触れられないということは、いつまでも渇望していられるということ。
そばにいるということは、いつか全てを知り尽くしてしまうということ。
どちらも、取りたい。
いつまでも色あせないように、空気に触れないように。
ほんの少し触ってしまうだけで、もう壊れてしまうから。
そのときだけは、僕も現実とは遠く離れた世界の中に入り込める。
この体の感覚もないし、あるのは視覚と聴覚。
現実でないからこそ、いつまでも一緒にいられる。
現実でないからこそ、幻滅することはない。
冷静に考えてみれば分かるはず。お金だけで手に入る愛なんて、ない。
物によって愛がつかめることも、きっとない。
それでも、僕は君といたいから。
下敷きやテレホンカードで何ができるかといえば、何もできない。
同じようなものばかり溢れているから、別にこだわらなくても実害はない。
だけど、僕はあえてこうしたい。目的は、もうあやふやになっている。
下敷きが欲しいのか、君が欲しいのか。
何も分からない。誰かに踊らされている。
それでも、僕は君といたいから。
覚めてからモノの価値にようやく気がつくんだろう。意味のない樹脂製のカードには、
魔法も愛も残されていない。
一時の欲望に支配されてから、誰かの声の真意を理解できるんだ。
熱があったころには、そんな声なんて僕の心には届かなかったのに。
……確かに、熱があったころの幸せな気持ちは変わらない。
嘘だと分かっていても、その感情はそこにあったんだから。
絵の中の真意を捉えることはとても難しくて、結局は自分で解釈するほかない。
もしかしたらうわべだけの快楽なのかもしれないけど、それでもいいと僕は思ったから。
夢から覚めた後の部屋の中には、ちょっとだけ寂しい雰囲気がある。
質量はそこにあって、それでもその中にあったはずの温かい笑顔は消えうせている。
現実よりも遥かに鮮やかな一瞬の写真には、もう心はない。
感化されていたときには分かったであろうあの微笑も、今では
色と線のワンパターンとしか見ることができない。
本当は僕だって何も知り尽くしていない。君の世界の中には、
きっともっと深い光や闇がある。
でも、もう……誰かが僕を呼んでいるんだ。
また、僕が君を必要とするときまで、君は眠っていてくれる……?
僕が原点に返ろうとするときに、君は迎えてくれる……?
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
novel |
|
novel |