DISLIKE MUSIC/私的恣意的音楽感想 (数字/A〜D)
出来うる限り客観を排しつつ、気に入っているCDの感想を書きます。
ほとんどはここ2、3年のアルバムです。
そもそも自分が好きなものについて書こうと思うので、ここで書いているアルバムは
どれもそれぞれの意味で魅力的なものばかりです。
特記していなければヴォーカルは男性です。
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03/03 (2003/1st/国内/CCCD)
TMスティーヴンス(Ba)・そうる透(Dr)の超強力なリズム隊が生む激重・極太なグルーヴ、それに被さる鋭利なギター、
ラップと歌の中間のような歌い回しと咆哮じみたパワフルな歌唱を使い分ける女性ヴォーカル、それらの隙間に
縫い込まれた不穏なデジタル音。演っているのはファンクを基調としたヘヴィロックだが、なかなか独自の要素が強い。
一番の魅力は、やはりリズム隊だと思う。#2「憂国」の人力ドラムンベース、#3「応答セヨ」#11「Oswald」のゴリゴリと
迫る重量感、#8「BOY」のディスコビート、とにかくグルーヴも一音一音の出音もめちゃめちゃ格好良い。その一方で、
ギターとヴォーカルはリズム隊の圧倒的な存在感に比べるとやや力負けしているものの、ギターはヘヴィなリフや
ファンキーなカッティングの合間に「80年代メタルを通過した歌謡ロック」を連想させる微妙なセンスの古さ・ベタさ
加減がたまに見えるところが逆に良い味になっており、女性的な柔らかさと女性らしからぬマッチョで凶暴な表情が
交互に現れるハスキーなヴォーカル、ナショナリズムの臭いや軍靴の響きを持つキナ臭い言葉を使ってメロディに
フックを作り出すのが巧い歌詞はインパクト十分。その二者の個性と、キャッチーではあるがどこか日本的……と言うか
歌謡曲を思わせる垢抜け切れないところがあるメロディと、超一流のリズム隊とが絡み合うところに、USヘヴィロックの
模倣に留まらないこのバンドならではの独自性、面白味が現れている。
メロディと歌詞と歌がもう一つリズムに乗り切れていないのは気になるし、音作りももう少しラフな方が良かった気が
するが、難点らしい難点はそれくらい。日本でなければ(更に言うなら、バンドの成り立ちからしてAVEX主導の企画色が
強いものでなかったならば。ネガティヴな意味合いで言っているのではない)生まれ得ない格好良さ、だと思う。
54-71/Enclorox (2002/4th/国内)
ヒップホップとロックの融合、いわゆるミクスチャーだけども非常に独特な混ざり方というか、
雰囲気ははっきり言って変態。グリグリ動くベース、抜けの良いスネアの音がやたら耳に残るドラム、
不穏当な旋律を乾いたな音色でかき鳴らし、時に暴力的なソロを叩き付けるギター、どれも
極端に音数が絞り込まれていて、その分一つ一つの音とその隙間とが明確に存在を主張している感じ。
シンプルだが濃密。
ヴォーカルは、ラップと普通に歌ったり叫んだりするのを使い分ける。
声質にも歌い方にも妙なオーラがあって、金属質な鋭さと有機的でうねうねしたイメージが交錯するような声。
ライヴでの奇怪なダンス(?)を先に見てからアルバムを聴いたせいか、金属製の触手を連想する。
アルバム全体にどろりとした異様でダークな空気が色濃く漂う。
その一方でメロディそのものは不思議なくらいポップで聴きやすい。けれども、邪悪で不穏な和音の威圧感、
#12「MusicBox」で聴けるフリーな即興演奏、たまに顔を出す変則的リズムといった辺りには、強く「紅さ」を
感じる。つまり、とても好きな種類の音なわけで、何とも言えない格好良さがある。
54-71/True Men Of Non-Doing (2003/5th/国内)
前作「enClorox」で聴かれたポップなメロディと歌は随分と後退していると感じた。その代わりに、音の鳴りが更に
鋭く研ぎ澄まされ、磨き上げられた印象が強い。
空気の振動と静止が全く等価な、乾き切った音像。静かで、けれども一音一音に凄まじい力が渦巻いているかの
ような不穏な気配。奇怪な諧謔、荒涼として寂寥。コアになった……と言うより、核しか無い。
ギターが出していると思しき変なノイズ、時にヴォーカルよりもメロディアスなベース、とことん硬質でシンプルな
ドラム、そのいずれも強い存在感を放っているが、ヴォーカルの異質さがやはり際立っている。
踏みしめるように語りかけ、表情を押し殺して呟き、奇声を上げて喚き散らし、ふざけた歌い方でメロディを追う。
一切の無駄が排された音でもって一定のリズムを無表情に繰り返すバンドサウンドの上で、ヴォーカルが目まぐるしく
表情を変えながらのた打ち回る様は違和感の塊さながら。聴いていて居心地が悪くなる事この上ない。
極まって捩れていてアンバランス。なのに、この形でなければならないと言う必然性や有無を言わせない無言の迫力が
漲っていて、やっぱり格好良い。捉えどころは無いが底も無く、聴くほどにズブズブと深みにはまり込んで行く。
A.C.T./Last Epic (2003/3rd/海外)
適度なハードさと甘口のメロディを武器にするメロディアスなハードロックが基本スタイルだが、その主役の
メロディがかなりツボ。癖が無く伸びやかなヴォーカルが歌うメロディは適所で効果的なコーラスを伴いながら、
時に快活に、或いはメロウに、そしてキュートでコミカルにと自由自在。
楽器隊も曲の中でくるくる表情を変えながらしっかりそれぞれの存在を主張する。特に、低音部でグリグリと
動き回る太いベースと、前作に比べてセンス(と機材?)が遥かに良くなったと感じられるキーボードの作る
カラフルな感覚が非常に良い。
その一方でギターはちょいテクニカルなフレーズに走り過ぎな印象がある。個人的にはもうちょっと音数を抑えて
くれれば、と思わないでもないが、手数の多いパートがちらほら現れるのもまた魅力のうち。
どの曲もそれぞれがくっきりした個性と明確なフックを持っているし、アルバムの流れも緩急があって、
全体で一つのストーリーに仕立てているのが成功していると思う。
隅から隅まで楽しめて、サラっとした手触りながらダレる場面もない、とてもいいアルバム。
ACIDMAN/創 (2002/1st/国内/CCCD)
歌い方自体には力強さを感じるが、声質やブレスの入れ方にナイーヴで線の細い魅力があるヴォーカル、抽象的で
示唆的な歌詞、タイトなバンドサウンドに芯の強さと繊細さが同居する、ある種独特な手触りのアルバム。
パンキッシュに疾るものからノスタルジックなミディアムバラード、サイケな空間の広がりを見せるもの、思索的な
インスト、と楽曲の幅は割と広い。それぞれアレンジが上手く機能していて、全体的に散漫な印象になってない辺りに
センスの良さと懐の深さを感じる。表裏一体の淡白さと感傷が、幅広い曲調に統一感を与えているようにも思える。
太いベースの音がはっきりと強調されていてバンドサウンドの中で最も主張が強い。ベースソロもあるので、ベースが
リード楽器のような感触がある。一方で、ギターの音は一歩下がって効果音っぽく空間に色付けをする役割に回る事が
多いのが特徴的。低く芯の硬い音と、高くて拡散する音と歌声のコントラストが綺麗で気持ち良い。
歌詞もバンドサウンドも理知的かつ内省的で、生々しい体温や汗の匂いをあまり感じないせいか、歌や音に籠められた
意志の力が完全には外に向いてないように思える。こじんまりとしていると言うか、スケール感が足りないと言うか。
それでも、このアルバムから感じる静かな熱情には十分な説得力と魅力ががあると思う。
ACIDMAN/Loop (2003/2nd/国内/CCCD)
バンドサウンドがラウドでタフになった、と#1「type-A」を聴いた時点で感じた。前作はベースの太い音がすごく目立つ
音造りだったが、今作はベース、ギター、ドラムが良い意味で拮抗していて、特にドラムが力強くデカい音で叩くように
なっているのが印象的。どの楽器の音も、ガラス細工のような繊細さと儚さを漂わせたままに音の強度と鋭さが増して
肉体的になっていて、単純に聴いていて気持ちいい。
強化された攻撃的なバンドサウンドが繰り出す楽曲の完成度は高い。メロディの切なさと叙情性、ノイジーなギターが
作り出す音空間の広さと奥行きの深さ、トリッキーなリズムと音色、プログレ的ですらある緻密なアレンジが結び付いて
独特の透明感を持った曲が織り上げられている。決定的なメロディを備えた名曲は見当たらないが、淡い色使いの水彩画と
鮮烈な閃光のイメージが交錯する曲作りのセンスは磨き込まれていて、どの曲にも忘れ難い存在感の強さがある。
言葉の響きと美しさを大切にしたものである一方で思弁的に過ぎるきらいもある歌詞と非常に精緻な音造りが、「閉じた
空気」のようなものを曲に与えてしまっているように感じられるのは前作同様。けれど、今作ではその内向きな空気こそが
個性であり長所であると素直に思えるくらい、バンドサウンド・曲・ヴォーカルのいずれもが力強い。
速く激しい曲でガツンとかます序盤、リズムと音響の面白味を聴かせる中盤、暖かく優しい終盤、と言う分かりやすくて
曲の持ち味を活かしたアルバムの流れも好印象。気力の充実を感じさせる納得のアルバムだと思う。お勧め。
AIR/My Way (2002/6th/国内)
ジャズ・ファンクをベースにした心地良い緊張感を持つリズム、ドリーミーな声で歌われるセンチメンタルなメロディ、
余裕と落ち着きを感じさせるバンドサウンドが組み合わさって産み出される音楽。ジャジーなリズムが主体になって
いる曲とメロディの良さを緩やかに聴かせる曲とがあり、どちらも完成度は高い。
透明感の中に甘くぼやけた濁りがある声で歌われるメロディが何と言っても良い。さりげなく耳に滑り込むメロディは
優しく切なく、淡い情感を呼び起こす。一方、リズムの面白みとジャジーなニュアンスが前面に出た曲の方ではその
リズムに言葉とメロディを乗せていくような印象が強く、大人の雰囲気と言うか夜をはっきりとイメージさせる曲調や
跳ねるファンキーなグルーヴ、ウッドベースとドラムの流麗で疾走感のあるプレイが非常にスリリングで格好良い。
メロディ主体の曲とリズム主体の曲との間にやや差があって、アルバム全体では少々統一感が取れていないような
印象がある。そのため、聴いていて文句無く好みの曲と完成度が高いのは感じられても好みには合わない曲とがかなり
明確に分かれるが、それは一曲毎の魅力を深く突き詰めた機能的な曲作りがなされているからでもあると思う。
ヴォーカルの細く優しい声質がジャズやファンクの濃密な空気からちょっと浮いているように最初は感じていたが、
聴き慣れるとこれはこれで味があるように思えて来る。と言うか、組み合わせの妙が見えて来る。リズムとメロディを
纏め上げているのは結局この声なのだと思う。丁寧で隙の無い仕事振りで、高機能なポップアルバム。
AIR/One (2003/7th/国内/CCCD)
前作「My Way」から引き続いてジャズやファンクのリズムを下敷きとした曲もあるが、それらの要素は不安定なスリルを
演出するものから穏やかで余裕のあるユーモアを感じさせるものへと変わっており、歌とメロディがほぼ全ての曲で
前面に出ている。バンドサウンドのアコースティックな質感、メロディの美しさ、それを邪魔しないシンプル、なようで
いて凝った趣向も何気なく配されたアレンジのいずれもが、奇を衒わずにAIR本人の甘く端整な声の魅力を活かして
王道的なポップソングの良さを追求する方向へ向いているため、前作よりもアルバム全体の統一感があると思う。
#1「Daybreak」から#2「Starlet」の流れが素晴らしい。特に、弦楽器を使ったアレンジとセンチメンタルなメロディの
絡み合いが秀逸な「Starlet」は完璧と言っても言い過ぎでない程の名曲。この曲の持つ情感がアルバムの空気を決定
付けていて、続く#3「Tell Me More」と#4「Liar」辺りは前作のファンク路線を引き継ぐリズム感覚の強い曲ながらも
「Starlet」の余韻が残ったまま聴くと随分と緩やかな曲に聴こえる、と言う曲順がとても巧い。
アルバム中盤〜終盤にかけて穏やかで静かなイメージが強くなってゆくが、淡い色彩と緩い起伏で統一しながら曲調は
多彩。ニューミュージックを思わせる#8「Morning」の懐かしさと切なさ、ジャズバラードを巧みに自らのスタイルに
取り込んだ#9「The Sea Of Bed」、#10「Bicyclist」での軽やかな疾走感、いずれも実に表情豊か。
楽曲と歌声のどことなく儚げな風情に反して、時間が経っても色褪せない耐久性と成熟した強さを持つ、高品質で純粋な
ポップミュージック。聴き込み甲斐も聴き流し甲斐もあるアルバムだと思う。
ANEKDOTEN/Nucleus (1995/2nd/海外)
ヘヴィなベースのリフ、けたたましく鳴り響くギター、変拍子を繰り返すリズムが重くグネグネと蠢く
動のパートと、チェロやメロトロンが緩やかに優雅に紡ぎ出す静のパートは、そのどちらもが常に不穏な響きを
孕んでいて、織り上げられる楽曲は美しくもどこか不安を煽られるもの。
しかし、不協和音と変拍子と不安定な静寂が作るはずの地面からせり上がるような圧迫感や、聴いていると自分の心の
暗い部分に否が応でも対峙させられる、陰のある音に宿るはずの深みと淀みが少し足りない、と思う。
演劇的だけど感情表現の真実味がちょっと弱いと言うか……その分、様式的な美しさ、構成の精緻さ、リフの重さ、
か細い声に乗って浮遊する翳りのあるメロディ、そういうパーツ一つ一つや音の鳴りはとても良い。
時間の流れに取り残されて埃を被った洋館、古いゴシックホラー映画の耽美な風合い。セピア色の煌びやかさ。
そういう情景を思わせる、後ろめたくて憂鬱で美しい暗黒ロック。
また、かっちり組み上げられたアルバム全体の流れの中には存外に動的なラフさと隙間感もあって、そこら辺にも
強く惹かれるものがある。
ANEKDOTEN/From Within (1999/3rd/海外)
前作「Neuclius」に比してヘヴィなギターサウンドはやや減退したが、その前作においてどうも自分には表層的なものに
感じられた暗黒面の描写に真実味と説得力が増していると感じた。メロディやフレーズから虚仮脅しっぽいところが
無くなり、洗練が進んだように思う。アルバム全編を覆うのは、虚脱感と濃密な死の匂い。
ギターリフが少し減った代わりに、メロトロンを使ったシンフォニックなパートが大幅に増えた。ギターとメロトロン、
そして邪悪な変則リズムを操りながら動と静のコントラストを描く手法は相変わらずだが、その動と静の間に潜む淀みと
翳りがくっきりと浮かび上がる曲構成が今作は非常に巧み。浮遊感と重量感のバランスも実に良い。
クリアになったが依然として埃っぽく、現実と遊離しているイメージを強く聴き手に抱かせる音像が曲の陰影を鮮やかに
描き出しているが、何と言っても格段に表現力を付けたヴォーカルの成長が全体の完成度を底上げしていて、平坦な
パートにも聴き手を音の世界に引きずり込む小昏い魅力を与えている。#4「Hole」の中間部や#7「The Sun Absolute」で
聴ける、不条理でサイケデリックな反復パートから一気に劇的な展開に持って行く流れが特に好き。
全体的にゴシック風味と言うか耽美な空気がある。
だが、このアルバムに込められたのは華美とは真逆の、余計なものを一切取り払って手に入れた荒涼とした美しさ。
叙情的だが暗澹とした精神世界に深くダイヴしていくような感覚が味わえる、暗黒ロックの面目躍如。
ANEKDOTEN/Gravity (2003/4th/海外)
欧州的で古色蒼然とした暗闇と悲壮感を感じさせる居佇まいが良くも悪くも持ち味だったが、その持ち味を
薄れさせる事無く楽曲のバリエーションを飛躍的に広げる事に成功している。音像もよりクリアで現代的なものと
なり、同時代性を強く意識した作りだと感じた。そして、その狙いがぴたりとハマっている。
メロトロンやビブラフォンが妖しげな空気を作り出し、ヘヴィで不安感を煽るリズムが足元を固めるのはこれまで
通りだが、メロディから大仰さが、リズムから複雑さが減っているのでコンパクトかつポップになった。
暗さ一辺倒で閉塞感が強く漂っていた前作までと比して、開放的で明るさのあるアレンジ・メロディが表れたのが
今作での大きな特徴で、特に#2「リコシェ」のアコースティックギターとメロディとメロトロンの希望的な表情、
軽やかなオルガンソロが切り拓く新境地は感動的なまでに美しいし、ネガティヴとポジティヴが絶妙に絡み合いつつ
前作までとは色合いの異なるスケールの大きさを演出する#6「グラヴィティ」は見事と言うより他に無い。
他の曲でも、このバンドの肝である陰鬱な暗さをしっかりと楽曲のコアに据えつつ新機軸が打ち出されている。
#3「戦争は終わった」のフォーキーな手触り、#5「ロンドン南西4区」の呪術的なスネアとダウナーでサイケな音響、
#7「ふたりのゲーム」の甘い白昼夢のようなポストロック的アプローチ、そのどれもが極めて洗練されていて完成度が
高い。メロディの質そのものが非常に良く、透明感と深みのある歌ものとして聴き込めるのも大きな強み。
セピア色の郷愁と哀しみ、虚脱と眩惑と死の気配に満ちた暗黒感覚に加えて優れたポップセンスを手に入れ、孤高の
高みに達すると同時に普遍的なロックの魅力が備わった。素晴らしい。
THE ARK/BURN THE SUN (2001/2nd/海外)
場面転換を多用するプログレっぽい曲展開、臭味はない(思い切りクサいのも勿論好きだけども)が
扇情的なメロディがかなり好みなハードロック/ヘヴィメタル。
コブシと泣きを効かせまくって情感を篭めるヴォーカルがすごくソウルフルで力強い。そのためか
曲調がどこまで展開して行っても統一感があると言うか、一曲一曲に起承転結のメリハリがびしっと
効いていて、全体的にはとてもキャッチー。スペインっぽいフレーズやリズムが多用されていて、それが
実に効果的に情熱的な憂いを描き出しているのも良い。
攻撃的にテクニックを見せ付ける楽器隊の演奏がどれも自己満足に収まらず、ちゃんと必然性のアレンジに
なっていると感じられるのが好感触。ヴォーカルにもどの楽器パートにも、やたら解りやすい格好良さが
あって、音数と手数が凄く多いのにそれが全然無駄な多さじゃない。重量感があるのに軽やか。
人力ドラムンベースのような事までやってみせるリズム隊の引き出しの多さ・キメ細やかさは聴いていて
刺激的だし、オルガンっぽい音色を使ってソロも取るキーボードは音色を選んで空間を彩るセンスが
すごく良い。そして、ギターソロの泣きは本当に身が捩れて涙が滲むほど凄絶。
テクニカルで、搦め手っぽい手法を多く使っていながら王道的な格好良さと肉体的な説得力に満ち溢れている
ヘヴィメタルアルバム。お勧め。
ASTRAL DOORS/Cloudbreaker (2003/1st/海外)
ダークで欧州的なメロディとコーラス、ロックンロールのダイナミズム、いい感じにツボを突いて来るリフ、オルガンと
ギターの絡み合い、適度にヘヴィで適度に隙間のある音像。そう言った諸々の要素全てが、極めて正統派で何の衒いも
ギミックも無いハードロック/ヘヴィメタルを作り上げている。ある意味では既に完成された音楽スタイルであると
言う事、速い曲もあるものの全体的にミドルテンポより少し速い程度の曲が多い事によるものか、ファーストアルバム
にも拘らず腰を据えて落ち着いて聴ける円熟味を感じさせる。
ややくぐもった声質でソウルフルに歌い上げ、時折がなり立てるヴォーカルは、パンチ力も伸びの良さも申し分なく
非常に魅力的。このヴォーカルに歌われる事によって、メロディの高揚感や邪悪さ、渋み、哀愁などの表情がくっきりと
浮かび上がっている。突出した曲は無いが均一にメロディの質は高く、歌の良さが存分に味わえる作り。
その一方で、その歌が突出し過ぎているように感じられるところがやや気になった。楽器隊の出す音が弱いと言う訳では
ないが、どうもヴォーカルのサポートに回ってしまっているような印象があるので、もう少しゴリゴリとした迫力と
自己主張が演奏に欲しい、と思う。ギターとキーボードのソロが今一つインパクトに欠けているのも物足りない。
そう言う惜しいところがあるとは言え、安心して楽しめる完成度の高いアルバムだと思う。オールドスタイルの魅力、
ハードロックの精髄を強力なヴォーカルが聴き手に訴えかける様には、説明不要の格好良さがある。
THE BACK HORN/甦る陽(New Mix) (2001(1999)/2nd/国内)
1999年発表の旧バージョンは音が悪く、作り直されたためにNew Mixとなっているとの事。
今作では、彼らの持ち味である肌を突き刺すような緊張感や激情と、それをストレートかつコンパクトに聴き手へ
叩き込む解りやすさが現れていない。バンドサウンドや歌に漲るエネルギーに叩きのめされる気がしない、と言うか。
その理由は、主に曲造りの甘さ、拙さにあると思う。歌詞とメロディの結び付きが弱く、言葉がすんなりと耳に
入って来ないし、全体的に曲展開が少し冗長で、非常に印象的なフレーズや場面はあるにも拘らず聴いていてダレて
しまう事も多く、切実さや緊迫感と楽曲が乖離してしまっている。また、カントリー、ロカビリー、メタル、レゲエ、
ラップもどき、と様々なスタイルの音が入っているが、どこか借り物めいたところがあって、今一つ音を自分たちの
ものとして消化し切れていないような印象を受けた。時折ヨレヨレになる演奏とヴォーカルの不安定さも耳に付く。
それでも、はっとさせられる冴えたアレンジや、陰惨な真実を抉り取る歌詞とメロディがずばりと噛み合う場面は
断片的にあるし、少々空回り気味ではあるが篭められた意志の力は確かに見て取れる。後々の雛形を見る、と言った
意味合いも含めて全体的にはそう悪くないアルバムだと思う。また、以降の作品よりも遥かにベタな泣きが入っている
メロディとヘヴィメタリックな要素の強さは今作ならではの魅力で、特にドゥーミーなリフと和風のメロディが絡む
#2「走る丘」、ヘヴィなギターと切なく懐かしい歌が響く#9「さらば、あの日」は気に入っている。
THE BACK HORN/人間プログラム (2001/3rd/国内)
痛々しい。そして痛い。前者は居佇まいの雰囲気で、後者は聴き手に与える感覚なのだけれども、いずれにせよ
肌を、その奥の痛覚をいたく刺激する力を持っている音楽だと思う。
鍛え上げた筋力の強さを思わせる、とまでは行かないけれどかなり力強く重量感のある演奏と、歌謡曲や演歌を
連想させる日本的で直截な哀感(ていうか、クサ味)に塗れたメロディの対比が独特。
南米っぽいと言うか異国的なリズムがあちこちに出てくるが、これがメロディ共々歌謡曲からの引用あるいは
孫引きのような感じで面白い。暗く重いリフを時折聴かせてくれるのもなかなかに美味しいところ。
ヴォーカルは、苛立ちと焦燥をナイーヴな歌唱と絶叫でバラ撒くタイプで、不均衡なバンドサウンドとメロディを
上手く結び付けて纏め上げている。時にメロディを追えなくなる線の細い叫び、社会に対する極めて直情的な怒りと
疑問を叩き付けてくる歌詞は、切実かつ痛切。
余りに直接的なメロディと選語センスの青臭さ(アルバムタイトルからしてそうだと思う)、シリアスに過ぎて
余裕が無いところが、痛々しさを越えて聴いていていたたまれないレベルにまで達している場面が少なくないが、
そのテンパった未加工な衝動、クサ味こそが個性的な魅力になっていると感じた。聴き応えがある。
THE BACK HORN/心臓オーケストラ (2002/4th/国内/CCCD)
やや穏やかになったと感じる。少なくとも、表面上は。
前作「人間プログラム」にべったりと塗り篭められていた強い怒りが後ろに下がった代わりに、優しい表情が多く
見られるようになった。ただ、怒りと優しさの底に共通して流れる感情、哀しみと嘆きが薄れているという事は無い。
どの曲も一本調子ではなく、抱え込んだ衝動の強さからすると意外なほど鮮やかに場面転換をして見せる展開力は
前作を聴いた段階でも感じたけれど、その巧みさ、リズムの多彩さはより増しているように思う。そのためか、一曲
辺りの時間が長くなっているにも拘らず聴いている間はそれを感じない。
楽曲の出来はいずれも非常に良く、#4「夏草の揺れる丘」での美しいギターソロ、憂鬱な人形劇と言った風情の
#5「マテリア」、爆発的なサビを持つ舞曲の#9「世界樹の下で」など、聴き所は多い。
潔癖症気味のナイーヴさを感じるヴォーカルは、曲調に合わせて様々な表情を歌い分ける場面が多くなっている。
どう歌っていてもどこか不器用だが、その不器用さが逆にとても印象的。
特に、穏やかな曲で童謡風のメロディをたどたどしく歌っている時の声は本当に美しいと思う。
バンドサウンドは荒々しさから洗練に向かっているような感じもするが、音の根本にある泥臭い激情と真っ直ぐ過ぎる
言葉遣いはやはり苛烈。前作同様に聴き応えのあるアルバム。お勧め。
THE BACK HORN/イキルサイノウ (2003/5th/国内/CCCD)
楽曲の幅が広がり、#2「光の結晶」や#5「花びら」のように持ち前の攻撃性を抑えたポップな曲が見られるように
なっているが、基本的にはどの曲も聴きやすさを強く意識していると思う。衝動や鬱屈した激情を素のままで力任せに
ぶつける方法から、それらを伝わりやすい形に磨き上げた上で聴き手に効率良く叩き込むクレバーな方法に、曲作りの
方向性を明確に定めて来ていると感じた。ノイジーな刺々しさよりも整合感を優先している印象が強い音像からも
それが伝わるが、小ぢんまりと纏めた感じが微塵も無い辺り、鋭いバランス感覚を持っていると改めて思わされる。
曲自体がバラエティに富んでいる上にどの曲も非常に手の込んだアレンジになっていて、とにかく楽曲に意外性の
あるフックを付けるのが巧い。それでいて必要以上にトリッキーでもなく、全体としては相変わらず歌を中心に
据えつつザラついたギターサウンドで押すスタイルで、「歌と詞を伝える」と言うはっきりした目的意識に基いて
曲が鍛え込まれていると思う。中心となるヴォーカルは、錆びた刃のような絶叫や朴訥な感情表現に加えて歌い回し
の巧みさが備わり、牙を剥く窮鼠の姿と純粋で痛々しい優しさが交錯する歌詞は、歌い手の成長と共に真実味が
いや増した。極めて直情的な詞には怒りや嘆きと共に、空虚を潜り抜けた挙手空拳の希望らしきものが見える。
何かを伝えると言う目的、それを具現化する手段としての豊富な曲作りのアイデアとラウドで引き締まった
バンドサウンド。その両者ががっちり拮抗している事が、このアルバムを非常にキャッチーな魅力あるものに
している。殊に、ヘヴィメタリックなリフと後半のコーラスの展開が余りに劇的な#13「ジョーカー」と、切なさが
鋭くも優しく広がる#7「生命線」は出色の出来。更に多くの聴き手を見据え、視野を格段に広げた傑作。
BEN FOLDS FIVE/Whatever And Ever Amen (1997/2nd/海外)
ベース、ドラム、ピアノ/ヴォーカルの、3人組ロックバンド。
ちょっと情けなくも美しい声のヴォーカルが歌うメロディは、耳に一度入り込んだらそのまま居座りを決め込んで
しまうくらいに、直球ど真ん中に快活でユーモアに富んでて甘くて切なくてコミカルで優しくてシニカルでキャッチー。
ヴォーカルと並んで主役のピアノはもうやりたい放題で、アップテンポの曲ではまるでメロディも奏でられる
リズム楽器なのかと思う程痛快に引きまくって叩きまくる。その一方で、メロウな曲で聴かせてくれる優雅な
タッチも堪らなく魅力的。
リズム隊も、ドラムはリズムの外枠をタイトに固め、ベースはヴォーカルとピアノが派手にやってる下で実は
ちゃっかり歌っていて、としっかり主張している。
要するに、べらぼうに粋で格好良いピアノトリオの演奏にどポップなBEATLES風メロディが乗っているわけで、
これが良くないはずがない。曲によっては弦楽器に管楽器、アコーディオンも出てくるが、どれもこれもアレンジの
センスがすごく良いと思う。ピアノの響きと曲そのものの良さを存分に堪能できる。お勧め。
BILL BRUFORD with Ralph Towner and Eddie Gomez/If Summer Had Its Ghosts
邦題:「夏の幻影」(1997/海外)
King Crimsonのドラマー(当時。現在は脱退)のリーダーアルバム。
ドラム、ベース、ギターというトリオのジャズ。
ただ、ギターの人がピアノも弾きこなすので実際はカルテットのように聞こえる。
アドリブの応酬や複雑なリズムはほとんど無く、後半の曲の幾つかにはいかにもこの人らしい
攻撃的なドラムも出て来るけれども、あくまでもメインなのは穏やかでちょっとセンチメンタルなメロディ。
スマートで入り込みやすく、また集中を強いられる事も無いので、リラックスして聴ける。
良い意味でイージーリスニングな、とても素敵なアルバム。
邦題から連想するイメージ通りの淡い切なさがあるアコースティックギターの音が特に好き。
THE BLACK DAHLIA MURDER/Unhollowed (2003/1st/海外)
残虐な中に憂いや哀しみの色が濃く表れていて、暴力性と翳りが上手く混ざり合っているメタリックで表情豊かな
リフと、手数の多さで圧倒しながら前のめりに突進するドラムのスピード感がやたらと気持ちいい。
10曲36分を突撃一本で一気呵成に突き抜ける様は潔く、暴虐を極めんばかりの居佇まいながら聴いていて清々しい
のは、姿勢の良さが音に表れているからのように思える。抜群に格好良い。
ドラムの叩き出す剛速球と地響きに乗せてひたすら突撃突撃突撃を繰り返すのだが、テンポの切り替えやギターソロの
挿入(少したどたどしい気がするが、短所にはなっていない)など、曲に起伏を付けるのは巧い。
中でも、邪悪に喚き散らす咆哮と泥沼を抉るような低音の呻きをタイミング良く切り替えながら聴き手にガツガツと
噛み付いてくる魅力的なヴォーカルが、楽曲にある意味でのキャッチーさと整合性を与えていると思う。
ほとんどの曲を2〜4分台にまとめていて、アルバムの展開自体がスピーディなのも良い。
装飾の無い曲の構造や、どこか醒めたような乾いた音の鳴りからか、スケールの大きさを感じさせる演出は排して、
硬度と密度と鋭さをストイックに突き詰めているような感じを受けた。サブマシンガンの轟然たる掃射よりも
狙い澄ましたライフルの一撃を思わせる弾丸アルバム、ヘヴィメタルのコア。お勧め。
BLACK REBEL MOTORCYCLE CLUB/B.R.M.C. (2002/1st/海外)
邦題:「ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ登場」
シンプルで真っ向勝負、目の粗い3ピースのロックンロール。だが、ロックンロールの影の部分、気鬱と頽廃を体現する
かのようにヴォーカルには無気力さと不穏当な艶が宿り、フィードバックノイズがバンドサウンドの隙間を埋め尽くす。
ジャケの色使いの通り、彩度は限りなくゼロに近い印象。愛想も無い。
ポップなメロディセンスはさほど感じないし、気怠く背徳的な空気とフェイク臭い色気がどの曲にも色濃く漂っている
ので実際はさほど単調でもないにも拘らず曲毎の区別があまり付かず、渦を巻くギターノイズが生むトリップ感と雰囲気
の良さで聴かされるような部分がある。要するに、今ひとつポップでなく、どうも取っ付き難い。
曲が全体的に長いのも、それが陶酔感を呼び起こすのかそれとも単に冗長なのか、正直判断し辛く微妙なところ。
ただ、そのダラダラと弛緩した雰囲気、背徳感がこのアルバムの勘所でもあれば魅力でもあるのは間違いない。
聴き手を突き放すような取っ付き難さのせいで第一印象は良くなかったが、幻想的な世界の描出、黴臭く密室的な閉塞感
と暗闇、祈りを捧げるような曲想、とモノクロな心象風景の中の明暗と濃淡が聴くにつれてじわりと浮かび上がって来た。
スタイリッシュで洗練された居佇まいと初期衝動の烈しさとやる気無さそうでダルな風情が同居する様には、雰囲気モノ
の一言では片付けられない独特の格好良さが確かにあると思う。
BLACK REBEL MOTORCYCLE CLUB/Take Them On, On Your Own (2003/2nd/海外/CCCD)
今作の肝は、格段に強化されたリズム隊だと思う。
アップテンポの曲にはドライヴ感が、単調なビートの繰り返しには聴き手を引き込んで離さない磁力が備わった。
ノイズ成分が大幅に減退していて、サイケデリック感覚の源がフィードバックノイズからリズムに移っており、
力強さが増したバンドサウンドが剥き出しになっているため、洗練よりも泥臭さが先行しているような印象を受ける。
前作ではルーズでだらしない欝感覚を垂れ流すような曲がほとんどだったが、刺々しく攻撃的な曲の比率が高くなった。
それに合わせての事か、メロディラインにも多少抑揚が付いて取っ付き易くなっている。
また、バンドサウンドがソリッドになった事と呼応するように楽曲がコンパクトに纏められ、不必要な要素がばっさり
削ぎ落されているのが好印象。音像にどこか埃っぽく乾いた質感が付け加えられたのもいい。
骨格剥き出しのロックンロールに宿る抜き身の白刃のような攻撃性と黒く淀んだ頽廃のキナ臭い美的感覚、反復する
リフとリズムが生み出す麻薬的陶酔感が解りやすい形で提示されており、相変わらず愛想は無いながらもある種の
キャッチーさを獲得している。鳴らしている音全てと纏った雰囲気との総体から滲み出る求心力が前作より数段強く、
容易に聴き流せない凄みとダークなカリスマ性が出て来た今作は、留保の必要無く格好良い。お勧め。
BLIND GUARDIAN/Imaginations From The Other Side (1995/5th/海外)
ゴツゴツとしたリズムの疾走感、重厚長大に展開する楽曲、力んだヴォーカルが歌う漢臭くて時に哀愁が色濃く
滲むメロディと、それに覆い被さるコーラス……最も早い時期に聴いたヘヴィメタルアルバムの内の一枚。
全編に力が漲り過ぎるくらい漲っていて、ゴリ押し気味に疾るのが気持ちいい。その疾走感をエンジンにして
展開される劇的な楽曲は、ファンタジックな物語世界のような非常に明快な魅力がある。
メロディは大仰で勇壮、全体的にはダークなイメージが強いが親しみやすくもあり、サビで爆発する分厚い
コーラスはとてもキャッチー。演奏の剛健でずっしりした質感と、壮大かつ緻密なアレンジが上手く機能して、
結果としてメロディをとても効果的に聴かせる事が出来ていると思う。
また、どことなく透明感のある独特なツインギターの音色が奏でる美しいハーモニーが印象的。
トラッド風味の物悲しいアコースティックパートを取り入れたり、テンポを上げ下げしたりと緩急を付ける手法も
もう少しコンパクトに出来ると思える箇所が幾つかあるにせよびしっと決まっていて、じっくり曲に浸れる。
曲群はバラエティに富んでいてどれも優れているが、中でも中世的な暗さと強烈なスピード感、幾重にも重なる
コーラス、美しく哀しいギターソロが絡み合う#4「The Script For My Requiem」、冷たい空気が漂うミドルテンポの
#7「Bright Eyes」が特に好き。今でも、間違いなく自分のヘヴィメタルの基準。
BOOM BOOM SATELLITES/Umbra (2001/2nd/国内)
慎重かつ大胆に組み立てられたダンスミュージックの快楽、ジャズ的でクールな即興演奏、ロックの
力強さと圧迫感が同居するドラムと腹に響く太くて低いベースが生み出す鋭いリズムが圧倒的に気持ち良い。
トランペットやフルートの音は危険な匂いを漂わせ、弦楽器やピアノの響きは荘厳にして不穏。
全体的にキナ臭い格好良さがある。火薬が詰まった車で闇夜を疾走するような、そういう感じ。
一方で、ヴォーカルはそれほど前面には出て来ないし、メロディらしきメロディが出て来る場面は少ない。
声も、種々な音の中の一つとして捉えられてるように思える。
リズムの気持ち良さと、神経を逆撫でする尖った電子音に不協和音を奏でる生音、扇動的な声、
意識に深く作用する反響、脳内を押し広げられる感触がある。覚醒する音楽。
無機質で未来っぽい音が全面に散りばめられていているし、敢えて取っ付き易さは抑えられている印象だが、
根っこには非常に人間的と言うか今現在の生々しい苦悩が流れているように感じる。
重低音が効いた実際の音造り以上にヘヴィで、そしてシリアス。お勧め。
BOOM BOOM SATELLITES/Photon (2002/3rd/国内)
重苦しく暗いながらも動的だった前作「Umbra」と、基本的な音の質感はさほど変わっていないと思うが、全体と
してのイメージはかなり違う。強烈なリズムを打ち鳴らすドラムの音が後退し、危険なエネルギーと激情が充満した
ロック色が薄くなり、代わりにジャズがより強く深く、曲の中に取り入れられていると感じた。
元から歌メロは少なかったが、今作ではさらにそれが押し進められ、ヴォーカルはそのほとんどが囁き、或いは
呟きのようなものになっている。そのせいで、#4「Dress Like An Angel」や#7「Blink」のような攻撃的な曲も
ちゃんと収められているにも拘らず、アルバムを通して起伏に乏しいという印象を強く受ける。
けれど、フェンダーローズの柔らかい音やトランペットの生演奏と打ち込みの電子音の配合に感じる独特のセンス、
奥行きと広がりのある音像には、環境音楽にも近い気持ち良さがあると思う。丁寧に作り込まれた音が醸し出している
スマートな雰囲気そのものに備わる快感、と言うか。
前作でのギターを前面に据えずに作り出したヘヴィネスがとても格好良かっただけに、静謐なジャズを思わせる
このアルバムを最初に聴いた時は正直その掴み所の無さに戸惑いを覚えたが、よくよく聴けば曲ごとに仕掛けられた
凝った趣向も見えてくる。これはこれで悪くない。
BRUFORD LEVIN UPPER EXTREMITIES/B.L.U.E. (1998/海外)
KING CRIMSONの(元)ドラマーとベーシストのプロジェクトアルバム。
ブラッフォードとレヴィンのリズム隊+ギター&トランペットの四人編成が出す音は
何とも説明しにくい不思議な雰囲気を持っている。
チベット仏教の淡々とした詠唱、ちょっとひねくれたジャズ、カフェでのお喋りと喧騒、クリムゾン風の
変則リズムが生み出す高揚感、渋い夕焼けトランペット、東洋的なメロディ、
土着的な楽器で演奏された小曲、チェロの穏やかな響き、空間を彩る抑制された音色のギター、
様々なカラーを持った、ロックともジャズともプログレとも言えない曲が並ぶ。
音数自体はあまり多くないが、驚くほど聴く度に耳に入ってくる音が違う。
全曲インストだが血の通った温かみがあり、緩やかな流れの中に織り込まれた適度な緊張感と、
隠し味的に投げ込まれるユーモアと遊び心が心地良い。
アルバム全体が映像的で、異国の街の情景を描いた無国籍な映画のサウンドトラックを連想させる。
とても表情豊かで、奥深い。
BGM的に流してもじっくり聴き込んでも良いと思う。お勧め。
CALM feat. MOONAGE ELECTRIC ENSEMBLE/Ancient Future (2003/3rd/国内)
時にソフトな四つ打ちのリズムであったり、時にオーガニックなシンセ音だったり、ピアノやウッドベース、
サックス、アコースティックギターと言った生楽器だったり、落ち着いたヴォーカルだったり。
柔らかく聴き手の五感を包み込んでくれるそれらの優しい音が、どこかエスニックな雰囲気を持った穏やかなジャズ、
アンビエントミュージックの形をゆるゆると織り上げてゆく。シンプルだがとても丁寧に作り込まれている印象で、
音のどれ一つ取っても神経をそっとほぐしてくれるような心地良さに満ちている。
黄昏時から宵の口、ゆっくり更けてゆく夜、深夜を経て明け方に至るまで。
太陽が沈んでから再び上るまでの時間の緩やかな流れを思わせる楽曲に散りばめられたメロディは、美しいとしか
言い表しようがないもの。
ただし、その美しさは幻想的ではあっても逃避的ではなく、「この世のものとも思えない程」と言った表現はあたらない。
何と言うか、これはあくまでもこの世の美しさなのだろうと思う。
だからこそ、音風景はとても安らかで優しく、聴いていてどこか遠くへ流されていってしまうような危うさも無い。
最後の曲が「帰るべき場所(The Wheel Of Time)」という名に相応しい表情を持っているから、余計にそう思う。
74分間、とても豊かな時間の流れと空間の広がりを感じさせてくれるアルバム。
ただ、実は、ごく個人的にはこれを一枚聴き通すのはとても難しい。気持ち良過ぎて寝るので。
CANDIRIA/Beyond Reasonable Doubt (1997/2nd/海外/国内盤なし)
先に聴いた4th「300 Persent Density」と比べると、サウンドの核であるハードコアやデスメタルと、民族音楽、
ジャズ、ヒップホップ、アンビエント……等と言った諸要素が完全には融合し切っておらず、様々な音楽をランダムに
組み合わせたと言う段階に留まっているイメージが強い。少々散漫にも思える。
そうは言っても楽曲はやはり魅力的。ややまとまりに欠ける分、様々な要素・表情が場面場面でくっきりと浮かび
上がるので、キャッチーとまでは言えないけれども比較的解り易い格好よさがあると思う。
ドラムの叩き出すリズムには入り組んだ不可解さよりもファンキーなノリの良さが強く出ているし、キーボードや
管楽器のジャジーでカラフルな音色、激烈に重いギターサウンド、どこかしら理知的なヴォーカルの咆哮とラップが
組み合わさって作り出される楽曲は、クールで艶っぽい空気に満ちている。
曲としてまとめられているものと、間奏曲的なものに分かれているアルバム構成(ジャケのフォントの大きさが違う)。
前者は性急に展開しながらも重厚かつ切れ味鋭く、後者に分類されるものは、完全なヒップホップ、不気味なフリー
インプロヴィゼイション、モロにジャズなドラムソロ、とバリエーション豊かで聴いていて飽きない。
録音が悪いのか音が不鮮明だったりブレたりする箇所があるのは残念だが、実に聴き応えがある。
CANDIRIA/300 PerCent Density (2001/4th/海外)
ハードコアとヒップホップを掛け合わせた、と書くと割と普通のラップメタルのようだが、実際聴くとかなり独特。
むしろ変態。その肝は、時折現れるジャズそのもののパートと、聴いているこちらを素直に乗せてはくれない
トリッキーでヘヴィなリズムだと思う。
苛烈さと同じくらい強く感じるのは、湿度と温度が低くて醒めた空気の感触。それから、ムーディな艶っぽさ。
特にドラムの叩くビートには、むしろジャズの方がハードコアの勢いと攻撃性と重さを取り込んだ、と言うような
印象がある。加えて、所々に顔を出す民俗音楽めいたノイズがまたキナ臭くて美味しい。
また、ヴォーカルは迫力のあるハードコアな咆哮とリズミカルなラップを使い分けるが、ヒップホップは全然聴かない
自分が聴いてもラップがすごく格好良く、危険な色気を感じる。
それら各々の要素が不可分なほど深いレベルで融合、と言うか土台であるハードコアの血肉と化している印象。
混沌と洗練が交差する都会的でクールな雰囲気は、堪らなく格好良い。
ただ、その居佇まいの格好良さと様々な音楽を取り込む懐の深さが、曲毎の魅力や表情付け、フックに直結していない
ように思った。要素要素はすごく良いけれども、曲の輪郭がはっきりしないと言うか。その愛想の無さ、強面なところも
間違いなく魅力の一つだが、一方でもう少し親切でも良いんじゃなかろうかとも思う。
CANDIRIA/The Coma Imprint (2002/企画盤/海外/国内盤なし)
2nd「Beyond Reasonable Doubt」収録曲の再録+新曲のDisk1と、実験色の強いインスト曲や真性ヒップホップの新曲が
6曲収録されたDisk2からなる企画盤。
まずDisk1。再録曲は、アレンジはさほど変わっていないが印象はかなり違う。
キーボードや管楽器の音数が減り、ジャズ的な色合いが表面的には薄れているのが目立つが、最も大きな違いは演奏に
宿る強靭さと説得力が遥かに増している事。ジャジーな音色やフレーズは表向き減ってはいるが、バンドサウンドの深い
ところにジャズの要素が取り込まれて肉体化しているような感じ。一音一音に籠められたニュアンスがとても豊かで
官能的、そして研ぎ澄まされたクールがある。プログレ色の強い曲や意外な程ストレートなラップメタルなどでまた一味
違う魅力を見せてくれる新曲も再録曲とのバランスが良く考えられていて、一枚のアルバムとして通して聴いて違和感は
無し。音質の向上も手伝って、元曲のやや散漫なイメージが見事に払拭されている。素晴らしい出来だと思う。
Disk2には、フュージョンを思わせるドラムンベース、バンドサウンドに依らない本気ヒップホップなど、正アルバム
ではインタールード的な位置付けにあたるものを広げたような曲が収録されている。
どの曲も流麗と言うかスムース、かつ割と抽象的でDisk1の黒くて肉っぽい音とは全く異なるが、これはこれでとても
面白いと思う。何より、聴いていて気持ち良いし。
全く新しいアルバムとしても、「Beyond Reasonable Doubt」と比べながら聴いても、より一層の洗練をはっきりと
感じ取れる充実した内容。書き忘れていたが、ソリッドな攻撃性もヴォーカルを中心にいや増している。
CALIBAN/Shadow Hearts (2003/3rd/海外)
まずヴォーカルが凄まじい。激しい悲しみと怒りを撒き散らしながら喉が張り裂けんばかりに咆哮して
絶叫する、攻撃性がそのまま錐の姿を得たかのような声に圧倒される。
その邪悪な絶叫と入れ替わりに現れる、クリーンに歌い上る部分も良い。絶叫とは対照的にナイーヴな
声質、歌われるメロディは乾いた切なさを感じさせるもので、その落差が実に鮮烈。
バックの演奏も、これまたものすごく格好良い。攻撃性と暗い翳りを孕むリフを中心にドスの効いた
ゴリ押しを轟然とかけて来るが、何と言うか、リズムにしなやかさが欠けているのが面白い。
鋼鉄の質感を持ったベースの音と、まるで鉄球を床に落とすようにドスンドスンと打たれるドラムは
ひたすら硬質で、一歩一歩確実に獲物を追い詰めていく殺戮機械めいた感覚には独特の味と迫力があり、
ギターの音色、不協和音にはダークな近未来像のような不気味な無表情さがある。
だから、疾走するパートも勿論あるけれども全体的には重く、圧力で押して来る印象。
ヴォーカルとバンドサウンドの苛烈さや曲調の無慈悲さは相当なものだが、合間に叙情的で寂寥感のある
フレーズをふいと投げ込み、曲にメリハリを付けるのが存外に巧み。聴かせる事に長けていると思う。
CARAVAN/If I could do it all over again,I`d do it all over you (1970/2nd/海外)
邦題:「キャラヴァン登場」
ここまでゆるゆるなのも珍しいってくらいに緩やかで、そして優しい。何とも牧歌的な音。
明るくも暗くもなく、ただ穏やかで淡い空気が延々と流れ続ける。その雰囲気、洗練されていない素朴なところ、
隙間だらけの軽い音像がもたらす、どこか遠くから音が聴こえてくるような感触がすごく好き。
メロディにもジャズの要素を多分に含むオルガン主体の曲作りにも、華美な部分や装飾が全然無い。
プログレ然とした複雑なリズムや緊迫感のある演奏の応酬、ドラマティックな展開もあるにはあるが、それらも心を
揺さぶられるとか格好良いとか言うのとはまた別の、静かな揺らぎのようなイメージがある。とてもシンプル。
だから、インパクトと言う意味ではどうにも弱いが、その代わりに一曲が長い割に冗長なところも感じられず、
聴いているうちに徐々に効いて来る。ユーモア感覚を備えたメロディの流れも、とても良い。
次作「グレイとピンクの地」に輪を掛けて地味でユルいのだが、一度輪郭が掴めると何度聴いても飽きる事が
無くなり、そして聴けば聴くほど味が出る。そういうアルバム。
丁度今時分、雨の日の午後とかに聴くと、ほっと出来て良いと思う。
CARAVAN/In The Land Of Grey And Pink (1971/3rd/海外)
邦題:「グレイとピンクの地」
冒頭のちょっとユーモラスなトロンボーンの音に導かれて広がるのはほのぼのとした牧歌的な世界。
朴訥な声のヴォーカルが、のんびりとしててフォークに通ずるユルくて田舎っぽい(悪口じゃなく)メロディを
歌い、楽器隊はオルガンを中心にジャズっぽくて緩やかな演奏を続ける。地味で、聴いても鮮烈な印象は
残らないけれども、晴れた日ののどかな田園風景を連想させるこのアルバムはとても魅力的。
メロディがいい。ヴォーカルの声質とメロディの質が噛み合っていて、目立ちやすい起伏や展開はそれほど
なくても歌がしみじみと耳に入り込んでくる。
ずっとずっと前からこの歌を知っていたような、そういう懐かしい感じがする。
バックの演奏がいい。それほど派手な事やテクニカルな事はやってないしどこまでも淡々としているが、
その代わりにとても人懐こくて、強引さがない。そして、オルガンやフルートやギターの紡ぎ出す一つ一つの
音色が、トラッド風でもジャズ風でもあるフレーズが、とても優しい。
#6「9フィートのアンダーグラウンド」での延々と続くオルガンの淡いうねりと、一転して劇的な
流れを見せる終盤の展開は、穏やかな高揚感を与えてくれる。聴いて良かった、と心底思える。お勧め。
CATHEDRAL/Forest Of Equilibrium (1991/1st/海外)
邦題:「この森の静寂の中で」
鉄の足枷を引きずっているかのように重く、そして恐ろしく遅い。全身に纏わり付く瘴気としか言いようの無い何かが
嫌と言うほど音像の隅々にまで漂っている。これはしんどい。なかなか一枚聴き通せない。
ドス黒く濁った地下水脈のような邪悪リフ、余りにテンポが遅いためにたどたどしく聴こえるのがゾンビの書き文字の
ようで非常にタチの悪いリズム隊、地の底から這い上がってくるような妖気に満ちた唸りを上げるヴォーカルが全編で
うねうねと蠢き続ける。拷問か葬列かのようにただただ暗鬱な楽曲が並んでいるので聴きやすさは皆無、ポップの正反対
のような音だが、徹底して暗・遅・重・歪が貫き通された結果として異様で禍々しい迫力と凄みが出ており、聴いていて
圧倒される。と言うか「もう勘弁してください」と言う気分になる。
ところどころで聴こえるフルートの調べが川向こうから聴こえて来るかのように寒々しくも美しかったり、時折何とか
マトモな範囲に収まると言えなくもない程度に速くなるパートがやたら格好良かったり、と聴いているこちらが
放り出してしまいそうになった頃に目先を変えるフレーズを出してくるのはワザとだろうか。だったら怖過ぎる。
ともあれ、何かを究極的に突き詰めてしまったものが持つ格好良さ、病的で麻薬的な魅力を持っているのは確かで、
妥協のカケラも無くコアなこのアルバムにはある種の威厳のようなものが備わってしまっている。業が深い。
CATHEDRAL/CARNIVAL BIZARRE (1995/3rd/海外)
2ndアルバムは未聴なのだけれど、1stアルバムと今作との落差に驚く。1stでイヤと言うほど見せ付けられた限度を
超えた遅さはここでは鳴りを潜め、代わりに比較的マトモな速さと比較的解りやすいリフを備えたノリの良い
ヘヴィロックンロールと言った色合いの曲が並んでいる。ただ、ノリは良くなったと言ってもアメリカ的な乾燥した
空気はどこにも無く、湿って黴臭い地下の石牢のような雰囲気が終始アルバムを覆うのは相変わらず。
メロディ、リフ、グルーヴ、と全般にキャッチーになった。特に、そこかしこで挿入されるメタル然としたギター
ソロが何ともいい感じで泣きを入れたり凄んでみせたりするのが解りやすさにかなり貢献している。
場面によってはポップとさえ言えそうなメロディを歌うヴォーカルは、どう考えても巧いとは言えず音程がヨレヨレで
ズレまくっているが、妖気に加えて毒々しい華や捩れたユーモア感覚(日本の妖怪が時として妙にユーモラスな外見を
している事があるけれど、あんな感じ)が備わっていて、ヴォーカルがバンドサウンドの歪み・淀みに真実味を与えて
いる印象を受けた。奇妙なカリスマ性がある、と思う。
ゴリゴリしたリズム隊が叩き出すリズムと怪しげなリフとに宿る強烈な低音のグルーヴには、何と言うか極めて
真っ当な格好良さがある。それでいて、楽曲のどこを取っても特有のコアな邪悪さやある種の耽美感覚がべったりと
塗り込められているのが魅力的。キャッチーになっても妥協は感じられない辺りはすごくクール。
CHILDREN OF BODOM/Hate Crew Deathroll (2003/4th/海外)
まず、硬質で直線的で暴力的なリフとリズムに殺られる。次に、ドスの効いた低音の迫力にはやや欠けるが
邪悪に喚き立てながら聴き手を煽るヴォーカルに殺られる。更に、ギターとキーボードの弾き倒しソロバトルに
殺られる、と言う念入り三重殺メタル。あらゆる要素が恐ろしく格好良い。
断片的に曲中に現れるポップですらある叙情的なメロディと、凶暴な突進力攻撃力のバランスが絶妙。
楽器隊の音もしなやかさと強度を兼ね備えていて、何より音の一つ一つが鋭角的でやたら気持ちいい。
攻撃性を時に先鋭化させ、時に煌びやかで神秘的なヴェールで包み込むキーボードのセンスも実に良い感じ。
ソロバトル、と言うものに個人的にはあまり魅力を感じない事が多いが、このアルバムのそれはフレーズそのものの
良さと、ギターとキーボード両者の音色とか表情とかに明確な分担があるのと、流石にここまでやられると圧倒される
他無いキーボードの無法な速さで、ソロバトルが自然に曲のピークとしての役割を果たしている。
つい、頭を振ってしまう格好良さ。
携えた刃はより硬く鋭くなったが、泣きのフレーズや未洗練のクサ味もきっちり籠められている。
本当に格好良いヘヴィメタルアルバム。お勧め。
CIBO MATTO/Stereo Type A (1999/2nd/海外)
ヒップホップがベースの作りだが、ロックとかファンクとかジャズにメタル、インド音楽やブラジル音楽の
リズムとフレーズ、変なサンプリング音、それらが軽快に交差して、ブツ切りになって出てくる。
聴いていると良い意味で予想を裏切られ続けるのが楽しい。
ヴォーカルは日本人女性で歌詞は全編英語。発音がカタカナ英語ともネイティヴとも違う不思議な感じ。
そのせいで、韻の踏み方がとても聴き取り易く(ヒップホップ不慣れなので)、耳馴染みが良い。
可愛らしく、場面によっては深みと甘さのある声で歌われるメロディは、派手なサビなどはそれほど無いけれども
数回聴いたら耳が勝手に覚えてしまうような聴きやすいもの。
おもちゃ箱をひっくり返してバラ撒いたようなジャンル無視のとっ散らかり具合、ヴォーカルの可愛らしさ、
耳に残るメロディ。全部合わせて出来たのはとてもポップでキュートでお洒落、それでいて聴き込むほどに奥が
深い、素敵なアルバム。晴れた日曜の部屋片付けBGMに最適。
なようで、実はかけるとついじっくり聴き入ってしまって掃除が出来なくなって危険。そういう感じ。お勧め。
COALTAR OF THE DEEPERS/The Breastroke (1998/best/国内)
98年発表のアルバム「Submerge」以前の、現在では入手困難な音源を集めたベスト盤。ベスト盤と言ってもアルバムの
流れや統一感が考慮されて編まれているので、通常のオリジナルアルバムと同じような感覚で聴ける。
近作、特に「Newave」では様々な音楽の要素を巧みに組み合わせて、或いは完全に融合させて独自の強烈な個性を作り
出している印象があったが、このベスト盤に収められている曲は、諸要素が正面から激突した時に散った火花で出来て
いるような感じ。高速で刻まれるリフと美しいフィードバックノイズの嵐、メタリックながらも幻想的な音像の奥から
漏れ聴こえて来る危うげで中性的なヴォーカル、ダンサブルなビート、ソリッドで手数の多いリズムやSEの入れ方に
宿るサイバーな手触り、スラッシーな突進、突如として現れるアコースティックな涼風パート、それら全てを力任せに
纏めてしまう極めて攻撃的かつ挑戦的なアレンジと、甘く切なくポップなメロディ(時折、ヴィジュアル系を思わせる
耽美な妖しさが見え隠れしたりもする)が同居している、と言う文句の付けようも無く格好良い名曲がざらざらと並んで
いる。音の密度も曲の完成度も、聴いていて息が詰まりそうになる事がある程に高い。
ヘタウマなヴォーカルで好き嫌いが分かれる、と言うネックはあるものの、格好良くて刺激的なロックが好きなら
何を措いてもお勧め出来るアルバムの一つ。特に、#7「Deepers're Scheming」に眩惑され、#8「Snow」の美しさに
息を呑む、と言う流れが抽んでて素晴らしい。
COALTAR OF THE DEEPERS/Come Over To The Deepend (2000/3rd/国内)
デス声&ブルータリティ全開の#1「Mars Attack!」の法外なインパクトにいきなり顎が落ちそうになるが、以降の曲は
比較的シンプルに仕上がっているものが多いと思う。幻想的なギターノイズ、ハードコアやメタルを源流とする強靭で
タイトなバンドサウンド、ポップでどこか可愛らしいメロディとヘタウマで中性的なヴォーカル、と言うディーパーズの
音楽の骨格を成す要素をより強く押し出し、かつあまり拡散傾向や雑食性が出ていないため、ストレートにロックして
いるという印象が強い。ジャケのイメージとあいまって、単色の潔さと勢いの良さを感じる。
このアルバムは、音よりも歌により重点が置かれているように思う。ノイジーかつポップで、しっかりフックを作り出す
アレンジももはや当然の如く冴えまくっているが、それ以上にメロディが良い。
リフが格好良い#2「Unlimber」、キュートなサビが耳に残る#3「Hard Reality」、スピード感溢れる名曲#4「C/O/T/D」
のようなアップテンポの曲も、甘いノイズとアコースティックギターに包まれる包まれた#8「秋の行人坂」、波のように
静と動の対比を繰り替えす#6「Thunderbolt」のような遅い曲も、明るかったり切なげだったり攻撃的だったりする
メロディが耳に残る。派手ではないものの即効性に優れていて、シンプルだが格好良い。
ラストの#9「Synthetic Slide」の妖しくドゥーミーなヘヴィネスにも、#1と同様に度肝を抜かれた。アルバムの頭と
最後に超コアな曲を配し、ポップな曲を中間に挟む構成はとても面白いと思う。これも名盤。
COALTAR OF THE DEEPERS/No Thank You (2001/4th/国内)
イントロの#1〜#2「Good Morning」にかけてのオーケストラのようなスケール感のノイズ大合唱から始まって、
軽快な打ち込みと超ヘヴィなリフ、ポップで甘々なメロディと凶悪に歪んだ絶叫が交差する、異種交配が作り出す
不思議な曲が続く。組み合わせの妙と言うか、一つ一つの音はそれほど珍しいものではないのだけれども要素要素の
配分とか構成とかが絶妙で、結果としてオリジナリティの塊のような出で立ちになっている。
全方向に広がるギターノイズの大海、重くメタリックなリフ、アコースティックギターの爽やかな響きが一曲の中に
混在していて、キュートでポップな親しみやすさと暴力的な音の洪水の極端過ぎる対比が形を変えて幾度も現れる。
全体的なトーンはお祭り騒ぎみたいに陽気だけれど、一瞬で膨れ上がる音圧の暴発はまったく破壊的。
モロにデスメタルなパートであってもどこかメルヘンチックだし、逆に軽やかなメロディの裏にも攻撃性が見え隠れする。
先が読めない緊張感があって、それがすごく格好良い。
一曲一曲が比較的短く、また凶暴な音塊も何故かとても耳障りが良い。様々な仕掛けを凝らした音造りだが、この
アルバムにはメロディにも音にも聴き手に歩み寄って来てくれるようなフレンドリーな感じがあるので、大音量で
聴いているとハッピーでハイになれる。お勧め。
COALTAR OF THE DEEPERS/Newave (2002/5th/国内)
シューゲイザー系の幻想的なフィードバックノイズを撒き散らして音の海を作り、ヘヴィメタル/ハードコアのリフと
突貫リズムを振り回して音の鎚を作る。轟々と鳴り響くメランコリックなノイズの向こう側でやたら可愛らしい
メロディが性別も年齢も不明な声で囁くようにナイーヴに歌われている……と思ったら、ブラストビートと歪み切った
デス声が空気を引き裂き、ボサノヴァのリズムが舞い降りて涼風を吹かす。
普通なら有り得ない空中分解ギリギリの組み合わせが作るディーパーズのスタイルが、音はより深くコアに、メロディは
ポップに、と各要素が丁寧に整理されて、より聴きやすくなっている。
テクノやトランスから孫引きしたような民俗音楽的リズムと音色、宇宙を連想させる疾走感、ノイズがたゆたう鎮魂歌、
ブリグリに無理やりヘヴィメタリックなリフをくっ付けてみました的な曲、ガムランと物悲しげなオカリナ、そして
ラストの#10「sweet voyage」はみんなのうた+サンバ+メタル。一曲一曲のイメージは実に多彩だが、どの曲にも
ディーパーズでしかありえない揺るぎない世界観、極まって洗練されたツギハギがしっかりと焼き付けられている。
曲構成も音像も整合性が上がって聴きやすくなった代わりに規格外の暴走力とデカい音の鳴りはやや大人しくなったが、
それでも問答無用で唯一無二、異形の格好良さ。傑作。
COHEED AND CAMBRIA/The Second Stage Trubine Blade (2003/1st/海外)
エモ、プログレ、ヘヴィメタル、などなど様々な要素が透けて見えるバンドサウンドの上にポップなメロディが乗り、
それをハイトーンで中性的なヴォーカルが時に絶叫しながら歌う、と言う体裁だが、何より特徴的なのは今作が一つの
ストーリーに基づいて編まれたコンセプトアルバムであり、しかもそのストーリーは全部でアルバム4枚分に及ぶ、と
言うところ。ヴォーカルのスタイルやバンドサウンドから、確かにそういう空想的な雰囲気が伝わって来る。
コンセプトアルバムとは言え、基本的に一曲一曲が完結していて、一つの曲として切り離してもちゃんと聴けるような
独立性が与えられている。メロディそのものの聴きやすさもあって、最初から最後まで通して聴かなければならない
ような敷居の高さは感じない。ただ、それは曲の繋ぎや感情の起伏を自在に操る力(要するに、ストーリーテラーと
しての度量)が弱いと言う事の裏返しでもあり、その辺は痛し痒しといったところだと思う。
場面場面で非常に印象的な表情を見せるメロディと曲展開、迫力にはやや欠けるが奥行きのある空間を聴き手に意識
させる広がりのあるバンドサウンドはしっかり噛み合っていて、コンパクトに絞り込む部分と壮大なスケール感を打ち
出す部分のメリハリも効いているので、アルバムの世界観に入り込みやすい。
全体的にメロディは良いが決定的な一曲が見当たらない、ハイトーンで歌っている時と比べて絶叫が弱過ぎるのが
非常に気になる、と言った詰めの甘さも感じるが、なかなかにずっしりした手応えと小回りの効いたポップ感覚を
兼ね備えたアルバムだと思う。次作(もう出ているが未聴)も楽しみに出来る内容。
COLDPLAY/A Rush Of Blood To The Head (2002/2nd/海外)
邦題:「静寂の世界」
静かでシンプルなメロディと歌とバンドサウンド。鬱屈していて、暗い。
メロディは、穏やかで抑揚があまりないのにしっとりと染みてくる。
裏声も使いながら細い声質で歌うヴォーカルは、独りきりで虚脱状態から抜け出せないような風情。
であると同時に、どうも泥臭い感じもする。
そういう洗練されていない部分に温かみと優しさがあるから、メロディと歌い方が良く合っていると思う。
バンドサウンドとアレンジも、円陣を組んで内側向いて演奏してそうな感じだが、アコギやピアノの使い方が
すごく柔らかくて優しい。漂う閉塞感と前を向こうとする意志の力が分離できないまでに混ざり合っていて、
気分が沈んでいる時に聴くと本当に心に響いてくる。どの曲も、とてもいい。
邦題にある「静寂」とは、最初から何も無くて静かな状態を指し示しているのでなく、
そこにかつてあった何かが今はもうない、という状態の事を言っているのだ、と。
廃墟を渡る風鳴りと、そこに一筋射す陽光のようなこのアルバムを聴いて思う。お勧め。
CONCEPTION/Flow (1997/4th/海外)
リフの質や音の鳴りに無機質なヘヴィネスを感じるギターサウンドと、それとは対照的にたっぷりと湿り気を含んで
艶っぽいヴォーカルとの対比が印象的なヘヴィメタル。全体として静かなイメージが強いが、音の奥にある芯は硬い。
敢えて起伏を抑え気味にしたようなメロディは即効性は欠けるが質は高く、そのメロディを歌うヴォーカルの歌唱法や
声質自体が華麗なので、メロディの流れに鮮やかで印象的なフックが作り出されている。
メロディとバンドサウンドを覆う機械的な冷たさを更に高めるキーボードの装飾音が非常に効果的で、ギターとリズム、
キーボード、そしてヴォーカルとメロディの組み合わせ方のセンスの良さと北欧特有の煌びやかさがこのアルバムに
独特の気品を与えている。特に、#2「Angel(Come Walk With Me)」や#6「Reach Out」辺りは他に無い(ヘヴィメタルと
言うスタイルを通じてしか作り得ない)個性を獲得していると思うし、ミドルテンポ中心のこのアルバムの中で最も強い
カタルシスが味わえるアップテンポの#9「Cardinal Sin」は本当に格好良い。
叙情的なヴォーカルを擁しながら現代的なヘヴィネスを積極的に取り入れる、と言う音造りの方向性が明確な上、その
コンセプトを完全消化した曲群は丹念に作り込まれていて高機能。一聴した時の平坦さを11曲47分とコンパクトに
まとめたアルバム構成が上手く中和していて、地味さが聴き込むほどに味わい深いものになってゆく。お勧め。
THE CROWN/Deathrace King (2000/4th/海外)
シンプルで硬質なリフ、激烈に速く手数の多いドラムと図太いベース、凶暴で暴力的なヴォーカル、流麗極まりない
ギターソロ、それらから放出されるネジが17本ほどブチ切れたハイテンションな音塊は鋭くも無骨で、ゴツくて
いかつくて、そして何よりただひたすらに速い。未洗練と洗練の絶妙なバランスはめちゃめちゃクール。
次作「Crowned In Terror」と比べると、こちらの方がロックンロールっぽいノリが強く、曲の骨格が単純。かつ、ナタで
断ち切るような荒々しさがあるように思う。乱暴で豪快なイメージに反して曲は良く練られており、トップスピードで
ぶっ飛ばす曲から圧殺ビートで迫り来るミドルテンポの曲まで暴虐三昧ながら破綻が無く、どの曲もとても印象的。
決定的な名曲、#6「Rebel Angel」をアルバム中盤に擁しているのが大きく、アルバムの流れが途切れないので一気に
聴けてしまう。スピード感を殺さずに緩急を巧く付けてある曲順も見事。
身体中の血が逆流し沸騰して、アドレナリンが大量に分泌される。頭をそれこそバカみたいに振り回す。
デスメタルの強力な突進力とロックンロールのノリと投げっ放し感、漢臭い哀感あるメロディ、かててくわえて獰猛な
ユーモア感覚まで備えたこのアルバム、四の五の言わさない圧倒的な説得力に力づくで屈服させられる。
青天井のスピード感と、それがもたらす格好良さを存分に味わえる。
THE CROWN/Crowned In Terror (2002/5th/海外)
仰々しいイントロから始まってとにかく突っ走る。ザクザクと気持ち良くリフを切り刻むギターとパルスのように
音の粒が揃いまくっていてこれまたバカみたいに速いリズム隊のコンビネーションが最高。
ヴォーカルの歪んだ絶叫も、ヒステリックな部分と漢臭くドスが効いた部分のバランスが絶妙で、暴力的ながらも
非常に聴き易い。体感速度を何倍にも高める作用を持ったギターソロにも快楽中枢を撫で斬りにされる心持ち。
ミドルテンポの曲、或いは速い曲の中のテンポが落ちるパートでも篭った力強さはそのままで、聴き手がダレたり
疲れたりするのを上手く防いでいる。
暴走ロックンロール的なリフ・曲が多く、陰に篭った暗さや残虐性がそれほど強くない。そのためか、デスラッシュ
なのにある種スポーティで突き抜けた爽快感すらある。全体的に乾いた音造りも、このアルバムの音楽ととても
相性が良いと思う。
純粋な「速さ」の気持ち良さを鋭く抽出したスピードバカ一代っぽいアルバム。お勧め。
車に乗りながら聴いていると目つきがあからさまに危険なものになって行く事請け合い。
THE CROWN/Possessed 13 (2003/6th/海外)
デスメタルとロックンロールの野合にして幸福な結婚が叩き出す爆走激重轟音一本槍は相変わらずで、超絶的な手数で
責め立てるドラムと激重で超攻撃的なベースが作り出す吶喊スピードと撲殺グルーヴは当然のように圧倒的大迫力。
ヴォーカルが交代していると言うか4th以前の人が出戻っているが、声質が同系統と言う事もあって悪影響は無し。
ロックンロールの万歳突撃バカっぽさと華麗なギターソロが少し減っていて、ダークな質感のリフが増えたように感じた。
そのためやや無機質に、陰湿に、そしてソリッドになった印象。
ジャケにも表れているようなホラー映画っぽいコンセプトを音にきっちり反映させているようで、前作まではさほど
感じなかった容赦無しの残虐性が音の奥底にどろりと流れているのを感じ取れる。一方で、B級ならではの偽物臭さと
ハッタリ(今作はコンセプトアルバムを模したような3部構成を取っているが、それに大した意味があるとも思えない)が
醸し出す胡散臭い格好良さも楽曲の中に取り込んでいて、存外に器用で巧みな曲作りをしていると感じた。
今作には核となる名曲が見当たらず、全体としても楽曲がやや小粒であるように思えるが、それでも従来のデス&ロール
路線を踏襲する#6「Morningstar Rising」や#10「Natashead Overdrive」は鬼のように格好良いし、個々の楽曲の出来を
云々するのが無意味な事に思えてしまう程、バンドサウンドに備わった破天荒な存在感は絶対的。
放射される轟音そのものが最高に気持ち良く、存在自体がクールなバンドになりつつあると思う。
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN/アイアンマウンテン報告 (2001/1st/国内)
総勢11名からなるジャズ/ファンクバンド、だが全く一定の何かに収まりきらない音楽。ポリリズムと変拍子を
駆使し、大人数の利点を最大限に活かして幾つものメロディ・リズムが同時進行しながら聴き手を果てしなく高揚
させてゆく様は、とことん本能的なリズムを打ち鳴らし続けるダンスミュージックでもあるし、極めて理知的な螺旋を
描くプログレッシヴロックのようでもあるし、切なくてメロウで歌の無いポップスでもある。
ポリリズム地獄が作り出す不穏極まりない静けさと、爆発的なフリー演奏が幾度も交差する強烈なオープニングの
#1「Catch 22」。ダウナーで気怠いベースライン、妖しげなメロディ、徐々に盛り上がりながらも引きを巧みに
織り込んだ曲構造そのもの何となく淫靡な#2「Play Mate At Hanoi」。ギターやサックスが奏でるメロウなフレーズと
中間部の不可解な盛り上がりが印象的な#3「S」。#4「Circle/Line - Hard Core Peace」は7拍子が基調のリズムが
気持ち良く、天気予報のテーマみたいなキーボードのフレーズが妙に耳に残る。アルバム中最もストレートに
格好良いノリを持つヘヴィなファンクの#5「Hey Joe」がクライマックスで、ラストは歌謡曲のように下世話でベタで
センチなメロディとユルめのリズムがスタッフロールに相応しい#6「Mirror Balls」。
全6曲で69分とかなり長いが、一曲毎にタイプが違うので実際は聴いていて長くは感じない。
解りやすいメロディがどの曲にもあるので複雑精緻な作りではあるが難解ではなく、混沌としたリズムの一つ一つ
を拾い上げられるようになる毎に曲から感じる快感と格好良さがどんどん増してゆくために中毒度は恐ろしく高い。
可能な限り大きな音で、そして出来れば(階下の人に迷惑が掛からないように)一階で聴くのが良いと思う。
これを聴いてリズムを取らず、身体を動かさずに居るのは難しいので。
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN/構造と力 (2003/2nd/国内)
ホーンセクションが増え、16人体制になっている。その分だけ音は派手に、そしてポップになっているが、その一方で
楽曲自体は起承転結がはっきりした曲が減り、やや抽象的になったように感じた。
「構造I」の4拍子と5拍子が混ざったリズムとディスコ調の派手なホーン、ストリングス音は問答無用で
気持ち良いが、それに続く「構造II」「構造III」は曲に展開が無く、明確なメロディがあるわけでもないフリーな
セッションを延々続けている感じで少々戸惑う。だが、その後の「構造IV」の壮麗で美しいメロディ、センチメンタルな
主題が幾度も繰り返されながらどんどん音が分厚くなって巨大な渦を作り上げるプログレ的な展開を持つ「構造V」の
鳥肌が立つほどの格好良さは感動的。
割と一曲毎の独立性が低い。と言うか、「構造II」がそれ単独で聴くと少し解り辛く、「構造VI」は「構造V」の前奏曲的な
色合いも持ち、パーティの最後に大騒ぎと言った感じの「構造VI」がアルバム全体の締める役割を果たしているので、
通しで聴いた方が楽曲の魅力を感じやすい。ある意味、アルバム一枚で組曲のような作りになっていると思う。
楽曲のキャッチーさはアルバム全体で見るとやや後退しているため、楽曲自体は前作の方が良かったように感じる
が、管楽器が増えた事によって音の輪郭がはっきりと出ているので、演奏がもたらす快感はむしろこちらの方が上。
色々と複雑巧緻な事をやっているにせよ、リズムの気持ち良さ・格好良さを身体の全てで感じると言うシンプル
極まりないところに本質があるのは前作同様。言葉になる以前の根源的で破壊的な快楽が詰まっている。
THE DATSUNS/The Datsuns (2002/1st/海外)
速くて喧しいロックンロールと言われて頭に思い浮かぶような音が、アルバムを再生したら
何の仕掛けもナシでそのまま出て来た。
ライヴアルバムのような臨場感と尋常でないエネルギーの放出量、漲る熱さとバカさ加減。
緩急やアルバム全体の流れとか全然考えてなさそうな、押し一辺倒の楽曲群がやたら痛快。
ハイトーンのシャウトから畳み掛けられる硬いリフ、派手なドラミングやこれでもかこれでもかと
決めてみせるギターソロまで、構成要素一つ一つは「どこかで聴いたことあるような……?」ってくらい
王道的ではあるが、それをこの勢いで繰り出されると本当にヤラれる。
要するに「ここでこう来て……」みたいな、こっちが勝手に妄想するかっちょええロックを、
これ以上無いくらいの熱さでばっちり演ってくれる、ロックのど真ん中のど真ん中に近いアルバム。
やりたい音楽を何にも飾らずにそのままにやってるだけって風情だが、それがこんなに格好良くて
しかもこんなにハードロックしている、って事がめちゃめちゃ嬉しい。最高。
DEFTONES/Deftones (2003/4th/海外)
色々な意味合いで境界線上のアルバムだと思った。それが魅力的でもあり、もどかしくもある。
歪んで淀んだリフと引き摺るスロウなリズムを様々なキーボードの音が包み込むヘヴィロックが基調だが、
クリーンな音色でギターを掻き鳴らすパートが前面に出た曲があったり、キーボードと打ち込みが主体の曲が
あったり、曲調自体の幅は割と広い。にも拘らず、全編を通して曲の繋ぎ目に気付かない程に統一された雰囲気がある。
歌い上げと絶叫を巧みに使いこなすヴォーカルが歌うメロディが持つ、明と暗の隙間で揺らめく微妙な陰影と不思議な
浮遊感が、その魅力的な居佇まいの源だと感じた。
その中でも、音が明の方向に強く向かった時に感じる風景の広さにはっとさせられる。
艶めいた冷たさ、明るさと翳りがゆるゆると重なり合う音像は、バンドサウンドが最も重くうねり、絶叫が響き渡る
場面においても、静かで実在感が薄い。
薔薇と髑髏。美と毒の鮮烈なシンボルをあしらったジャケと、ある意味でイメージは正反対。
このアルバムに流れる美しさは、陽炎のように儚く、影絵のように危うい種類のものだと思う。
同時に、その危うさがそのまま弱さでもあるように感じる。
儚げな風情は音の輪郭がぼやけた不明瞭さと紙一重なわけで、ヘヴィメタリックで肉体的な音の強度、暗くどろりとした
深みがどうにも足りない。心の奥底の暗がりに今一歩のところで至れず、スプーンがカラメルに届かずにプリンだけしか
掬い取れない。それがとても歯痒い。
低暗部分への踏み込みが浅いために、儚さと不確かさの間を行ったり来たりしてしまうような印象。
高性能のヘヴィポップアルバムと割り切るには余りに勿体無い、独自の美意識の高さ。
それだけに、音の弱さが原因の煮え切らなさもまた耳についてしまった。
ただ、明暗を融合させる手練手管、キャッチーな曲造りや緩急の付け方は実に巧みだと思う。
STRAPPING YOUNG LAD(DEVIN TOWNSEND)/City (1997/2nd/海外)
邦題:「歌舞伎町から超怒級怒潯重爆音」
ギターとベースとドラムが一体になって叩き出す圧倒的質量が恐ろしい速さで、しかも無機的かつ無慈悲な正確さで
もってこちらへ標準を定めて襲い掛かってくる。更に、その音の塊に隙間無く埋め込まれた機械音と装飾音がバンド
サウンドを何重にも増強するから、可聴領域全てを埋め尽くす音の塊が間断なくガンガン飛んで来るような錯覚を
強いられる。どこにも逃げ場の無い緊張感、圧迫感。殊に前半5曲のテンションの高さ、吐き気を催しかねない
音の密度の高さは全くもって人間離れしている。終盤でテンションが少し息切れして曲がパワーダウンするのが、
むしろ聴き手側からすれば救いになっている程。
強靭な喉を持ったヴォーカルがブチ切れた絶叫を叩き付けながらもしっかりと歌っていて、音の苛烈さの割に解りやすい
メロディが他の音に埋もれる事なくしっかりと浮かび上がってくる。その歌声が、情報量が余りにも多い音の集合体で
あるこのアルバムを一つに纏め上げていて、そこに不快感と紙一重の快感とスリルがある。ヴォーカルの持つ力と
尋常でなく正確で整然とした演奏がこのアルバムに抜群の整合感をもたらしているおり、その結果としてキャッチーで
すらある造りになってしまっていると言うのが何とも恐ろしい。
もし街を歩いていて#1「Velvet Kevorkian」のイントロの警告音が聞こえたら、即座に耐ショック姿勢を取るしかない。
これはそれほどのアルバムだと思う。邦題は実際にはアルバムの内容とは全然関係無いと思うが、訳が解らないままに
蹂躙し尽くされる、と言う理不尽で殺人的な音の性質を良く表してはいる。
DEVIN TOWNSEND/Infinity (1998/本人名義としては1st/海外)
激烈に重く響き渡るドラム、大地そのもののようにうねるベース、偏執狂的に重ねられた効果音、満天の星空を
連想させる澄んだギターのアルペジオ、サンプリングされた環境音、呟き、天使一個師団が制圧降下してきたような
コーラス、際限なく放射される轟音のリフ、突き刺さる絶叫、十重二十重に聴き手を包囲する重層的メロディ、
弦楽器の優雅だがどこか狂った響き、津波のようなギターノイズ。そういった諸々の音が幾重にも幾重にもうず高く
積み上げられ、隙間なく埋め込まれた音の壁がどこまでも広がる。と同時にどこまでも深く、音像の底は見えない。
絶対的なオリジナリティを持つ音像だが、メロディがおざなりにされる事は無い。むしろメロディはアルバムの中心に
位置しており、比較的解りやすく覚えやすいものだと思う。にも拘らず、このアルバムは全然ポップでない。そう
感じるのは、親しみやすさや取っ付きやすさがまるで感じられず、共感を真っ向から否定されているような印象を
受けるからだと思う。特に、主旋律がコーラスやその他の音と同化して全体が巨大な一つのノイズの奔流になってゆく
後半の流れは、聴いているとアルバムの世界から拒絶されて置き去りにされたような感覚を覚えてしまう。
遥か遠くにそびえ立つ巨大で理解し難いオブジェを、呆然と眺めるような美しさと寂しさがある。
紙一重ギリギリの音楽。良くも悪くもマトモな神経の持ち主からこれが生まれたとは考えにくいが、例えようもなく
美しい孤独感を表現したアルバムであることだけは間違いないと思う。
DEVIN TOWNSEND/Physicist (2000/2nd/海外)
非常に視覚的なアルバム。だが、視覚的と言っても何かしらの光景が思い浮かぶ訳ではない。これを聴いていて連想
されるのは、圧倒的な光度と熱量を持って宇宙を(或いは意識の中を)突き進む光の束。相変わらず激烈に重く、果て
しなく残響が広がってゆくような特殊な音造りに加えて、シンセの音を強調する事によって凶暴な光のイメージを
作り出していると感じる。音像を覆い尽くす絶唱と轟音は、聴き手を灼き殺しかねない程のエネルギーに満ちている。
楽曲のカラーは、丁度前作「Infinity」の美しさ・滑らかさ・聴き手を拒絶する姿勢とSTRAPPING YOUNG LAD名義の
「City」の常軌を逸した速さ重さ・無機質な機械の質感・聴き手に襲い掛かる姿勢との中間。バランス良く整理されて
いるためか、楽曲は比較的バラエティに富んでおり、幾分ポップになっている。印象深い曲は多く、荘厳で重厚な空気と
キャッチーなメロディとラウドなスピード感が混在する#4「Kingdom」は不思議な感触ながら名曲だし、#5「Death」〜
#7「TheComplex」と畳み掛けるように続く錯乱(なのにメロディアスな)デスメタル3連発は強烈。次作「Terria」の
方向性の元になったと思われる大作#10「Planet Rain」の壮大な美しさには圧倒されるばかり。
ただ、少々バラエティに富み過ぎているきらいがある。よく整理されている半面で突出した一要素がこのアルバムには
無く、小さくまとまってしまっている印象。とは言っても、メロディの質にもアレンジや音の鳴りにも相変わらず唯一
無二の個性がべったりと塗り篭められたヘヴィロック/ヘヴィメタルではあるが。孤高、と言う言葉が良く似合う。
理知的だが、どこか致命的に壊れていて、壊れた部分から光学兵器めいた膨大な光が溢れ出す。そういう感じ。
DEVIN TOWNSEND/Terria (2001/3rd/海外)
巨大な音響空間がアルバムを再生した瞬間に現れて最後まで消えないのは以前のアルバムと変わらないが、その空間の
表情、と言うか性質が変わったと思う。開かれている、と強く感じる。
地平の彼方までを見渡すようなデカさ、地響きそのもののビートとうねり、分厚いコーラスライン、そういう要素は
今まで通りに存在するが、全体的にテンポが遅くなり、それと同時に曲調からも苛烈な印象がほとんど無くなった。
外界に向かって怒りと敵意を撒き散らすのでもなく、自分の内側に篭って他人を一切拒絶するのでもなく、親しみを
湛えて聴き手を自分の居場所に呼んでくれるような、そういう穏やかさがこのアルバムには溢れている。
メロディは更に聴きやすく馴染みの良いものになり、空間の狭間を埋める音は、機械的な音からナチュラルで優しい
感触の環境音に近いものが多くなった。曲と曲の切れ目は無く、組曲のようになっていて、旅の始まりから終わりまで
を(聴いて、と言うよりは)見ているような感じ。以前のような不安を煽る要素は薄れたが、重圧と緊張感を活かした
音造りや曲展開は残した上で、悠然とたゆたいながらゆったりと広がってゆくこの世界観を作り出しているところは
流石だと思う。音の一つ一つに驚くほど細密なニュアンスが篭められているのも素晴らしい。
積み重ねられた音の波は柔らかな光が射す様を連想させ、棘が無くなった歌声とメロディラインはその光の中を自在に
飛翔する。完全で美しい世界の箱庭、と言う言葉が頭に浮かぶ。傑作。
STRAPPING YOUNG LAD(DEVIN TOWNSEND)/Syl (2003/3rd/海外)
邦題:「帰ってきた超高速怒轟重低爆音」
極限に暴力的で細切れな光子ノイズの暴風雨。徹底的に速くて重くて攻撃的で巨大な音塊にただただ圧倒されるが、
詰め込まれた大量の音の一つ一つが丹念に、と言うか執念でもって整理されている印象で、整合感があって耳に馴染み
やすくはある。苛烈さが生のままストレートに吹っ飛んで来る。そのため、相変わらず逃げ場が無い。
常軌をたっぷり17回は逸したドラムのズガガガガガガガっぷりは本気で冷や汗もので、轟々と流れる濁流のど真ん中に
陣取ってこめかみから血を噴き出しながら歌っているのかと思ってしまうような絶叫をかますヴォーカルは強靭さと
表現力と凄絶さが明らかに増している。業火の一斉掃射の中から美しいメロディが浮かび上がるのも相変わらずで、
歌と絶叫が轟音とメロディの中で融解していく様には、あっち側が見えてしまっていそうな神々しささえ感じる。
テンポがスロウダウンするパートが増えたため、怒りの衝動を一気呵成にバラ撒く、と言うこのプロジェクトが目指して
いたコンセプトからは少し後退した気がするが、それは攻撃性の減退と言うより楽曲と表現の幅を広げて行った結果だ
と思う。根っこの部分は何ら損なわれていない。むしろ、インダストリアルな手触りが減って音の鳴りが生っぽい
ものになったため、シャレになっていない残虐さは増していると思う。
ジャケの鮮烈で不吉な血の色から連想される通り、巨大な釘撃ち銃でもって圧倒的に喜ばしくない何かを聴き手の
神経へと無慈悲に撃ち込み続ける。そういうアルバム。実に凶悪。
THE DEVIN TOWNSEND BAND/Accelerated Evolution (2003/4th/海外)
これまでのどの作品より聴きやすく、フレンドリーな印象。この人の鋭いメロディセンスはどのアルバムでも形を変え
ながら常に発揮されてきたと思うが、その中でも最もメロディに比重が置かれた作品だと思う。前作「Terria」の完璧
過ぎる世界構築からも距離を置き、より普遍的なロックに近付いてきた。
ギターとシンセを幾重にも積み重ねた(ただし、もう偏執狂的で病んだ色合いをそこに感じる事は無い)必殺の重層
サウンド、とにかくヘヴィなリズム、スケールの大きなうねり、前作「Terria」から引き継いだ穏やかな表情と極めて
雄弁なギターソロ、そう言った要素はそのままに、再びアルバム全体のテンポを上げたリフ主体のヘヴィなロックに
なっている。ポジティヴなエネルギーの放射のような、重厚でありながら軽やかな音像の中でそのポップなメロディが
自由に飛び交い、突き進む。優しい歌いかけが全く繋ぎ目無しに絶叫に変わるデヴィンの変幻自在なヴォーカルにも
常にリラックスしたムードがあり、安心して音の波に合わせて身体を揺らしつつ聴いていられる心地良さがある。
メロディの良さを、気構えずに楽しむ事が出来るのはこのアルバムならでは。自然体な居佇まいながら、相変わらず
細かく聴くとどこまでも凝り倒した造りになっているのもすごく好印象で、前作までのアルバムの神経症的な魅力を
きっちりと今作にポップな形で組み込む事が出来ていると思う。
シリアスで緊張感を煽る場面も少なからずあるが、その後には希望的な明るさにふわりと着地するイメージが必ず
用意されている、ウィニングランにも似た開放感に満ちたアルバム。お勧め。
THE DILLINGER ESCAPE PLAN/Calculating Infinity (2001/1st/海外)
始終怒号を響かせっぱなしのヴォーカル。偏執狂的に転がり回って弾きまくるギター。
異常な手数のドラムとのたうち回るベースのリズム隊が繰り出す変拍子の嵐は、5秒しか同じリズムを維持できない
病にかかってるんじゃないかと思う程。超絶に暴力的な演奏と一瞬で入れ替わる集束/拡散の連続は、切れ目の無い
集中砲火のよう。口をあんぐりと開けたまま蜂の巣にされる心持ちにさせられるし、リズムとかメロディとか、そういう
通常の音楽の枠組みがどうでも良くなってくる、一線を明らかに越えた酷さ。はっきり言ってこれはかなり怖い。
所々に不穏な機械的SEや妙にジャジーなプレイのような異物っぽい要素が入ってたりするが、
その挿入のされ具合にまた全く脈絡が無い、極まったデタラメっぷり。
ただ、こう言う種類の不条理さは本当に無茶苦茶にやっても出来ないはずで、並んだ曲群は
ちょっと角度を変えて聴いてみればどれも精密に組み上げられているのが解るし、一つ一つの音が
丁寧に拾い上げられた音作りからは神経質さと紙一重の慎重さも伝わってくる。
だから、暴力的イメージが撒き散らされるこのアルバムには何となくクレバーな印象もあって、聴いていてただ唖然と
するばかりでないところが面白く、その辺りに格好良さがあると思う。
THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON/Irony Is A Dead Scene
(2002/ミニアルバム/海外/国内盤なし)
マイク・パットン絡みの音源を聴いたのは初めてだが、圧倒されたと言うか何と言うか……ブチ抜けている。
バンドサウンドとヴォーカルの激突と融合が全方位に乱射する激情は、単に両者が組んで作ったと言うレベルを遥かに
超えている。超々高密度な4曲18分は、聴く時の状態によって一瞬にも一年にも姿を変える。
混沌と錯乱が好き勝手絶頂に暴れ回る様を、恐ろしく鍛え込まれた演奏で叩き付けるTHE DILLINGER ESCAPE PLANの
殺人的バンドサウンドは相変わらず本当に非道い。無秩序の極みでありながら音像や曲構成に整合性がしっかりあって、
何をやっているかは見当も付かないが異常な事をやっている事だけははっきりと解るようになっている辺り、やはり
尋常ではないと思う。ここまで暴力的でありながらマッチョなイメージが希薄なのもすごく好き。
マイク・パットンの頭のネジが数十本すっ飛んでいるとしか思えない変態っぷりもまた素晴らし過ぎる。
殺気に溢れた呟き、歪んだ歌唱、猟奇子供番組のような奇怪なハイトーン、恐慌そのものの金切り声、艶っぽい歌い上げ、
声とすら呼び辛い非人間的ノイズ、と何でもあり。凶暴で変態だが誠実で丁寧な歌心と捩れたポップセンスを強く
感じるヴォーカルはある意味とてもキャッチーで、そしてめちゃめちゃ格好良い。
APHEX TWIN「Come To Daddy」のカヴァーこそ比較的大人しめの出来だが、映画のフィルムをズタズタに切り刻んでデタラメに
並べたような4つの楽曲はいずれも不条理そのもので、聴き手を完全に突き放しているようにも聴こえるが、暴力性が
完全にコントロールされているために全体的としては不気味な程メロディアス。歪んだ知性が炸裂する傑作。
DMBQ/Jinni (2000/5th/国内)
グルーヴィでカラフルでサイケデリックでブルージーでグラマラスでファンキーでダウナーかつアッパー。
レトロで埃っぽく、けれども決して古臭くはない、つまるところロックンロールのド真ん中。
#3「Girl Cream」中に自己紹介っぽく各楽器が短いソロを取る場面があるが、そういうお約束過ぎるくらいお約束な
演出が本当にハマっていて、思わずロックスターという表現を使いたくなるような雰囲気を持っている。
どの曲も、ジャムセッション(アドリブとかインプロヴィゼーションとか言うのとはニュアンスが異なる、本当に
力任せのやつ)から作り出されたのだろうと想像できる、良い意味で衝動的かつ雑な造り。だからなのか、音が大きい
と言うかうるさい。ものすごくうるさい。恍惚を呼ぶ音のデカさ。
ジャギジャギしたギターの音、ヴリヴリなベース、ラウドなドラムが始終撒き散らし続ける、マッチョではないが
骨太で生々しい迫力に満ち満ちたノイジーなバンドサウンドがザクザク快楽中枢に突き刺さってくる。
カリズマティックと言うか、居佇まいや声そのものに強烈な存在感があるクレイジーでイナセなヴォーカルの金切り声も
バンドサウンドを真っ向から受け止めて全く負けていない。
極彩色のペンキをブチ撒けたようなサイケ感覚、唸りを上げるヘヴィメタリックなリフ、ヨレヨレのダンディズムが
轟音の渦となって襲い来る、正真正銘のハードロック。こういうのはもう本当にただ「格好良い」としか言えない。
中でも、27分にも及ぶ#8「Rain Language」の闇を切り裂く狂騒は全く圧巻。
DMBQ/Dmbq(Dynamite Masters Blues Quartet) (2002/6th/国内/CCCD)
ハードロックそのもののリフとグルーヴ、大音量のサイケデリア、ハイトーンのシャウトを気持ちよく決める男前の
ヴォーカル。曲の基本的な枠組みは変わっていない、と言うか変わる必要もないのだと思う。
聴き始めればすぐに気付くが、音の手触りが少し変わっている。演奏や歌の細かいニュアンスを丹念に掬い取っていく
ような音像になって、その代わりに恐ろしくラフで脳髄を直接刺激する中〜高音域の殺傷的ラウドネスはやや抑えられて
いるように感じた。アルバム全体の音量も少し絞られている。
ただ、それでも十分過ぎるくらいうるさい。そして、それが快感を呼ぶのは変わりない。
曲調は幅広く、どの曲もおしなべて良い。粘りつくようなリフが淫猥な#1「Small Hours」、三部構成(こういう風な
大仰さが本当に良く似合う)のバラード#6〜#8「Little Leaf」、脳味噌に花咲いてそうな#10「Can Peace」の
サイケ感覚、強烈な突進力とフリー演奏の凄まじさに力づくで屈服させられる#12「E(means eternal)」、聴き所は
沢山ある。シンプルなメロディもなかなかにキャッチーだが、どちらかと言えばバンドサウンドに重点が置かれている
作り、と言うか、妙な言い方だが「メロディはヴォーカルの楽器」のような感じ。ヴォーカルがメロディと歌詞を操って
シャウトをかましている印象がある。ひたすらに格好良い。
安定感と緊張感が、泥臭さとクールな居佇まいが、実にいい感じで同居している強力なロックアルバム。お勧め。
DOWN/2 (2002/2nd/海外)
筋金入りのガラの悪さで詰め寄ってくる激重・極太ロック。恐ろしい程にド迫力。
音の一つ一つがマジで一抱え大の鉄球のように重く、太く、淀んで歪んでドロドロとした溶岩のグルーヴがうねりを
上げ、殺気立ったリフが聴き手を完膚なきまでに押し潰す。
アングラ的で纏わり付く様な重苦しさとサイケデリック感覚がもたらすダウナーで後ろ暗いクスリ臭さ、危険な匂いが
全編で嫌と言うほど漂っている。その反面でやたらカラッとした乾いた開放的な空気感も持っているため、陰湿さや
陰惨さは感じない。侠気という表現が実にピッタリはまる。
男臭さに溢れるヤクザでドゥーミーなロックと言うイメージは終始崩れないけれど、楽曲は一本調子からは程遠く、
各々の曲にはっきりと表情付けがなされている。ロックンロール、カントリー、ヘヴィメタル、ファンク、ブルーズ、
ジャズ、ノイズを強引に掻き混ぜ、捏ね回し、大皿に乱雑に盛り付けてドンと突き付けるような混沌とした感触があり、
埃っぽくモノトーンな雰囲気を持っていながら、曲調はとても多彩。
また、強靭な肉体を誇示するような超攻撃的な音である一方、枯れた風情と円熟の渋みめいたものも強く感じさせる。
その滋味が最も良く表れているのはヴォーカルで、深みと艶のある歌い回しはとても印象的、かつ魅力的。
どこまでもロックであり、全く理屈抜きで根源的な衝動を刺激される格好良さ。であると同時に、酒とか飲みながら
じっくりと浸れる心地良さと心に響いて来る何かがある。お勧め。
DOWNY/無題 (2002/2nd/国内)
どことなく三味線を思わせるような特徴的な音色のギター、轟然と吹き荒れるノイズが産み出すのは
荒涼とした世界観。あまり曲が展開せず、ヴォーカルが音像のかなり後ろの方に下がっている上に、
リズム隊は延々とループする変拍子を刻むのでモノトーンで無機質な感触がある。
全8曲の中には、繰り返されるリズムとフレーズが徐々に波を生み出して行き、それが
ある地点で爆発する曲もあれば、ひたすらダウナーな反復に終始する曲もあるが、
どの曲にも共通しているのは「渦」のような、うねるイメージ。
その巨大な渦は変拍子とフィードバックノイズとキーボードの音色で作られるのだけれど、
渦の中心部に位置する歌とメロディは、どこか醒めていてうら寂しい。
その動と静の対比と金属質なシンバルの響きからは、何となく「サイレント剣豪映画の劇伴」のような
ものを連想する。
ノイズが充満した音像はやはり幻覚的・幻想的な感覚を呼び起こすが、それは聴き手をハイにさせる
ものではなくて、むしろ意識を覚醒させて研ぎ澄ます方向に作用すると思う。日本刀のように鋭く。
DOWNY/無題 (2003/3rd/国内)
前作の魅力の一つだった、静と動が徐々に入れ替るその末に空間が爆発する展開の妙は基本的に
取り払われている。静と寂が強調されていて動きに乏しく、言ってみれば地味。
音の広がりも少し大人しくなったと言うか、かなり太く大きくなったベースの低音を重心として、
音の響く範囲がコンパクトにまとめられ、ノイズの密度は薄くなった。
その分奥行きが増したように思える。
寂寥感漂うギターのトーン、トリッキーなリズム、音と音の隙間を縫って不連続な言葉を
不明瞭な発音で淡々と歌うヴォーカル、婉曲なバンドサウンド/アレンジに比べるとキャッチーで
哀感のあるメロディが作り出す、和風ゴシックとも言えそうな独特の居佇まいは前作同様。
ただ、今作は視覚的にも聴覚的にも「雨」のイメージが強い。音は沢山鳴っているのに、静か。
でも決して穏やかではない。
どんな音を鳴らすか、以上に「実際には鳴る事の無い何かをいかに聴かせるか」により意識的で
あるようで、その侘び寂びの思想に近いところが凄く好き。
ノイズが弱く強くなだらかに降りしきる中、唯一異彩を放つラスト#9「酩酊フリーク」での
サックスの狂騒もまた良い。
DRAGON ASH/Harvest (2003/5th/国内)
ドラムンベース、ヒップホップ、ヘヴィロック、ダブ/レゲエの要素が独特のバランスで融合している曲群からは、
聴きやすくポップである事をとことん突き詰めようとしているのが良く伝わって来る。
アルバムを通してコアな攻撃性や刺激的な飛び道具はあまり出てこないが、その代わり鳴っている音はとても自然。
意図的に軽くしてあると思われるギター、シンプルに聞こえるリズム、環境音を模したスクラッチ音など、いくらでも
深く作り込んで面白い事が出来そうな音が、単なるパーツの一つとして音風景の中にさらりと溶け込んでしまっている。
そのため、バンドサウンドと多彩な打ち込みには、様々なスタイルの音を消化吸収して自らの血肉とした上で敢えて
我を殺して伴奏に徹したような印象がある。
確信的に伴奏であろうとするバックの演奏を従えるヴォーカルもまた、確信的に曲の主体であろうとしているように
思える。アッパーな曲にもメロウな曲にも必ず仕込まれているキャッチーなサビはシンプルで覚えやすいものだし、
繋ぎ目無しのラップと歌唱からは楽曲とメロディに対する自信、親しみやすく肩の力がいい感じに抜けた雰囲気が
滲み出ている。歌声を届かせる事を第一義に据えた姿勢と、一歩引いてヴォーカルを立てるアレンジの妙が溶け合って
ごく普通の「いい歌」が紡がれてゆく様は、どこか清々しい。
聴きやすさに焦点を絞りすぎたせいか、バンドサウンドに、特にミドルテンポ時に肉体的なグルーヴ感が欠けている
ように感じるのが残念だが、それ以外の完成度は高い。収穫の名に相応しく、豊かで温かみのあるアルバムだと思う。
地平線をそのまま描き出すスケール感とエンドロールの穏やかな祈りが同居する#15「Canvas」は白眉の出来。
DREAM THEATER/Images And Words (1992/2nd/海外)
4つの楽器と一人の歌声、五重に重なり合うメロディが、時に一つになり時にバラバラになりながら、
徐々に心象風景を描き出してゆく。
細やかな感情を丁寧に拾い上げる表現力豊かなヴォーカルが朗々と歌い上げている裏で、楽器隊は
各々の存在を常に主張し続け、間奏部では「間奏」の意味合いを遥かに超えた変幻自在な情景描写を見せながら、
ゆっくりと曲のテンションを高めてゆく。
そして、頂点に達した瞬間にヴォーカルが再び劇的に弾ける。
その緩急を操る構成力、聴き手の感情を揺さぶる力が突き抜けて高い。
音の強靭な鳴りやリフの硬度はヘヴィメタル的だが、それと同時にとても柔軟。
変拍子と起伏に富んだ展開を持つ長い曲がほとんどだが、難解さや冗長さを感じないのは
メロディがとても解りやすく質の高いものであるのと同時に、ドラムまでも含めた楽器隊4人の鳴らす音が
それぞれの旋律を文字通り歌っているからだと思う。
特に、#7「wait for asleep」〜#8「learning to live」の流れは完璧に美しい。大傑作。
DREAM THEATER/Six Degrees Of Inner Turbulence (2002/6th/海外)
二枚組みアルバム。一枚目と二枚目では表情が随分と異なる。
で、その一枚目の方は非常にヘヴィでダーク、攻撃的。彼らの持ち味である構成力や展開力が
後ろに下がって、荒々しさや奔放なソロプレイを強調したような感じ。
その分、肝心のメロディが少し弱いとも、散漫でダレる部分があるとも思うが、思い付いたアイデアを
吟味しないまま全部足し合わせたような、作りっ放しの印象が強い曲群が放出するエネルギーの量は
非常に大きく、スリリングで聴き応え十分。
サイケで空間彩色的なキーボードの使い方が、今までのアルバムにあまりなかった要素で面白い。
#1「The Glass Prison」と#4「The Great Debate」の、リフ中心の暴走っぷりが特に好き。
二枚目は40分超の大曲が8つのパートに分かれていると言う構成。#1「Overture」のチープな
キーボードオーケストレーションこそかなり疑問だが、その後に続く組曲は歌心に溢れるヴォーカルが
前面に出た造りで、喜怒哀楽が絶妙なタイミングで移り変わりつつ最終的には明るい希望に帰結する
ポップなメロディ展開、それをカラフルに彩る楽器隊の緩急自在な演奏、とストーリーテラーとしての
真骨頂と言える内容。パート間の繋ぎ方とかは本当に巧みで、じっくりとメロディの流れに浸れる。
バンドの多面的な魅力がしっかり詰め込まれた佳作。
攻撃的でギミック重視の一枚目、ポップで安定感のある二枚目、という位置付けだと思うが、
曲としての面白み、力強さは一枚目の方が上と感じるので、そちらの方が聴く頻度が高い。
DREAM THEATER/Thought Of Train (2003/7th/海外)
ジャケが示す通りのモノトーンで暗く歪んだ世界観が、超攻撃的なヘヴィメタルのスタイルで展開されてゆく。
音の凄みは彼らのアルバムの中でも随一で、雷光のギターと雷鳴のドラム、いつにない存在感を誇示しつつリズムを
牽引するベースがどうだと言わんばかりの鬼気迫る勢いで弾きまくって叩きまくる迫力は余りに凄まじい。
不穏なメロディとリフに次ぐリフ、息遣いが聴こえて来そうな程生々しくラウドでメタリックな音像は前作Disc1の
路線を更に推し進めたもの。それに加えてヘヴィロックを経由したリズムの跳ねやうねりが重視されていて、非常に
荒々しく身体に直接訴えかけるような音になっている。壮大なスケールでもって起承転結を鮮明にに映し出す方法論を
採用していないにも拘らず10分を超える曲が7曲中6曲を占める大作だが、音の鳴りとグルーヴの快感が身体を
突き動すに任せて聴いていると、あっという間に曲が終わってしまう。冗長さはほとんど感じない。
超ヘヴィなリフでゴリ押しする作風だが、だからと言ってメロディや曲展開の妙も決して疎かにされていないと思う。
攻撃的な曲調と良く合ったダークなメロディには挑発的で美しいフックが幾つも仕込まれているし、一点突破の集中力
で終局に向けて音の塊が殺到するカタルシスを演出する手練手管は鮮やかで、破天荒な作りながら破綻が無いのは流石
としか言いようが無い。現代的な音遣いやヴォーカルスタイルの巧みな取り入れ方も見事。
ドゥーミーな重戦車リフとキャッチーなサビを持つ#1「As I Am」、#5「Vacant」〜#7「In The Name Of God」の
怒涛のようなメロディなど楽曲はどれも優れているが、後ノリのグルーヴと強烈なスピード感が何度も交差しながら
一気にクライマックスまで駆け抜ける#3「Endless Sacrifice」は素晴らしく、今作中でも白眉の出来。
強烈に重く鋭い轟音を仁王立ちで叩き出す姿にただひたすら圧倒される。エクストリームな傑作。
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