終止符
終止符パート1 (原作オスカル編)
生きている時と、死んで行く時の境目を私はこんなにはっきりと見た事がない。
おまえはほんのさっきまでかすかながらだけど、わたしの言葉が聞こえていた。
手を握るとその見えない目をわたしの方に向けていたというのに…
死とはこんなものだったのだろうか?
生きていた者が死んで行くのは人の数だけあるものだと気づくのが、
おまえの死ぬときだったなんて…
死んだ瞬間は涙なんて出ないものだとわたしは知ったのだ。
おまえは目を閉じた…
そしてわたしの悲しみが始まる。
終止符パート2 (原作オスカル編)
わたしにも死ぬ時がある事を知っていた。
そしてその瞬間が今だろうと言う事も感じている。
そう、わたしは死ぬのだと思う。
ああ… なつかしいものが浮かんでくる…
おまえが感じた瞬間をわたしは感じているのだな…
痛みなんて感じない。さっきまでの騒々しさがウソのように思えてくる。
わたしを見下ろす幾人もの視線が途絶えて行く…
死ぬのか?
死とはこんなものなのだろうか?B
でも怖くない。今まで持っていた死のイメージよりも優しい死がわたしに訪れて
いる。
軽くノックをするように、死はやって来た。
きっとわたしは満足しているのだろうと思いたい。
おまえなしにこれから生きて行く辛さに比べれば、わたしはなんて幸せなんだろう
と感じているのは神への冒涜だろうか?
残す言葉なんていらない。死ぬという事実だけでいい。そしてわたしは今、死ん
だのだろう…
終止符パート3 (アニメアラン編)
仲間たちを見送るって口では言えねぇもんがあるって事だ。
特にさ、隊長、アンドレ。ふたり並んで手の届かねぇ所へ行っちまうなんて…
死んだ人間なんて今まで何人も見て来たさ。
しかしね、こんな辛いもんがあるって事を改めて知ったんだぜ、これでも。
そりゃ、ディアンヌの時はふぬけになっちまって立ち直れねぇかも知れねぇと思った
もんだが…
しかしね、正直言うとオレはあんたにほれていたんだよ。あんたにはアンドレがいる
事を知っていたんだがそんなのはオレの知った事じゃねぇ。
あんたが目を閉じて体の温もりがなくなってもまだ死んだって事が信じられなかった
んだ。
夜になってもう一度あんたの顔を見に行った時にも、まだいつか目をさますんじゃ
ねぇかって思ったもんだ。未練だね、こんなオレがいるなんて知らなかったよ。あん
たがオレを変えたのかな?
死ぬ前にあんたが何を考えていたかって事はオレにはわからねぇ。
しかし終わったよ。あんたは死んだ。ただのかたまりになってオレの前に横たわって
いたんだからな。
本当に生きている時とちっとも変わらねぇ奇麗な顔だった。
しかしもう…
そうだな、まだあんたに挨拶をしていなかったな。
言葉なんて浮かばねぇけど… とりあえず、あばよ、とでも言えばいいのかな?
隊長。
終止符パート4 (ジャルジェ夫人編)
子供は親より先に死ぬものじゃないのですよ…
なのにあなたは逝ってしまったのですね… 後に残されたわたしはどうすれば
いいのですか?
あなたが出て行った時、どんなにひきとめたかった事でしょう。
しかしあなたはたとえわたしが止めたとしても前を向いて行くのでしょう?
だから… そんなあなただからこそ心配だった。
しかしオスカル、自分の子供を心配しない親なんていないのですよ。子供は
いつまでも子供であり、親はいつまでも親でしかないのですから…
あなたにかける言葉が見つからない。悲しみが押し寄せてくる今を耐えるだ
けで精一杯なのですから。しかしわたしはあなたの為に祈ります…
ねぇ、オスカル…
あなたは風になってわたしのまわりを時折すりぬけているのだと思うのは、
都合のよい考えでしょうか?
あなたが通り過ぎる時に、あなたを感じていたいと思うのはおろかな事なの
でしょうか?
ほら、目を閉じるとあなたの幼かった頃がこんなにもはっきりと浮かんでく
るのですよ。
オスカル、子守歌を唄ってあげましょうか?
ずっと昔… 何度か唄ってあげた事があるのですよ。
きっとあなたは覚えていないと思うのですが、せめてもの…
ね、オスカル。オスカル…
終