the TV series layer:07 story


「そっと貴方だけに教えてあげる。貴方が知ら無いだけで、この社会で何が起こっていて、何が進んでいるのかを…」

玲音の家の外壁には、大きな亀裂が走っていた。そして、そこからはチューブや電線が飛び出している。
玲音の部屋。相変わらず、NAVIに向かっている玲音。それを、ドアの隙間から覗いている姉の美香。美香の目は、空ろだ。それに気付く玲音。
「お姉ちゃん、最近変になっちゃった…。」
その時、NAVIのウインドウが警告を発していた。しかし、玲音はそれに気付かない…。

lain TV07-01 街の雑踏の中。一人の奇妙な男が、よろけながらフラフラと歩いていた。まるでネズミの様に薄汚いその男の背中には、大きなNAVIが背負われており、更に目にはゴーグル、耳にはレシーバー、手にも機械的なマニピュレーターが装着されている。ネズミ男は誰かに向かって喋る。
「俺は知っているんだ。ワイヤードとリアルワールドはリニアに繋がっている。俺は、何処にだって存在出来る。意識だけは何処にだって飛ばせられるんだ。
俺はこんな所に居なくても良いんだ。俺は、リアルワールドとワイヤードの垣根を取り払ったんだ。俺も仲間に入れてくれよ…。ナイツに!」

ある商社のオフィス。スーツ姿の若い男が、ビジネス用のNAVIを操作している。それを操作しながらも、色気漂う秘書と雑談を交わす。
しかし彼の操るNAVIには、怪し気な紋章が…。
「今度は、何をして遊ぶんだい…?」

あるボロ・アパートの一室。汚い…。埋もれるゴミの山の中に、一人の不格好な男が居た。薄暗い部屋の中で、NAVIを弄る男。その画面にも、怪し気な紋章が…。
「そうさ、俺はお前らとは違うんだ。」

あるマンションの一室。運送屋の配達員が、荷物を届ける。それを受け取る若妻。若妻は、配達員の青年が実惚れる程に麗しかった。しかし、その部屋の奥にはゲームに熱中する子供の姿が…。配達員の青年は、肩を落とす。
そして、その若妻が配達員から受け取った荷物にも、怪し気な紋章が…。
「ワイヤードは、リアルワールドと一緒なのよ…。」

学校にて。玲音は、独り呟く。
「リアルワールドなんて、ちっともリアルじゃ無い。」
そんな玲音をありすが呼び止る。
「玲音、大丈夫?最近また戻ってる。前みたいに私達と遊ぶのは嫌?」玲音を心配そうに見つめるありす。
「そんな事は無い。大丈夫!ありがとう、心配してくれて。」
「そう、良かった。私達、友達だから…」笑顔で、その場を去って行くありす。心底嬉しそうな玲音。

学校から帰宅して来た玲音。家の前に、二人の怪し気な黒服の男達が居た。目には例のゴーグルが付けられている。黒服の男達が話し掛けてきた。
「岩倉玲音さん。私達と一緒に来てくれませんか?無理にとは言いません。これは、御願いです。」怯える玲音。
「誰なの!?」
「私達と一緒に来て頂ければ、御教えします。」そう言いながら、黒服の男はゴーグルを外した。

lain TV07-02 玲音は、黒服の男達に車で、とある雑居ビルまで連れて来られる。そこには、「橘総合研究所新橋事務所」と表記があった。中に入る玲音。
怯えながらも中を見回す玲音。そこには、西日に照らされる空疎な空間が広がっていた。その中心には、分解された初期型の旧式NAVIに黒電話、そしてスーツ姿の中年男が腰を落としていた。中年男は呟く。
「やっぱり、こんな旧式NAVIでは駄目なのかね?もう、この年だし新型に代えるのも…。君の様に若ければ…。」そう言いながら、玲音の方に顔を向ける。
玲音は、その男に近付いて行きアドバイスをする。「ここを、こうすれば…」
すると、NAVIは瞬くまに起動する「Authorize!」。
すると、NAVIから男の声が聞こえて来る。
「あんた、レインか!?あんたもナイツだったのか!?そうか、知らなかった…!」その男の声は、雑踏の中をふらついていたあの異様なネズミ男のものだった。
「ば〜か。」その声は、居るはずの無いレインと会話をしていた。
「待ってくれよ。このあいだのガキ共を使った遊びは傑作だったねぇ。でも僕なら、もっと凄い事を思い付くよ。だから頼むよ、僕も仲間に入れてよ。君達、ナイツに…!」NAVIの前で、唖然とする玲音。そんな玲音を余所に、中年男は語り始める。
「ワイヤードには、リアルワールドの様な国境は無い。悪戯や悪ふざけが革命だと思い込んでいる阿呆達は、いくらでも居る。しかし、ナイツはそう言う者達とは、どうも違うらしい。」中年男は、玲音に顔を向ける。
「君が、どれだけ自覚的にやっていたのかは知らないが、君自身のワイヤードでの存在は極めて不自然なものだった。そんな君に対して、ナイツは特別な感心を抱いた様だ。奴らは、君を何かに利用しようとしている様だ。」中年男の鋭い眼差しに怯える玲音。
「あの…私…何を言っているのか…貴方、何?誰?」
「本当名前など知っても意味が無い。我々は、ナイツが君に接触しようとするのを、阻止しなければならないだけだ。それより、教えて欲しい…。」中年男は、声をつり上げた。
「岩倉玲音。君はワイヤードのレインと同一人物なのか?君は誰だ?」立ち上がり、玲音に迫る中年男。怯え、オドオドする玲音。
「君の両親は本当の両親か?君の姉は本当の姉か?君の両親の誕生日を知っているか?知らないのか!」中年男は玲音を追い詰めて行く。
「…君はいつ、何処で生まれた?全て、解らないのか…。」
「……」中年男に追い詰められて、その場に蹲る玲音。そんな玲音に、さらに中年男が語り掛けようとした瞬間…。
「あ〜、うるさい奴!どうでも良い事ばかり並べて、くだらない!」玲音がレインになった。ワイヤードのレインに…。中年男と、一部始終を見守って居た黒服の男達が、それに驚く。
「ワイヤードの玲音なのか?君は、デバイスが無くともワイヤードとリアルワールドの境目がグズグズと崩れつつある事を君も知っているね?我々は、それを危険だと考えている。」中年男は真剣な眼差しでレインに語り掛ける。
「面白いじゃん。」レインは、言葉で笑う。そしてそのまま、その場を去ろうとする。
それを黒服の男が制する。そして…
「危険なのは、君自身だ。」
「カールッ!」中年男が、そう発すると黒服の男は玲音を通した。
「彼女の言う通りだ。面白い事が始まるのだよ。黙って観ていれば良い。」中年男は、自身に満ちた声で言った。

lain TV07-03 雑踏の中、ネズミ男は歩き続けていた。その口は、未だ誰かに向けられていた。
「君たちは、デウスを信仰しているんだよな。僕も従うよ。でも、本当にワイヤードに神様なんているのか?僕には未だ信じられない…でも、仲間に入ったらもっと知る事が出来る。そしたら信仰だって持てるよ。」語り続けるネズミ男。その目に、数人の若者の姿が映る。
「君達なんだね。来てくれたんだね!?僕を迎えに…」ネズミ男の目には、あの若妻の顔が映る。そして…。

夜道。激しい車の往来がある、その脇の側溝に一つの屍があった。その薄汚れた姿は、あのネズミ男だ。その目には、怪し気な紋章。ナイツの紋章が…。

 to Be continued 

TV series listへ/メインへ