ある雨の日・・・

 

 

「ほ〜わぁ〜・・・朝だぁ〜・・・」

私は、何時も通り窓から差し込む光で目が覚め、何時ものように情け無い起き方をする。すぐに時計を見る、時計は、午前7時・・・まあ、あの時計は、まだ、直して無いので仕方ない、私は、他の時計を見た、午前7時10分・・・どうも、7時には起きれたようだ。

私は、立ち上がり、朝食の準備をする事にした。と言っても、コーヒーを作る事と昨日買って来たパンを出す事ぐらいだけどね。

準備をしていると、一昨日の様に電話が有った。私は、その電話を取った。

「もしもし・・・」

すると、相手は、

「おはようアキナ!」

と言った、私は、

「あっ!ケン調度良いところに電話を昨日言っていた服を届けてくれる件なんですが、何時もって来れます?」

と言ったらケンが、

「その事だが、今日の午前10時ぐらいに届け様と思ってるのだが・・・。」

と言ったので、

「もっと早く出来ません?ちょっと、その時間帯外に出るので・・・」

と言ったら、ケンが、

「何?お前が用事・・・?何の用事だ?」

と言ったので私は、

「それは、言えません・・・別に何でも良いじゃん!何時ぐらいに来れます?」

と言ったのでケンが、

「ふぅ〜それより早くかぁ〜・・・。なら、午前8時と言うのはどうだ?」

と言ったので私は、時計を見た、今の時間は、午前7時40分・・・ケンの家から、ここまでどんなに急いでも1時間はかかる。それを後20分で来るなんて不可能じゃないの?だから、私は、

「無理しなくても良いですよ!後、20分しかないじゃないですか!ひょっとして、もう既に家の前なんじゃないですか?だから、そんな事を言ってるの?」

と言ったらケンが、

「当たらずしも遠からずと言った所だな。実は、近所の商店街まで来てる。」

と言った、だから、私は、

「なら、今すぐ渡しに行くって言えば良いのに!どうして、午前10時が良かったのですか?」

と言ったら、ケンが、

「少しばかり、寄る所が有ってな・・・先にそっちに行こうと思ったわけだ。まさか、お前がこの時間帯に来ても良い状態だとは思ってなかったものでな。なら、今から行く。」

と言った。切る前に私は、

「今日は、普通に来てくださいよ!あまり、変な事に時間を使いたくないので・・・もし変な事に時間を使ったなら今日は、本気で撃ちますよ!」

と言ったら、ケンが、

「ああ分かった。普通に行く・・・それに、お前本気で撃つと言っても多分撃てないだろうがな・・・」

と言って電話を切った。

私は、ケンの

『多分撃てないだろうがな・・・』

と言う声が心に残った。そう、もう、私には、撃つ事なんて出来ない。何故、それをケンが知ってるのかも気になった。

ああ、一昨日の晩の話しか・・・、

『見てしまった瞬間に俺は、もう、駄目になった・・・。』

『俺もお前と同じ歳にこの仕事が出来なくなったのだ・・・。』

だから、ケンは、私の状態を知っている。だから、あんな事を言ったのか・・・。

私は、電話中に出来ていたコーヒーをコップに入れ、パンをお皿に出して、準備は整った。ケンが来る間食べていても良いかもと思ったが、あえて食べずに待つ事にした。

ビリリリリ・・・

すると、ベルが鳴った。私は、念の為、一応の準備をした、そう、腰には拳銃、そして、

「どちら様・・・」

と聞いたら、

「俺だ、開けてくれ」

とケンが言ったので私は、すぐにドアを開けた。すると、そこにケンは立っていた。だから、私は、

「また、小細工するかと思いましたよ。本当に普通に来てくれたんですね。」

と聞いたら、ケンが、

「・・・ところで届け物だ!」

と言って私に本部に置きっ放しの服を手渡してくれた。私は、

「あ、ありがとう御座います。すいません。本来私が本部に行って取って来ないといけなかったのに・・・」

と言ったら、ケンが、

「まあ、仕方が無い。あんな事の後だ・・・。ところで、今日のその予定と言うのはなんだ?」

と聞いてきたので私は、

「え?い、いえ、たいしたこと無いです。」

と言った、それでもケンがしつこく聞いてくるので私はつい、

「あぁ〜もう、五月蠅いですねぇ〜!!!デートですよ!デート!」

と言ってしまった。勿論、嘘なんだけど・・・。でも・・・本当に嘘なんだろうか?すると、ケンは、

「ふむ〜、彼とか・・・」

と言って、家を出ようとした、そして、

「・・・では、俺は、用事を済ませて来る・・・だが、気を付けろ、うちの党の刺客達を・・・。お前もその一味だと思って狙ってくるかもしれないからな・・・。また・・・お前が彼を守ってやれ・・・。」

と言って出て行った。

あれ?ケン、スピアと今日会うって事までお見通し?でも、その割には、止めなかったなぁ〜・・・。てっきり、大反対が有って、ガチンコバトルまでしないと駄目なのかなぁ〜って思ったんだけど・・・。私は、ケンのその対応があまりに意外だったのでしばらくボ〜ッとしてしまった

 

午前9時30分・・・そう、スピアと出会った場所に私はいる。

本当に何故か何時もはギリギリの行動をしている私が今日に限って行動が早い。単にスピアと会うと言うだけなのに・・・。そんな事だけでこんなにも規則正しくなるとは、恐るべし・・・。絶対にケンと約束した場合なら、私は、午前10時に待ち合わせなら、少し遅れて到着するだろう。

私は、ぼ〜っと街の風景を見ている。

何時もと同じ風景、でも、歩いている人は、少し何時もとは違うはずだ。

また、擦れ違って行く叔母さん達の会話がたまに耳に入る。

「あら、お久しぶりねぇ〜どうしてたの?」

「いえねぇ〜ここ数日、うちのお祖母ちゃんが寝込んじゃって、実家に帰ってたの・・・。」

それと対照的に知らん顔して擦れ違って行く人達もいる。むしろ、そんな人達の方が多い。何時も同じ様な場所で顔を合わせたのだろうか?それとも今日初めて顔を合わせたのだろうか?多分、両方だろう・・・。

ふと気になったので時計を見た、午前9時45分・・・

さっきから15分もボーっとしてた様だ。

ふと近くで私と同様に人を待っているのだろうと思われる人がいた。時計を見たり、街の風景を私と同じ様に見ている。だが、思ってる事は違うだろう。

彼も待ち合わせより早く来てしまったのだろうか?それで、時間を潰す為に街を見ているのだろうか?それとも、彼女が待ち合わせの時間になっても現れないから、ヤキモキしながら待ってるのだろうか?それとも、ドキドキしながら?

そして、彼に駆け寄ってくるのだろうか、遅れて来たのかどうかは分からないけど、その待ち人が・・・?そして、「待った?」とか言う会話が有るのだろうか?どっちにしろ、私には、手の届かない話しだ。今こうやって、スピアと待ち合わせをしてる事自体有り得ない事・・・。私には、勿体無い事だ。なら、何故私は、そんな勿体無い事を実行しようとしているのか?なら、昨日断ったら良かったのではないか?でも、それが出来ずに更には、待ち合わせの時間よりも早く来ている。私は、人と話したり、会ったりする事に楽しみを覚えているからこんな私には勿体無い事をしようとしてるのだろう。

でも、こんな事は長くは続かない・・・私は、こんな事をして良い人間じゃないから・・・。

私は、再び、時計に目をやった。時間は、午前9時50分・・・後10分・・・。

その例の彼も時計を見ている。どうも、まだ、待ち人は現れないようだ。本当に、これだけあの人を待たせる人って一体どんな人間だろうと私は、気になった。それだけ魅力が有る人なんだろう。私は、気まぐれにもこんなに早く来て街の風景を見ている様な変わり者だけど、あの人は、街の風景を見ているより待ち人が来るのを待っている様に思う。

私は、再び、街の風景を見る事にした。街は、徐々に人が増えていってる。このままでは、スピアを見つける事もスピアが私を見つける事も難しくなる。だから、私は、風景を見るのをそこで諦め、彼を探すと言う事に重きを置いた。

でも、まだ、10分前ですから、さすがに来て無いでしょう・・・。

私は、周りをキョロキョロしだした。すると、どうも、あの彼も人が増えていってるのを見て待ち人を探す為にキョロキョロしている。

でも、あれ・・・?あの人どこかで見た事無い?私は、彼をじっと見てみた。すると、彼もこちらの視線に気が付いたのか、こちらをじ〜っと見つめてきた。そして、私に近づいてきた。そして、

「あれ?やっぱり、アキナさんでしたか!ちょっと遠目だったので一瞬分かりませんでしたよ!」

と言ってきた。だから、私も、

「私もですよ!私と同じ様に待ち合わせをしている方がいるなぁ〜と言う感じで見ていたのですけど、何故か気が付きませんでした。」

と言った。私は、色々と考え事をしながら風景の一部として見てしまっていたから気が付かなかった。スピアさんも同様だったのだろうか?すると、スピアさんが、

「ところで何時からおられました?ひょっとして、僕かなりの時間気が付かなかったって事だと痛いなぁ〜・・・」

と聞いて来たので、私は、

「9時45分ぐらいですよ!来て間もなかったのです。」

と嘘の事を言った、20分も待っていたなんて言っても何の意味も無いので、すると、

「えっ?5分しか僕待ってません?確か、僕がここに来た時調度この辺で誰かを待ってる女性がいた記憶が有るんですが・・・おかしいなぁ〜・・・僕、今日ちょっと時計の調子が悪くて持って来て無いんですよ。だから、出た時間が分かっても着いた時間が分からなくて・・・そうですしたか・・・」

と言った、どうも、私と同じ頃にここに着いたようだ・・・でも、ここからなら少し行った所にある時計が見えるから着いた時間分かるはずなんだけどなぁ〜・・・だから、私は、

「でも、時計ならあそこに有りますし・・・それに、たまにスピアさんの方も見てましたら、腕時計を見ておられたような気がするのですが・・・?」

と聞いてみたら、スピアが、

「え?見られていた・・・?困ったなぁ〜何時もの癖でつい見ちゃったんだよ。時計に気が着いたのもここについてちょっとしてから確かその時の時間が・・・あれ?その時9時45分でしたが・・・おかしいなぁ・・・」

と言ってきた、もうこれ以上このおかしな会話を続けられる自信が無くなったので私は、

「私、嘘言いました!実は、9時30分にはここにいました!ごめんなさいね!」

と言ったら彼が、

「え・・・あ、はぁ〜やっぱりそうでしたか・・・ごめんなさい気を使わせてしまって、まさか、20分も近くにいたのに気が付かなかったなんて本当に僕は、駄目ですわ・・・。」

と言ったので私は、

「そんな事無いですよ!私だって、同じじゃないですか!私だって20分も近くにいたのに全然気がつかなかったのですよ・・・私こそ駄目な人です。」

と言ったら彼が、

「じゃあ、駄目な者同士今日はどうしましょうか?」

と少し笑いながら言ったので私は、

「そろそろ午前10時ですし・・・約束の時間ですね。とりあえず、この辺何所に行きたいのですか?私が知ってる限りなら案内しますけど・・・」

と言ったら、彼は、

「充分ですよ!僕も先生が回復するまでの時間ここにいるだけなんでね。」

と言った。そこで私達は、この日一日、この街を廻る事になった。

私もこの街をこんなにゆっくり廻った事が無かったから、知らない事も多かった。食料品のお店は知っていてもその他を知らなかったりする。そのたびにスピアが、

「分からなくても別に構わないですよ。そうか、ひょっとしたら無いかも知れないねぇ〜う〜ん、まあ、そこまで急な用事でも無いし・・・」

と言って私を庇ってくれた。

この日は、結局、食料品のお店を案内したのと昼食を取ったぐらいで終了してしまった。別れ際に私は、

「すいません・・・もう少し廻る所も有ると思いますけど・・・私もこんなにこの街に色々有るとは知らなかったでして・・・」

と言ったら、彼は、

「そうですね。僕もこんなにいっぱいお店が有るとは思ってませんでした・・・。じゃあ、今度は、それ廻ってみません?アキナさんもあまり、知らない事が有るって分かったのでどうです?」

と言ってきた、えっ?と言う事は、また、会いましょうと言う事?だから、私は、

「あ・・・ハイ、次、また、廻りましょう!でも、何時・・・?」

と聞いたら彼は、

「うぅ〜ん、明日でも良いんですが・・・どうしましょ?」

と聞いてきたので、私は、

「じゃあ、明日、今日と同じ場所同じ時間と言うのはどうですか?」

と言ったら、彼は、

「じゃあ、それで・・・それでは、また明日!」

と言ってきたので私は、

「それでは、また明日・・・じゃあね!」

と言って分かれた。

 

私は家に着いた。その時既に日は西に傾いていた。私は、何時も通り夕食の支度をした。

食べ終わってから、電話が有った、電話の主は、ケンだった。

「・・・今日は、どうだった?何も無かっただろうな?」

と聞いてきた、それはつまりどう言う事?私は、

「ケン・・・いきなりそんな事言って恥ずかしくない・・・?」

と聞いてみたらケンは、

「・・・お前まさか変な風に勘違いして無いか?つまり、お前達をつけてる奴とか刺客とかいなかったかと聞いただけだ!全く、何時そんな知識をつけたんだ・・・ブツブツ」

と聞いてきた、あちゃ〜そう言う事か・・・私はどうも勘違いしたらしいだから、

「だって、いきなり"どうだった?"は無いでしょ?それにその後の"何も無かっただろうな?"だって充分勘違いしそうな言葉だと思うのですが・・・。まあ、話しは戻して、つけられた気配も刺客の気配も無かったわよ。伊達にケンの訓練を受けて無いもの!それぐらいは、分かるわよ!」

と言ったらケンが、

「・・・まあ、それなら良いがな・・・それに、つけるなんて事を奴等ならし無いだろうし・・・そのまま、バンで終了だろう・・・」

と言っただから、私は、

「確かにそうよね・・・私が撃たれるの?それとも彼?ああ両方と言う事も有るよね?」

と聞いてみたらケンは、

「まあ、全部ありえるだろうな。だが、あいつはそこまでしなくてはならないぐらいの人物では無いから、下っ端の下っ端だから、狙うかどうか・・・」

と言ったので私は、

「なら私が狙われるわけね・・・?まあ、良いわ、私を狙えるぐらいの奴がこの党にいるかどうか・・・ケンが狙うなら例外だけど・・・」

と言った、そう、うちの党で私と同等の腕を持ってる人間なんてケンぐらいなもの。だから、私を狙うのはつまりケンしかいない・・・。すると、ケンが、

「俺以外でもお前を狙える奴はいるがな・・・。お前がうちの党で一番何って誰が言った?お前ぐらいなら・・・」

「はいはい、私クラスは掃いて捨てる程いるんでしょ!でも、そう言って一回も会わせて貰ってないしね。」

と言ったらケンが、

「まあ、うちの党で一番なんて思うな!仮に一番でもと言いたいわけだ。」

と言った。そして、

「でも、気をつけろ・・・お前が感知しても彼は感知できないと言う事を忘れるな。お前が隙を見せないからと言う事で標的を彼に変える事だって有る。だから、注意して置けよ。じゃあ、また、電話をかける。ところで明日はどうなってる?」

と聞いて来たので私は、

「明日も今日同様街を廻ります。」

と言ったらケンは、

「注意しろよ・・・それじゃあ、電話を切る・・・」

と言った私は、

「でも、どうしてケン?私がスピアと会う事を反対しないのは?」

と言ったらケンが、

「ん?反対して欲しいのか?別に反対する理由が無いからな・・・じゃあ、電話を切るぞ!」

と言ったので私は、

「うん・・・ケン・・・ありがとう・・・」

と言って電話を切った。

今日は本当に私には勿体無い出来事がいっぱいだった・・・。本来、私みたいな人間には、体験すら叶わない。でも、今日、叶った。願っていたのか?それとも、そんな普通の事ですら忘れていたのか?私は、既に諦めていた。普通の生活と言うのを・・・。絶対に手の届かない物・・・。更に今日は、その普通の生活にオプションまでついて来た。普通、私みたいな人間が異性とこんな気軽に話せるなんて・・・。勿体無い・・・。でも、結局、こんなにも普通の生活が良いものだとは・・・。その勿体無い出来事が本当に良かった。

私は、再び読んでいた本を読む事にした。今日は何ページ読めるかなぁ〜・・・。

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