空色の言葉




91街の風景

君のこと考えてもいいかな?
もう少しだけ側にいさせて

明日は晴れると思う?

僕は明日もうこの街にいない
君に問いかける


92愛の気持ちほど報われない

君はいつも泣いているね
ぼくが見るときはいつでも

こんなに君が好きなのに
その気持ちを
君は笑顔で打ち消すんだ
あの男の名前で

僕は静かに冷たい壁に寄りかかり
君の幻想を想う

君がたとえ振り向いてくれなくても
せめて幻想の中だけでも
この僕の気持ちを抱きしめてくれ


93選択

わたしは選べなかった
あの時あなたを
なぜ去ってしまうの?
あなた程大切な人はいなかったのに
あの時どちらを好きかではなく
どちらを愛してるかって
聞いてくれれば良かったのに

どんなに自分が頑固か知ってる
自分でも自分をコントロールできない
彼でさえも
あなただけだった
わたしを変えられたのは
素直に尊敬して従えたのは
あなただった

恋ではなかったの?
彼みたいにどきどきしなかった
ただ限りなく安らぎがあって
あなたといることが自然だった

あなたがいなかったら
きっと今のわたしもなかった

もしもこの結果が見えていたら
あなたが去ってしまうと知っていたら
わたしは何度でもあなたを選んでいた

だって私
あなたがいないと自分が分からない
自分を失ってしまう

もうあなたみたいな人は見つからない
今はこんなに心寒くて
震えている
自分でいるということも忘れたまま……


94決意

もう一度だけあなたに会いたい
私はスーツケースを片手に持つ

会ってどうなるのか知らない

けれど今のわたしは
ただ自分を見つけられない
あなたを失ったときに
私自身を失ってしまったから

「ごめんなさい」
部屋を出るときに一度振り返る

無人の空間と
書き置きのメモが
悲しかった

わたしは目を閉じて
背後で閉まるドアの音を聞いた

涙を流すほど心は痛かった


95誓いから始まる(sea)

あの日誓いあった約束を覚えている?
強くあなたと交わしたわ
私は覚えてる
あなたは恋い焦がれるような視線を私に向けた
その視線が響く
わたしの心は痛く
金縛りにあったみたいに動揺していた

何があっても待っているから
私はその時決めた
ずっと好きだったけれど
またその瞬間好きだと気づいてしまったの

手にしたオルゴールの音色を
いつまでも聞きながら
いつしか永久の眠りにつく

忘れることはない
覚えていることしか私にはできないのだから


96眠れない夜に(sea)

私は時をさかのぼっている
目を閉じて虫の音を聞いていると
何故だか悲しいくらいに懐かしい
耳に残るその音
かよわいその音色が
何かを思わせる

波……?
静かな海?

記憶は古代へと飛んで行き
私は古代の海の流れを泳いでいる
人魚の体に変化している

もっともっと後
もっともっと今に近づいた時に
泳ぎに行きたくてうずうずしている
……あの音はオルゴールかしら?
突飛に思いついた言葉には
一体何の意味があるの?
何も分からないまま時間は進んでしまう


97海の記憶(sea)

魚になった自分を想像してみる
意外と好きになれそう
人魚のように華麗に
海や時すらも泳いでいけるかしら?

私は心の片隅に響くあの音色に
聞き入っている

小さな桜色の貝を合わせた音のよう
透明で純粋で優しい
この音がわたしの心を捕らえつづける

「愛している……」
急に唇から生まれた言葉は
魔術のように放たれる

わたしは立ち尽くす
なぜならオルゴールの悲しい音色が
まるでその言葉のために
奏でられているようだから

そして真実は記憶を取り戻す
オルゴールの記憶がゆっくりと回りはじめる


98その瞬間(sea)

気づいていた
隠された心の記憶に
わたしの心には
もう一人のわたしが住んでいる

まなざしは懐かしく風景を映し
崩れそうな衝撃が襲う
わけも分からずに涙が止まらない
自分を揺らすもう一つの記憶を
わたしは持っているから

自分のこと何も知らない
ずっと生きているのに……

夢の中のわたしはいつも人魚
熱い思いを抱いて
男の人魚を見つめる
その瞳の中に
海を見る愛しい気持ちに胸をかき乱され
いつまでも待つと約束する

真珠のオルゴールのプレゼント
物悲しいメロディ
真実の想い目と目で誓い合った
あの人は行ってしまい
そして戻って来ることはなかった
海に渦巻く火は
記憶から消えることはなかった

皮肉な気持ちを抱えている訳分かった
あの人は人間に殺されたのに
わたしは再会を果たすために
人でいなければならない
生きつづけなければならない
逃げることは許されない

あの人はどこにいるの?
何も分からないわたしは取り乱し
あの人の名だけを呼びつづける
わたしは待っていた
生まれ変わりながらずっと……この記憶を頼りに
狂おしい年月
あなただけをずっと待っていた

扉はいま開かれた
そしてその先に待っているのは
約束された未来だろうか
暗黒に歪んだ過去だろうか


99綴られる物語は(sea)

物語は終わる
今始まりを迎えながら

私は冷たい水に足を沈める
海水を一口含み微笑む
昔と変わらない味
感触温度

つい振り返ってしまう
そこにいつもあなたがいたから
あなたがわたしを見ている気がする
心が熱くて切なくて痛くて
涙しかでないのに
わたしは果たされない約束に
踊らされているだけなの?

わたしの記憶は人魚の記憶
きっとこの人間の人生を奪ってしまう
足元に転がっている小石を拾う
丸くて白くて
それはまるで真珠のように輝いている
あのオルゴールを見つけたとき
なぜ衝動的に買ったのかすら
気づかないでいたなんて……

わたしは次第に決心する
過去を振り返るのはやめよう
長い運命に終止符を打とう
過去に縛られ続ければ
少しも未来になんて進めないのだから……

オルゴールは決して捨てることはできないだろう
けれどもう
海へ来ることはない
わたしは静かにきびすを返す

それでも忘れないで
運命の糸が途切れることはない
バランスを崩したわたしは
海に体を転落させる
水と泡に溺れもがくわたしは
夢見続けていた抱きしめられる感触に動きを止める
こんなことあり得ない
あの海の中で
あなたとまた巡りあうなんて……!

はじまったのは人間と人魚の恋
遠い遠い異国の物語のように
そして果たされたのは
遠い遠い昔の真実の約束だった

今オルゴールはゆっくり音色を止める


100変化

なにもなかったのは昨日までの私
その時あなたに会えるなんて思ってなかった

偶然に奇跡が重なった気分

あなたを一目見て
そのまま分かってしまった
この瞬間大切なものが出来たことが

自信がなくて弱気だった
自分が何をしていいのか分からない
それなのに時は進むから
怖かった
このまま何も出来ない気がして……

わたしは生きていない気がして……
そうあなたに会うまではそんなこと思ってた

あなたが知ったら何ていうかしら?
瞳は意志を秘めてまっすぐな視線
鋭いその視線は
決してわたしにはできないから
その目はわたしに力を与えてくれる

どんな声なの?どんな話し方をするの?
知りたくて胸が痛い
あなたの瞳をまっすぐ見つめたい

それしか頭にないのに……
それだけが出来ないなんて皮肉
いつでもあなたのことだけ想っているのに


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