空色の言葉




221ただ平穏な時に……

平穏に生きることの難しさが
分かる

どんなに単純でも
思考しなければ馬鹿にされる
考えれば考えるだけ
自分に縛られる
何も言わず無口な時に

言葉は傷つける
人も自分も
話さずにいられないから
私はうつむいてしまう
どんなに話しても
終わりがない
また次の単語で
生きることをつなぐ

考えては話し
話しては考える
生きる時に望む平穏は
いつも幻想のようにもろく
思考の中でしか
存在することができない

望むのに
叶わない
考えてまた苦しみながら
言葉を紡ぐ


222 誰も知らない

いなくなった誰か
知りはしない
いなくなったものは
忘れられていく
そこにあった印に羽根がある
白い小さな見る人もない

君が消えた時
天を見ていた人はいるだろうか
時間と競争したがる人々は
地すら見ていなかった
秒針の刻む音と共に
君はゆっくりと浮き
開きだす翼で
空へと飛び立った
唐突に
それでも驚きはしなかった

いつも夢想している君の瞳
完全すぎて
人じゃないと思った

そのまなざしは
どこか奇異で
けれど心に響き
跳ね返り
今もたまに
君のいなくなった場所へと導く

そこでぼくは
ちっとも色あせない
羽根を見つける


223響くもの

この声を聞いて
届くなら果てまで
決まりのない終わりまでずっと響いていて

わたしの中には鳴りやまない声が響く
聞いていたくないのに
ずっと執拗に響く声
その響きは苦痛で
閉ざしたいと感じる心を
無理やり押さえつける
抱えきれない苦痛の声は
終いに出口を求め
わたしから出ていく
わたしの中の狭い心では
この苦痛は収まりきれないから

響く悲痛な声
この声を聞いて
いつまでも響く
わたしの気持ちを
どこまでも伝えていくから
悲しみの音楽
自由と癒しを求めて
飛び立っていく
宇宙の外へ
何もない空間へ
わたしには見えない世界へ

どこまでも聞いて
鳴りやみはしないから
雨のように降り注ぐ
いくらでも飛び出す声
どこかの楽園で
あるいは神の下で
その声は止まるだろう
苦痛を知りはしない人に
その声は癒される
居場所を見つける
受け入れる余裕のある人々に
声は響き出す
頭の中で
いつかまた旅立つことは
避けられないと知っていても
束の間の居場所に
安息している


224欲しかったもの

望んでいたものは遠くにある
そんな気がしてる
いつも気になっていてそれでも進んでいた
望んでいたものに追いつける保証などないのに
わたしは進んでいる

立ち止まりかけると絶望に襲われる
それまでの無心なわたしは
いなくなる
パニックは恐怖になり
しゃがんでしまえば
涙が確実に溢れだす
望んでいるもの
胸の奥でいつも知っているもの

手には入らなくても
目指していよう
進むことに不安を覚えても
また進み始めよう
こんなに不安でも
止まるよりは
前に希望が持てるから
たどり着ける日を
幻想の中に映して
わたしは進んでいる


225当たり前にあるもの

空気を吸うことができなかった
花々の美しさが見えてもどんなに水が澄んでいても
空気の薄さに苦しくて目が向けられなかった

もどかしくて手が出せない
踏み込めない
美しいものでも苦しさに勝てない
いつでも思うのは空気
当たり前すぎて誰も振り返りはしない
失って初めて気づく
そんなものがある

この苦しみを乗り越えるには
空気のない生活に
耐えることじゃない
当たり前のように吸える空気を
自分で探すことだ
いくら失敗してもいい
見つからないと思いかけても
諦めないで

初めて見つけ触れた空気に
喜びはいつまでも続いていく
吸えることの歓びに
わたしは必ず自分を好きになるから
世界がもっと大好きになるから
手さぐりでもいい
休まずに信じながら

次の曲がり角で
思い切って息を吸ってみよう


226涙

氷の瞳に
心が冷える
暖かな日差しは
ここにはない
あなたのまなざしが
唯一の温度計なのに
癒えることのない傷

寒い空は
敷きつめられた氷の床を
一段と青く見せる

流れだす涙が
空気より暖かくて
その唯一のぬくもりに
わたしは
笑いだしてしまった


227許可

生きていていいか
誰が決めるのだろう
浮かび上がる疑問

わたしは誰かに
生かされている
そして望んでいる
そんな生き方を

一人では不安だった
控えめな微笑みは
孤独に勝つためだった
取り残されたくなくて
一人で立ち向かえなくて
寂しさに勝てない

この不安は生かされているから
感じるのだと思った

浮かぶ笑みの端に
不安にのまれた
まなざしをむける
生きていてもいい?
一人じゃ生きて行けない
誰かの人形じゃないけど

こんな束縛から
自由になりたい
生かされていると思っている
わたしには断ち切れない鎖

血を流してまで
一人の足で歩む気になれない
今はまだ


228知らない言葉

愛が分からない
初めからないものなんて存在したのかどうか
愛を持たぬまま生きているのは
無駄ではないのか
気づいた時に終わった気がした
全てを捨てても愛が欲しかった
感じていたかった
ぬくもりに何かを暖かい幸せであろう気持ちを

同類には遇ったけど
何も感じられなかった
感じて何になるというんだろう
先へ進むことがないとしっているのに
だからずっと片膝をついて
祈っていた
柄でもないことに
真剣な顔で

救われたいと思っていた
いまも気持ちは変わらないけれど
愛せないのに救われるのか
救われないから愛せもしないのか
考えているだけだった
だから丘に登った

無心でいられる
純粋な風に当たるために
取り巻いている気持ちは終わらない気がした
いつまでもいつまでも
永遠なんてないのに
それでも信じそうになっていた
その日のその時までは


229意味と生き方

意味があること
何にでもあること
知らなかった
今も疑問
普通のことに一般的なこと
分からない
分かろうとしても
わたしにはわからない
知ればいいのか
真似すればいいのか
穏やかに生きていれば
それでいいのか

答えが欲しい
確実な答えが
誰か教えて
自信を持った声で
たとえ偽りでも信じられるから

何も信じられない今よりも
もっと温まりたいから
穏やかさはなくなっても
暖かさはきっと消えない

生き方を教えて
このままでいいのか
この考えすら
崩壊しなければならないのか


230注いでいるのに……

キライ
そんな言葉使えない
好きじゃないのに
嫌いじゃない
そんな人ばかりで
私は当然のように混乱してる

否定できず頷いて
一日が終わる
誰も印象に残らず
きっとわたしも印象に残らない

本当はだれとも関わってなくて
明日がまたやってくる

話していても
表面だけだから
本当のわたしは
もっと奥に隠れているから

隠れ上手になった
キズ付いたその日
でも満たない
注ぎつづけている優しさ
私が向けているのも
向けられているのも

本物の優しさじゃない
キライな人じゃないけど
好きな人でもない


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