空色の言葉 81だからわたしは…… 何も怖くないと思った わたしには失うものなんてないから このまま進んで行っても 何も誰もわたしを止められない この想いは 強さ 信念 勇気? 歩む足が軽い 歩くごとに道は壊れていく 後ろにはもう戻れない だけど…… わたしは強いから わたしは元気だから 大丈夫だから 心配してくれる人の言葉にそう答えている 笑顔で答えられる だけど…… 本当にわたしは強い? 自分の胸の痛みに気づいていない自分 元気だと思いたかったけれど…… 本当は気が狂いそうなほどに 失いたくないものを求めているって どうしても隠せない だから…… 82特別 すてきなものがきっと目の前にある なにもない地面なんてない わたしは意味のない言葉を言って微笑む 意味のない言葉なんてないんだから 暖かい気持ちが沸き上がる こんなに暖かいといつか暑さに変わりそう 野原で草を摘み取ったり 川に自分の姿を写したり 踊ってみたり こんなに楽しい想いをしたことある? いままで感じたことなんてなかったのに 今日はきっと特別な日 きっとどこかで天使か悪魔が微笑んだのね 83生き甲斐 静かに静かに耳をすます 聞こえてくるのは幸福の響き 大地の振動 森の笑い声 わたしは風から元気をもらって 微笑んでいる 何が起こっても苦しめられても 平気 人に傷つけられても孤独になっても きっとやっていける わたしの心には いつもゆるがない自然がいるの やさしく笑いかける太陽が 癒しの手を差し伸べる木々が 心を和ませてくれる花がいるの 自然は拒絶しないから わたしはいつも自然の仲間でいられるから…… 生きることを実感できる場所 わたしにとってそれがこの星なの 懐かしい甘い気持ちを抱く 変わらず受け入れてくれる自然を わたしも永久に受け入れよう 84花 綺麗 わたしの大好きな甘い香り 通りすぎるほどに切なくて 思わず振り返らずにはいられない その香りは必ずわたしの心を奪うから 自分の香りにしたくて 近づけば近づくほど 空気に吹かれた炎のように ゆらめいて 香りは薄らいでしまう 遠ざかれば遠ざかるほど いとおしさに惹かれて 強い香りが何もかも捉えてしまう いつも遠くでその花を見ている その花の愛らしさも 優しいオレンジの色も 頭が忽然となる程の美しい香りも 決して忘れない その花がわたしの幸せだから 花々の中で一番わたしを捉えるから まだ名前も知らない頃から…… 85考える時 僕は考えている 暗い土の中で 光あふれるような眩しい土を掘り進めながら 目がクラクラして痛くなることを意識しながら この上でドシドシ音をたてている生き物は どんな目をもっているんだろう この熱くつぶれそうな思いを どんな努力で乗り越えて 光と対峙しているんだろう 光の怖さが全身に広がってくる こんなに遠くても恐いのに 地上に顔を出したらどんなに痛い思いをするんだろう その光はどんな形で僕を睨むんだろう 光を怖がらない上の住人たちは 僕には化け物みたいに思える だって僕は…… 土の中の穏やかな香りに 心落ち着かせているから 暗い冷たいこの土が 僕の心の安定の場所だから でも……考えてしまう 明るい光に迷わず目を向けられる そんな生き物の気持ちを僕は考えてしまう もしかして僕のように上の住人たちも さらに光に近づいているものたちに 憧れ続けているのかもしれない 86夜の波 深夜の静けさ 耳をすまして時計の音を聞く 波うつような穏やかな 相反する気持ちが沸き上がってくる 瞳閉じて手を静かに降ろし そこに横たわる アスファルトに顔をうずめてみる 髪がフワリと地面に冷たく舞う カツカツカツ ハイヒールの音がする 車の走る音がする 一人でここで耳を澄ますことは どうしてだろう 心落ち着いて誇らしい またこの地面に光さすまで こうして耳を澄ましていたい 87あなただけの記憶 沢山あったはず 目を閉じると無数の美しいものが見える そこは暖かかった安らぎだった 何もかもを与えてくれる場所だった 覚えている まだ覚えている 記憶があいまいになり薄らぎながらも 苦しくて目からその光景が消えそうでも それを全身で阻止している自分がいる そこは天国だったから 本当よ きっとそう呼ぶんだ 生まれる前にいた幻の国の記憶 88声と音とわたし ねぇ聞こえない?星々の歌声が 耳に高く静かに響いてくるこの神秘 風を感じると雲を見ていると その音が聞こえる わたしはうなずくとハミングするの 今聞いた音を再現したくて それは正解だったのかもしれない 違うかもしれない わたしが歌いたかったのは心 全てを愛している自然の心を わたしは愛しているから 側にいたいから 寒いときの北風熱いときの太陽 快い気分でいられないけど そんな気分の時立ち止まって耳をすます その音は確かに聞こえてくる 暑い風の中に冷たい北風の中に 不意に抱きしめたくなる衝動 何もいらないと思わせる その時わたしは 自然だけがただ愛しくて 音を幾度も幾度もハミングしているんだ 89宝物 優しくてうずもれそうな笑顔をもらってる あなただけに季節の風と共に 和紙の封筒を開くと桜の花びらが散りばめられる どこから来たの?いつ入り込んだの? 春の香りとあなたの優しさが心を弾ませる 好きなものがたくさんあるのわたし 木々も雲もカエルも若葉色も 目に入ったものがなんでも好き でも…この封筒は 好きじゃおさまらない 他のものとは違う あなたが触れペンを走らせた特別な封筒 そしてこの花びらも特別 何もかも好きなのは何も好きじゃないのかもしれない わたしはあなたが特別に好き こんな幸福を感じるのが恐いくらいに 今度はわたしがあなたに送るわ 何度も何度も季節の花びらと共に あなたとわたしの紙の束は かけがえのない宝物になるから 90階段から下を見下ろしたままで…… 立ち止まると この香りと色に染まってしまう かすかに揺らぐ風 わたしがためらっている間に 勢いのついた懐かしいその香りに 吸い込まれそうになる 春の風にはわくわくした思い出がつまっている 朝の新鮮なあたたかいその香りも 昼の穏やかな眠さも 夜のスリル感とわくわくがござまぜになった心も わたしの忘れてしまった記憶 その気持ちだけが 毎年毎年 切ない程わたしの胸をつく ふいに立ち止まると感覚の渦にのまれて その断片だけを思い出す 全ては思い出せないままで 昔の記憶に捕らわれたままに 目をしっかり開いて 階段を降り始める 懐かしいこの香りは まばたきの間に わたしを昔へ戻しはしないだろうかと 訝しみながら |