第1節 岡ちゃんは札幌の監督にふさわしい男なのか?

 一つ誤解の無いように言っておく。私は岡田武史という男を買っている。彼には名監督になりえる素晴らしい才能を持っていることは間違いない。思い切りのよい采配をしたときの彼が率いるチームが輝くことは、ジョホールバルでの日本−イラク戦で証明済みだ。

 だが、彼は若干42歳。クラブチームの監督の経験もないまま、実績が先行している男だ。未熟で判断ミスを犯すことだって少なくはない。中でも、城をエースとして扱い、先発起用に固執したことは、今回のW杯フランス大会でジャマイカにさえ勝てずに3連敗を喫した最大の敗因である。城は所詮アジア内でしか通用しない男なのだ。余談だが、2002年に日本を率いる監督は、絶対に同じ間違いを犯さないことを祈るばかりだ。幸い、高原、柳沢、我らが吉原コータなど2002年を担えるエースストライカーは山ほどいる。ゴン中山は2002年にフル出場を望むのは無理だろうが、彼は後半15分から起用しても、何かをやってくれる男。「最後の切り札」としてのメンバー入りはアリだと見ている。岡野だってこれから一皮向ける可能性もある。他にも優秀な人材は引く手あまた。城の出る幕など日本代表のどこにもない。

 話がそれてしまった。もとに戻ろう。W杯で全敗。これまで「名将」などとおだて上げていたスポーツ紙などが掌を返したように彼をこき下ろす中、私は「将来、岡ちゃんにコンサドーレの監督をしてもらうのも悪くはないかもしれない」と考えていた時期はあった。まさか、その時にHFC幹部まで同じことを考え、彼にオファーを送っていたなんてことは想像だにしていなかったが(^_^;;;
 理由は2つ。
・彼ほどの才能ある人材を眠らせておくのはもったいない。誰も引き取り手がないなら札幌がフェルナンデス政権のヘッドコーチとしてでも温かく迎えてやるのも悪くはない。
・評判が落ちた、「傷モノ」なら、安く雇える。少ない元手で大きな果実が期待できる。

 ただ、その後、どことどこだかはわからないが、札幌、神戸を含むJ4チームに欧州のチームまでもが絡み、岡ちゃん獲得大合戦が始まってしまった。これはあかん。
 札幌は大スポンサーを持たない市民チームである。金がない。競合となれば年俸はつりあがる。札幌に競争に勝つ余地はない。勝てたとしても札幌に岡ちゃんを満足させるギャラは払えるのか?払ってしまったら財政が破綻するのではないか?
 そういう訳で、私は他人には「岡ちゃん監督待望論」を誰にも話さずに最近まで黙っていた。
 ところが、で、ある。先月中旬、札幌がフェルナンデス監督を電撃解任。おまけに岡ちゃんに来季監督を正式に要請してしまったのである。こりゃ寝耳に水のびっくり話である。
 そしてここ最近、そのことはメディアでも堂々と語られるようになってきた。11月3日、札幌に仕事に立ち寄った岡ちゃんは、ついでに、白旗山の練習場を見学したり、厚別で試合観戦をしたりしていっている。まだ監督要請をどうするかは名言していない岡ちゃんであるが、「コーン・サ・ドーレ、ドドン・ガ・ドン・ドン」の必殺メガホン打ち鳴らし応援には「すごいですね。人数入ってましたね」と驚いていた様子。入っていた、といってもこの日の入場者数は12154人。Jの平均観客動員数よりちょっと良いという程度の話なのだが、コンササポーターの応援のテンションが他のチームと比べると高いこともあり(鹿島、浦和にはかないませんが、その次ぐらいには位置するのでは?と自負しております)実数以上に客が入っているように見えたのかもしれない。とにかく、岡ちゃんは、札幌サポーターに好感を持って離札したようだ。
 そういうわけで、もう「岡ちゃん就任先は札幌で決まりか?」と言った空気が流れはじめている。噂では神戸に対するオファーを「遠くのチームに就任するのでごめんなさい」と断っただの、「来年は某チームの監督をやります」とどっかの講演会で名言しただの「監督に就任するなら、JFLでもJ2でも構わない」と言っただの、さまざまな噂が飛び交っているが(札幌はJ1に絶対残るのだ。心配するな)、どうも「ちょっと待ってくれよ」と言いたい心境なのである。
 もちろん、ここでこの話にいまさら待ったをかけるわけにはいかないのだが、振られた時の慰めのためにも、ここで、私が岡ちゃん札幌就任に反対する理由を掲げておこう。

・札幌の監督はフェルナンデス氏が一番似合う
 「チームはファミリー」を合言葉に鉄の団結で勝ち進むチームを作った氏こそ、世界で一番素晴らしい監督だと私は信じている。それをあんな虫けらのように電撃解任するなど、私は到底許せない。HFC幹部にはそれなりの身の振り方を考えて欲しいものである。
 私は今でもフェルナンデス氏に再び札幌を率いてもらい、今度こそJリーグチャンプに導いて欲しいと願っている。それを差し置いて、岡ちゃん就任を期待し喜ぶことができるほど私はドライな男ではない。
・年俸が高すぎないか?
 いくら払うのかは知らないが、4チーム競合ならかなり高額となっているだろう。札幌の累積赤字はすさまじい。ぜひ、ギャラの節約も視野に入れた監督選びをして欲しい。まだよく分からないが、石井肇現監督だって悪くはなさそうな気、もするのだがいかがだろうか?
・札幌で彼が一皮むけられるのか?
 何だかんだ言っても彼はまだ未熟な監督だ。もう一皮むけないと、名将としての道は歩めない。そのためには、ある程度戦力は整っているが、戦術、モチベーション的なレベルが低く、Jで中位をうろついているチーム(C、G大阪や柏など)の方が向いているのではないか? 常に優勝争いをするチーム、常に1、2部入れ替えのすれすれのところにいるチーム(それはJ2上位チームも含まれる)では常にシビアな結果だけが求められる。そういう中で彼の才能が開花するかどうかは一種の賭けである。

 とはいえ、もう岡ちゃん自身が札幌を袖に振らない限り、彼がコンサドーレの次季監督になるのは間違いない。そこで、HFCには絶対に釘をさしておかなければならないことがある。それは「絶対に彼をシーズン途中で解任しない」「コミュニケーションを大切にする」の2つである。
 シーズン中の解任というのは、成績が低迷するチームにとって、一種の賭けである。成功することもあるが、失敗することの方が多い。彼をそういう「捨て駒」として使うことだけは断じて許されない。そもそも、監督を途中で解任するということは、チームにとって大きい損失である。来シーズンからはまた1からチーム作りをやり直さなくてはいけないからだ。それだけ、チームが成熟し、強くなるのが遅れる一方だ。
 選手補強に大金をはたけない札幌なのだから、長期的な視野に立ち、若くて生きのいい(年俸が安上がりな(^_^;;;)選手を育てながらチームを強化していくより道はないのだ。そのためにも、目先にとらわれない、大局的にモノを見られる人間が必要なのだ。少なくとも岡ちゃんにその才能があることは認める。でも、それが来年開花する保証はないのだ。だから、せめて来年1年は、できれば3年間は彼にチームの命運を預けるべきである。その結果、2部落ちしたってそれは仕方がない。彼を監督に選んだフロント陣の責任だ。でも、1年目で2部落ちしたからと言ってすぐ解任してしまってはまた元の黙阿弥。
 未熟な監督を喜んで迎えるチームは、その監督が成熟するまでじっと我慢するしかないのである。
それを肝に命じて来シーズンを迎えて欲しい。
 それと、今回のフェルナンデス氏解任の背景にはHFCと氏のいかんともしがたい不信感がある。岡ちゃんとはこのような関係にならないよう、腹を割って親密な信頼関係を築き上げてほしい。お家騒動など、チームには何もメリットをもたらさない。ましてや札幌は市民の寄付金なしには成り立たないチーム。内部のごたごたはイメージダウンにつながり、金を出す市民の意欲をそぐことになる。そうなれば致命的である。別に遠慮しあう必要はないが、目的は「札幌をいいチームにすること」という原点を忘れないようにして欲しい

 最後に一言。でも、やはり、札幌と岡ちゃんのためにも、岡ちゃんには札幌の監督就任要請を断る方が無難だと言うことを忠告しておこう。もちろん、受諾するのであれば、ファンとして精一杯のエールは送るのでそれは心配しなくていいけれどもね・・・。

1998年11月16日執筆

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