-
    
山形県東根市 沢渡黒伏

1235m

平成18年9月26日
曇り
参考コースタイム

赤い鳥居(登山口)〜40分〜龍王洞
〜60分〜沢渡黒伏山頂 

林道から見上げた沢渡黒伏

 沢渡黒伏は、船形連峰の西端部にある東根市の山です。  地形図に山名の記載がなく、東隣の黒伏山の方がロッククライミングの山として有名ですが、地元で黒伏と言えば沢渡黒伏の事。 なんと、こちらの沢渡黒伏の方が本家なのだそうです。 ちなみに黒伏山は観音寺黒伏と呼ばれていたそうです。

 古い時代から修験道の聖地として、多くの修験者や参拝者が集い賑わっていたとか、山の麓を流れる白水川は米の研ぎ汁でいつも濁っていたので『白水』と名前が付けられたそうです。

 以前から興味のあった山でしたが、急峻な修験者の道でルートが不明瞭と聞いていました。 また、ネットで調べると滑落した記事があったりして登る前から腰が引けていた山でした。
 山形県の山の中で摩耶山と沢渡黒伏は、私のレベルでは危ない山かな?と思って諦めていたのです。
 ところが、新しいヤマケイの分県ガイドに載った事で(危険度3ですが・・)私にも登れるかと思いはじめていました。 そして、「あの山掲示板」で見せていただいた沢渡黒伏の写真を見ていたら無性に登ってみたくなって、気がついたら赤い鳥居の前に立っていました。 

 沢渡黒伏の登山口は、東根市の遅沢林道を5km進んだ所にあります。 仙台から国道48号線を西に進み、関山峠を越えた東根市関山交差点を右折して県道尾花沢関山線に入ります。 約500mほどの所にある案内標識にしたがって交差点を右折、白水ダムに向って進んだダム手前の集落から遅沢林道に入ります。 遅沢林道の入り口には、ナゼか『遠尊沢林道』とかかれていました。

遅沢林道入口
遅沢林道入口
登山口の赤い鳥居
登山口の鳥居
黒伏山神社
黒伏山神社
涸れ沢の道
涸れ沢の道

 
 遅沢林道は路面状況が良いので普通車で大丈夫と思いますが、雨水を流す溝がいたる所にあって水が広がらないように盛り土がしてあるので越えるのに気を使います。 5kmほど進んだ三叉路を左折すると右手に赤い鳥居がありました。 この三叉路を右折して奥に進むと黒伏山の遅沢登山口があるそうです。 赤い鳥居の前に路肩を広げた駐車場(2〜3台可)があります。 

 準備体操をして赤い鳥居の前でこれからの無事を願って拝礼、杉の大木が並ぶ参道を10分ほど進むと黒伏山神社に到着します。 少し朽ちた感じの小屋?(スミマセン) は、神社らしくない建物ですが中にはキチンと祭壇が設けられていました。 ガラス戸の前に下げられた鈴を鳴らして手を合わせ、こちらでも安全祈願をしました。 神社の左手から道が続いていますが、心細い踏み跡に変ります。 小さな沢を越えると岩の堆積した涸れ沢の中を登る道になり、赤ペンキの目印を追って登って行きます。 右手に水音が聞えるので登山道に沿って沢があるようです。
   

赤ペンキの目印
登山道に着けられた案内のマーク
急斜面のクサリ場
太いクサリの急斜面

 
 涸れ沢の岩場を過ぎると次第に斜面の傾斜が急になりますが、登山道自体はハッキリとし山道になるので目印を探さなくても歩けるようになりました。 いよいよ修験者の道になったかとドキドキしながら急斜面を登って行くと、クサリが出てきて益々斜面が急になります。 ちょうど桑沼から大倉尾根に登る一番急な場所が長く続くような登りです。
 片手でクサリを、別な手で木の幹や根をつかみながら体を確保して登って行きます。 すごい事になってきたと思いましたが、まだまだ沢渡黒伏は甘くなかった・・・。

   

龍王洞入り口の刀剣
入り口にある鉄の蝋燭立て
龍王洞入り口
龍王洞入り口
洞窟の奥にある石祠
洞窟の奥にある石祠

 
 クサリに導かれながら急斜面を登って行くと、クサリは岩の割れ目に入って行きます。 『あれ?』っと思い、岩のテラスに立つと割れ目の上に丸い輪に剣の形をした鉄製の蝋燭立てがありました。 これはネットで見た龍王洞の入り口! すると、この割れ目が龍王洞・・? もっと大きな口が開いていると思っていたのですが、標準体重のマルゴが横になって体を捻らないと入れない狭さに驚きです。
 ザックを背負って入れないので入口にデポしてヘッドライトを装着して中に入りました。

 入り口を通れば中は一人が楽に歩けるくらいの巾があります。 真っ暗な洞窟内部をドンドン下って行くので地底に入り込むような気分になります。 周囲の壁は濡れていてヘッドライトの光りが当たるとキラキラと光って不気味です。
 予備知識で30mほど下ると正面に石祠がある事を知っていましたから安心して進みましたが、何も知らなかったら途中で戻っていたでしょうね。 天井は高いところで5〜6mほどでしょうか、蝙蝠がいるそうですがこの日は出会えませんでした。

 やがて大きな段差を降りて目の前に石祠が見えた時は、『これで戻れる!』と真っ先に考えてしまいました。 1人で入るには心細い洞窟です。 証拠写真を撮ったら回れ右で戻ります。 (戻る足取りは軽かった!) 入り口の光りが見えた時はホッとしました。 私は霊感が鈍い方ですが、異様な雰囲気のする洞窟でした。
   

黒伏山が見えた
黒伏山が見えます
崖ではありません、登山道です。
崖ではありません、登山道です。

 
 さて、龍王洞を出て登りを再開しようとしたのですが、どこに道があるのでしょう? 周囲を探すと赤い矢印は崖の岩場を左に回り込め⇒と指示しています。
 ヒェ〜〜! 2mぐらいですが崖になった岩場を登らなければなりません。 下を見ないようにシッカリとした石に足をかけて登れば、思ったほど怖くはありません。 お! 私も慣れてきたかなと少し風景を眺める余裕が出ました。 振り向けば、木々の間から黒伏山や麓の風景が見えていました。

 眺めを楽しむのも束の間、また急な登りが始まりました。 今度はクサリがないので両脇の木や岩など手がかりに出来るものは何でも掴んで登ります。 ↑上の写真は登山道脇の崖ではありません。 登った斜面を見下ろして撮った写真です。
 
   

岩場のテラスに
岩場のテラスに、
腰を降ろして一服
腰を降ろして景色を眺めます。

 
 暫らくすると絶好の展望所の第二の岩場に出ました。 なんとスゴイ高度感でしょう。 隣には黒伏山が迫り、眼下に広がった深い森の中に愛車がポツンと小さく見えました。 ずいぶん上まで登って来たと感心しながら眺めましたが、
実は、この岩に腰を降ろしてユックリ風景を楽しんだのは下山の時で、登っている最中はそんな余裕など全くありませんでした。

 第二の岩場からは、トラバースするように左に折れて一旦下ります。 岩場と岩場の間の登れる斜面まで移動したのでしょう。  途中に不明瞭な場所があるので赤布や木の赤ペンキを見落とさないように注意します。 やがて岩がゴロゴロした斜面に赤布を見つけて登りました。 でも、もう少し進んだ松の木の所から登る方が楽だったようです。 
   

岩壁の手前から山頂部を見上げました。
赤布を信じて藪を下る
赤布が目印

危険なトラバース地点
滑りやすい斜面

 
 沢渡黒伏の登山道は岩場を避けながら尾根の登れる斜面を探して作られたような道で、ブナの落ち葉が堆積した柔らかな土の斜面ですから支えるものがないとズルズルと後に滑ってしまいます。 龍王洞手前のクサリ場よりクサリが欲しい斜面ですがクサリもロープもありません。 

 やっと緩やかな尾根道になったと思ったら大きな岩場で道が止まってしまいました。 この場所も掲示板で聞いていたので少し戻った右手の繁みに赤布を見つけて藪の中を下ります。 1つ隣の尾根にトラバースする道でしたが、下りきった場所が滑りやすい急斜面に細い踏み跡があるだけの斜面。 手がかりとなる木が少ないので草の根でも支えになる物を探しながら慎重に歩く、一番の難所でした。 
  

岩場の上が山頂か?
山頂を見上げる
急斜面の登りが続く
またまた、急斜面を見下ろす

 
 トラバースして移った尾根に木に上に向って進めとばかりに赤ペンキの矢印、まだまだ急斜面が続きます。 登山道を登ると滑るので足の支えになる木が多い脇の藪を登った方が確実かつ安全に登れたりします。 必然的にそこら中に踏み跡ができてしまい、皆さん自分のルートを探しながら登っていたようです。
 何で龍王洞前のクサリ場より難度の高い斜面にクサリもロープもないのか不思議でしたが帰ってから考えると、龍王洞から上部は参拝者が踏み入る場所ではなかったのでしょう。 山頂を目指す登山者が勝手に付けた出来た道なのクサリも付けないのではないでしょうか。 修験道の聖域で昔は踏み込んでイケナイ場所だったのかもしれません。

   

潅木帯の岩場に出れば山頂は近い
山頂手前のガレ場
沢渡黒伏山頂
山頂風景

 
 もう手の筋肉がパンパンになった頃、周囲がブナ林から潅木に変り崩れた岩の広場に出ました。 この場所も周囲の景色が望める眺めの良い場所です。 見上げると潅木の上に空が見えるだけなので山頂が近いと思いましたら、直ぐに山頂に飛び出ました。

 何と素晴らしい眺めでしょう。 辿り着いた山頂は正しく360度の眺めが広がります。 目の前に白森が迫り奥に船形連峰の峰々が重なっていました。 主峰の船形山は雲に隠れていますが素晴らしい眺めです。 目を右手に移せば黒伏山が何時しか目線と同じ高さになっていてその下には山形盆地が広がっていました。 北方向に目をやれば甑岳が堂々とした姿で横たわっています。 苦労して登ってきただ達成感もひとしお、天上のテラスで天狗になった気分が味わえました。

 出来れば山頂で山々を眺めながら昼寝をしたかったのですが、低気圧が近づいている影響で風が強く怪しいい雲が流れてくるので早めに下山しました。 時間的に余裕があったので白森へ藪コギも可能でしたが足を踏み入れた潅木帯は思ったより手強そうで、途中で雨になったらと思うと決断できませんでした。
   

白森の奥に船形連峰の山々が広がる
白森(左)へ続く尾根と船形の山々 ・・⇒下に続く
山頂から黒伏山方向
⇒・・ 山頂から見える黒伏山

 
 下山は登りより慎重に! でも、掴んだ木のしなりを利用しながら木から木へ猿のように移って下ったり出来て楽しめました。 途中で少し雨が降りましたが濡れる事もなく無事に黒伏山神社に到着、お礼の拝礼をして車に戻りました。

 沢渡黒伏の登山道は普通の山の登山道とまるで違い、今にも繁みの中から山伏が現われそうな修験者の路でした。 山頂の雰囲気も天狗が舞い降りて遊んでいそうな場所です。
 いまだに修験道が受継がれているような山は、安易な入山を拒否しているように聳えています。 低山といえど近くの里山に登る感覚では登れない、むしろ大変危険であると言わざるを得ません。 経験者をリーダーに危険箇所にロープを張って登っていただきたい山です。
 でも、あの山頂にもう一度立ちたいと思う気持ちが時間と共に強まって行く不思議な魅力(魔力?)の山でした。

   

 
2006-