銀色物語13
レイランドのハーベイ王子は直感的にサファイヤ姫が次のシルバーランドの統治者になると
感じていた。
彼女に初めて会ったあの時、彼女ならばそうなる運命だと感じていたのである。
それは単なる直感だけではなく、シルバーランドを知る者からの情報や斥候の兵士、後から届
いたリッター将軍の報告書でも実証できるのだった。
だからこそフランツ王子、サファイヤ姫、そして自分の3人が和平を結べば良いと。
もっともフランツ王子ならサファイヤ姫の戴冠を重視していないかも知れない。
自分が彼女をさらっていけばいいと思っているかも知れないのだ。
しかし現実として地位や立場が重要になってくる時がある。
"父上のかわりに僕が行こう"
彼は正式な文書を携えてシルバーランドに行く決意をしたのだった。
そしてその後にはゴールドランドへも・・・
父や大臣たちと相談し、シルバーランドのリッター将軍あてに休戦命令を送ったのはつい先日
だった。
しかし直接出向いた方が何事も上手くいくような気がする。
"サファイヤ姫にもう一度会いたいからかも知れない"
そんな思いがよぎったがそうじゃないと信じたい。
なぜなら自分は王子という立場なのだから・・
サファイヤとチンクはナイロンの秘密の部屋にいた。計算高い彼の部屋にしては乱雑で、いっ
たいどこに何があるのかわからない状態だった。
「天使の僕がコソ泥の真似事をするとは思わなかったなぁ」
チンクはぼやいていた。
「それを言うならボクだって・・でもナイロンをこのまま放っておけないじゃない。
あいつの事だからきっと次の手をうって来るよ。今度に狙われるのはプラスチックに違いない」
その予想は当たっていた。
しかしその前に狙う標的がある事を今のサファイヤは気がついていない。
「だろうね。ナイロンは王様になりたいんだもの。ジュラルミンがいたから隠れていたけどきっ
とナイロンの方が悪党だよ」
チンクが言った。
「うん、ボクもそう思う。ジュラルミンやヘケートのお母さまは自分の子どもの為にそうなった
んだなぁって思うけど。でもナイロンにはそれが感じられない。自分が全てだろうな」
サファイヤは相槌をうったのだ。
そうしている間も手を休めなかったサファイヤは小さな古い箱に入った書類を見つけたのである。
「チンク!」
彼女は思わず大きな声を出しそうになって口に手をあてた。
「これ! これを見て! ここにレイランドの攻略法が書いてある。きっとこれがゴールドラン
ドが書いたとされる文書じゃない?」
そこには細かい字でレイランドの弱点とか軍の配置図とかが印されていたのであった。
それだけではない、後から出てきた文書はジュラルミンの遺書らしきものの書き損じだった。
ナイロンにプラスチックの後見人を命ずる文書もある。
どれもこれも同じ筆跡なのは、ナイロンが一人で考えていた証拠だろう。
「これは・・・」
サファイヤは1枚の文書を見つめていた。
彼女はナイロンがジュラルミンを抹殺した事をさとったのである。
それに今の彼の地位である国王代理も彼のでっち上げだったとも。
「本当に悪い奴だなぁ!!」
覗き込んだチンクが憤慨している。
「ジュラルミンもまさかナイロンが裏切るとは思っていなかったんだろうね」
サファイヤがその文書を箱に片付けた。遺書からジュラルミンの残留思念が伝わってきそう
な気がする。
「ホント、ジュラルミンの最期の声が聞こえるような気がするね」
チンクもサファイヤと同じ思いだった。
「王位につく事だけを考えるなんてボクにはできないよ・・」
彼女は遠い目をして昔の自分を思い出していた。
王子のふりをして育てられた自分がいた。
それはそれで辛い事もあったけれど、自分に合っていたようにも思われる。
剣も体術も身の軽い自分にとって結構楽しいものだった。
「ボクは確かの国民をだましていたけれど、でも国民が幸せになる為に働くようになるのが
王さまの役目だと信じていたよ。そしてそれは今も変わらない。プラスチックが王位につく
なら僕は応援したいと思うしね」
サファイヤは野心に無縁のようだった。
しかし幽閉されている身分では、所詮何もできないのだが・・・
「でも!」
彼女は文書の入った箱をかかえて立ち上がった。
「証拠がそろったぞ!! これでナイロンを追い詰めてやる!」
サファイヤの決意はかたい。チンクもその気持ちを察している。
「サファイヤ、がんばれ!」
チンクは両手を高く上げた。
その手を同じく両手でパン!とたたきサファイヤはにっこり笑っていた。
「チンク、見ていてね。そしてずっと側にいるんだよ」
彼女の微笑みは透き通っていて綺麗だった。
"この笑顔をずっと見ていられたら・・・"
チンクはそう願う。しかしそればかりは無理なのだ。
"僕が燃やした王様の掟、女でも王位が継げるって事が叶うと僕は天国に帰されちゃうかも
知れないんだよ。悪魔から君を守ってやるようにとも大天使さまから言われてたけれど、魔
女は死んじゃったし・・"
チンクは自分が天国へ帰る日を考えたくなかったのだった。
「まちがいありませんな。これはナイロン卿の字ですぞ、サファイヤ様」
そう断言したのはうらなり・・じゃなくてウラナール博士だった。
サファイヤの教育係としてずっと仕えてきた者だ。
今もひっそりと城内で暮らしていたのである。
「やっぱり。それじゃこれが公開されたらナイロンは失脚だね」
サファイヤは博士に確認した。
「もちろんですとも。戦争もおこらないし、これからの国交の為にぜひゴールドランドや
レイランドに謝罪すべきですな」
博士の言葉にうなずいて、サファイヤは立ち上がった。
もう次の行き先を考えている。
"レイランドからの使者が来る前にもう一度王子に会おう"
彼女はハーベイに見せる証拠の文書を持って再びレイランドに向けて急いだのだった。
残りの文書はチンクが責任を持って預かってくれている。
棺桶塔にいる母に預けるより確かだろうとサファイヤは感じていたのである。
一方シルバーランド国内ではサファイヤの戴冠式に始まる王位剥奪、戦争騒動やプラス
チックの王位継承、ジュラルミンの死、そしてナイロン卿の後見人・・それに伴う政治の
乱れで揺れていた。
"どうして平和だった国がこうなってしまったのか?"
誰もが思う事だった。
前の王様はおだやかで、何もしないようだったけれど平和に暮らせていたのだった。
ところが今ではどうだ?
税金が高くて暮らしにくく、おまけにかつては一つの国だったゴールドランドとも戦争状
態に入るかも知れないと聞いている。
親戚縁者の多い両国にとってそれは不幸な事なのだ。
「なぜプラスチックが王様なんだ?」
とあからさまに言う者がいて、兵隊にしょっぴかれていたのだった。
チンクはジュラルミンの遺書の下書きや、ナイロン卿の国王代理に関する証拠をプラス
チックに見せていた。
「父上は自害されたのじゃなかった・・・」
悔い改めての事かと思ったのだが、実はナイロンに毒殺されたようなのだ。
しかし彼には朗報でもあるのだ。
なぜなら国王代理がナイロンじゃないとしたら、自分はこのシルバーランドの事実上の王
様になる。
「ヘケート。僕はもう嫌なんだ! もうたくさんなんだよ。僕は王様にはなれやしないんだ。
僕だって知ってるんだ・・・ちゃんと・・・国民の声を聞いているんだよ」
なにをと、ヘケートは聞かない。
「国民がサファイヤの戴冠を望んでいるんだから僕はそうしようと思う」
プラスチックはずっと以前から考えていた事をはっきりと口にしたのである。
優柔不断な彼にとって異例の事なのだが、それだけ思いが強いのだろうと思われる。
「あなたの思うようにすればいいわ。でもそれには勇気が必要ね」
ヘケートが言った。
それにはチャンスというものがいる。
たよりなくて害のないプラスチックだとナイロンが思っているから今まで何もなかったのだ
ろう。
そうでないとプラスチックは抹殺されると感じたのである。
「まずはチャンスを作る事ね」
ヘケートは考えた。しかしそれは簡単なものじゃない。
「僕はどうしたらいいだろう?」
やはり弱気なプラスチックに思わず苦笑し、やはり自分の必要性を感じるヘケートだったのだ。
「やあ!」
と、言ってバルコニーから入ってきたのはサファイヤだった。
ハーベイ王子は再びもぐりこんで来たサファイヤに笑うしかなかったのだ。
会いたいと思っていた矢先に現れた彼女は前より少し打ち解けたかのように見える。
以前のドレス姿じゃなくて少年の格好だったがやはり美しい。
「こうも簡単に城に侵入されるとは・・・ この国の番兵は全然役にたっていないと見える」
彼は言った。
「ボクが素早いだけだよ」
サファイヤも負けてはいないのだ。
やはり城門で堂々と名乗る身分ではないと感じていたし、自分の立場を説明するのも面倒だっ
たからだ。
「サファイヤ姫、君はどうなるのが望みなの?」
ハーベイが聞いた。
「ボクはレイランドにゴールドランドと和解して欲しい。そしてシルバーランドともね」
彼女はサラリと言った。
かすかに笑みを見せているのはハーベイならそうするだろう事を信じているからだろう。
「いいだろう、そのほうが得策だ。すでに休戦命令は送っている。僕も戦争は嫌だし国民も
望まない。父は使者を用意しているだろうが、僕が行ってもいい。サファイヤ姫の見せてく
れた証拠があれば誤解だったとわかるしね」
サファイヤの思っていた通りの答えが帰って来た。
「ありがとう。それじゃ、ボクはまだ行く所がある」
彼女は帰ろうとした。
「待って、サファイヤ姫!」
ハーベイが彼女を止めた。
「もう少しここにいてくれないか?」
「でも・・」
と、断ろうとしたがやめた。
失礼な訪問の上に自分が一方的に話すばかりだったからだ。
「これからの行動について話しておくよ」
彼が引いてくれた椅子に座り、サファイヤはおとなしくお茶を待っていた。
しばらくすると王子付きの召使が最高級のティーカップに入れられたお茶を用意し、そして
静かに出て行ったのである。
ハーベイの話は思った通りたいしたものではなく、さりとて無下にできないサファイヤだった。
「・・・だよ」
ハーベイは話を終えようとしていた。
「そうだ、サファイヤ姫。君に言っておきたい事があった。棺桶塔の王妃さまの事だけどナイ
ロンが狙っていると思うよ。充分に気をつけた方がいい」
彼は忠告したのである。
「ありがとう、ハーベイ王子」
サファイヤは礼を言ってバルコニーから出て行ったのだった。
相変わらず軽い身のこなしにハーベイは再び苦笑した。
"サファイヤ、君をつかまえる事ができるのはフランツ王子だけなのかい?"
彼はぼやいていたのだった。
何も気にならなかったわけではない。
ハーベイに忠告されるまでもなくサファイヤは母のことが気にかかっていた。
"でもガマーがいるから・・・"
それだけが頼りだった。
しかしナイロンはどんな手を打ってくるかわからない。
しかし湧き上がってくる不安に彼女は耐えられなくなってきたのである。
"やはり棺桶塔に行こう!"
ゴールドランドに行くはずだったのだが彼女は行き先を変えた。
あれから何日帰っていないのだろう?
ガマーに任せっきりにしていたが、自分が抜け出しているのがばれたら大変だ。
"お母さま・・ "
サファイヤは母の笑顔を思い浮かべていたのであった。
ナイロンは棺桶塔に送った兵士たちに王妃を捕らえるように命じていた。
サファイヤはきっとそこにいないはずだ。
もし、そこにいたとしたら抹殺するようにも命じていた。
そうでないと王妃を捕らえる口実がない。
そして国外に逃出した卑怯者の王子として国民に伝えたらいいとも考えていたのである。
なんと言っても国民に信望のある王妃とサファイヤを生かしておけばロクな事がないに
きまっている。
どうにでもなるプラスチックの抹殺は後でも良いがこっちの二人ははやい方が良い。
"絶対サファイヤは棺桶塔にはいない。ふたり揃っていれば仲良く天国に送ってさしあげますぜ"
あのサファイヤがおとなしくしている訳がない。
そしてそれは事実だと悟ったのである。
なぜなら・・・
ナイロンは自分の秘密の部屋に何者かが侵入したことを知った。
あきらかにサファイヤだと彼は感じていた。
思った通り、自分に不利な文書が持ち出されていたのだ。
"サファイヤめ・・・一刻も生かしてはおけない!"
彼は棺桶塔にサファイヤがいないのを確信し、新たに刺客を送り返ってきたサファイヤを待ち
伏せ、抹殺するようにも命じたのだ。
次第に追い詰められてくる自分がわかる。
彼の中であせりが生じていたのだった。
ゴールドランドがリッター将軍を通じて休戦を申し込まれたのは少し前の事だ。
しかし新たにフランツ王子宛ての手紙を受け取ったのである。
"レイランドのハーベイ王子"
過去に会った事のある世継の王子の名だ。
中にはもう戦争の意志はなく、和解の準備の為に国王代理としてシルバーランドに行くと書
いてあった。
"彼はナイロンと一戦を交える気なのか?"
ハーベイの真意はわからないが、ともかく一難去ったみいだ。
"それじゃこっちも・・・"
フランツは即座に叔父王の所に行ってフランツは自分もシルバーランドに向う旨を伝えたの
である。
もちろん和解と和平の為にだ。
もちろん王や大臣たち、そして国民にも異存はないだろう。
"そしてここからは・・・"
彼はずっと気がかりだった棺桶塔に向かう為に自分の馬屋に駆けて行ったのだ。
こっちはあくまで私用だが将来の為でもある。
"サファイヤ、君の母上は僕が守る!"
フランツは確実に迫ってきている王妃の危機を感じていた。
ますます大きくなって来ているサファイヤの存在が彼を急がせた。
彼女を愛した自分に後悔はない。
軽はずみなことは承知の上だがフランツは単独行動に出ようとしたのである。
棺桶塔に危機が迫っていた。
ナイロンに命ぜられた兵士たちがやって来たのである。
人数は十数名と少ないものの、ナイロン直属の者たちだったので王妃を捕らえるのに抵抗を
感じなかったのであった。
「ガマーはいるか!」
部隊の隊長が叫んだ。
「へい、今すぐに」
ガマーは門を開いたのである。
何もない平地の中に建っている塔ゆえに、彼らが来るのは見張りの者がすでに伝えていたの
であった。
そしてガマーは抜け道の一つに王妃をかくまったのである。
「王妃と姫に用がある! ここに連れて来るのだ」
隊長はガマーをにらみつけて命令した。
「今は仕事中なもんですから」
彼は視線をはねつけて答えた。
「いいから連れて来い!」
隊長が再び命じた。しかし彼は命令に従わなかったのである。
「さてはお前、王妃と姫を逃がしたな!!」
剣に手をかけた隊長が叫んだ。
「 ・・・・ 」
ガマーは壁をドンとたたいた。
「野郎どもっ!」
ガマーが怒鳴ると隣りで待機していたガマーの手下が踊り出た。
彼らもガマーと同じく王妃やサファイヤの味方だったのだ。
「逆らうのかっ!!」
隊長が切りつけてきたのと同時に争いが始まった。
"王妃さま、静かにしていてくれよ"
ガマーは抜け道を気にしながら戦っていた。
狭い塔の中に剣の交わる音やイスやテーブルの壊れる音が響いている。
抜け道に隠れていた王妃はガマーが気になって仕方がない。
しかし出て行けば自分は捕らえられてしまうのだ。
きっと自分は殺されてしまうだろうと知っていたのだが、彼女は親切なガマーが傷
つくのを恐れていたのである。
カタン・・・
小さな音だったが隊長が気付くのに十分だったのである。
「 !! 」
隊長の動きが止まった!
「そこの壁を調べろ!」
彼は兵士に命じた。
"まずい"
ガマーの意識が壁に向いた。それを隊長は見逃さなかったのである。
「 !!・・・ 」
ガマーが声も上げずに倒れた。隊長の切っ先が彼の足を貫いていたのである。
「おかしら!!」
ガマーの手下が近寄ろうとして切られた。そして又ひとり・・・
"王妃さま・・ "
ガマーは薄れゆく意識の中に王妃の捕らえられた姿を見た。
"すまない・・・"
ガマーはサファイヤに謝っていたのである。
留守を守りきれなかった自分が悔しくて仕方がない。
"お姫さま・・オレは役立たずだ・・"
彼はそのまま気を失ってしまったのであった。
フランツが棺桶塔に着いたのはそれから半日もたたないうちにだった。
どうしても一人で行くと言うフランツだったが叔父王はそれを許さなかったのだ。
身辺警護の近衛兵たちが付き、彼らが誇らしげに飾りの付いた馬を走らせるのを苦笑する
フランツだった。
「考えたら抜け道以外から入るのは初めてだった」
フランツは正門が開いているのをいい事に中に入っていったのである。
「おかしい!」
彼はすぐに異変に気がついた。
「サファイヤ!!」
フランツはいるはずのないサファイヤの名を呼んでいた。
「フランツ王子! こちらに!!」
手下の一人が事切れていた。
「駄目です。すでに・・・ 」
彼を頭を横に振った。
「うん」
フランツが短く答え、中を調べるように命じたのである。
こうなることを恐れていたのだが現実は厳しかったのだ。
"遅かった・・・"
フランツは悔やんだ。きっと王妃は捕らえられたのだ。
しかしサファイヤはおそらくここにはいなかっただろう。
「生きている者はいないか! 塔じゅうを探すんだ!」
再びフランツが命じたのであった。
サファイヤが棺桶塔に戻った時、門には数頭の馬がつながれていた。
"誰かいる・・ "
彼女はそちらに近づく事を避けて抜け道から中に入っていったのである。
そして自分たちの牢の近くで見たものはガマーの倒れている姿だった。
「 !!! 」
サファイヤは叫びそうになった。しかし誰かがここに来ている。
「ガマー!」
サファイヤは小さな声で彼を呼んだのだ。
「 ? 」
しばらくの間の後でガマーは気がついた。
「 姫・・? 」
ガマーはぼんやりと浮かぶりんかくをサファイヤと認識した。
「ガマー! 何があったの? お母さまは? みんなはどうしたの?」
恐る恐る彼女が聞いた。しかし聞かなくても答えを彼女は知っている。
「ガマー、ごめんね。ボクが勝手なばかりに君をこんな目に・・」
サファイヤが謝った。
「すまない・・ サファイヤ姫・・ 王妃さまはナイロンの手下に捕らわれてしまった・・ 」
彼はあえいで言った。
足のケガはそうとうひどいらしく身動きがとれないようだ。
サファイヤは上着の下に着ていたブラウスを脱いでガマーの傷をしばった。
血は止まってはいるものの大ケガには違いない。
「お母さまは・・・ 」
おそらく捕らえられてシルバーランドに連れていかれたのだと思う。ナイロンの事だから利
用できる内は利用するに違いない。そしてその後は・・・
"お母さま・・ "
サファイヤは心の中で母に詫びていた。
こうなるかも知れないとわかっていたのだ。
しかし自分の行動を止めることは出来なかった。
戦争になるのを恐れていたし、ゴールドランドや国民を助けたいと思っていたからだ。
"でもボクはたったひとりのお母さまを守ることができなかった・・・ "
サファイヤはガマーの前で、ただうなだれるだけだった。
「誰かいるのかっ?!」
突然懐かしい声が降って来た! フランツが階段から上がってくる。
「サファイヤ!!」
そしてフランツはガマーの横でペタンと座っているサファイヤを見つけたのである。
「サファイヤ!」
もう一度フランツが呼んだ。
「サファイヤ?」
呆然としているサファイヤの前にがガマーが倒れていた。ひと目で重傷とわかる。
「ガマーはお母さまを守ろうとして・・・ みなボクのせいだよ・・ 」
サファイヤは白い頬をしているガマーの額に手をあてた。
「しっかりしろ、サファイヤ! それより生きている人を運び出すんだ。とりあえず
城に連れて行く!」
フランツは後を追って駆け上がってきた近衛兵たちにガマーたちを運び出すように命
じたのであった。
"フランツって・・ "
彼の命令は適確であり冷静だ。
サファイヤはフランツの頼もしい一面を見て新たに感じるものがあったのである。
終