続・君に届け!




塔矢アキラは今さらではあるが、ヒカルに「アホ」のレッテルを貼られてしまった。
さる9月20日、彼女の元に届けられた宅急便の中に彼は隠れていたのだった。
それで何をしたかったかと言うと、「おめでとう」を言いたかっただけなのだ。
「それだけじゃダメだったのだ・・」
アキラは考えた。
「そうか、あの時に花とかアクセサリーとかを贈れば良かったのだ」
彼はポンと手をうった。


「女にプレゼントを贈る時はインパクトが必要なのだよ、アキラ君」
いつの間に来たのか緒方がいる。
「インパクト?」
「花でも何でも良い。相手にいかに自分からのプレゼントだ、と主張するには頭
をつかう事だな」
彼はわざと抽象的に言ったのだった。
という彼は今まであらゆる手を尽くして何十人もの女性をゲットしている。
いや、女性だけではない。
後学の為にと男性までもが彼の手に・・・いや彼の息子のえじきとなっていた。
ちまたでは彼の息子は10万馬力と言われているとかいないとか・・

もっともかわいい弟みたいなアキラに男とナニさせる気は一切ない!
できればかわいい進藤ヒカルとゴールインしてもらいたいと思っている。
明らかに美処女であるヒカルを狙っているやからは多い。
しかしアキラは容姿といい棋力といい彼女には申し分のない相手である。
しかも塔矢家というバックもあった。
そして何よりこの私がついていると言いたい。
もっとも彼の場合は憑いていると表現した方がよさそうだが。

「緒方さん!」
アキラは何かを思いついたのかパッと振り返った。
「こういうのはどうでしょう?」
彼は緒方に耳打ちした。
「おおっ! それはすごい! この私でも今までそんな事をした経験はない!」
「それじゃ・・」
アキラは緒方とともにプレゼントを買いにデパートに行った。
アキラと緒方の組み合わせは人目をひく。
ふたりともプレタポルテじゃない。
オートクチュールで決めておりしかも持ち物も高級ブランドだ。
金持ちのくせにブランド物にうといアキラは、母がかってくれたり頂きもののブラン
ドで身を包んでいたのであった。
 そんなアキラに店員は次から次へと高級品を出して来た。
たかだか10代半ばのアキラの年齢では考えられないぐらいの商品を彼はひとつ
ひとつ眺めている。
「緒方さん、これはどうでしょう?」
アキラはサファイヤのペンダントを指差した。
「そうだね、色白の彼女によく似合う」
「ええ、ボクもそう思います。それじゃさっそく明日にでも・・」
アキラは嬉しそうだった。
「そうそう、アキラ君。アレを実行するにはコレが必要だ」
緒方は入手経路不明のあるチューブを取り出した。
カタカナで"キシロカイン・・・" と、書いてある。
緒方はにっこり笑って使い方を説明したのだった。
 そして迎えた翌日に・・・



<進藤ヒカル様 今日の午後5時、いつもの碁会所の5階にて待つ 塔矢アキラ>
ヒカルの家の郵便受けに入っていた短い手紙がこれだった。
「なんだぁ? これはまるで決闘状じゃん・・」
ヒカルは手紙を読んでいた。
「まぁ、元々変なヤツだったけどさ、どうせ又1局の誘いだろうけど何をわざわざと・・」
彼女はとりあえずそこに行く事にした。
 一方アキラはと言うと・・・


「う・・・く・・・入・・らない・・」
とうめいていた。
「そうだ、やっぱりコレを使おう」
アキラは緒方にもらったチューブを取り出した。
「緒方さんって何でもアリの人だな」
粘滑・表面麻酔剤であるキシロカインゼリーは本来の目的をはたすべく使用されて
いたのだが・・・

 だが、それは違うぞアキラ!



ヒカルはやって来た。
「塔矢、何か用?」
ヒカルはいぶかしげに聞いた。
ここは碁会所の控えの間だ。
アキラは暑いのにマントを羽織って後ろ向きに立っている。
「君の誕生日の屈辱戦だよ」
とアキラが言った。
そして・・・

「誕生日おめでとう!!」
アキラはクルリと振り返り、ヒカルの前にその姿をあらわにした!

「きゃーーーーっ!!」

やはり、ヒカルの叫び声。
 そこには真赤なバラの花を息子に差し込み下半身すっぽんポンのアキラが大き
く両手を広げて笑っていた。
首からぶら下げた小さな包みには彼が選んだサファイヤのペンダントが入ってい
る。

キシロカインゼリーを塗って差し込んだトゲなしバラが恐い!!

しかし彼は大まじめだった。
「進藤、遅れたが誕生日プレゼントだよ!」
そう言って固まっているヒカルの手にペンダントを押し付けるアキラだったのであ
った。

"そうか・・塔矢は単なるアホじゃない!! ドアホだったんだ"

そう思うと再び涙が溢れてきてとまらないヒカルである。
しかしあふれ出る愛は十分に感じている。
そして彼を攻めることは出来ないのもわかっていた。
"そうだ、やはりこいつにはオレがついていないとダメなんだ・・"
彼女はそっとアキラにパンツを渡してはくようにうながした。
「もういいから、もういいよ・・だからしまってて・・」
息子を・・・である。


かくしてアキラの愛は伝わった。
ヒカルの胸にはサファイヤのペンダントが光っている。

 いつの間にか碁会所に現われた緒方はアキラの成功を感じていた。
"良かった・・良かったな、アキラ君"
彼のメガネの奥の目が潤んでいた。

  何事もなさそうな碁会所に碁石の音が響いている。
いつもの場所で穏やかに過ぎていく時間の合間にあんなコトがあったなんて誰も
知らないだろう。
いや、知らなくてもいいコトだったが・・・


                                     終
 

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