空色の言葉





111ギモン

好きな気持ちは
じんわりと
しみこむように強いわけじゃないのに
一瞬土砂降りに合う
この一瞬の衝動はなんだろう
まるで理性のかけがねが外れたみたいに

自分の気持ちに反問しても
返事一つない無音

不意に言いたくなる
あなたが好きで
あなたに会いたくて
あなたの側で抱きしめられたい

次の瞬間は炎を吹き消したように
消えてしまうから
混乱の迷路の入り口を
見つけてしまうことになるんだけど

炎はすぐに鎮火して
玲静な気持ちが心を覆う
幾重もいつもセーブして

でも空けてみたこの心の
本当に求めているものは
分からないのよ

あなたとの別れかもしれない
だから不安になる
自分の答えを確かめたくない

無理にしなくていいの?
逃げるな?

わたしはどちらを信じて
この炎の正体を
消さずに確かめられるだろうか

その時求めているのは
本当にあなただろうか


112草原

何もない草原にただ座っている
何も追わずに穏やかにただそこにいるだけ
そよぐものも暖かいものもない
手には冷たい土を握りしめている

何がしたいか考えても
すぐに緑色へと染まってしまう
目の前の鮮やかさに視線奪われたままで……

何もないのに存在感が響く
主張の声が聞こえる
この緑は何もない緑じゃないって
気づいた

気づいていたけど主張に気づけなかった私
こんなに存在しているのに
身近すぎて分からない
わたしは草の香りに涙を流す
理由は気づいている
言葉にはできないけれど


113妖精(でも誰のものでもない……)

あのね
耳もとでささやく声
小さな小さな妖精
わたしの妖精はずっと側にいる

季節の変わり目に色を変えて
ちょこんと肩に乗っている
ときどき首をかしげているけれど
わたしは知らないふり

妖精は何もしてくれない
ただ知りたがるだけ
世界をいつも見ていて興味を全てに向けているだけ

たんぽぽを傘にして
雨を飲んで
蟻とお話してる
することはそれだけ

妖精がいてもいなくてもわたしは季節を感じ
いままでと同じように起き眠るだろう
同じように歩いて同じように座る

けれど同じように季節を見ることはできない
同じ空と自然は感じられない
心の和みも飛んでしまう

妖精はわたしの肩にいる
毎日毎日
わたしは妖精がどこかにいかないよう
お気に入りの歌を今日も歌う
リズムに合わせ踊る妖精を見て
安心して泣きたくなる


114初夏

季節の風が吹く
もうすぐ夏がやってくる
風土の風心地よく

緑の大地を走り抜け
田んぼの濁った水には
静かな風紋が浮かんでいる

小川の澄んだ水
駆け抜けると
後には日の光きらめく水のざわめきが残る

鳥たちは風追いかけて
にぎやかなそれでいて安らぎのさえずりを奏でる

雲は大きく膨らみはじめ
風を通しながら入道雲の形になる
まだ暑くはない土の上で休息しながら
遠くの木陰を見る

わたしには見える
夏の日差しが
深緑の葉と葉の間からさんさんと照り
木陰で休む人影
子供たちが悲鳴を上げながら
水をかけあう姿が

初夏の風は暑い季節と
安らぎの空間を予感させ去っていった


115雨音

雨の音が響く
しずかに何かに染みていく
上手くは言えないけど
ささやきを連想させる

晴れの日が明るい笑い声なら
雨の日はおびえたささやき
そしてそれを聞く私は
不安になる

音は弾んで綺麗
弾いた雫はどこかへ飛び
きっとかえるのシャワーになる
明るい雨音なのに
どこか不気味に静かなのは
なぜだろう

ただ雨の音が響いて
人が誰もいないみたいに……
外に出たくなる衝動と共に
濡れたガラス窓を見つめる
涙をいくつ流しても
ガラスの雫は泣き止まない
それが恵みになるとしても
わたしには憂鬱な雨


116光こぼれる……

暖かい冬の夜は
光がにじむ
ぼやけてこぼれだして
水に溶け込んでいく

満面の星は一つずつ流れて
その瞬間を感じると
乾いた寒さにやわらかい風を受ける

夜の光は未知
闇は本当の闇ではなく
わたしもあなたもほんわりと映る
空も地もうずうず動きだしたくて
わくわくした気持ちが伝わってしまう

伝染した気持ち
光の主は跳ね上がる
溢れだした光は
わたしや空や自然の心なのかもしれない
暗い夜にいても
不安がない
いつも光が側にあると知っているから

かすかに見える
かすかに耳をくすぐって
まぶたにすっと優しい眠り薬を塗る


117スノーランド

雪降る国で
暖かいカップを囲む手
アイスキャンデーは外にあるよ
透明なアイス
味は後から考えられる
どんな味にもなるキャンデー

暖かいカップには真っ白な
振りたての雪のようなシャンとした色の
ホットミルク
外では冷たい綿菓子が降り始めた
雪の子がはしゃいで
あたりを食べ歩くんだ
堅く握れば
ふわふわのボール
当たっても痛くないから
雪の子たちはキャッチボールで遊ぶ

雪明かりで
夜は来ない町
暖かい部屋には暖炉がこうこうと燃える
老人は部屋で暖かいミルクを飲み
雪の子は外で雪とじゃれる
この町はいつも雪
雪だるまが家を囲み
木造の家はきしきしと雪の重みに揺れる

怖いことはなにもないんだよ?
さあ君たちもここにおいで
老人になりたい者は外の景色を楽しみ
雪の子を望むものは外で駆け回ろう
スノーランドはいつでもここに
雪の好きな人たちの町


118癒しの水

静かにこの心を水に沈めよう
ゆっくりと優しさがよみがえり
軽く軽くそこに沈んでいく

痛いことや傷つくことに疲れた
ここから先は
休息の時間
自然は阻まずに受け入れる
静かな星が海の底に見える
青白い星は緑の星を強調して
互いに安らぎを
増していく

悲しいことは消える
辛いことも目を閉じればそこにない
心は浮いている
軽やかに癒していく

水の柔らかさに触れていよう
明日がつらくても明後日は分からない
苦しさと痛みはここで取ろう
君が苦しまなくてもいいんだよ
目を閉じて何も考えずにいて

願いを込めて水底を覗き込む
明日は陽の明るい光が
緑と優しい木漏れ日が
君を包みますように
変わらない笑顔がそこにありますように


119故郷

故郷に戻ると泣きたい
草のざわめき水のせせらぎ
風の呼び声
なつかしい色大好きな風景
愛しい人

何もかも踏み入れたとたん過去へと戻し
時間の逆流にまきこまれ
郷愁の念がわきあげては胸につきあげる
ここにいるだけでいい
この風にあたるだけで何かが変わる

上手くいかない
苦悩ばかり抱え苦難に押しつぶされる
この空の茜色を見ると
戻れる気がした
無邪気に喜べた自分
花のあまい香りに笑う自分
はしゃぐ遠い記憶の自分

今はもう持っていないけど
抱きしめたい
この風景とこの故郷の記憶と共に
私のこころの中に来て
涙だけじゃ上手く表現なんてできないから
全てを教えてくれた故郷を
こうして見る
またわたしは訪れるだろう
心の中に故郷を求めて
終わらない旅は続く


120雫(水)

雫の音が聞こえる
小さくでも仔細に
雫の音が途切れる
ときどきでも澄んだ音で

雫の声が聞こえる
わたしに向けてささやいている
雨が地におちるまで
雫が葉から滴るまで
どうして呟くのか
なぜわたしには聞こえるのか

声は優しく弾み
しゅるしゅると降る雨に
ちょうど重なる
それは音楽で
わたしは安らかに目覚める
雫が落ちれば
それは木琴で
楽しく弾みながらささやく声に
にっこりする

雫には意志がある
感じ続けていること
長く伝え続け
わたしはもう染まっている
雫の意志を
伝えなければならない
この音楽のような声を
あなたはいつも聴いているはずだから

気がついて
そして応えて



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