと。
後数時間の内に僕らの同志は各地のメディアを制圧する。
声明は電波に乗り世界中に伝わるのは時間の問題だ。
そうすればきっと伝わるはずだ。僕らを侵したそれのように。
世界を塗り替えるんだ。僕らの手で、今までの全てを。
僕らを突き動かす恐ろしいほどの正しい感覚。
抗うことはできない。
雪が地面を白く染めてしまうように。
何かが僕らの何かを塗り潰す。
2002/12/2
冷蔵庫を開けると、そこは宇宙だった。
無数の銀河が光を放ち、中心では一際大きな銀河が渦を巻いて光っている。
目の前の宇宙はどんどん加速を続け、そして次第に僕に近付いてきた。
視界は無数の光で埋め尽くされ思考は知覚を超えて広がった。
これが宇宙!。私が半ば放心していると突然電話が鳴り響いた。
バタンッ!
僕は出来る限り騒がずに冷蔵庫を閉め受話器を取った。
2002/11/27
朝、目が覚めると僕は小さなカエルになっていた。
机と床にはまるで敷き詰めた様にビールの缶とワインのビンが
数十本散らばっていた。酷く酒臭く、そして頭が痛い。
まるで割れるように痛む僕の頭を砕くように
携帯がけたたましく鳴り、そして鳴り続けたが、
机におかれた携帯はうんざりするほど遠くて
放って置くとほどなく止まった。
ベタなラブソングの着信は彼女からの電話だった。
誰も居ない部屋は無意味に広くそして寒かった。
僕はもぞもぞとコタツに潜り込んだ。
いつもは腹立たしい電気のつけっぱなしも今はありがたかった。
こたつでまどろんでいると、ふいに昨日のことが思い出された。
昨日の夜中すぎ、友人連中が上がりこんで来て何故かそのままか宴会になり、
そして彼女は激怒して家を出た。僕は泥酔して今に至る。
実はこんな事はしょっちゅうで
いつもなら電話をかけて謝り倒すのだけど、
今はそれもかなわない。手の水かきが恨めしかった。
ベタなラブソングはあれからも数回なって、短く切れていた。
携帯の向こう側にある恐怖の形相が想像できて僕は思わずぞっとした。
僕は一眠りすることにした。こたつは今まで人間だった時より
遥かに快適で心地良いものだった。いつのまにか眠気が首をもたげ
意識はまるで霧ように拡散しどこかへ散るのが分かった。
僕はこたつの電源が落ちる音で目を覚ました。体は依然小さなカエルだった。
電源が落ちた、と言う事は恐らく彼女が帰って来たと言う事だ。
忘れ物をした友人かとも思ったが連中が丁寧に電気を消す訳が無い。
もぞもぞとコタツ布団を這い出ると彼女は僕の携帯を覗き込んで
呆然としているようだった。おそらく失踪でもしたと思っているんだろう、
と僕は思った。彼女にはそんな思い込みの激しいきらいがある。
僕はしばらく黙って見ていた。と言うよりも言葉が出せない。
すると彼女は突然泣き崩れ、大きな瞳から大粒の涙をぽろぽろとこぼし始めた。
でも、僕はやっぱり声を出せないから、ずっとそれを黙ってみていた。
カエルって不便だと思った。
数分か、何十分か、
彼女の目はすっかり真っ赤になりずっと涙を拭っていた指は白くふやけていた。
嗚咽はまだ止まっていなかったが、彼女は立ち上がりそして地べたの僕と目が合った。
運が悪ければ踏み潰されて、運が良くてもベランダで凍死か。
と僕は思わず十字を切って覚悟をしたが、彼女は僕を手に乗せてまた泣き始めた。
そして彼女の涙が僕に体に落ちてまばゆい光が辺りと包んだかと思うと
僕の意識はどこかへ行って気がつくとベッドに横になっていた。
体は人間に戻っていた。
薄く目を開けるとやっぱり彼女は隣りで泣いていて、
今度は死んでいると思っているんだろうな、と僕は思った。
彼女の頭に手を乗っけて「おはよう」と眠たそうに言うと
彼女は途端に笑顔になって寝ている僕に抱き付いた。
万力のような力で締め付けられて首と、それと背中が痛かった。
2002/11/25
あれは忘れもしない十二年前のクリスマス。
まだ子供だった私はサンタクロースを信じていて、
明日のプレゼントを期待して幸せな気分でベッドに寝ていた。
僕は鈴の音で目を覚ました。窓の外はまだ夜だった、
その音はトナカイが喉につけているあの大きな鈴の音で僕の胸は高鳴った。
ベッドを飛び降り窓際に駆け寄る、鈴の音は次第に大きくなっていたが、
外はまだ真っ暗で何も見えなかった。
家の前の道路が見えないぐらいに雪が降っている。
やがて音は僕の所を通り過ぎ真後ろにきて、その音を止めた。
後を見るとどこから入ったのか真っ赤な服を着た体格のいいオジサンと
鼻の赤い大きなトナカイが立っていた。サンタクロースだった。
隣りには大きな白い袋が置いてある。
こんにちはッ、緊張しながら僕は言った。
サンタはゆっくりと笑って、優しい声でこんばんは、と応えた。
早鐘のように胸が高鳴る、僕は興奮を抑えられず
サンタの持っていた袋に頭を突っ込んだ。
しかし、袋の中にはオモチャは見当たらず、
中には大量の千切れた手足と飛び散った腸があった。
一番手前には男の子の頭が転がっていて僕と目があって、
僕は部屋の隅のゴミ箱に嘔吐した。
気がつくとサンタはどこからか取り出した斧を持っていた。
刃にはベッタリと血が付いていた。
サンタの顔からは柔和な笑顔が消え、
ゆっくりと近付いてきたトナカイからはむせ返るような血のにおいがした。
ニッっと意地悪く笑うように歪んだトナカイの歯にはこびり付いた様な血と
僅かな髪の毛が付いていた。
そいつの鼻が赤いが何でか分かるか?、先ほどの軟らかい声はどこかへ行き
擦れた低い声でサンタは言った。僕が分からないと首を振ると、
奴は下品に大声を張り上げて、そいつの好物はガキのハラワタなんだよ、と
楽しそうに笑った。
怖かった、怖くて怖くてしょうがなかった。一歩も動けないし息をするだけでも辛い。
サンタは嘗め回すように部屋を見ていた。「オイ、靴下はどうした?」
サンタが怒鳴った。僕は思わずハッとした、サンタが怖かったんじゃなくて
今の今になって靴下を忘れたことを思い出したのだ。
忘れた、僕が消え入りそうな声でそう言うとサンタは激昂し
箪笥とベッドの足が粉々になって空を舞い、斧は僕をかすめて壁に刺さった。
ベッドの上で動けなくなっている僕にサンタは岩の様な顔と
ギラギラ光る真っ赤な目を鼻が擦れるぐらい近付けてニターっと笑ってから
こういった。「坊主お前は運がいい、約束を守れば命は助けてやる」
僕には従うしかなかった。
二十年時が立った。
「それは・・失礼ですが、実際にあったのですか?」
神父は当惑と猜疑と好奇心に満ちた複雑な目で格子越しに私を見ていた。
黙っていることに限界を覚えた私は二十年の時を経て、
ようやく逃げ込むように教会の戸を叩いた。
私はあの時の「約束」として毎年サンタに手紙を送っていた。
必ず六つになる子供がいる家の住所を書いてだ。
そして私はその家の子供が必ずクリスマスに失踪することも知っていた。
だから教会へ来たのだ。
私はあの日から一日たりともあの目が真っ赤な二つの目が忘れられません。
私がうつむいてそう言うのを神父はただ黙ってみていた。
にわかには信じられない話だったしそれも無理からぬことだった。
私も頬はこけていたし、目も虚ろだ、正気を疑われても仕方が無い。
懺悔室にゆっくりと差し込む光はとても眩しくしかし酷く優しかった。
生きることが良心に押し潰され、私はサンタとの「誰にも話さない」という
約束を反故にした。これからどうなるかは分からない。
もしかしたら明日もない命かも知れない。
「でも、償いがしたいんです、できる限りの」私がそう言うと神父は
深くため息をつき大きくかぶりを振って頭を垂れた。
低くくぐ曇った声で、昔いやというほど聞いたあの声で、
神父は言った。「約束は守るもんだぜ、坊主」、さっきまで神父が
居たはずのその部屋には真っ赤な目玉が二つ、私を見ていた。
むせ返るような血の匂いが鼻をついた。
2002/11/13
Trick or treat!
お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!!
馬の形のいかにも高そうなノッカーを叩き
僕はできる限り上品に声をだした。
扉は音も無くスーッと開き中からは
目に痛いほど豪奢な格好をした中年女性が出てきた。
僕らが一斉に籠を突き出すと彼女は微笑みながらチョコとクッキーと
マシュマロを両手で数えれないほど沢山僕らの籠に入れてくれた。
僕らは口々にお礼を言う。ありがとうございます、ありがとう〜、
ありがとう。僕らは深々と頭を下げとてとてと走ってその家を後にした。
お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!!
激しく戸を殴りつけ、僕は限界まで声を張り上げた。
しぶしぶと言った風に扉が開き中からはみすぼらしい
格好をした中年女性が出てきた。
僕らが一斉に籠を突き出すと彼女はあからさまに苦々しい顔をして
硬い菓子パンと湿ったクッキーと何日前の物か分からないシュークリームを
僅かな数僕らに投げつけた。
僕らは口々に相手を罵倒した。死ねババアッ、貧乏人ッ、
悪戯してやるッ!。僕らは次々と凶器を取り出し、数分後中年女性は
動かなくなった。それでも足りなかったらしい若干名は
火炎瓶を取り出し家は瞬く間に業火に包まれた。
僕らは逃げるようにどたどたと走ってその燃え上がる家を後にした。
走って走って息があがっていた僕たちは近くの川原で休むことにした。
僅かに風が吹いてさっき豪華な婦人から貰った
チョコから甘いとてもいい香りがした。しばらくはみんなお菓子に
夢中で誰も口をきかなかった、みんながお菓子を食べ終え
残ったのは包み紙と食べかすとそして
硬い菓子パンと湿ったクッキーと何日前の物か分からないシュークリームだった。
みんな見えてはいたけど誰も手を付けていなかったのは恐らく
どうみても美味しそうに見えないからだ。
でも、さっきのお菓子だけじゃ足りなかったらしいトムは
硬い菓子パンを手に取り思い切りかじり付いた。
すると辺りは閃光に包まれ耳をつんざく凄まじい爆音が轟いた。
一瞬前までは喜色満面だったトムは上半身のあらゆる部位を空に撒き散らし
残った下半身は力なく膝をついて葛折れた。僕らはついさっきまで
トムだったものを服から振るい落とすことさえ出来ずただ呆然と
目を見開いていた。そして一人が叫ぶ「やってくれる、さっきのババア悪魔払いだ」
2002/10/31
風になるんだ。
アクセルを全開まで捻る。甲高いエグゾーストノートを響かせて加速するバイク。
浮き上がる前輪、制御を失ったバイクは空を舞いそして落ちる。
僕は死体になった。
火葬場へ運ばれる。ハイカロリーのガスで焼かれ僕は
僅かな骨と殆んどの塵と多くの灰になった。殆んどの塵は空へ散って、
その残りの僅かな骨と多くの灰と少しだけ残った塵は
はた迷惑にも近くの槁から撒かれ、そして僕は風になった。
2002/10/26
風になるんだ。
アクセルを全開まで捻る。
風を切る感覚と加速感、それらのエクスタシーに
包まれながら僕は窒素と二酸化炭素と僅かな酸素になって溶けて消えた。
2002/9/23
父が私の部屋を見て「ゴミ箱か」と言うので、
ここは私にとっての夢の島なのです、と私は言った。
2002/7/28