星色物語bQ1
海の怪物編
「船に乗りたいな… それも古い船に… 」
突然カズが言い出した。彼女の故郷は別名“水の惑星”と呼ばれるほどで表面の多く
は水におおわれており、その文化が発達していたのである。大学の近くの海岸に女同
士で散歩に来ていた彼女はふと、故郷の海を思い出したのであった。
「古い船なら極地の近くにチャーターできるところがあるわ」
クィーニが言った。彼女はチャコと一緒に時々遠出をしているせいか、大学星の地理
に詳しいのであった。
「チャコはまめなんだな」
フロルはひやかすように言った。そういえばタダは少し出無精な所があり、黙ってい
ればなかなか行動を起こさないのであった。
「で、女性だけで行く気なのか?」
タダは聞いた。
「ああ、そうだよ。クィーニにカズとティラそれにオレとで行くって言ったんだ」
フロルは答えた。
「でも君たちだけでは心配だ。何かあったらどうする?」
タダは何だか悪い予感がしてきてしかたがないのである。しかしフロルに関しての直
感は、単なる“心配性の保護者”みたいな所があってあまりあてにならないのである。
「大丈夫、ちゃんと漁師がついてんだからさ。それに古い船だと言っても空くらい飛
べるようになってんだぜ」
「しかし… 」
タダは渋い顔をした。
「お前がどこにも連れてってくれないからあいつらと行くんだよ!」
フロルは言い返した。タダはまだ渋っていたが思い当たるふしもあるのでそれ以上言
い返す事はできなかったのである。
大学星には学生や教官たちだけでなく色んな人達が住んでいた。農産物に比べ新鮮
さが重視される海産物は、そのほとんどが大学星内の海で賄われていた。海岸近くに
は魚貝類養殖のための施設が設けられ、近代化された船はあらゆる海洋を網羅してい
たのである。極地には大学に海産物を届けるため、3日に1度の間隔で漁船が漁に出
ていたのであった。そして空いている日は学生相手に観光案内をしたりして副収入を
得ている漁師たちなのだ。
「わぁ… ほんっとにぼろい船… これで大丈夫なんか?」
フロルは若い漁師に文句を言った。
「大丈夫だって。今日はおやじが無理だから、このオレが君たちをどこにでも連れて
ってやるよ」
「お前、漁師なんか?」
フロルは疑いのまなこでその男を見ていたのである。
「いや、今日は里帰りしているついでのアルバイトさ。いつもはWー44惑星の大学
に行ってるんだ。ここの大学みたいなとこ、入学できるわけないからな。そうそう、
オレの名はマック。今日は美人ばかりでついてるな!」
正直な男なのか本当に顔が笑っている。
「頼りになるのかしら?」
カズが不安そうに小声で言った。自分が古い船に乗りたいといったからみんながつい
て来てくれたのだから…
「オレにまかせとけって!」
カズの声が聞こえたのか、マックは胸をたたいておおげさなリアクションをとった。
こうなれば彼にまかせるしかないのである。
船はゆっくりと岸から離れて行った。極地に近いものの数日前から晴天がつづいて
おり、その辺りの気温は高かった。
「これが魚群探知機なんだ。旧式だがまだまだいけるぜ。ほらこれが魚の群れなんだ」
マックは画面の中央に写っている影を指して教えてくれた。小さな魚の群れが写って
おり、海底のようすもはっきりとわかるようになっていたのである。
「カズって変わってるのね。どうしてこんな船がいいのかしら? 同じ乗るならもっ
とすてきな船がいくらでもあるのにね」
ティラがクィーニとフロルに向かって小さな声で言った。もちろんマックにも聞こえ
ないように…
「芸術科のやつって変わってるのが多いからな。そういうお前も芸術科だったな」
フロルは笑っている。どうやら彼女もこの船が気に入っているみたいだったのだ。カ
ズはしかたないな、というようにクィーニと顔を見合わせた。船はスクリューをゆっ
くり回して動いている。マックが言うにはこの船は随分長い間、空中飛行をした事が
ないという事だった。
「このゆっくりと海の上を漂っている感じがいいのよね」
カズはもって来たスケッチブックを取り出して、海や船内の写生を始めた。ティラも
それに習ってスケッチブックを広げたのである。
「へぇ… うまいもんだな。芸術科だけの事はあるな」
フロルは感心して彼女たちの絵を見ていた。フロルは絵を描くのが苦手なのだ。クィ
ーニもまた、フロルと同じく絵心はなかった。
「さすがとしか言いようがないわね。私なんて一日かかっても一枚も描けやしないわ」
海面はうねりも少なく穏やかな表情を見せている。マックは自動操縦に変えている為、
暇そうに彼女たちを見ていたのであった。華やかな金髪美人だが気が強そうでうっか
りしした事を言えそうにないフロル。優しさが顔に滲み出ていて“お嫁さんにはもっ
てこいタイプ”のクィーニ。黒髪で個性的だが少し気が弱そうなカズ。くるみ色の巻
き毛で童顔がかわいいティラ。年頃のマックにとってそんな魅力的な女性たちと一緒
の船に乗って、しかもそれがいいアルバイトになっているというのだからこれはラッ
キーとしか言いようがないのであった。彼は自分の同級生に今の自分の姿を見せてや
りたい気になっていた。
「夜だと星が見えるのにな」
天文学科のクィーニがため息をついた。何もない海に飽きていたところなのだ。
「暇そうだな。なんなら漁でも見せてやろうか?」
マックはクィーニに声をかけた。
「漁師でもないお前にできるのか?」
フロルは突っ込みを入れた。
「おやじと一緒に海に出た事くらいあるさ。まぁ、見てなって」
マックは得意そうに胸を反らして答えた。こういうところが彼の正直な性格を表して
いる。彼は海に大きな網を打った。
「流し網だから速度を上げるぜ」
マックは手動に切り替えて舵を操作した。その姿は絵本の挿絵に載っていた船長のよ
うで、カズは彼をモデルに絵を描き始めたのである。
海面は相変わらず穏やかで、波といえばこの船の起こす波ぐらいなものでみんなは
気持ち良い船旅を楽しんでいたのであった。マックは網を引き上げてその収穫でみん
なを喜ばした。そして予備の網をもう一度打ったのである。
「船っていいもんだな。オレ、空を行く船ばかり乗っているから海を進む気持ち良さ
をあまり知らなかったんだ。ほら、風が感じられるだろ?」
フロルはほほに手を当てた。冷たい風が彼女の髪を揺らして通り過ぎて行く。気温が
高いといっても極地は寒いのである。
「そろそろ引き返そうか?」
日が傾いてきたのでマックが声をかけた。少しもやもかかって来た。
「飛んで帰るの?」
ティラが聞いた。彼女は海を行く船が気に入っていたのであった。
「いや、オレはこの船で空を飛んだことがないからこのまま帰るんだ」
マックは答えた。
ガクン!!
速度はあまり出していなかった船なのだが、突然それは止まった!
「いったいどうしたっていうんだ?」
フロルはマックに聞いた。
「網に大きなものでもかかったの? まだ引き上げてなかったじゃない」
そうだった。マックは二度目の網を引き上げていなかったのだ。
「でっかい鯨だったりしてな」
マックは笑った。しかしその笑顔は網を引き上げかけた瞬間、凍りついたのである。
「そんなばかな事が… 」
マックはうなった。今、目の前に引き上げられた網はものすごい力でねじられていた
のである。それは巨大な生き物が、船にいる者達にわからぬように無言の威圧を与え
るために行ったもののように受け止められたのである。
「どうしたの? 何かあったの?」
近寄って来たクィーニが青ざめたマックの表情を読み取って、不安な気持ちを隠し切
れずに言った。カズやティラも何かを敏感に感じ取っていた。
「何かがこの海の中にいる!」
マックは海に向かって言った。5人は顔を見合わせた。
「こわい… 」
カズがティラにしがみついた。
「まさか… ? 魚探には何も写ってないぜ」
フロルは魚探の画面を見ながらマックに言った。
「計器類は作動している。エネルギーがなくなっちまったんじゃねぇな。スクリュー
がいかれちまったんか? 座礁なんて考えられねぇし… 」
フロルの言うようにここは座礁するのには水深があり過ぎる。第一その原因となるよ
うな影はない。
「でも動かないんだ! まるで誰かがスクリューを押さえ込んだようになっているん
だ!」
マックは初めての体験にあせっていた。マックは直ちに通信機をとり近くの船を呼び
出した。しかし相手も船も同じ状態で救助は望めそうにない。この近辺にいる船は同
じ港から漁に出ている知人が多い。ほとんどが自分の父親くらいの年齢で、飛行機能
がついている船に乗っていながら空が飛べない者が多かった。彼らに期待する訳には
いかないマックはもっと広い範囲にSOSを飛ばしたのであった。しかしその手は震
えていて、声は上ずっていたのである。何もない大海原だけに緊急事態が発生すると
必要以上に現象の恐ろしさが増幅されるのだ。
「バカ! お前があせってどうすんだよ」
フロルは冷静さを保ちながらマックを叱咤した。
「私たちどうなるの?」
ティラが涙ぐんだ。それに誘われてカズも泣き出した。クィーニはまだ取り乱してい
ない。彼女はいつか、惑星AKAで食肉植物に襲われた時の事を思い出していた。あ
の時はチャコがいてくれた。しかし今はいない。それでも今、起こっている事は現実
なのだ。彼女は確実に成長していた。
「だめだ。やっぱり動かない!」
マックは操縦する手を止めた。船はゆっくりと波間を漂っている。今はまだいい。し
かし急に天候が変わればどうしようもないのであった。
「ごめんなさい… 私が船に乗りたいって言ったから… 」
カズは顔をおおって泣き出した。
「済まない… 」
マックもみんなに謝った。彼は所詮ただの大学生であり、父のまね事ができると言っ
ても専門的な知識や実体験は少ないのであった。彼は今、自分の浅はかさを思い知っ
たのである。
「今はそんな事、言ってる場合じゃねぇだろ! それよりこの場所から離れる事が先
決だ。マック、この船のマニュアルを見せてくれねぇか?」
フロルは旧式の船だが何とかなるかも知れないと思った。宇宙船白号、惑星AKAで
の体験は確実に彼女の身についている。そうなのだ。緊急事態に対し彼女は強い!
フロルは本番に強いタイプの人間だったのだ。裏返せば度胸があって向こう見ずとも
言うが…
マックはすぐにマニュアルを取り出した。それはフロルが初めてみるタイプのものだ
ったのである。
“旧式すぎる!”
フロルはあせった。
“こんな時にタダがいてくれたら… ”
しかしそんな心の声はタダには届かない。それにこの船に乗る前にタダに言われた言
葉を思い出したのである。
“君たちだけで心配だ、何かあったらどうする?”
タダは確かにそう言った。今から思うとそれは彼の直感かもしれなかったのである。
しかしもう遅い。事態は目の前に迫っているのであった。
「フロル、大丈夫?」
さすがにクィーニも青ざめている。マックも正直な男だけに動揺が顔に表れていた。
カズとティラはもう話にはならないのであった。
“お前と来るんだった… ”
そんな気持ちを跳ね返すようにフロルはマニュアルに見入ったのである。単純な船の
操舵に比べ、飛行マニュアルは複雑だ。しかし自分には航空科としての意地もある。
とりあえずマニュアルを理解する事ができれば何とかなるだろう。今までの授業で色
んなタイプの船を操縦してきたのだ。どれかに似ているかも知れないのである。フロ
ルは今、不思議と恐怖は感じられなかった。
「チャコ、クィーニ達はどこの船に乗ったんだ?」
タダはチャコのアパートに出向いていた。電話をすれば済む事なのだがそうしてはい
られない心境なのである。
「多分この前クィーニと一緒に乗ったとこやと思うけど… あいつ何にも言わへんか
ったからなぁ。でも漁師が乗るんやから安心しとってかまへんで」
チャコはそう言うもののなぜか不安なのだ。これが直感か単なる胸騒ぎかはわからな
いのだがとりあえずそこに行ってみようと思うタダだった。
「お前が行くんやったらわいも行くで」
チャコが言った。彼もさっきああ言ったものの、女性だけで行ったのが気にかかって
いたのである。二人は小型ボートに乗り、極地の港に向かって飛んで行った。
船の動力は正常なものの、やはりスクリューによる推進は無理のようだ。こうなれ
ばこの船や自分たちの運命をすべてフロルに任せるしかない。マックはフロルの次の
言葉を待っていた。しかし船内図を眺めている彼女からの指令はまだないのである。
とりあえずマックにできる事といえばとりみだしているカズやティラをなぐさめる事
だった。ふたりの恐怖はさらにつのってゆき、マックみたいな存在は必要不可欠なも
のとなっていた。それに手動権をフロルに渡した今となっては彼のできる事といった
らこんな事ぐらいしかないのである。そうこうしているうちに霧がかかってきてあた
りの海は見えなくなってきた。真っ白の何もない空間、それは言いようのない世界だ
ったのだ。
「どうしてこんな事がおこるの?」
カズは何かをしゃべっていないとじぶんを失いそうになってしまうのだ。
「昔、聞いた事があるわ。海には不思議な事がよく起こるって… どこかにミステリ
ーゾーンがあって船が消えてしまうって話。それに不思議な音が聞こえる事もあるん
だって… 」
ティラも急に饒舌になった。こんな時に余計に不安を増すような話をしても仕方がな
いのだが彼女も又、何かをしゃべっていないと不安で仕方ないのである。
「船霊の事だな、その音というのは。その音は周波数が高いので聞こえる人と聞こえ
ない人がいるって聞いた事がある。船の湿気や低気圧が原因らしいから霊でも何でも
ないんだよ。いろいろ謎はあるけれど科学的に考えてみたらそんなものか、と思う事
がたくさんあるもんさ」
マックは何とか彼女たちの気持ちを和らげようと力説していたのである。今起こって
いる現象もこの船だけの事ではない。何か原因があるはずなのだ。
そんなマックの声を背中に聞きながらフロルはあせりを表に出さないように必死だ
った。まだマニュアルを全部理解しきれなくて泣きたい気持ちだったのだ。今までの
事を振り返ってみると、困った時には必ずタダがいてくれた。知らず知らずの内に彼
に頼るのが当たり前になっていたのではないか? 甘える事を覚え努力する事を怠っ
ていたのではないかと自問自答しているフロルだったのだ。彼女は今、真剣だった。
これはテストではない! こんな所で遭難するなんてまっぴらである。救助艇の影は
まだないのだ。
「よし!」
妙な自信がわいてきた。カンではない。フロルはマニュアルを理解する事ができたの
である。
「エネルギー全開、発進!!」
フロルはみんなに聞こえるような声で言った。それは単にみんなを安心させる為だけ
ではなくて自分に言い聞かせる為でもあったのだ。
マックの船は宙に浮いていた。彼はこの船が宙に浮く事を知っていながらも信じら
れないような気持ちになっていたのである。
「すごい… 」
マックの正直な感想だった。
「すごかねぇさ。もともとこんな機能の船なんだぜ」
ほっとしたフロルがマックに声をかけた。カズもティラも安堵の色が隠せない。クィ
ーニはフロルのそばによって行った。
「あなたってすごい人ね」
彼女はフロルの額に流れる汗をふいてやった。緊張していたせいか暑くはないのに汗
が流れていたのである。
「ありがとう、君がいなかったら… 」
マックはフロルの手を握った。
「いや、オレ以外の航空科の奴ならもっと早く操作出来てただろうと思う。別にすご
くもなんでもない」
きっとタダなら手際良くやっただろうと思うのだ。
船が港に近づくと、救助艇が発進しているのが見えた。いまからSOSを出してい
る船を探しに行くのだろう。よく考えてみるとあれからじっとしてても救助されてい
たはずなのだ。それでもあの時はこうする事しか思い浮かばなかったのであった。カ
ズとティラは無事に港に着いた事を喜んでいた。彼女たちは生まれて初めての恐ろし
い体験だったのだ。
「オレ、船の事、もっと勉強するよ。今日はいい体験をさせてもらったよ」
マックはフロルに礼を言った。
「ほんとに君は女性なのか?」
マックの口から飛び出した言葉は確かに彼の正直な気持ちなのだが、フロルにとって
は引っかかる言葉だったのである。
「お前どこに目ぇつけてんだ! オレのどこが男に見える?」
強気のフロルに圧されながらマックは思いっきり弁解していた。やはり彼女は思った
通り手ごわいのである。
「フロル、そのくらいにしときなよ」
タダの声がする。彼女は振り向いた。
「チャコ!!」
クィーニがチャコに飛びついた。
「クィーニ、えらい目におうたんやってな。さっき聞いたばっかりなんや。どうもな
かったか?」
チャコはいとおしそうにクィーニを抱き寄せた。クィーニはチャコの胸に抱かれ安心
したかのように泣き出したのである。それを見ていたタダは少し期待しながらフロル
の方を向いた。しかし彼女は何も言わない! 飛びついても来ないのだった。理由は
明らかなのだが… タダは正直な所、がっかりしたのである。
「それは塩分の濃度の差によってできる内部波の為だな」
海洋学に詳しい教官が教えてくれた。
「内部波?」
フロルは聞き返した。
「そう、天気のいい日が続いた為に極地の氷が溶けて、海面に塩分の薄い軽い水が広
がる。そしてその下の塩分の濃い重い水との間に巨大な波ができるのだ。だから君の
乗った船は運悪くスクリューがその境目に入ってしまってたんだと思うよ。だからス
クリュー自体は回っていても、それは内部波を起こす為だけに消費されてしまってい
たんだ。もちろんねじられた網は内部波によるものなんだ」
「でも水面は何もなかったのに… 」
フロルはあの時の事を思い出していた。うねりはあるものの、水面下でそんな事が起
こっているとは思われないような静かな海だったのだ。
「内部波のこわい所は海の表面からは何も見えない、感じられない事だろう。ま、何
事もあなどらないようにって事かな?」
そう言って教官は笑った。タダとフロルは礼を言って教官室から出て行った。
「どうした?」
フロルが立ち止まったのだ。
「 …… 」
「何を泣いてるんだ?」
今頃になって恐怖と緊張がよみがえって来たのだろう。
「泣いてなんかいない!」
フロルはまだ意地を張っている。
「涙… 出てるよ」
タダも少し意地が悪い。フロルはあわてて目をこすっていた。タダはやれやれと言う
ように両手を広げた。タダは港に着いた時、チャコに飛びついたクィーニをかわいい
と思ったが、こうやって意地をはって素直になれないフロルはもっとかわいいと思っ
たのだ… どこまでも身びいきの強いタダだった。
タダは何も言わないでハンカチを差し出した。フロルはタダの顔を見上げたが黙っ
てそれを受け取った。フロルにはちゃんとわかっていたのである。タダが自分の気持
ちを充分に理解してくれていると言う事を…
タダの後ろからフロルはそっと抱きついた。それはフロルが口には出さない気持ち
なのだ。タダはそれだけで満足だったのだ。
「フロル、今度の休みに二人でどこかに行かないか?」
タダはチャコのまめさを少し見習った。もちろんフロルに異存はない。彼女はもう一
度、タダの背中にぎゅっと抱きついた。
タダの心にもう一度、満足感が広がって行ったのは疑いようのない事実なのであっ
た。
終