第8節 一体化した応援が生み出す感動
1998年に初めてコンサの試合を生で観戦して以来、私はこれまで、ほとんど一貫してゴール裏席に座って、というより、立ちっぱなしでチームに声援を送り続けてきた。例外といえば、応援本隊がゴール裏以外の場所に移った場合(←J2や地方での試合では、ゴール裏席が開放されないことも多い)以外では、今年のドームでの開幕戦でSS指定席での観戦だけである。アウェイでは、あるいはユースの試合では、一貫して声を枯らしながら一生懸命応援をしてきた。
それは、「自分も選手と共に戦おう」という気持ちのあらわれでもあり、自分たちの声で選手の背中を押すことができれば、という思いから行ってきたものであった。だから、これまで、選手にいかに声援を届けるか、ということにしか主眼を置いていなかったし、ゴール裏サポーターというものの存在が観客にどう見られているのか、ということはあまり考えたことなどなかった。
そんな私にとって、先日生観戦したアルビレックス新潟での光景は、ある意味衝撃的なものでさえあった。何か、最近のコンサのホームゲームのゴール裏サポーターが忘れかけている、熱いものを思い起こさせてくれる。いや、それ以上のものが感じられた。
アルビレックス新潟といえば、去年はワールドカップの会場であった「ビッグスワン」で3万人台の観客動員を連発し、今日本で一番勢いのあるクラブ、と言われていた。ただ、実際のところ、そのかなりの部分は、無料招待券での入場者ということで、Jリーグでも問題にはなっていたらしく、今年からは、その方針を改めたらしい。この日はあいにくの雨模様ということもあり、入場者数は辛うじて1万人を超えた程度で、その去年までの新潟の姿と比べると「おや?」という思いはあった。
ただ、無料招待券で何であれ、一度足を運んだ人がそこで感動を味わい(←新潟のサッカーの質は年々向上している)、次はちゃんとお金を払い…という図式はきちんとできあがっているようで、この日集まった観客の多くは、心から新潟を応援している人たちであったようだ。ゴール裏席だけではなく、メーンもバックもチームカラーのオレンジ一色。ゴール裏の声援に合わせてみんなでメガホンを叩きながら応援する姿は、かつて厚別でよく見られた光景で、久々に「ここはアウェイだなぁ」という気分を味わうこととなった。まあ、山形でもそれなりにアウェイの雰囲気は味わえたが、観客動員数は6000人足らず。四面楚歌、というレベルまでは至らなかった。私の生観戦試合で、これだけのレベルのアウェイを実感できた試合は、ほかは浦和戦、仙台戦くらいである。鹿島もゴール裏サポーターは凄かったが、改装で収容能力が増えた分、空席も目立つようになり(←コンサ戦など見るに値しない、と思われたのであろう。観客は2万人をわずかに超えただけであった)スタジアム全体としての迫力はさほど感じられなかった。新潟の場合、この日使われた新潟市陸上競技場が、おそらく1万5000人も入れば超満員という、比較的こじんまりとしたスタジアムであったことも、雰囲気を盛り上げていたのであろう。こじんまり、とはいえ市役所、県庁などが立ち並ぶ市の中心部にこういう場所があるというのは、贅沢ではあるのだが。
でも、それ以上に私が感銘を受けたのは、その新潟のゴール裏のサポーターと、試合を運営する側との一体感であった。
新潟は、コンサドールズのようなオフィシャルダンスチーム「アルビレックスチアリーダーズ」を、Jリーグのチームの中でも比較的早く発足させたチームの一つ。ちゃんと確認はしてないが、現在ではJリーグに所属するチームの過半数が、このようなチームを所有しているという。その先鞭をつけたのは、間違いなくコンサドールズであろう。一コンササポとして、実に鼻が高い。
で、その新潟のチアリーダー。おそらくダンス自体のレベルはコンサドールズの方が上だと推測されるものの、決して遊び半分というわけではなく、お客さんに楽しんでもらおうというプロ意識は十分感じられるパフォーマンスであった。人数が多い分華やかだし、ぶっちゃけた話、ハーフタイムにコンサ側ゴール裏に挨拶に来てくれたときに見た限りでは、ルックス的にはドールズより上を行っていたような気がする。好みのタイプの娘も何人かいたし(笑)
余談だが、サイトを見ていただければわかる通り、彼女たちは、このくそ寒い中、あんな露出度の高い格好でダンスを披露していたのである。ご苦労さま。風邪をひかないようにね(^^;;;
それはさておき、一番気になったのは、彼女たちが踊っているときのサポーターの動きだ。何分、相手側ゴール裏での出来事だったのできちんと確認はできなかったが、明らかに、ゴール裏サポーターがと彼女たちの踊りが一体化、彼女たちのパフォーマンスに彩りを添えていた。彼女たちが飛びあがったり手を振り上げるたびにゴール裏でタオルなのか、旗なのか、とにかくオレンジ色が一斉に揺れ、リズムを作り出す。その光景は、メーン、バックスタンドで観戦していた人々に少なからぬ感銘を与えていたことであろう。
ドールズ側も、実は、今年からはサポーターと一緒踊りながら、会場が一体となって盛り上がりたい、という構想を持っているらしい。開幕戦で配られたマッチデープログラムにも、踊り方などを示し、「一緒に踊ってほしい」というお願いが書かれてはいた。しかし、少なくともSS席で見ていた限り、ゴール裏の応援本隊には、そのようなドールズ側の呼びかけに反応する気配など全く感じられなかった。個人個人としてはともかく、全体的にはドールズを「無視」している風にさえ見えた。
もちろん、このような動きをするのは、別にゴール裏がどうではなく、どこに座っていようが、自由にやれば良いものではあろう。筋論としては。ただ、会場が一体となったパフォーマンスができれば、初めてコンサの試合を見に来たお客さんに感銘を与え、あるいは今後はサポーターになってくれるかもしれない、という可能性を、コンサのホームゲームゴール裏のサポーターたちは見出せてはいない。新潟サポーターの姿とはあまりにも対照的であった。
そのパフォーマンスが一度終わると、場内DJが、「4月4日は、木寺浩一選手の誕生日です」とアナウンス。ゴール裏サポーターから「Happy Birthday コーイチ」の合唱が始まった。こんな光景、コンサのホームゲームではまず見覚えがない。
ちなみに、4月27日は和波智広選手の、5月4日は尾崎祐司選手の、5月15日は田畑昭宏選手の誕生日である。やろうと思えば、明日にでも、新潟のこの動きを真似することは可能である。まあ、3人とも、その該当試合でスタメン入り、あるいはベンチ入りができるかどうかは分からない(和波以外は難しいのでは?)。また、ベット(1月7日)、カルロス監督(1月15日)、今野泰幸(1月25日)、西田吉洋(1月30日)など、オフシーズンに誕生日を迎える選手は無視される形となり、不公平感が出てしまうことは否めないことにはなるのだが、それでも、ホームゲームという機会をとらえて、何らかの形でお祝いができれば、選手にとっては大きな励みになるのではなかろうか。そんな新潟の運営側の配慮と、それに応えるサポーターの姿は、とても気持ちの良いものであった。
思えば、コンサの場合、場内DJというのは必ず存在してはいるが、少なくともDJとゴール裏のサポーターが一体となって何かをやろうという雰囲気は無い。応援の練習をはじめる時間帯になると、新潟のDJはアナウンスをすることもなくなったが、コンサのホームゲームではDJのしゃべりや音楽が、ゴール裏でトラメガで挨拶や、応援についての説明をしようとしているUSメンバーの声を掻き消すことは少なくない。非常に醜い、腹立たしい光景である。
コンサのホームゲームでのDJについてもう一つ言えば、私が常々不満なのが、「ただ選手紹介をするだけ」だというその淡白さである。
よそのチームでは、例えば、「背番号8 ミッドフィルダー ノンストップドリブラー 大和魂 三都主・アレサンドロ」などといった調子で、その選手がどんな選手なのかという寸評が入ることが多い。アウェイサポーターとしては、短いコメントでも、何かその選手の特徴となるものが聞けた方がありがたいし、初めてサッカーを見ようというお客さんにとっても親切ではあろう。
一方、コンサのホームゲームでの選手紹介は、背番号、ポジション、名前を述べてそれで終わり。選手と選手の紹介の間隔も非常に短く、ゴール裏のサポーターは、「おーれぃ!」というコールを挟むのが精一杯。いちいちそこで選手のコールをしていては、次の選手の紹介が聞き取れないし、タイミングも取れなくなる。さらに、厚別の電光掲示板では、そのDJのコールよりも早く、どんどん選手の名前が流れてしまうため、ヘタをすると、先発選手が誰だったのか、ゴール裏では聞き逃し、見逃すこともある。コンササポの場合、選手紹介が終わってから、全員分の選手のコールをする決まりとなっているようだが、ホームゲームでは、1人2人、コールをし忘れてしまうケースも散見される(アウェイの場合、運営側からスタメン表を入手してくるルートがあるため、その心配はないが…)それがコンサの応援スタイルだと言えばそこまでかもしれないが、私にはそれは「苦肉の策」としか思えない。決して誇れるスタイルだとは言い難い。あまりにもお粗末だ。
さて、今回の新潟のケースであるが、DJがゴール裏のサポーターの動きをよく考えてアナウンスしてくれていることがよく分かる。メモを取っていないのでどんな台詞だったかは思い出せないが、「背番号21 ●●●●(←寸評) のざわ」というところで一区切り置き、次にサポーターと一緒に「ようすけー」とコール。その後、間髪入れずにゴール裏サポーターから「のざわ」(どどどん)「のざわ」(どどどん)というコールが入る。DJはコールが一段落するのを待ってから次の選手を紹介へ…といった調子である。「アンデルソン」など、名前だけしか紹介されない外国人選手の場合も、サポーターと一緒に名前をコールできるよう、きちんと間を取ってくれている。ゴール裏のサポーターが、選手紹介をDJと一体化して盛り上げている格好なわけだ。
このスタメン選手発表というのは、本来もっと感動的な場面のはずだ。特に、この日がプロで初出場となる選手。久しぶりの出場(特に怪我からの復帰など)という選手ならなおさらのこと。本人はもちろん、ずっと応援し続けてきた身内のみなさんやファンにとっても。それを、あたかも機械的な作業のように淡々とこなすコンサのDJ(←いやまあ、いちおう盛り上げようと意図した声の出し方をしてはいますけどね)と、この新潟のDJ・サポーターの共同作業。どっちがお客さんを感動させられると思います?
新潟サポーターのパフォーマンスについては、このほかにも選手入場前のチアリーダーズとの共同作業(サポーターの歌に合わせてチアリーダーズが手を振るシーン。選手入場が遅れ、やや間延びした感じはあったが(^^;;; )、ちょうどホーム側ゴール裏に位置する新潟市役所の屋上から垂らされたビッグフラッグの存在感(あれはちょっとよそでは真似のできない技だ(^^;;; )など、驚きや感動を与えられるものが多く、サポートの有り方について、つくづく考えさせられてしまった。試合は1−0でコンサが勝ったが、果たして応援ではどうであろうか。いやまあ、アウェイなのだから、この場でアウェイのサポーターがホームの新潟のそれを上回るパフォーマンスを見せられるはずもないが、果たして、人数ではこの日の新潟のそれを上回るホームゲームのサポーターをぶつけたとしてもどうだったであろうか?
コンサのサポーターは温かい、熱心だ、と言われる。観客動員力もJ1のチームと比べて遜色はない(札幌ドームという器を考えると、さらにhfcにとって、入場料収入がどれだけ大きいかということを考えると、この程度の水準で満足されては困るのだが…)。ただ、サポーター、ドールズ、DJなど、会場にいる人々すべてが一体となって雰囲気を作り出そうという様子、意思疎通というののはまったく見られない。皆、それぞれのスタイルで一生懸命応援しているのだろうが、むしろお互いの良さを打ち消しあっている感じさえする。さながら、選手の技量では決して2001年のチームのそれを下回っているとは思えない中、各選手がてんでばらばらで、チームのパフォーマンスとしては最低だった2002年シーズンのコンサのようだ。
私はもうホームゲームではゴール裏に行くことはないであろう。秋田在住の人間が、あれだけ激しい席取り合戦に参加するために、朝早くからドームに出向いて待ちつづけるためには、前の日から休みを取って帰省するなり、夜行列車で札幌入りして会場に直行するなりしなければならず、肉体的にも精神的にも負荷が重い。私ももうそんなに若くはない。正直、あの席取り合戦はこりごりといった気分である。決してゴール裏で応援する意欲が萎えたわけではない。アウェイでは今後もゴール裏で声を出して応援を続けていくつもりだ。
それだけに、今後、あの場所で応援するサポーターには、ぜひ、「行きたくてもあそこに行けないサポーターもいるんだ」ということをよく理解した上で、最高のパフォーマンスを目指してほしいし、そのためにも、サポートのあり方について、現状に満足せず、もっと研究、研鑚を積んでほしい。他人事のような言い方で恐縮だが、私は今後は、ホームゲームでは、いかに「お客さん」を連れて行けるかどうかに主眼を置きながら、SS席で観戦しようと思っている。だからこそ、そのお客さんを感動させ、あるいは「私もサポーターになりたい」と思わせる、そんな存在になってほしいのだ。
かつてのコンサのゴール裏にはそんなパワーが内在していたと思う。だからこそ、これだけの観客動員数を誇れるチームになれたのだとも思っている。ほかの席がガラガラなのに、ゴール裏だけはいつもびっちりという状況なのも、その名残りだろう。それが、最近何か、陰りみたいなものが見えるのが気に掛かって仕方がない。新潟のサポーターの元気さと対照的なその姿に不安が募る今日この頃である。
執筆 2003年4月25日