向こう側にいる君に、僕は手を振る。いつまでも手を振る。
初めは、君も手を振り続けていてくれた。
しかし、僕がそれを止めようとする気がないのを悟ると、君を待っていた人のもとへ、
もう振り返ることなく去っていってしまった。
僕には国境を越える力はないから、もう見納めなんだろう。
君ももう戻る気はないのだろう。
君には確かにつらい思いばかりさせてしまったけど、だからといって
もう逢えないなんて、余りにもつらすぎる。
君に手紙を書きたい。僕が生きていることを、君を思い続けていることを知らせたい。
しかし、僕には手紙を届けられる自信がない。読まれない手紙を、
心を込めて贈る気にはなれなかったんだ。
心からの愛と豪語していたものなんて、それほどまでにちっぽけなんだ。
ちっぽけな妄想だけの愛は、いつのまにか欲望に姿を変えていた。
恋という小さなつぼみは、ラフレシアになってしまったんだ。
ただそこで何もせずに待ち続けている、空しい生き方をすることになっていたんだ。
恋も愛も、最後には僕が潰してしまった。
僕には君を愛する資格などなかったとして、僕は君を
愛することを止めるのだろうか。
きっと違う。君を愛することを止める理由は、新しい愛を求めるからか、
自分に絶望するからかのどちらかなんだ。
目の前に君がいて、届かないと分かっていたから君の方へ手を伸ばさなかった
あまりにも現実的な僕が悪かったんだ。
愛なんて、現実的にやったって成立するわけがないんだ。
盲目であるから、愛といえるんだ。計算の元では、愛など成り立たない。
僕は君とさよならしたとき寂しかったけど、それすら僕は計算していた。
僕の目の前で上がろうとしている跳ね橋に飛びつこうとしなかった。
飛び越えて、君の前まで行こうともしなかった。
それは、僕が危険を冒したくなかったからで、君を取り戻せる確率と
虚しく川に散る確率を天秤にかけた結果の僕の確かな選択。
僕が、これを選んだんだ。
僕には、跳ね橋を超える資格はない。
誰かが決めた形のない国境を越える資格なんて、どこにもない。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
novel |
|
novel |