空色の言葉





121星があるなら

手を伸ばしても掴めない星
どんよりと空気は流れ
辺りを圧縮する
夢の中で見たものは幻などじゃない
わたしははっきり前を見て
手を伸ばす
近くに見える星
煌きは響きを呼び
響きは音をつたえる
もの悲しいバイオリンのように
静かな空は
一瞬にして反転する

様々な音に耳を澄ます
大きすぎて全て捕まえられないけど
安定する響き
伝わってくる
わたしの中に
希望が燃える

星へ続く道を見つけよう
幻などではないから
そこに実体があるのなら
どんな方法を使っても
行こう

わたしは静かに想いをはせる
夢見心地のぼやけた視線で
手を伸ばす


122涼しさの素

渡っていた川
清流のながれに
立ち止まる
冷やされた水が
足に触れる
流れに逆らってゆくと
飛び跳ねた水の玉が
ひんやり肌を冷ます

石は眩しく水に沈み
陽は反射して
水のなかで柔らかな暖かさに変わる
夏の日差しの中
ここだけは
涼風の集まる
静かで穏やかな気
すくい上げた水は
冷たい氷のようで
わたしの手の中で
陽に溶けてなめらかに浮かんでいる

思いきり投げ出せば
その水の玉たちは
涼しげな霧に変わって
全身に降り注いだ


123呼び覚まされる記憶

吹き荒れる嵐
鳴りやまぬ雨
豪雨と共に流れるのは
満ちていく疑惑
何かを壊し
進んでいく
誰も止められない
落雷の響きは天の裁きの再現
記憶に呼び覚まされ
恐怖を隠せない

響きわたり拡大する音
豊さへの疑い
自然への不信
古代の伝承の一節を思い出す

そのすりきれた紙切れに
呼ばれていく
引き込まれる

ただ鳴っているんじゃない
きっと呼びかけている
わたしは今気づき
その音の意味を考え始める
遠い昔のように


124青の草原

さみしげにこぼれ落ちる水滴
青の草原が目の前に広がる
藍色の草で覆われた草原が
現れる

数えきれない水滴が草をやさしく滑り落ち
飛び下りた先は
底が透けるような水の広がり
沈む直前響かせた音は反響して
楽しげなリズムを作りだす
時に悲しみを……
天から明るい日ざしに紛れて
ポタポタと舞い落ちてくる雫
虹を作りながら精霊のように葉を濡らし
再びけがれのない水へと沈む

日に照らされてきらめいている姿には
輝きだけが強く残る
落ちても仲間のいること
再び戻る確信があること
悲壮な想いは数えきれぬ程前
放り出してしまった
たまにカケラが水滴にまじって落ちてくる
悲しみを伝え
それでもこの楽園では
長く続く感情じゃない

歌いだしていた
知らぬうちに
あの透き通る水の深くへ
舞いつづけたい
冷たいその清らかな水にぬくもりが伝わる
暖かい仲間が
周りにいるから

一瞬紛れ込んだ楽園
土へと落ちていく自分
悲しみはない
信じられる世界が今出来たから


125霧の中で

見えない霧を手さぐりで探しあててる
理由なんてなくて
進みながら
溶けるようにこぼれ流れる水滴を見る
じんわりと響きだす
絹のようになめらかで白い水の筋は
全身を覆いつくして
いつか
何もかも無くしてしまいそう

霧を見ていると
無を感じる
そこにはあるのに見えない
見えないものは無
わたしは何も掴めない
本当は何もないのかもしれない
この先の虚無を
知らないのはわたしだけかもしれない
恋い焦がれるように霧を見て
その儚さに共感してる
包まれる度に囁く天使のように完全な声に
背筋が寒くなる
それでも美しい色と感覚は
引き返すことを許さない

わたしは知るだろう
この霧の先に何があるかを
知ったときに全てが終わるとしても
知るだろう
目の前に映る光景よりも恐怖よりも
引き込まれる感情が側にあるから
何もないようで存在する美しい霧の
やさしげなまなざしが
心にパラパラと際限もなく
積もりたまる


126夜に輝く何か

夜の暗がりに震える
何も感じられない少女
明るい丘に登って
月明かりを浴びながら
ぼんやりとかかる雲を見る

この新鮮な空気に
変わるものが何かあるのか
考えてはため息をつき
繰り返される毎日

怖がって見ていた闇
行動もできなかった
あの頃の少女は
私を羨ましがる
今も変わりはしない
感覚も実感もない
実体はあっても
本質はない

動かないもの
あの空のように
月のように
姿 変わっても変わらない本質
希望を与えるもの

少女は望んでいる
変わらずにずっと望んでいく
闇から決して目をそらすことなく
果てしない闇に包まれながら


127迷い込んだ夜

露があふれる葉の上に
聖なる光の注ぎ込む夜
薄霧が柔らかく無限のように
おとぎ話を思わせる

霧に包まれた全ての色は曖昧で
それでも手をつなぐ親子の暖かさは変わらない
月の光は幻想の階段を映し出す
昇ってはいけない
ただ夢想するだけ
それでもその景色は瞳から永遠に消えない
思いは永久に止まってくれるから

この一つの夜は誰にも掴めない
けれど数えきれぬ夜を超えて
思いは語られるだろう

幻想と霧の世界へ
迷い込んでしまった夜の物語は


128いかずちの記憶

見上げた空に光るもの
強く弱く
時に静かに

そんな光は
私を不安にさせる
音に自分を失う

何故こんなに響くのか
この音と共に
呆然と立つばかり

落ちてくる水たまに
意識を戻す
その時見た雷に
悲しくて涙を流す

こんなに激しいのに
圧倒しているのに
その光を見ていると
悲しくなる


129明日の光

静かに空を見て
その黒さに目を見開く
未来が見えることはなかったけれど
空を見ていると
その輝きを含んだ色に
明日の希望が見える気がした
夜の色はお守りだった
次の朝を保証してくれる

藍色にすみれ色に紺色に
わたしを包み込み
淡く光っていたのに

今見ている夜は黒
覆われてしまいそうで思わず目を閉じる
心がこの黒を呼んでいるのか
閉じた瞳の中は更に暗くて
明日のお守りは吹き飛んだ
時間を忘れて立ちつくす

それでも終わらない今日はないから
輝かしい明日の光が夜を淡く消していく
わたしの目の前で
今日を明日に塗り替える

黒の夜が明けない気がしてた
見失ったと想った
未来も明日もわたしも
朝日に歌を捧げたい

忘れていた
どんな色の夜も明日の光が消し去って
希望の色はいつの朝も変わりはしないこと

心の黒に光が射しこむ
淡い色に変わっていく
もう黒い夜は訪れない
この輝く朝の色が今のわたしのお守りだから
その色は強烈でどんな闇も希望に変えるから


130知らない場所へ

見上げた雲は知らぬ間に明るい赤
私は驚く
木々の緑と夕日の色が
どこか異次元に迷い込んだように
錯覚させるから

優しげな緑も
素通りしていく風も
どこか異質で
耐えられないくらい渇望してる
ある風景と似てる
それは心にしまっていた
永遠の場所で
その場所に向かい私は生きている

振り返ると手に触れたのは
つかめない風
目を細めては
緑と赤と光の空間を見る

わたしがここにいられるなんて
偶然と奇跡
帰りたかった場所へ
一足先に踏み入れている
この安心感は
その場所に着いた時
何倍にも膨らんで
私を包んでくれる
安らぎのあまり
思考が止まる

思わず座り込むと
私は木を仰ぎ
夕日を浴びる
時間が続く限り……



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