友の謝罪編(閃礼央中一・大会後・退院後)



 閃が退院したのは大我や白羽に遅れること数日だった。
いずれも驚異的な回復力であり、前回のことがあるものの周囲を驚かせていたのである。

「閃、本当に火月礼央さんなのだな? 山田吾郎は」
秋葉道場で友は何度も確認した。いまだもって信じられないのだ。
"確かに非力な印象があったが・・・"
友は閃と闘っている時の山田を思い出していた。
しかし踏み込みや見切りの鋭さは大会でも片手の中に入る。
後半のあせりや体力不足がなければもっと試合は続いていただろう。
"う・・・ん、かといって不通、女子だとは誰も考えなかっただろう"
と、思う。
実際格闘誌のバトルリボンですっぱ抜かれなかったら、いまだに山田は男子で通っていた
と思われる。
しかし女子に対し失礼な事をしてしまった事実は否めない。
今日ここで謝ろうとおもっている友なのである。
「友、どうしたんじゃ? 顔色が悪りぃじぇ〜」
「いや、火月さんの事を考えていた。今日ここに来るのだろう?」
「おおっ、日曜を利用して勉強会だと言うんだもんな。ま、仕方ねぇけど」
口ではそう言いながらも礼央が来るのが楽しみな閃だった。

「皇ぃ〜っ!」
下で礼央の声がする。
どうやら大樹が案内しているらしく、閃の部屋に行く階段を教えている声が聞こえてきたの
だった。
「こっちじゃ〜っ!」
閃が大きな声で言った。
友はスッと立ち上がり、礼央の為にふすまを開こうとした。
しかし彼がふすまを開ける前に礼央が開けており、その手は彼女のブラウスをつかんでい
たのである。
ブチブチ・・
という音とともにブラウスのホックがはずされた。

「きゃ・・!!」
小さな悲鳴が聞こえた。
「す・・・すまぬ!」
見ると顔を真赤にした友がいる。
「礼央・・・ 水玉のブラジャー見えた・・」
閃も又、真赤になっている。健全な中一男子にとって女子のブラジャーは神聖なものなのだ。
「何しやがるーー!!」
礼央は思いっきり友を引っ叩いたのだった。
「す・・・すまん! まさか・・・いや、私が悪い!!」
友も必死だなのだ。
故意じゃないぐらいはわかっていても礼央はまだ息が弾んでいる。
「ともかくぅ! あんたは2回目だからな!」
友はハッとした。
大会の時に背中を破いたのは故意にだった。しかしそれは男子だとおもっていたからだ。
「いや、ちがっ!!」
「うるせーっ!」
「ははは・・・もういいんじゃね?」
閃はそう言って礼央をホームゴタツに誘ったのだった。

「・・・ん、で、こうなるの。わかる?皇」
礼央が数学の答えを解いている。
一方友は大樹に英語を教えていたのだった。
そう、友も又、礼央と同じく秀才なのだ。
 勉強をしている時間は長く感じる。特に閃にとっては他の生徒以上にだ。
「ふは〜っ! ちこっと休もうぜ」
閃が弱音をはき出した。
「ダメ」
冷たく礼央が返事をする。
「おりゃもう限界じゃ」
「じゃ、限界を越えろっツーの!」
トン・・
と、軽い音とともに閃が崩れた。
礼央の軽い突きが決ったのだ。
「ひでぇー、礼央・・」
さすりながら閃が文句を言う。
「目が覚めたんじゃね?」
「覚めすぎじゃぁ」
閃はすっくと立ち上がった。
「何だ?」
「小便!」
閃は逃げるように部屋から出て行った。それにつられたのか大樹も出て行ってしまったのだ。
「ったく・・・しょうがねぇヤツ」
礼央は広くなったホームゴタツに足を投げ出した。友はそんな礼央の様子をうかがっている。
"やはり早く謝っておいた方がいいな"
彼は覚悟を決めて礼央に声をかけたのである。
「あの・・火月さん。この前は本当にすまなかった・・」
友は誠意を込めて謝った。
「そしてさっきも・・わざとじゃないのだ」
「いいって。わかってるって」
必死なおももちで謝られると照れる礼央なのだ。
「まさか女子とは思わなかったから・・後で閃に聞かされてからずっとこの機会を待っていた
のだ」
「あんた、生真面目なんだな、あいつと全然違う」
「閃はアバウトだからな。でも真面目なのは私と同じだ」
「言えてる。だからもういいよ」
「いや、でも・・」
友はまだ謝罪がたりないと感じているようだ。
「あんた、結構しつこいじゃん」
ちょっとむかついた礼央がはっきり言い切った。
「しつこい・・・」
絶句する友。
"そうか・・・しつこい・・そうだ、私はネに持つ方なのだ・・"
妙に落ち込んでいる友の姿が痛々しい。打たれ弱い純情少年にとって礼央の言葉はキツす
ぎた。
「あ、わりっ! 傷ついた?」
あわてて謝ろうと友に向って手を伸ばした時・・

「うわっ!」
条件反射でその手をつかみ、投げ飛ばしてしまった友なのだ。
あわてて受身をとる礼央。
「あぶねーな! 何するんだっ!」
「すまないっ!! 体が勝手に・・」
と言いかけてハッとした友。
「どした? 礼央っ!」
物音を聞きつけた閃と大樹がトイレから帰ってきた。
「あーーーーっ! パンツ見えてるじぇ!」
と閃。ブラジャーとおそろいの水玉のパンツがかわいい。
「重ね重ね・・・」
と言うものの目はパンツから離れない。彼の場合はスケベ心からじゃなく、こわばっているから
なのだが・・
ガスッ・・
鈍い音が友の鳩尾に決った。あせりで防げなかった友がゆっくりと崩れていく。
"こわいよぅ・・"
大樹は本気で思った。

 ともかく形はどうであれ、友の謝罪は終ったようだった。その後、続けられた勉強会で友はずっ
と赤面が治らなかったという。
                              


                                     終



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