美冬の身体に美少年幽霊…雫が憑いてしまってから、一ヶ月。


「美冬、ほら、あーんして♪」
「や、やだよー珪くん…恥ずかしいよ〜…。」
ある昼下がり。
恥ずかしそうににこにこ笑いながら自分の弁当箱を差し出す珪に、美冬も照れくさそうに笑った。
一見すれば微笑ましいウブウブカップルのやり取りだった。……一部を除いては。
「おい、僕を無視するな。」
「イ・ヤ・だ・ねーっだ!大体お前さっさと成仏しろよ!
お前さえ成仏してくれれば俺は美冬とらぶらぶ出来るんだよっ!?」
「生憎だがまだ僕の気分と頃合は訪れてない。美冬の身体はまだ僕のものだ。」
「……それ以上言うと成仏させちゃうけどぉ……!?」
「ふん、出来るものならやってみろ。」

…未だ雫は美冬にとり憑き、美冬の身体をぺたぺた触ったりぎゅーっと抱きしめたりしていた。
そんな雫は幽体の為、霊感の強い二人にしか見えない為好き放題しっぱなしなのだ。
しかも最近は美冬の傍にさえ居れば何処にでも自由自在に歩けるようにもなったので雫は更に調子に乗っていた。
勿論そんな雫の破廉恥(?)な行為を、美冬の(一応)彼氏である珪が見逃す筈もない。
すっかり犬猿の仲となった珪と雫の熱い美冬を取り巻く(?)バトルは今日も勃発していた。





#03,さようなら









「ちょっと待ってろよっ!今すぐ成仏するから!!」
「ほう。それは楽しみだな。」
「え、ちょっと二人とも……!」
珪くんの突然の挑戦に驚きもせず、雫くんはふふんと笑う。
わたしは必死になってそんな二人を止めようとしたが、もはや二人の間には見えない火花が散ってた。
どこかへ行った、と思っていた珪くんは何かを持ちながら戻ってきた。
……数珠と札だった。
そんなもんどっから持ってきた?と訊きたかったけど、話がややこしくなりそうなので止めておいた。
(それに、いつもの二人の事だもん。ちょっとした喧嘩よね……。)
ならきっと大丈夫だ。
そう思うことにして、わたしは二人のやり取りを観戦する。
「なんまいだーなんまいだー……!悪霊せいばいぃぃい……!!!」
(…何だろう、その怪しい呪文は…。)
珪くんが真剣な顔つきで怪しい呪文をてきとーに唱え始める。
言っちゃ悪いけど馬鹿馬鹿しいその光景に呆れて見つめた、その時だった――。

「っ………!?」
「きゃっ……!!?」
突然辺りがまばゆい光に包まれ、風が吹き荒れた。
「な、何これ…何これ珪くんっ!!?」
「し、知らないよー!俺適当に呪文唱えただけだもーん!!」
「雫くん、大丈夫!?……雫、くん??」
雫くんの姿が一向に見えない。眩しい光の所為だろう、とそう思ったのも束の間。
「……な…。」
やがて、謎の光と風が消えていったその時。
「…しず、く……?」
雫くんの姿は跡形もなく消えていた。


雫くんが先ほどまでいた場所を、わたしと珪くんは呆然と見つめた。
生意気で尊大で、いつもわたしにぺたぺたくっ付いていた美少年。
そんな雫くんは、珪くんにとっては邪魔な存在でしかなかったみたいだけれど。
「…ほ、本当に成仏しちゃったの…か……?」
「ま、まっさかー……!だ、だってあんな変な呪文で成仏するわけ……。」
笑って終わらそうと思ったけれど、そこまで言った所でわたしは固まった。
現に、珪くんが謎の呪文を唱えた途端に雫くんは消えてしまったのだから。
わたしは俯いた。
確かに、わたしにとっても雫くんは邪魔な存在だった。
幽霊が憑くと肩がこるとか聞くけど、本当に重かったし。
それでも最近は、いないと落ちつかない存在にもなっていた。

「俺の所為だよね……。」
「…珪くん?」
「ごめん、美冬…。俺あいつが嫌いだったけど、
でも美冬はあいつが居ると楽しそうだったから…。だから、本当は消えて欲しくはなかった。
…ねぇ、美冬。美冬は雫の事好きだったんじゃないの?」
「……は!?」
珪くんの血迷ったかのような言葉に、わたしは思わず聞き返した。
そりゃあ雫くんの事は何だかんだ言って言いつつ好きだったかもしれない。
でも珪くんとの『好き』は違う筈だ。
……でも、確かに雫くんのことも気になってはいて。
だけど――
「わ、わかんないよそんなの……。考えれば考える程ゴチャゴチャしちゃうもん。
でもね、わたし珪くんが好きだよ?」
「…美冬……。」
きっと、今のわたしすっごく真っ赤な顔してると思う。
そんなわたしを見て、珪くんは「ありがと」と笑った。
それから暫くも経たなかった。……わたしと珪くんは見つめ合う形となった。
わたしの目の前には珪くんがいて、珪くんの目の前にはわたしが居る。
「…ねぇ、美冬………。」
目、閉じて?と言う珪の言葉に、こくんと頷く。
幾ら鈍感なわたしでもこれから何が起こるかなんて分かる。
でも、初めてだからこそ緊張してしまい、目を閉じたフリをしてちょっとだけ薄目を開ける。
…唇と唇が重なるまで、あと数歩…!!――と、かなり良いムードになっていた時だった。
「おいこら貴様ら。」
「んわぁっ!!?」
「……え!?」
誰か、どこか聞き覚えのある第三者の声と、珪くんの突然の叫び声。
…そしてわたしは、まさかの人物を見てしまった。



――視界に映ったのは、雫くんだった。



「……雫くん、どうして……?」
衝撃のあまり、呆然と聞き返す。
そこに居たのは紛れも無く、たった先ほど成仏したと思われる雫くんだった。
ただ一つだけ違ったのは…身体が前と違い、透明ではなかった事。
雫くんは一つため息を吐くと、わたしと珪くんの顔を交互に見つめた。
「勝手に殺すな。僕は死んでないぞ。…僕は意識不明の重態になってたらしく、今日起きた。」
「……………。」
なんだ、そのあっさり加減は。
「ああ、そうそう。それで、僕の通っている病院が遠かった為引越しもした。今日から同じ学校だぞ。」
「………はぁ!?!」
「何だ、結崎珪。不満か。」
「不満も不満!!何で同じ学校に来るんだよ!?」
「だから、病院が近くなるからに――」
「ふ、ふざけるな――っ!!これ以上美冬と俺の邪魔するなよ!!今だって滅茶苦茶いい雰囲気だったのに!!」
「ふん。そんなの僕の知ったことではない。言っただろう、美冬は僕のものだ。」
「………は?お前、まさか――」
珪くんの言葉に雫くんは不敵に笑った。…そして、やがて珪くんは真っ青になる。
わたしは二人の会話が分からなくて首を傾げていると、やがて聞こえてくる珪くんの叫び声。
「この……泥棒猫―――ッ!!!!」
「うわわ、珪くん、違うって。それは女の人が言う台詞だよ。」
「くそ、横恋慕男ー!!馬鹿ー!!お前なんて一瞬でも心配した俺が馬鹿だったッ!!!」
「ふん。どうでも良いがお前なんかに美冬は渡さんぞ。美冬の全ては僕のものだからな。」
「うがああーーっ!!美冬からはーなーれーろーーーっ!!!」

相変わらず二人はわたしの分からない会話を繰り広げていたけど、これだけは分かった。
……また、多分ずっとこんな騒がしい日々が送られるんじゃないか、と――……。
(嗚呼……。)
そう思うと嬉しくもあり、同時に哀しくもあり……。
「か、神様……本気で平和をください………。」
わたしの呟きは悲しくも、空に消えていった。







+あとがき+
全三話って…なんプリより短いYOΣ( ̄□ ̄;;
またハイテンション逆ハー……でした。
主人公受けの争奪戦ギャグって好きなんだなーと改めて実感。

って言うか全然文章まとまってなくて申し訳ないです…!
もっと長い、長編シリーズモノにしたかったんですが、あまり長いと続かない奴なのでこんな形に……;
いやはや、読み返すとおっそろしい乱文で…!;此処まで見てくださり、本当に有難う御座いました!
ではではまたー!!



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