君にとどけ!!
設定・・アキラ、ヒカル、両思いになった頃
アキラのヒカルに対する思いは本物だった。
それを緒方は全面的に応援している。
そうなのだ、緒方はアキラがかわいい。本当の弟のように思っている。
彼は今日もアキラのために色々と知恵を貸してやるのだった。
「うん、そうだ、それがいい」
緒方はアキラの提案を支持した。
「それじゃ緒方さん!」
「うん、後はまかせたまえ」
かれはニッコリ笑って快諾したのである。
"んと・・、これでいい"
アキラは目の前の道具類を見て言った。
懐中電灯、飴、ミネラルウォーター、胃腸薬、香水、そして・・・尿取りパットなど等・・
「アキラ君、心の準備はできたかね?」
緒方は優しく聞いた。
これが成功するとヒカルは感激して涙を流してくれる事は間違いない。
その様子を心に描きアキラはうっとりするのだった。
「ええ、お願いします、緒方さん」
アキラは決意した。
彼は大きな丈夫なダンボールの中に入っていく。
それを緒方は某宅急便屋に運んだのだった。
「・・・だと〇●円になります」
緒方は取扱い注意と書いた大きなダンボールをあずけ、心配げに空を仰いでいた。
「無事に届くかな・・」
ふと不安になったが運を天にまかせようと思う。
「しかしコレを先生が知ったら・・」
彼はアキラが自分の所にいるとウソをついていた。
「いや、今さら言ってみても仕方ない。手合いがない時ぐらい愛の為に時間を割いて
もかまわないだろう」
と、思うのであった。
"うっ・・・"
アキラはうめきそうになった。
彼の入ったダンボールが持ち上げられてトラックに積まれたのだ。
ものすごい衝撃があったがそれでも取扱い注意通りの扱いだった。
"我慢だ・・我慢!"
彼は自分に言い聞かせた。
"もうすぐ彼女の元に届くのだ。その時に最高の笑顔をプレゼントしよう"
彼はぶつけた腕をさすりながらほくそえんでいた。
ヒカルに告白し、受け入れられた事はアキラを有頂天にさせた。
そしてさらに気に入ってもらいたいが為に彼は頑張るのだ。
"あ・・"
急に尿意がした。
前日から水分を取っていなかったのにやはり生理現象はやってくる。
たとえ尿取りパットがあったとしても便をすれば悪臭を放つ。彼女にプレゼントとしての
自分が綺麗でいたい為に昨日は食事をとっていなかったのだった。
最近のパットは吸収力が強い。夜用のものだとかなりの水分を吸収する。
「あ・・」
彼は用をたしていた。するともうひとつの用もたしたくなってきたのだ。
"あ・・あ・・・あ・・・・・・っう!"
彼はついでにやっちゃったのである。
まさか宅急便屋もダンボールの中に人が入っていて、しかもひとりHしているとは思っ
ていない。
アンモニア臭とイカの臭いが狭い中にたち込めた。
"く・・・臭い・・・"
用意の良い彼は香水を取り出した。
ふわっとした柑橘系の匂いが悪臭を消してゆく。
"さぁ、進藤の家までもう少し・・"
彼の心はヒカルを呼んでいた。
ガタガタ揺れたけれど乗り物になれている彼は酔いもしなかったのだった。
「ハンコ、お願いしまーす!」
「はい、ご苦労さま〜」
こうやって届けられたアキラがヒカルの部屋にいた。
指導碁を終えてぐったりして帰ってきたヒカルの前に届けられた大きなダンボール。
「差出人が緒方・・ やだな・・何だか・・」
ヒカルはカッターナイフを取り出した。
「うわっと!!」
思わずブスッと刺さってしまったのだ。
「よかった、手を切らなくて・・」
彼女がカパッと開いたダンボールの中から・・
「ハッピーバースディ! 進藤!」
中から出てきたのは頭から血を流したアキラだった。
「キャーーーッ!!」
思わず悲鳴をあげるヒカル。
飛んで来た両親が見たのは彼女にボコボコにされたアキラの哀れな姿である。
しかし彼が冗談でやっているのではないことは明白だ。
"アホだ・・・本当にアホだ・・"
ヒカルは悲しくなってきた。
しかしアキラの心を無駄には出来ない。
だからただただ黙って涙を流しているだけだった。
「アキラ君、どうだった?」
緒方がアキラに聞いた。
「大成功ですよ、緒方さん。進藤は涙を流して喜んでくれました」
頭に包帯を巻いたアキラが満足そうに笑っている。
その幸せな笑顔が緒方を明るくした。
その夜の緒方は上機嫌で飲んでいた。
"アキラ君、君たちの幸せな未来の為なら努力をおしまないよ"
彼は弟のようなアキラの為に一人で乾杯するのだった。
終