引っ越してみた。古臭い家から放り出されて、
僕は何もないコンクリートの中にいる。
あるのはコンセント、そして電球。
今まで、この世界では何度このような光景が見られたのだろうか。
何度、若者がひとり立ちしたのだろうか。
今まで、親にどれだけ頼っていたのだろうか。
何度、迷惑をかけただろう。
モノが何もないと、不思議に寂しくなってきた。
右手にあるのは、携帯電話。
ふと、親友に電話してみる。
あいつはとても遠いところへ行ってしまった。
きっと、電話越しにしか会えない。
「お前も……一人暮らしなんだな」
僕の父親も、母親も、そうだったんだ。
昔は一人。
今は、二人。
いつか、僕もこうなるんだろう。
子供にいろいろなモノを買ってあげて、いろいろなことを教えて、
いろいろな思い出を共にする。
そして、いつか子供が旅立つ。
それからまた、繰り返されるんだ。
人間の、儚い暮らしが。
決めた。
僕は、今日から……
ちょっとだけ、大人になってみよう。
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