空色の言葉





141開けなかった扉

その扉を開けよう
先に何が見える?
透明な扉は消え
後ろにはもう何もない

風はすみれ色に吹き
澄んだ香りでわたしを包み
通りすぎる

無限の花々は
咲きほこり
こぼれだすように
溢れている

その扉を開けた時
始まった世界
毎日眺めていたのに
開けたことはなかった

目の前にあるなら
開いていきたい
空色の窓も土色の引き出しも

新たな自由の空間は
私に薄く
幸せという名の風を送りだす
七色の風を使って
微笑みかけたわたしのくちもとへ
そっと羽根のように触れさせる


142雨に触れて

暖かな雨
閉じた瞳に感じたのはそれだけ
夏の蒸し暑さは
不快な汗をもたらす
そこに流れ落ちる雨は
なお憂鬱に気持ちを塗り替えるはずだったのに

音も優しく降る雨は
いつまでも聞いていたい音楽のよう
ハミングしようとして
音階がないのに気づいた

待っていたバスは
予定通り発車して
外を眺める瞳は
どこか虚ろだと
他人事のように感じていた
雨の音が聞こえる
窓を通して力強く
はっきりと
柔らかな流れなのに
強さが確かに伝わってくる

降りたバス停で
走ろうと思い止まり
ゆっくりと夜の藍色と共に歩み出す
雨は変わらず触れ落ちて
急ぐ理由はどこにも見当たらない

歩きながらずっと思っていた
夜と雨はなんて違和感がないんだろう
わたしがここにいるのが当然のように
穏やかで理由があって
ずっとここで立っていたいんだ


143カーテンが触れる時

夢のような朝霧が
幻想か真実か
カーテンのように薄く
わたしの中へと揺れては
かすっていく
なんどもなんども
止まらずに
優しい仕種で

朝の香りがたちこめて
かすかな薔薇の香りがする
くすぐられると思い出す
こんな朝に誓った時を
何度も朝を逆上って
わたしはあの朝へたどり着く

光が眩しくてくすぐったい
頬に触れた感触はカーテンのように
暖かくて柔らかで
不意に目覚める目を開けた時に
はっきりと幸福を掴んだ気がした
説明できそうな気がした
何がしたいのか次にすべきことを
溢れ出す想いはどこへぶつければいいのか
私は分かった
夢は何か
私は求めていた
知らないから知りたかった
そのレースのような日差しに
全てを思い出した

そう知らなかったんじゃない
思い出せなかったんだ
ずっと夢は胸に置いていたのに
その場所だけ見向きもしなかった
心の中ではなく外ばかり見ていた

その朝へと戻った朝
見つけた夢を失っていた全身は
レースのような朝霧に記憶を取り戻す

今度は捕まえていよう
いつも側にあるのに
気を抜くと見失ってしまう
時と共に薄れかける気持ち

それでもそんなに大切なものは
他にないのに


144冒険

わたしに聞こえる約束は
偽りだろうか
緑が揺れてわたしは冒険に出た
暑さの中を水筒に助けられながら
一人で出たその冒険の気持ちは
どんな言葉より甘い
いつも歩いていても
違う空間に続く道に変わる

手をかざしては
手すら透き通らせる光を眺める
暑さよりも熱い想いは
わたしの中で生まれている

約束じゃなかった
自然に生まれたことだった
わたしは目覚めの朝のように
どんな空気より新鮮な風を吸った
興奮が爆発する
この気持ちはもう止まらない
どこまでもいつまでも何かが続く

わたしは希望だけ見ていて
それを疑いはしなかった
今は緑揺れても
冒険にでない
約束じゃなかった

でもぼんやりと思い出す風景がある
明日が希望と信じていたその時に
戻る時がある

約束はなくても
好奇心溢れる時は来る
その時冒険の扉を開いても咎める人はいない
一歩踏み出して分かる懐かしさが戻ってくる
どんな場所に向かいたかったんだろう
あの頃希望に燃えていたわたしは
どんな場所を目指していただろう
そして今のわたしは


145森

静かに座っていると
森の鼓動が聞こえる
生きていると知っていても
風に動くざわめきに
光に揺れる木陰に
ヒラリと揺れ落ちる葉に
目で追いながら驚いている

生きているから動いていて
主張して
降り注いでいるように感じるから

川の水の音が耳に流れる
その音楽に耳をすませながら
森の真ん中で見上げている
青い空へ届こうと
みずみずしく元気に伸びている
木々と取り巻く澄んだ風を

何もかも忘れさせてくれる
この大きな癒しの空間は
未来を見ているように緩やかに風に揺れて
目を閉じたわたしに
包み込むように語りかける

抱きしめたくて衝動的に手を伸ばすと
変わらず新鮮な空気をつかまえる
半ば癒された心で照れ笑いして
瞳閉じたまま草の上に倒れ込む
手を大きく広げて綺麗な森の色を楽しみながら
このまま朝日が昇るまで眠っていよう
明日がどんな日でも今は構わない
ここにいるだけで自分を確かめられる
わたしがわたしであることは
この森が教えてくれる


146白兎

あなたに贈りたいものは
たくさんありすぎて
選ぶことができない
こう言おうと思ってた
そんな言葉頭から飛んでる
抱きしめたいと思ってた
体さえ動かない

ただずっと思い焦がれていた
恋のように
あなたの存在が励みで
今はもうあなたには会えないけど
抱えてきた想いは
限界の重さで
わたしの心に閉まってあるよ
贈りたいものはたくさんありすぎる
幸せを感じて欲しいから

ただ一緒にいられた
あの時を取り戻せたら
あなたにもっと与えられたかな

あなたのこと忘れたりしないよ
何もないけど
この記憶をあなたと分かち合う日まで
ここで頑張るから
あなたと会えるまで負けないから
わたしはあなたの全て
忘れられない大事な存在だった

これからもそうだよ


147童話

星から降る雪は
金色に光って
寒いけれどはっきりした空気の中を
くるくると舞い降りる
雪を覆う金のまたたきは
幻想的で
月の光を浴びながら見てる私は
特別な招待券を手にいれた
いつまでも降りやまぬ雪は
星と月のきらめきに
踊るように回りつづける
物語の中にあるような
レンガの屋根に
やがてたどりつくだろう
そして夜風を食べる夜の妖精たちが
柔らかな寝床にと見つける

明るくて眠れないと
不平を言いながら
それでも幸せそうに
暖かく包まれながら
幸福な夢を見るだろう


148雨粒

わたしの目の前に広がる水は
灰色の空からすべり落ちる
なんどもなんども巡り
わたしの手のひらにいつか落ちる
平凡なわたしの手に
古代の水滴が落ちる
膨大な時間を流されていた
駆けめぐる歴史を見ていた

それでも何も語らずに
あまやかなリズムを響かせて
落ちてくる
そして全てをぬらしていく
わたしの手からすべり落ちた玉は
ポツンと土にしみこんだ

古代まで思いを馳せた思考
手のひらに落ちた一粒の雨を
いつまでも忘れることはないだろう


149忘れざる色

ゆるりと流れる雲に
全てを忘れた
視線は動かずに
ゆるやかな輪郭を描く白に
うめつくされていた

青が好き
あの青の壁紙に
やさしく浮かんでいる
白がすき

何も言ってくれないけど
言葉も通じないけど
わたしはただ立っているだけでいい
ここで見ているだけでいい

好きなんだ
どんな日でも
空と雲は
わたしの幸運なんだ
いつも心で想ってる
どんな時でも
忘れたことは一時だってない


150ただ一面の空

晴れた空は
何かを映す 透明にリアルに
きれいに透かされた色は
わたしの心を暖かくする

どんなことでもいいの
何かが起こってくれれば
何も起こらなくてもいい
この空の青に見つめられていたら
この空の雲を飽きもせず眺めていられたら

大切なものってあるよ
どこにでも
わたしにはいつも空があって
秋の空は深い深い海の色
深海に潜りこんだ
その深いぐんじょうが
わたしの目を覆い尽くす

大好きだよ
この青い空が
何も説明なしで
みんなが共感してくれる
この美しさと安らぎが


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