「久しぶり。元気だった?」
僕は、そう問いかけた。
かなり昔に離れ離れになってから、ずっと……
思い続けていた人だ。
僕の心の中にたくさんの思いが蓄積されていて、
何から伝えればいいか分からない。
でも、とにかく。
好きだった。
「……」
答えは返ってこない。
僕の耳が聞こえないんじゃない。何も喋っていないのだ。
僕の声は、君に届いていないのか。
それとも、君の耳には僕の声が聞こえないのか。
分からない。
だけど、嫌だ。
そのまま、何も変わらなかった。
昔の君はもういなかった。そこにいたのは、僕にとっての君じゃなくて、
君なんだ。
思い続けていた。
それに答えてくれる確信どころか、その本人すら目の前にいないというのに。
独りよがりで、妄想を続けていた。
いつしか、昔の君の姿は過去になり、僕が覚えていた君の姿も
いつしか、美化されていく。
最後には、写真とはまったく異なった君の姿が現れて、
妄想を思い続けていた自分が少し哀れになる。
君を愛していたんじゃなくて、誰かを愛していたんだ。
妄想は言葉を持たない。持つものは、自分が君に期待している
愛の言葉。自分を慰めるための、心の琴線に触れられるように作られたもの。
自分自身が、だれかにかけられたら嬉しい言葉。
そして、同時にあまりにも非現実的な言葉。
そこにいるだけで心が癒されるのは、外見を見てその人のイメージを決めているから。
誰も僕を癒したくてそこに存在しているわけではない。
ひょっとしたら僕のことを嫌っていて、憎んでいるのかもしれない。
でも僕には見えない。妄想も、それに続く。
いつのまにか、本人とはかけ離れた姿のみが僕の心の中に住み着き、
僕の欲望を満たす。
僕の言葉は、君に向けて発されたもの。
その君とは、君ではなく。
僕の中の君だったのかもしれない。
確かに僕は元気だったし、僕の中の君はずっと元気だった。
僕は君の悲しげな姿を見たくなどないから、
笑顔の君の姿ばかりを創り出す。
感情は僕にとって有効に働くもののみに絞られて、
僕はつらいときに君の姿を使う。
自分で励ますことなど、できないから。
僕の道具と化した君の姿には、もう感情はない。
姿だけだ。
本当の君は何を考えているのかなんて、もう分からない。
君を見ていたはずの視線が、僕の中の君の妄想に向いていたのだから、当然だろう。
僕が君を見ていない間に、変化したはずだ。僕が変わったように。
僕の妄想が膨らんでいったように、君の心の中のどこかは何かの気持ちで膨らんでいるはず。
それを言い当てることは、もう今の僕にはできない。
他人でしかない。
所詮、他人でしかない。
自分の中の妄想の君が本当に発したかった言葉を捨て去って、
僕自身を満たしてくれるような都合のいい言葉を植え付けた、自分には。
僕のそばにはもう君はいない。
もうつかめない。
一生を共にするのは、僕を幸せにしてくれるのは。
妄想でしかない。
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