英雄の末路

記憶は時に残酷だ。誰もが頼らなければいけない大切なものでありながら、
誰もが大切なものを失っていく。
記憶は時に現実を捻じ曲げてゆく。自分の考えをゆがめてゆく。
ある時には、誰かの存在すら消し去ってしまう。

一瞬の記憶は強く残ることもあるが、長い長い間付き合ってきた
あの人の思い出すら突然失われてしまうこともある。
後悔しても、長い間待たないと思い出せないかもしれない。
心に引っかかったものすら忘れてしまうかもしれない。
心のどこかでわかっていることも、記憶が取り戻せないことだってある。
輝いていた一瞬が、ふとなくなってしまうのだ。

ある時愛されていた人がいて。
その人のことを誰もが敬愛していた。
自分自身も、それを誇りに思っていた。

でも、ある日突然誰もが忘れてしまう。
輝いていた一瞬を、誰もが共有していたはずなのに。
誰も知らない、誰も思い出せない。
自分ひとりの心の中にしか、残されていない。

人の輝きすら、人の深い感情すら、
記憶は捻じ曲げてしまう。
忘れちゃいけない幸せの記憶すら、いつしか灰のようになくなってしまう。

最後の最後には、自分という存在の尊さすら。
忘れてしまう。


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