「……何処だ此処は。」
少しきつい目をした少年が呟く。
少年は物心ついたら、何故か浮いていた。
しかしそれはすぐに幽体だという事に気づく。
「…まいったな……。」
少年は生まれながらに病気を持っていた。
そして数日前体調を崩し病院に入院した少年。

病室のベッドに入り、眠る。
んでもって。
「起きた途端、いきなり宙に浮いてるし……。ほら、見よ!人がゴミのようだ!!」
高いところまでふわふわと浮き上がり、キャッキャとガキのように指を指して笑う。
……ってか、そのネタ通じる人いないから。
クールなんだかボケなんだか良くわからない少年はふわふわと浮きながら空中で横になる。
その時、
(…ん?)

不意に制服の少女が視界に入った。





#02,『非日常』を迎えた放課後






「美ー冬ー♪」
学校内でのわたしの友人関係は浅い方だ。
だから、今日の放課後も珪くんと一緒。
「珪くん、」
「ごめんね、待った??」
「ううん、平気だよ。」
わたしの言葉に珪くんは『良かったぁー』と笑った。
珪くんはこう見えて生徒会長なのです。
それだけでも忙しそうだと言うのに更に珪くんはサッカー部にも期待のエースとして輝いている。
そんな珪くんは格好いいと言うよりは可愛いという感じだから、
イケメンラブな同級生の子達にはあまり人気ないんだけど、
どっちかと言ったらチャラチャラとした男の人が苦手なわたしは、そんな珪くんが気になってもいた。

珪くんはとてもカッコイイ男の子だ。
そんな事を友達に言ったら「美冬は見る目無いわねー」と笑われちゃったけど。
周りがあまり珪くんに注目しなくても、他人の目なんか気にせず努力する珪くん。
クラスの男子の中でも一番好感が持てる珪くんに告白されたのは、
驚いたのも有り少しだけ嬉しくもあった。



「美冬、知ってる?」
「ん??」
他愛無い会話をしている時、突然彼が話題を変えてきた。
「……この辺出るんだよ。」
「…な、なんと!?」
珪くんに指差された通学路を見て、わたしは跳ね上がった。
…こ、ここっていつも学校行く時に通る道じゃない……。
ふと珪くんを見ると可笑しそうにクスクス笑ってた。
「……酷い、珪くん。」
「あははっ、美冬が可愛いからさー。嘘嘘。何も出ない出ない。」
パチリとウインクをする珪くんに安堵のため息を吐いた。
…ゴーストバスターのお仕事で大分慣れたとは言え、わたしってほんっとに怖いの苦手なんだもん。
「ほら、あんな所に男の子が宙を浮いてるのだって幻覚幻覚。」
「うん、そうだねー!!」
一時は珪くんに騙されたとは言え、それが珪くんの軽い冗談だと分かるとすっかり安心感がこみ上げてきた。
珪くんが明るく笑って指指す先には少しきつい目をした男の子がふよふよ浮いていた。
けど幻覚幻覚♪怖いと思うから怖く見えちゃうもんなんだよ、うん♪





って。






「「男の子が……浮いてるぅ―――ッ!!!!???」」
「煩い奴等だな。僕が見えるのか。」
ふよふよと浮いている男の子を指差して珪くんと同時に叫ぶ。
幻覚だ、これは幻覚なんだ。
うん?男の子の声まで聞こえた?それは幻聴だ、うん。
……なんて思いたいところなんだけど、生憎ふよふよと浮く男の子は哀しい現実を表していた。
わたしと珪くんが口をパクパクさせてパニックになっていると、幽体の男の子はわたしを見つめた。
…な、何か言いたそうな顔。……何故だろう。滅茶苦茶嫌な予感がするんですけど。
「…貴様に頼みがある。」
「た、頼み……?」
「美冬!!駄目だっ、半径三メートル以内に近づいちゃ駄目だ!!幽体が移るっ!!」
…珪くん、何言ってるかさっぱり分からないよ……。
とりあえずわたしが専門業とする悪霊ではないらしいその男の子の…頼みってのは怖いけど、
困っている人(っていうか幽霊?)を見逃すのは少々可愛そうだ。控えめに聞き返すと、



ぴとり。




「…………?」
一瞬何が起こったか全く理解できなかった。
ただ、何か…妙な感触が体を襲う。
……って。
「な、なななっ……!?」
「少々この身体、借りるぞ。」
「きゃあああえっちー!!!痴漢ーー!!!」
「騒ぐな。なに、僕の身体は他の奴には見えないんだ。
今の貴様は一人で叫んでる怪しい女にしか見えんぞ。」

う、うぐぐ……。
少年の言葉に、わたしは動揺した。
でも、この状況……。
幽体の男の子はわたしの身体をぎゅーと抱きしめていたのです。
ただ幽体のため、あまり抱きしめられているという感触がなかった。
あ、やだ…何だろう、この何かが入り込んでくる感触…。
…ちょっと待って?今この人、『この身体、借りるぞ』って言ってたよね。―――まさか。
「〜〜〜いい加減にしろよッ!!!!」
「わっ!?!」
そこまで思考を働かせていた所で大きな声がわたしの背に響いた。
幽体に抱きしめられて少々重い身体を必死に動かしながら振り向くと、そこにはいつもの優しい顔が
まるで般若のように歪んだ珪くんの顔があって――。
「どーゆーことだよっ、美冬から離れろよっ!!俺怒るよ!?」
「既に怒ってるだろ、ばーか。」
「んだとっ!?この……泥棒猫ッ!!」
「あ、あの珪くん、それ主に女の人が女の人に使う言葉じゃ……。」
「そっか!!そうだよな…じゃあ何だ?横恋慕男か!?」
「安心しろ、この女には興味が無い。僕が興味のあるのはこいつの身体だ。」
そう言うと幽体の少年はニヤ、と唇を吊り上げた。
こいつの身体、って…やめろ馬鹿!!身体目的なんてやらしいぞっ!!
と必死に叫ぶ珪くんと幽体少年のやり取りは敢て気にせず、わたしは思考を働かせた。
……なるほど、この妙な一体感の正体…この子、わたしに憑いちゃったんだっ!!?
「ほう、気づいたか女。」
「女じゃないっ、みふゆ!藤沢美冬って言うそれなりに可愛いと思う名前があるんだから、うんっ。」

って、何でこの子わたしの思ってる事がわかるんだろ。と考えたところで男の子が言う。
「藤沢美冬、貴様の身体はもはや僕のものだ。僕もその事については良く分からないが、
一体化を果たした今、以心伝心となってるんじゃないのか?」
「あーなるほど。」
「…おいこら幽体っ!!さっきから嫌らしい言い方するなっ!美冬から離れろ!!」
「無駄だ。もはやこれは僕のものだ。」
「は!?お前本気で言ってんの!?美冬はね、俺と付き合ってんの!!」
「僕のものは僕のもの。美冬の全ても僕のものだ。」
「って、ちょっと恥ずかしい事言わないでよっ!!はーなーれーてーよー!!」
何度か叫び、珪くんと一緒にこの子を一生懸命剥がそうとしたが、幽体が掴める筈もなく…。
ぜぇ、はぁ…とふたり息切れをしていると男の子が不敵そうに笑った。
「申し送れたが僕の名は雫(しずく)だ。
幽体だとなかなか不便だし、丁度良い機会だ。この身体暫くの間貸してもらおう。」
雫と名乗った男の子を見て、わたしは絶句した。
…じょ、冗談じゃないわよ…。暫くの間って何時までよ!?
「さぁな。僕の気分と頃合によりけりだ。」
「ふざけるなぁっ!!何、じゃあお前は気分と頃合が訪れるまでずーーーっと美冬の身体にへばりついてる訳!?
トイレも風呂も着替えも一緒な訳!?くっ…羨ましい事を――じゃなくて、そんなの俺が認めないーーっ!!」
「ふん、認めなければどうする。ほら、この幽体。引き剥がせるものなら引き剥がしてみろ。」
「うがーーっ!!」
雫くんの挑発に奇声を発する珪くんを交互に見つめ、わたしはため息を吐いた。
嗚呼……神様、平和を下さい………。





+あとがき+
知る人は知るかもしれませんが、雫の『人がゴミのようだ』発言は某ムスカさんです(爆笑
なんプリに続き、ハイテンション逆ハーです。と言ってもまたすぐ終わる話ですが…!
雫はクールキャラに見えて結構馬鹿だったり、珪は美冬への愛が暴走気味だったり……!(待て



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