今日は晴れ! その1(続・明日はきっと)



その日の朝は昨日と同じ良い天気だった。
閃を乗せた電車が駅に着いた時、礼央は改札口の前で待っていたのである。


「礼央〜っ、ごめんなー」
久しぶりの再会にいきなり謝る閃の姿があった。
「うるせー、このバカ! 電話ぐらいできるだろ! アホッ!!」
と文句を言う礼央の身体に手をまわし閃はぎゅっと抱きしめた。
ふわっとした感触と甘いかおりは彼女のものだ。
「気持ちいい・・」
閃は目を閉じて礼央を感じていた。
こうやってると自分が勝手に転校していった事がウソだったと錯覚する閃な
のだ。
一方礼央は強すぎない抱擁に閃の思いやりを察していたのだった。
「皇、また、背。伸びた?」
ああ、と言うようにうなずいた閃。
「礼央はおっぱい大きくなった?」
と、これには蛇蠍拳が至近距離からお返しされたのだが・・・


   閃にはいっぱい聞きたい事がある。
自分にとっては突然だったが最初から決まっていただろう閃の転校、彼の
父の事、そして何より彼の心に占める自分の割合など。
しかし聞けない。
きっと聞くのがこわいのだと思う。
「オレさぁ」
そんな時、閃が話し始めた。
「一番の理由はお前が泣くの、見たくなかったんだよな」
「 ・・・ 」
「1年のバトルインパクトの後に父ちゃんに大負けしてさ。オレはやっぱ父
ちゃんに稽古つけてもらいたいと思っていた。だって何だかんだ言いなが
らじいちゃんはオレに甘いから」
「 ・・・ 」
「でもすぐに転校できなかった。だってよ、礫中の生活、楽しいから。今ま
で転校を重ねててこんなに学校が楽しいって知らなかったし」
「そ・・」
「やっぱさ、山田吾郎がいたからな!」
閃はニカッと笑った。
「でも最近その山田が急に強くなってきた。オレはもっと強くなきゃな
んね、って思った」
「あんたでも不安になるの?」
礼央は閃に聞いた。閃は今でも十分に強いと思う。
自分こそ閃に引き離されていく寂しさを感じていたからなのだ。
だからとてもそんな風に考えているとは思わない。
「おめーのさ、もともとすごかった礼央の動体視力がもっとよくなって来た。
スピードが上がってて。それに蛇蠍拳の威力も増して来てた」
閃は冷静に格闘家の山田吾郎、こと火月礼央を見つめる目を持っていた。
「そしてオレが丹田法を教えたしー。これは誰にでもできるもんじゃねー」
それによって閃は自分との差が縮まったのを感じていたのだろう。
「バカな!」
礼央はハラがたってきた。
「あんたの勝手な理由で!」
「ああ、勝手だと思ってる。その勝手ついでにどうじゃ? 今からオレんち
来ねー?」
閃はとっさに思いついた事を口にした。
「送っていくからさー!」
閃は礼央をプッシュした。
「ま・・ いいけど。遠い?」
「礼央の高校をはさんで同じぐらいの距離。今日はこの町を歩きたいと思っ
てたけどやっぱり礼央に今のオレを見て欲しいしな」
閃は本当に優しく笑っている。
"こいつ、大人になった"
彼の表情は別れた時から今までの成長を物語っていたのだった。




 一時間半ほどの電車の旅が終わりバスに乗り換える。ほんの十分ほど
でそのバス停に着いた。
「すっげー田舎!」
礼央が最初に口にした言葉がそれだった。連なった低い山のふもとには
点々と民家があり、県道らしい道沿いには畑が広がっていたのである。
「礼央の町が都会にみえるんじゃね?」
と言って閃が笑う。
つられて礼央も笑っていた。
"おかしいな・・"
礼央は思う。
久しぶりだというのに親しくなっている。

「閃・・」
と、呼んでみた。

斜め上を見上げると驚いたような閃の顔。

「なんだよー! 悪りぃか?」
恥ずかしくなって目をそむけた礼央はぶっきらぼうに言った。
「何も言ってねーじょ!!」
あわてて首を振る閃。しかしくすぐったい気持ちは否めない。やはり彼もお
互いの距離が縮まったと感じていたのだった。
     



                                 続く


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