続くといいな・・・(3)(閃礼央高1)
あたしはいつも思っていた・・・
恋愛に関してはみんなより一歩も二歩も遅れをとっているんだって。
そんな礼央が付き合いだしたのは中2になりたての頃、皇のひと言だった。
放課後の教室にひとりでいる礼央を見つけた閃は、一度だけまわりを見渡して入っ
てきた。
礼央の所に近づいた彼は・・
「おりゃ礼央が好きじゃ!」
閃は臆するでもなく自然に言った。
「はぁ?」
思わず聞き返す礼央。
"ひょっとして告ってる?"
真赤になってあわてふためいた礼央だが閃は飄飄として目の前にいる。
"皇ぃ。おまえ好きって意味、知ってる??"
礼央は思わず突っ込みそうになった。
「そんな変か?」
閃は不思議そうにのぞき込んだ。
"うわっ!! 顔、近けーよっ!"
そのままキスができる距離まで接近した閃の顔に驚いた彼女はクルリと背を向けた。
「な?」
「なんだようっ!」
「イヤか?」
「イヤじゃねぇ」
「好きになってくれとは言わないが好きでいいか?」
「あ・・・ぁ、うん」
"あたしもあんたが好き・・"
そう言おうとしたが言えなかった。
「返事しなくていーぞ。おめー、困ってるみたいだから」
少し寂しそうな閃の顔。
"違うよ! 皇。あたし本当は・・"
「だってよ、クラスの奴らがおめーに目をつけ始めたんじゃ。おりゃ、今まではオレだけ
の礼央―っって思ってたんがそれじゃいけねーって。だからよー」
今度は少しだけ照れた閃の声。
「焦ったんじゃ」
"キライじゃねーよ。むしろ好き。いや、すごく好きだ"
「初めてあった日から、おめーを意識してたと思う」
"あたしも・・あたしも!"
「それだけ」
「え?」
礼央はふり向いた。
「それだけじゃ。それだけ言いたかったんじゃ」
閃は納得した表情で笑っていた。
「今まででこんなコト言ったん初めてだからさぁ。やっぱり恥ずかしいもんじゃぁ」
"恥ずかしいのはあたしもだよーっ!"
彼女は心の中で叫んでいた。
まるで自分から告ったようにドキドキしているのだ。
「帰ろっか」
礼央は声をかけた。
「おうっ」
閃は元気な返事をする。
その声に勇気づけられて礼央は小さな声で言った。
「あたしも好きだ」
って。
"それが始まりだったのかなぁ・・"
今になって礼央は思う。
「何考えてんだ?」
「いや、昔のコト」
「その中にオレはいる?」
「あんたしかいねー」
「そっか、ならいいんじゃ」
「どうして?」
「だって今からキスしよー、と思うヤツが他の男のコトを考えてるのってヤじゃね?」
「え! だってここ・・」
そこは風除けがあるとは言えバス亭だった。
閃の家に行くバスは少なくて、ふたりだけが時間待ちしていたのだが・・
「 ・・・ 」
今までの思いが込められていたキスは長かった。
しかし二人はそれに気づかない。
「今度な」
閃が口をひらいた。
「もっと言いたいコトがあるから」
「言いたい事?」
礼央が聞く。
「でも今は言えねー。もっとオレが大人になって自分に責任が持てるまで言えねーんだ」
閃は礼央の背中に回した腕をゆるめずに続けた。
「待ってて欲しいんじゃ」
"もしかして?"
礼央は誰でも感じる何かを察していた。
"もう言ってるじゃん! 皇」"
「あたし待ってるよ」
そう言って彼女はニッコリ笑ったのだった。
閃の祖父は道場の外にいた。
"まだ、来ぬのぉ・・礼央さんは"
「親父、ほどほどにしておけ」
帝は練習用に置いている木を激しく(普通ではありえないほど)打ちながら言った。
「しかしバスが事故かも知れんと思うとな」
「ボケるのなら引退すればいい」
「いや、わしゃ閃の子を抱くまで引退せん!」
「いつまで生きる気だ?」
本気とも冗談ともつかない帝の言葉を物ともせずに朱門は立っていた。
そんな過激なやりとりを知らずに閃は礼央の肩を抱いて歩いていた。
そう、バスを降りて道場に続く山道を。
そして礼央は感じていた。
いつかこの道が帰る道になる事を。
終