空色の言葉




271待ち時間

待っているの
あなたの顔を一目見たくて
バスが来るのを
妨害してみる
気持ちだけだけど
念じれば届くっていうじゃない?
気持ちは沸いてくる
とめどなく感じられる
だからバスが遅れれば
わたしの心泉は溢れ出す
あなたに伝えたくて
あなたと話したくて

どんな声なのか
髪なのか
目なのか

まともに見られないから
必死に思い出す
溢れ出した泉の水は
わたしを前へ押し出してくれる

さあ勇気をだして
一歩だけすすんでみよう
そして少しだけ
会話してみたい
あなたと
泉が氾濫するまでに
バスが来るまでに


272柚子色の湯気

気持ちは揺れて
あなたといたくて
恋なんて知らなかった
いままで警戒してた
だけど覆われて
それまでは気づかなくて
暖かなお湯につかったみたいに
全身が温まって
ゆずの匂いがする
暖かな湯気と共に
心に染みわたる気持ちは
どんなかけがえのないものよりかけがえなくて
大切だって実感していたい
いつまでもこの気持ちを閉じ込めていたい

離したくなくて
ふっと手を伸ばしてみるけど
蒸気はつかめない
だから暖かな湯気は
ゆるりと手をすり抜けていってしまうんだ

感じることはできても
触れることはできない


273森の中で

不思議が眠っているの
森の中で何かを見つけたわたしには
あの時だけ宿っていた
きっと精霊の粉が

やわらかな暖かい光を見た
まるでロウソクのようにぼんやりと
誘うような色で
森の緑に映えていて
思わず追ってしまっていた

何かを見つけようとしてたんじゃなかった
その時のわたしは
ただ吸い込まれるように
進みたくて
幻想的な美しさに
抵抗ができなくて
緑は更に深みを増して
やがて黒と区別がつかなくなる
ほんわりとした光だけは
いつまでもわたしを待っていて
いつまでもわたしを誘っていて

遠くでわたしを呼ぶ声がするんだ
わたしは振り向いてしまった
光はあとかたもなく消えて
導かれた道も消滅する

少し恨んでいた
だけど感謝もしてた
森は不思議
分からないことばかり
それでも心のどこかで
また巡り合いたいと思っている


274春雨

雨の音
静かに優しく
好きじゃなかった
冷たい音
はねあがる雫
憂鬱な空気
それでも
傘にリズムが響いて
わたしはハミングしてる
足取りはかるくなって
時々濡れるのもかまわず空をみあげる
ぱらぱらぱら
強くない柔らかい雫
線が落ちているみたいで
つかまえてみたくなる
でもそれば丸い雫になって
水たまりに溶けてしまう
わたしはまた空を見上げる
ハミングする

雨が嫌いって思えないんだ
この空に
この音に

だってわたしは元気づけられているんだもの


275雪鈴

銀が震えるみたいな音
ずっと気のせいだって思ってたけど
間違えようもなく鳴っているんだ
降りしきる雪と共に
静かにひんやりと
輝いているみたいに

わたしに聖なる光を見せる
そして歌声を聞かせてくれる

言葉ではいくらでも言えるけど
この音は表現できなくて
天使の鈴
いつまでもわたしの心を溶かす
幸せって分からないけど
もしもあるのなら
こんな澄んだ音の気がする

何もけがれがなくて
曇りない瞳で
その眼差しに出あうわたしは
きっと銀の震える音を聞くから


276魔法の壁

晴れの日曜
わたしは不思議な壁をみつけた
緑の木々に覆われて
何か囁いているみたい
夏の日差しに照らされて
まぶしげに青々と揺られながらの
木々でできた壁は
ちらちらと光を通して
まるでエルフの国へ渡れるみたい
少しだけ手を伸ばしてみようか?
きっと小人が迎えてくれる
いろとりどりの木いちごを差し出して
ダンスを教えてくれる

一瞬だけ
その壁を吸い込まれそうな程
凝視するんだ
そうしたかったのか
そうさせられていたのか
もう分かりはしない

魔法のかかる瞬間ってある
その時を逃すともうやってはこないから

もしも魔法への扉を見つけたら
迷わずに飛び込もう


277雪の天使

ほのかに照らされた闇
ぼんやりと光のように淡く
幾度も幾度も降り積もる
降り積もるたび闇は後退し
やがて紺色に変わり
暖かいと錯覚させる

優しく感じたんだ
黒じゃない闇じゃない

好きだって素直に微笑むんだ
冷たさも好きだよ
白さも
その姿も
舞い降りては
天使の翼を休める

まるで冬の天使が舞い降りてきたみたいに
冷たい笑顔を向けられた気がして

わたしは空から視線が外せない
笑顔の冷たさに
その優しい光の色に


278夜の雲が優しくて

風が舞い上がって
さくらをきらめかせて
わたしはわくわくする

狐の声がきこえる
意志をもった声で
遠く遠く
音は遠ざかっていく

あなたの瞳を覗いて
どこかへ飛んでゆきたい
この夜の色と共に

間違えようのない
この風の中で手をのばして
この藍色をすべてつかみ取ってしまおうか

泣きたいほど美しく光る月の色に
夜の全てがわたしを抱きしめる
わたしもそれを望む

だけど抱きしめられるだけじゃだめ
つかみ取ってしまいたいんだ
この美しさに
耐えられなくなりそうだから

カーテンを下ろして
いつものように寝ようか
何もなかったように
夢の世界へ沈んでしまおうか


279もう一つの世界

色とりどりにみえた
その粒子は細かくて深くて
透明で跳ねて
頭を壊しそう

考えていることを
忘れてしまう
その踊りは
嬉しそうで歓喜
狂喜
別の世界へ連れていってしまう
わたしの心を
奪う

静かな冷たさと共に
上をみあげると
頬にやさしい水の球が流れて
わたしの足元では
踊りが

水たまりの中に
別の世界が見える
恐い程キレイに
水滴に歪められている


280目をさますとそこは・・・

目を覚ますと
白い視界
雲色の天井がみえて
ふわふわ漂ってる
わたしはそっと起き上がると
氷の鏡で羽根を整える
きらきら光を受けて氷は綺麗に景色を映す
まるで空の中にいるみたい
妖精の泉に立っているみたい

ふわふわした綿みたいなカーペット
裸足で歩くとひんやりして気持ちいい
天井をかきわけて進むと
お日様の側に抜ける
歌いながらぽかぽかひなたぼっこ

長い金色の髪がきらめく度
南風の声が耳に優しく入り込むんだ

いつまでも終わらない国
わたしだけの国


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