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ケンは、仕事方面の話になると、「お前」と私を呼ぶが、それ以外だと、私の事を「君」か名前である「アキナ」と呼ぶ。私は後者の呼び方が好きだ。この「アキナ」と言うのは、事故で亡くなった両親がつけてくれたもので私の本当の名前だ。別に、コードネームとかケンによって新たに付けられたわけでも無い。 「さて、この近くには、何か店はあるか?」 とケンが聞いてきたので、私は、 「私もあまり知らない。家の近くでは、外食はしないから。」 と言ったのを聞いてケンは、 「なら、何処でも良いな?」 と言ってから、 「そろそろ、着替えたらどうだ?」 と言った。そう、私は、確かに上着を纏ったが、この格好では、外に行く事は出来ない。でも、着替えたいけど、今はケンがいるから、 「そうね、着替えるのでケンは、外で待っていてくれます?」 と言った。
ケンとの昼食の後、ケンと別れたが、そのまま家に帰るのも面白くないので、少しばかりこの近所をブラブラした。 この近所を歩くなんて本当に初めての事だ。この近所には、たくさんの人がいる。家庭持ちの者もいれば、私同様に一人で暮らしている者もいる。だが、その一人一人が隣の人の事なんぞ何も関心を持っていないのは今日の徘徊で分かった。擦違う人と目が合っても挨拶も無い。私が、怪しまれないように挨拶をしてしまっても向こうから何も返ってはこなかったのだ。つまり、ここの住人は、隣の人が殺人鬼であろうが、テロリストであろうが仮に人間で無かったとしてもお構い無しなのであろう。それは、私にとっては好都合である。私も、その様な者だからである。その後、日が沈んだので、家に帰ってきて、晩の支度をして、夕食を食べた。そう言えば、こんな普通の晩を過ごすのなんて久しぶり。何時も暗殺が終わってから、次の暗殺の指令が来るので、普通の夜を過ごすなんて事は出来なかった。でも、今日は、次の暗殺の指令は無い。 こんなにも普通だって言う事は、心が落ち着くのだろうか・・・。 でも、暗殺をした後、殺したとか死と言ったものを実感できないのに、何に対して緊張しているのだろう?それは、私の良心が、これを行ったら誰かが死ぬと言う事を知っているからだろうか?そして、誰かを殺す事は悪い事だと言う事も知っているのだろうか?だから、暗殺の命令がありそれを終えるまで心に安らぎが無いのだろう。 また、それとも、単に誰かに見つかるのではないかと言う緊張感の為だろうか? どれも答えであると思う。この場合、答えで無い物を見つける方が難しいと言える。 そんな事を考えるよりも、私は、読みかけの本を読む事にした。そう言えば、この本が読めなくなるぐらい忙しくなったのってどれぐらい前だったかなぁ・・・?もう、忘れるぐらい前だった様に思う。ちゃんと栞は、入っているが、その部分を読んでもこの本がどんな内容だったのか全然思い出せない。私は、更に読み進めたが、話しの内容が分からないので、その入っていた栞を抜き、最初から読む事にした。そう言えば、ずいぶん読んでいたのでもう、本の最後の方だったのに・・・。けど、この様な夜は、次一体何時来るのか分からない。私は、この本を読み終える事が出来るのかと不安になったが、それでも、読もうと思い読み出した。 |