谷崎テトラ『グラウンディング・ミュージック』(リトル・モア)



この作品は、言わば「トランス小説」です。

この言い方が適当なのかどうかは分からないけれど、読んでいくうちにトランスを聴いているような気分になるのです。

もしくは、混雑したクラブで良質のテクノやトランスが流れる中で何も考えずに踊る時のような、そんな気分。

「小説」という呼び名すら適当かどうか迷うところですが、ここでは便宜上、小説と呼びます。

というのも、日記に近いような内容で始まるのにも関わらず、夢、幻覚、ついにはチャネリングまでが当たり前のように登場し

どこからが現実でどこからが非現実なのか、が読んでいけばいくほど曖昧になってきてしまうのです。

普通に生活していれば、この小説に書かれているような神秘体験はまず有り得ないのに

彼は淡々とその体験を私たち読者に伝えてくるのです。

これをフィクションとみなせば受け入れられるかと言うとそうでもなく、こちらの混乱は増していくばかり。

さらにあとがきにて「この奇妙なリアリティをうまく伝えることができてるだろうか。」という文があり

きっとここに描かれた世界は現実に起きたことなのだろう、と信じるしかなくなってしまいます。

著者はドラッグの経験を経て精神世界に強い関心を持ち、そこから世界各国を巡り様々な神秘体験をしているそうで

そういう世界を全く知らない私のような読者がこれを読むと、前述したようなトランス感覚を導くのだろうと思います。

とにかくとても不思議な長編小説ではありますが、一読の価値あり。

もちろんBGMはトランスでどうぞ。

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