リベンジ編



 昨年に引き続き、竜炎主催異種格闘Jr大会が開催されることになった。今年でJr大
会最後の白羽は去年の屈辱を思い出しながら会場に向かっていたのである。
すると前の方に閃と礼央がゆっくり歩いていくのが見えた。その近くにはなぜかよく瓦
礫ヶ丘中に来ている原田とその友達もいる。
"同窓会でもあるまいし・・・"
知った顔が多いと言うことだろう。そう言えば片桐秀人も参加すると聞いている。白羽
はうっとうしいロン毛をかきあげ苦笑した。
"・・・あんだぁ?"
その時彼は不審な動きをする人物を見かけたのだ。そいつは見た事があるような気も
するが、そうでもなさそうで定かでない。
要は自分とはかかわりのない人物なのだろうと思う白羽だった。


「礼央も出りゃいいのによー」
去年とは違い普通の女子の格好をしている彼女の隣りを歩く閃が言った。
「やだ、面倒だもん」
「まぁ、おめーの気持ちがわからんでもないが・・」
「だからあんたの試合、応援してやるよ」
礼央がにこっと笑った。
「おうっ!」
思わずガッツポーズを決める閃。
やはり彼女の応援は嬉しいものだ。
とは言え強敵である面々はほとんどが高校生になっており、正直なところ去年ほどに燃
えない閃なのだ。おまけに友が学校の用事とかで不参加だから余計だった。
「あんたの気持ちもわかるんだよな」
ポソッと礼央の言った言葉に思わずうなずいた閃だったのである。


「ふふん、今年も来たな・・・」
会場前の広場の木陰から閃を見つめる目があった。
しかしたいていこんな場合にこんなセリフをはくヤツは悪者と決まっている。
そう、この三瓶司はとんでもない卑怯者だった。
「ヤツには彼女がいたのか・・・」
彼はずり落ちそうなめがねを人差し指で持ち上げほくそえんだ。2人は何かをしゃべりな
がら受付で順番を待っている。
「去年は恥をかかせてくれたが今年は見てろよ」
三瓶はグローブをはめていない拳をグッと握ったのだ。
彼は高校生になっているのでJr大会には参加できない。したがって所属している"デビ
ルファクトリー"の後輩の応援に来ていたのだった。
 そこで自分に恥をかかせた皇閃を見つけたが焔豪大我と同時優勝するほどの彼に勝
てるわけもない。だから閃の彼女らしい礼央に目をつけ痛めつけて仕返ししてやろうと
思うのだった。

「あ、あれ!」
会場に向う原田とごっちゃんは顔を見合わせた。
会場の受付に近い木陰に三瓶の姿を見つけたからだ。
「いやだ・・今年も来たのぉ?」
原田は嫌な顔をした。
去年、その場所で彼に強引にナンパされそうになったのだ。そして閃に助けられた・・・
"でもおかげで閃さんに出会えた・・"
原田は胸が熱くなる。
あの時の姫だっこが彼女を恋する乙女に変えたのだから。
"閃さん、今年は簡単には負けません。きっと予選を勝ち抜きます!"
原田は閃の面影に誓ったのだった。事実彼女は閃と知り合ってからめきめき腕を上げて
いた。昨年のようにこの大会の予選であっさりと負けてしまわないだろうと思っている。
「今年も女子の部に火月礼央は参加しないらしいんだ」
ほんやりしている原田に向かってごっちゃんが言った。
「え? ええ、火月さん?」
「うん、彼女。去年は名前を変えて男子の部に出てたけどばれちゃったから出られないで
しょ? だから参加しないってうわさなんだ。第一あんなヤツが女子で参加したら大変よー。
みんな逃げるって。男子が混じって試合するようなもんじゃない」
と、ごっちゃんは本気で言う。男子の部に出場し、おまけにベスト8入りするような女子は
女子ではないと思うのだ。
「だから今年も優勝を狙いたいなぁと思ってんだ」
「じゃ、私も!」
2人は顔を見合わせて笑ったのだった。


 受付を済ませた閃が会場に入って行く。しかし選手以外はまだ入れない。礼央は時間
つぶしに広場に知った顔がいないかうろついていたのだった。
「オイ、おまえ」
礼央は突然声をかけられた。
「 ・・・?」
ふり向くと三瓶がいる。しかし礼央は彼の名も顔も知らない。
「あたしに何か用?」
とりあえず聞いてみた。
「用があるから呼んだんだぜ」
彼はニヒルに笑った・・・はずだったがあいにく己の面相のおかげでいやらし笑いになって
いる。
「それにしても皇閃の好みはこんなヤツなのかよぉ」
三瓶は礼央のふてぶてしい面構えを見て言った。しかし彼の右手は礼央の左腕を捕らえ
てえいたのである。

 皇・・と聞いてドキッとし、好み・・と聞いて顔を赤らめた礼央。
"まぎれもなくこの男は自分を皇の彼女として見てくれている・・・"
礼央は自分のおかれた状況なんて全然気にもならないようで、くすぐったい言葉の響きに
少しだけ微笑んでいたのであった。

「羽奈! あれを・・」
ごっちゃんが原田の袖を引っ張った。ちょうど受付をすませた時だ。
「あいつ今度はあの火月礼央にたかってる」
ごっちゃんの指さすほうを見るとすでに人だかりができていた。
原田は去年の自分の姿に礼央を重ねたのだが決定的な違いがある。
それは実力。
これから先の展開はすでに見えている。
たとえキックの三瓶と呼ばれていようとも礼央の前には通用しないだろう。そう思うと安心
して見ていられるというものだ。悔しいけれどもこれが現実だったのである。


ギャラリーが増え、誰もが礼央を助けようとヒーローを待っている時だった。
「おい、火月。何を遊んでんだ?」
と、声をかけたのは白羽三千也である。左手をつかまれ捕らわれの姫君を演じているのが
こっけいに見えてしかたない。
「遊ぶだとぉ?」
今度は白羽に顔を向けた三瓶がいきなりすごんだ。
「おまえ、おちょくられてんのがわかんねーの? だせーヤツ」
白羽は鼻で笑ったのだ。
「誰が誰に遊ばれてるだぁー?」
三瓶の目が怒っている。しかし白羽は余裕でニヒルに笑ったのだった。
それを見たギャラリーの女子が数人、彼に落とされた。
「ばーか、おまえに決まってるだろ。どこでどう間違ってそいつをナンパしようとしたのかは
知らないが相手をよく見ろって」
と言いつつギャラリーを気にして女子にウインクする白羽。
それは携帯のカメラを意識してだ。
 そのふざけた態度に三瓶は激怒し、礼央の手を離して白羽に鋭いキックを放ったのだっ
た・・・が。

バルディッシュ・・・

白羽らしい派手な大技で三瓶は地に沈められた。
一瞬の沈黙の後に沸き起こる歓声のほとんどは女子のものだ。
そこですかさずVサインの白羽。
そのふざけた態度すら絵になる白羽!
礼央は苦笑しながら一部始終を見ていたのだった。

「あたし、あんたに助けられたんだよな?」
礼央が言った。
思ってもいない展開だった。
「助ける気はなかったがおまえのパンチラなんざ見たかねーからな」
「アホッ!」
礼央は白羽の日月に軽い突きを見舞った。
しかし無防備だった為に思いっきりのけぞり尻餅をつく白羽。成長した体格の分だけパワ
ーがついた礼央の突きは彼を倒すのに充分だった。
「何しやがるーーっ!」
「てめーが悪ぃんじゃねーか!」
と、一喝した後で礼央は彼の横にしゃがんだ。
「でも守られるって気持ちいいもんだな」
「へ?」
白羽がとぼけた声を出した。
「あ・り・がとう、って言ってんだよ」
礼央は白羽に対して初めて見せるやわらかな笑顔で礼を言った。
「え? あ・・ああ」
きっと彼女はいつも助ける側なのだろう。だから素直に嬉しかったのだと思う白羽だった。
"こいつ、案外かわいいじゃん"
と、思う。元々かわいくないことはない。しかし彼女は普通の女子として見られていないの
が現実だった。
「ほら、皇が出てきたぜ、早く行ってやんな」
見ると閃がヒマそうにこっちに向かってポテポテ歩いてくる。その間抜けた男が今の所Jr最
強なのだと思うと腹立たしい気もする白羽だが・・
"フン、めでてーヤツ"
それは誰に対してかはわからない彼のつぶやきだった。
"そのツラを俺が・・・"


そしてどうなったかは・・・


                                          終
   

      




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