空色の言葉





171一歩先

道は開けても前へは進めない
ごめん

あなたが待ってくれているの
見えてる
いつも笑顔でわたしを見てる
急かすこともなくゆっくり芝生に座って
花に微笑んでる
一歩踏み出せば
すぐたどり着ける

一緒に笑って
時ははずむ
あなたの明るさに
わたしはひきこまれる
だから進みたい
あなたといたい
でも前に立ちはだかる自分に勝てない
大きくもなく強くもないのに立ちはだかる
拒否はできない

できるのにわたしはまだしていない
もう少しだけ待って
いつかその芝生に並びたい
待っていて
変わらない笑顔で
自分の壁を乗り越える時を
わたしは信じていたい


172多面性

知らないことが多すぎて
前を見ていられない
見るもの全てが新しくて何も記憶できない

世界は初めからこんなにたくさん満ちていた?
わたしは心に問いかける
いつも何もない
平凡な時間だと思っていたのに

今は時間さえ感じない
昨日も明日もないくらいに
瞬く間に時間は過ぎる

単位なんてわからない
幸せの単位なんてない
でももしあったら
どんな風に目に見え変わっただろう
懐かしさも希望も好奇心も
捨てていたのに
色をつけて取り戻した心と時間
あの止まっていた灰色の毎日は
今進む
光満ちた時間に消されていく

その時止まって見送るはずだった
味のしない食べ物を食べて
何も感じない感情を通すと思った
前によぎった景色を見るまで

灰色の生き方を
永遠に続けていくことはできない
一瞬の鮮やかな色と感情に
動かされる
前に進む
明るさに憧れる
世界は暗いと信じるくらい
明るいと感じ通すこともできる
陰湿で希望がないと信じるくらい
快活で全てに優しさが宿ると感じられる
世界は変わる
きっと見る人の心によって変わっていく


173崩壊中

何かが欠けると何も戻らない
そんな気がして……
前を見続けている
何かを見落としたくなくて
もう欠けてガラガラなのに
諦めたくはない
きっと前には何かが見つかると
ただ夢想しているだけ

精神も心も崩れた後なのに
まだ感覚があって
いっそ何もなくなってしまえばいいのに
夢は見続けられない
目を覚まして
悲鳴を抑える手

崖から落ちる手前で
何かが手をひいたんだ
完全な崩壊はせずに
まだ宙にぶらさがっている

言葉もわからず
涙も出ず
でも相手の表情は見える
現れる感情も全身に響きわたる
戻りたい
壊れたい
どちらかにして
こんな中途半端は耐えられない
病むまでの苦しみから
どうか解放して


174ふと止まる時

何もなかったなら
別に求めることもなかった
こんなに努力して
ほんとうは何を求めていたのか……

ふと途中で気づく
それまでは知らなかった
時間は過ぎて
気づくまでの時間も
取り戻せない

必死に動き
自分が正しいと思った
この行動はきっと
自分の求める何かにつながると思っていた
でも明確じゃない
精彩じゃない
相手に聞かれても説明できない

泡の形を描いていた
画用紙に描こうとしてた
変わっていくこともみないふりで
ただ丸に近づけて描いていた

正しいことをしたと信じさせて
いままでの時間は取り戻せないから……
これからの時間も分からなくなるから
自分をかきむしりたくなるから

わたしは止まることはできない
もう遅すぎる
わたしの人生は一本の道で
どうなるか分からないれけど
この道を進むしかないから


175待ちぼうけ

全てを壊してしまいたい
心がだめになりそう
何も変わらない
変えたくないのに
本心は知っているのに
縛られる逃れられない縄に

何をすべきか
答えは耳でささやいてる
いつも決断しているのに
実行しない

一言自分の言葉で
言ってみたい
自分を伝えたい
変わらずある不安も全部
ためてきたものはもう重すぎて
支えられない

曖昧なままの答えも
きっと次の角で見つかる
わたしがこの重しを投げ出すときが来るなら

まだ明日は来ない?
待っているだけのわたし
進まないわたし



176初め出す人

虚無の時間は続いていく
考えてみたら
虚無以外の時間を
見つけるのは困難だ
わたしの心は張りつめて
でも緊張ではなくて虚無

何もないことに恐れを抱いて
でも何もせずに
だらりと外の風景を見る

夢が見える
外には無限の動きがある
人は優しく笑っていて
自分にないものを
みんな持ってる

バカなことを考えている
自分にないものって何?
わたしは何でも持ってる
努力の言葉も知ってる
こうしてただボーっとしてて
何か手に入るっていうの?

でも気力がない
悲しいくらいにひとり
何もできないから
誰もいない

逃げるのは許さない
心の声がささやく
密かにでもしっかりと

分かっている
わたしは逃げはしない
逃げられないことを知っているから

立ち向かえとは言わない
だけどできることから始めないと
このままじゃ変わらない

できることから?
ゆっくりとでも
自分の変革の光を
この濁った空気に
新鮮な活動の香りを

さあ窓を力一杯開いて
外の空気に日の光に胸を開いて
深呼吸して
外へでかけよう
そこが始まりだと
知っているなら


177光明

明るい光に焦がれて
考えつづけている

僕にはそれがないけど
君は知らない
君は憧れをこめて僕を見るけど
本当の僕を知るはずもないのに

君の手の中にある
暖かい色のコスモスは
花びらを小さく地に向けて
憧れだった地へ
戻りたがっている

君の帽子に着いた
蝶のペンダントは
上を張り付いたように見上げ
何も考えず
ただ空へと戻ることだけ

地は偉大で
空は雄大

本当の心なんて誰もしらない
劣等感と罪悪感
尊大ぶって
要求に応えようと歩むその時

だれも聞きはしないじゃないか
ただ頼っているだけじゃないか

理想は高く常に明るい光を
その光はまたさらに明るい光を
僕は望む
天も望んでいる


178渦

つかめない
混乱する
渦は目の前で巻き上がり
わたしは片手を目に当て何かを守っている
自信がない
立ち向かえない
うずの黒さに驚き
恐怖に縛られる
動いても意味がない
何をしていいか分からないのだから

痛い
このままでいても痛い
立ち止まっても進んでも痛いなら
どんなに考えても意味がない
結論は同じ
渦は近づいて
狂気に震えわたしを飲もうと
唸る
唸りつづける渦に
片目がうずく
そっと解いた手のひらから
一羽の蝶が舞い上がる
驚くほど純粋な白で
黒々と沸き上がる渦へ向かう

わたしは進むかもしれない
どんな名前の蝶か覚えていないけど
目に焼きついたあの光景は
忘れられなかったのだから


179捕らわれたもの

言葉をなくした時に
痛みをなくした
風景の青さに気を取られ
今は青いものが一段と鮮やかに……

何も言わず
座っているだけで良かった
午後の小道
まっすぐ吹き抜く風の
優しさと何かが目をかすめ
大地の緑は
色とりどりで目では追いきれない
無数の色に気を取られて
この切り株の分岐した色までは気づけない

嘘の景色を見てきたと思う
今目から離れない色たち
この場所は動かず
わたしの心に色があふれる
光を見上げ星に祈る
ありきたりな毎日は
一秒で変わる
地球の反対側に来てしまった
そう感じてはクスリと笑う

手を広げて何かを捕らえる
捕らえては離し捕らえては離し
それもいいだろう
捕らわれた者は何かに気づき
新しい世界を見るかもしれない
わたしの言葉はどこかに捕らわれた
今も何かを伝えているだろう
そして言葉では伝えられないものもあることを
学んでいる


180もしあの時……

あの時君が返事をしなければどうなっていただろう
もし……
この言葉が頭から離れない
もしあの時
あの時の再現
記憶はいつでも待ち構え
一番先に思い出させ一番後まで残す
気のきいた奴だ

あの時の雨は
暗い色をしていた
確かにそうだった
その前日はマリンブルーだったから
瞳から流れた涙を
途方に暮れて眺めていた

何かに取りつかれたように
言葉は一つしかでなかった
晴れた色はどこにも見えず灰色がぼくを覆う
上から降る雨が
うらやましいと感じながら

君は泣き止まず
時間も止まったように取り囲む色も変わらない
ぼくのセリフも相変わらず
そして選択肢のない会話は
流されていく
何色に流されるのか
見たくもない

あの時のカケラはまだここで生きている
晴れのコバルトブルーの空と
ゆるやかに流れる雲と共に

あのとき君が返事をしなかったら
ぼくはどうなっていたというんだ?
分かりきっている会話
流れ着く先は
いつも同じなのに

そうさ分かってるんだろう?
お前は自由を手に入れた
そして同時に
孤独に愛され続けただろう
僕はふるえる手で煙草に火をつける

じゃあもし―――


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