<序章>

友人が亡くなった・・・。

この友人は、幼い頃からの間柄で一緒に遊んだり、語り合ったり時には喧嘩しあったりしたりした仲でした。

本当に彼とはず〜っと一緒にいたような関係でした。

そんな彼との最後の時までの事柄であります。

僕は、日記を付ける習慣が有りました。その一部に彼の事が書いて有ったのです。それを抜粋した物ともう一つは、彼が書いた日記です。

彼が日記を書くとは、僕には正直言って予想が出来ませんでした。僕が、彼が亡くなってから、彼の部屋に行く機会が有った時、偶然にも彼の発病から死までの事柄が書いてある日記を発見しました。

彼は、今まで日記を書くような人ではなかったのですが、それでも書かざる得なくなったとはと思いました。僕は、彼の日記を読みそして、あの時僕は何をやってたのだろうと再度思わされたり、彼はここまで苦しんでいたのかと思わされたりしました。

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<彼への医者の診断>

俺がある日、気が向いたという事で健康診断をしに病院に行った。

行く時、「まあ、何も無いんだから、それにあっても早期発見ぐらいだろう」という思いで行ったわけだ。

しかし、現実は、そうではなかった。

単純に言えば、もう生きられないという事らしい。

それを聞いても実感が湧かなかったのだ・・・。

そして、病院を出たわけだ、その時、実感が無いという事も理由からだろうか、ショックは何故か無かった・・・。

それは、その時あまり深くは考えられなかったからだろう・・・。

ただ、「死ぬのか?」と言う思いが有っただけだ・・・・。

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<その日の僕は、>

ある日、僕は、ちょっと用事で近くの本屋に行くところでした。

散歩ついでもあって、ちょっと遠回りして、病院の近くを通って行くルートで本屋まで行こうとしました。

病院の前に来た時、知っている顔を見つけました。

それは、彼でした・・・。

僕は、彼が診断に行った日に偶然にも病院から出て来る時に会ったのです。

僕がこのように言ったのです。

「あれ?病院なんてどうしたんだい?」

彼はこう言いました。

「ん?ちょっと健康診断に行っていた。」

彼の言った言い方には、少しトゲトゲしい物が有ったのに当時の僕はそれに気が付かなかったのです。

「へ?健康診断ってどこか具合でも悪いのかい?」

「・・・まあな・・・」

「そうか。お大事にしてくれよ!」

「・・・あいよ・・・ありがとよ・・・」

「それじゃ、僕は、用事あるんでね。」

「・・・ああ、そうか、なら気をつけてな・・・」

「それじゃ」

という具合にこの時わかれたわけでありました。

病院から帰ってきて彼の顔は普段とは変わらなかった様に僕には見えました。

その為、わかるはずが無かったのだ。

まさか、こんな大きな病をしているとは思いもよらなかった・・・。

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<彼と僕との関係>

彼と僕との関係は、いわゆる、幼馴染であって、物心付く頃から一緒でしたし、幼稚園から高校まで同じところに通ったぐらいです。

ただ、大学は異なり、社会に出て仕事も全く異なり、当然仕事場も異なるわけで、今ではたまに会って話せる時間が取れるぐらいであるが、それでもまだ付き合いがあるほうです。

彼は、スポーツ系の人間で、中学から高校までずっと運動部で頑張っていたのです。

彼は、元々小さいころから運動好きでしたから当然かもしれませんね。

まあ、僕は、動くよりは、家に籠もって本を読んだりしているほうが好きだったのです。

だから、よくまああれだけ出来るなって思って見ていた時もありました。

それに彼は、昔から病気なんてほとんどした事が無く、小学校までは皆勤賞を取るような人物でした。

ただ、中学と高校では、部活の為だけに学校に来るというような事もあり、授業をたまにサボって練習している事もあった為、皆勤では無くなりましたが、それでも病欠は一度も無かったようです。

実際、僕の方が病気でよくプリントとかを持って来てもらう事が有ったぐらいです。

冗談で、「君は、病気では死なないだろうね。」って言った事もあったぐらいです。

その返答も「まあ、おめ〜よりかはな!」って感じでした。

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<彼の内面〜恐怖>

医者にだって間違えはあるさ。

俺は、これほど元気なのだ。死ぬなんて事は無い。何かの間違いさ。

とあいつに会った日は思った。また、翌日も仕事をしながらそう思っていた。

2,3日経った後、自分の体の異変に気が付いた。

その時は、ただ疲れが来たのだろうと思い、仕事に出たが、その仕事中に意識を失い倒れてしまった。

そのまま、医務室に行き、その日は早めの退社をさせてもらった。

その時、やっぱり、病気は本当なのだなと実感した・・・。

その後は、酷いものだ。

いろいろ考えてしまった。

『死』という事を・・・。

こんな醜い事を思った事もあった。

何故、俺なのだ?あいつの方が病気になり易く、俺の方が病気になり難かったじゃないか?

死ぬのはあいつの方が先だろ?

良く子供の時言いあったじゃないか!

死にたくない!

そのような事があって、会社もいけるような状態ではなくなって来た。思ったより、病気の進行が早いのだ。

仕方が無く、会社を辞める事にした。

理由は、特に無かったが、この不景気の中、辞めますは会社にとっても良かったらしくここでも俺が落ち込む結果になった。

辞めた事は、家族にも伝わったが、理由は、リストラのようなものという事になっている。

その中、醜い思いはまだ有ったが、少しずつ整理が出来るようになり、一人の顔が思い浮かんだ、それはあいつだった。

あいつだけには、この事を言っておこう。

何故そんな気持ちになったのかわからない。

いつも、毎日、あいつに対して醜い思いが表れては消えていくのに・・・・。

それなのに最後は、あいつしかいないのか・・・。

明日、あいつに電話してみよう。

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<告白>

僕は、普段どおりの生活を送って数週間が経ちました。

とある日の事です。

携帯電話に一本の電話が入りました。

しかも、珍しく彼からです。

彼は、電話をする事を非常に嫌って用があるなら家まで来てしまうような人でした。

それにめんどくさがりやで電話するよりメールとかで済ましてしまうようなところもある人でした。

「ハイ!」

「あ、俺なんだけど・・・ちょっと時間有るかな?」

「あ、今はちょっと無理だけど、昼休みは空いてるよ。」

「それなら、ちょっと話があるのだけど、良いかな?」

「良いよ!会社の前の公園で、昼休みの時間で良いならね。」

「・・・ああ、すまないね・・・。」

「?」

と言った会話でした。

その時、何かあるかなという感じはありました。それは、かなり重要な事の様に思われました。

しかし、まさかその内容までは全然予想できるものではありませんでした。

昼休みになり、会社からちょっと出て、近くの公園に行きました。

彼は、そこにいました。当然ですが・・・。

「お〜い!話って何?」

「・・・ちょっとな・・・」

「ふ〜ん?で、今日は会社はどうしたんだい?」

「・・・まあ、その話は後で話すから・・・」

「へ?どうしてだい?」

「今日、話そうとしてるのはその事だが、実は、俺、あまり長く生きられないらしい。」

「・・・・・・」

「数週間前、病院前で会っただろ?」

「う、うんそうだったね。」

「あの時、そう宣告された。俺は長く生きられないと・・・」

「・・・・・・」

「その時は、全然俺には実感が無かった、それにちょっと、痛みとかがあるかもしれなかったが、気には留めてなかった。体調も悪くないし、『このヤブ医者』って思って無視していたわけだ・・・。」

「・・・・・・」

「体調がちょっと悪くなったと自覚できるようになったのはそれからすぐ後の事だった。それでわかった。ああ、やっぱり死ぬのかなってな。」

「・・・・・・」

「長い付き合いだから、お前だけには言っておきたくてな。」

「・・・え?僕だけ?誰にも言ってないの?おじさんやおばさんにも?」

「ああ、まだ言ってない。言えるわけ無いだろ・・・」

「で

も、会社の方には言っているのだよね?休ませてくれているぐらいだからね?」

「いや。体調が悪くなって来た時にこれ以上迷惑はかけられないからなぁ・・・」

「え?辞めたって事?」

「ああ、そうなるな。」

「・・・・・・」

何も言えなかった。ほとんど聞くのが精一杯でした。こちらも全然心の準備も無くこのような話を聞く事になり一体どう話せば良いのか全くわからなかったのでした。

ただ、わかる事と言えば、数週間前の彼とは明らかにやつれているという事ぐらいであります。

本人は、笑いながら、「まいったねぇ〜」とか「何故俺が?」とか言っていました。

最後に何を言って良いのか困っている僕を見て、

「まあ、人間いつかは死ぬのだからなぁ。早いか遅いかだって、そんな辛気臭い顔するな。」

と言いました。

本当に何を考えているのだって思いましたが、ここで僕がそのような顔をすると彼に悪いなって思い、出来るだけ普通の顔をしました。

しかし、そう簡単に出来るわけが無いですね。結局、その後、何も言う事が出来ず、昼休みが終わってしまい僕は会社に帰って行き、彼は、町の方に消えて行きました。

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<僕の内面〜彼への思いそして決断>

その後、僕は仕事に向かったのですが、彼がそんな事になっているという事に正直言ってかなりショックを受けてしまった。

本当に直らないのか?何故彼なのか?

彼は病気一つした事なんて記憶に無いぐらいの人なのに何故・・・。

その点僕なんか彼に比べて病気を良くしたし何故僕じゃなかったんだろう?

また、これからどんな顔をして彼に会ったら良いのだろうか?

今迄通りにしていけるのだろうか?

何かしてやれないのだろうか?

家族では無いまでもやっぱり、あれだけ付き合いが長いのだ、家族と同じぐらい長いのだ。

彼の為に何かしてやりたい。でも、何をしてやれる?

それに、次会った時一体どんな顔をしたら良いのか?

また、彼は今どんな気持ちでいるのだろう?

わからない事だらけです。

僕は、しばらく途方にくれました。

考えても考えてもまともな答えは出ては来なかったです。

数日考えに考えていた・・・。

その間、仕事とかもしなければならないわけですが、仕事はしているようでしてないような感じになってしまっている状態です。

本当に気になって仕方が無かった・・・。

ある日、決断をしました。

もう一度、彼に会いに行こうと・・・。

彼の家に行くなんて本当に久しぶりな事だ!

いくら幼馴染でも、大きくなってから家に行くなんて事はあまり有りませんでした。

最後に行ったのは、記憶に残る限り、大学の時ぐらいかな?それ以後は無いと思います。

確かに、家の前でばったり会って話したりはしましたが・・・。

その日、彼の家に行きました。

インターフォンを押して、ピンポーンの音が響いた。あ〜昔となんら変わってないな・・・。

ドアから出てきたのは、おばさんでした。

彼がいますかと聞いたら、調度部屋にいるところでした。

早速お邪魔させていただきました。

久しぶりの彼の家です・・・。

彼は、一人部屋の中にいました。

「・・・よお、久しぶり・・・」

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<彼の家での事〜彼の希望へ・・・>

あいつが家に来た?俺は少し首を傾げたが、別に不思議じゃないなって事に気が付いた。

昔は、よく家に来て遊んだものだしな。

ただ、この歳になって一体って事も思うが・・・。

「ちょっと、気になって君の家に来てみたんだ。」

「ふ〜ん、気になってね・・・。」

「やっぱり、昔とはあまり変わんないね。」

「ま、何所も変えてはいないからな。変わっているといえば・・・、俺の部屋ぐらいか・・・」

ここの所少しは体調が良いので部屋の整理をしていたわけだ。いつ死でも良い様に・・・。

「いつも汚かった君の部屋が綺麗になっているなんてね。一体・・・」

あいつは、「一体何かあったのか?」と言いかけて止めた。

そりゃそうだ、もう、あいつは知ってしまっている、俺がさほど長くは無いって事を・・・。

けど、俺は冗談交じりにこう言った。

「滅多に無い事があるから明日は雪だな・・・」

あいつもあまりに予想できない事を俺が言うのでそれにつられて、

「ホントだよ!まだ、秋になったばかりなのにいきなり冬になって雪が降っちゃうよ」

と言った。これで少しは場が和んだ。

今回はいろいろな話をした。

あいつの会社での出来事などを聞いたりした。

また、聞いてばかりでは俺が物足らないので昔の話もした。

そんな中、本当に馬鹿な話をして大笑いしたりもした。

こんなに大笑いしたのもここのところまるで無かった。

一人でいると、本当に『死』について考えたり、『明日死ぬのか?』とか悪い方向の事しか考えられないのだ。

その中、『準備』という事も考えて、今迄あまりした事も無かったような部屋の整理というものをした。

けど、何も解決はされてはいなかった。

むしろ全然わからない事ばっかりが増えてきたようにも感じられた。

しかし、今日、あいつが来てくれて正直言って助かった。

このまま、一人で考えていたら、自らで自らの命を絶ったかもしれないと思うと、この様に確かに時間の無駄とも取れるかもしれない馬鹿話でも今の俺には大切な事であった。

気が付いたらかなりの時間が経っていた。

その為、この俺にとって楽しい時間、生きていると実感できる時間は、終わってしまった。

これで、こんな機会なんて持つ事は無いと思った時だった。

あいつが、別れ際に、

「また、馬鹿話して、一緒に馬鹿笑いしようよ。」

って言った。意外だった。

俺には、"次"とか"また"と言うような言葉は、無いような感じが有った。

また、俺の病気を知っているあいつも、俺にとって"次"とか"また"というような言葉は無いかもしれないという事を知っているはずだ。

であるのに、"また"と言った事に「あれ?」って思わされた・・・。

そして、つい、

「ああ、またな・・・。」

と言ってしまった。

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<彼の家での事〜僕の希望へ・・・>

彼の第一声は、「・・・よお、久しぶり・・・」でした。

無理して、元気そうなフリをしているように思いました。

今日は、彼に何をしてやれば良いのだろうって事で僕なりの答えを見つける為に会いに来たわけです。

後、彼が気になったのも事実ですが・・・。

本当にこの時は何を話して良いのか全くわからずに彼の所に行きました。

挨拶程度の話をして、彼の部屋がいつに無く綺麗になっているのでつい、

「いつも汚かった君の部屋が綺麗になっているなんてね。一体・・・」

と言ってしまい、言った瞬間に「あ!」って思い、大変愚かでやってはならない事をしてしまったのです。

その時、僕はすごく悔やみましたが、彼の次の言葉でかなり救われました。

「滅多に無い事があるから明日は雪だな・・・」

しかも、冗談交じりに語ったので本当に良かったです。

確かに彼には傷となったかも知れないので後悔はしていますが・・・。

そこで僕は気が付かされました。

別に、病気になったからと言って格別特別な事をしなくて良いのかもしれないと・・・。

そのように気を使う事によって、知らず知らずの内に彼を傷つけてしまうのではないのかと思い、昔を思い出して、

昔の他愛の無い話をしたり、僕の今の状況を面白おかしく話したりしました。

その中で彼は、本当に楽しそうにしてくれていました。

また、彼には、"先"と言う言葉はもうありません。

と言うのは、彼は"先"が無いと言う事にとらわれ過ぎていると僕はこの会話の中思わされました。

確かに、彼には"先"と言うものは無いでしょう。それは否定できない事実です。

しかし、その中で最後まで希望は持たないといけないと考えました。

だから、別れ際にあえて彼にこう言わしてもらいました。

「また、馬鹿話して、一緒に馬鹿笑いしようよ。」

次まで頑張ろうって意味を込めた言葉で僕はこれを言いました。

彼は、本当にわかっているとは思いませんが、最後まで希望を持ってもらいたいと思いました。

続き・・・


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