目 次<音楽公開講座> <尺八の音の世界の広さ> <「尺八文化伝承」への提言> <(参考メモ)尺八事典> |
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平成14年10月、大阪音楽大学音楽博物館において、開館記念に開催された第53回目の <ミュージアム・コンサート>「日本の音 竹の音」は、尺八演奏と講演が同大学講師 星田都雨山氏による次のようなプログラムの尺八解説及び模範演奏でした。 1.講話関係 (1)尺八の流派 都山流について (2)尺八の一般知識 (3)尺八による各種ジャンルの音楽(小学唱歌、歌謡、ポピュラーソングほか) (4)演奏技術について(吹鳴物あれこれ) 2.演奏関係 (1)本曲「木枯らし」流組 中尾都山作曲 (2)本曲「石清水」流組 中尾都山作曲 (3)尺八独奏曲「飛雲」山本邦山作曲 (4)尺八独奏曲「茴香(ういきょう)」星田都雨山作曲 大凡3年経過した平成17年6月8日に次のような尺八に関する公開講座がありました。 大阪音楽大学 開校90周年記念企画 大阪音楽大学セミナー2005 ”古今東西音楽考”ーその20− 「尺八の音色・ユリについて」 講師・演奏 三代 星田一山(星田都雨山氏が家門を継いで、師匠名に改名) 会場:大阪府立文化情報センター 1.講座関係・・・ユリの種類 (1)よこユリ 首を左右に動かして音色に変化を与える。 (2)たてユリ 音程の変化を聞かせる。(民謡の伴奏に多い) (3)息ユリ 息の強弱とスピードの組み合わせで曲に変化を与える。 (4)回しユリ 首を回しながら音色に変化を与える。 これらの奏法の違いに、ユリの(スピード、深さ、強弱)の組み合わせて多彩な 演奏効果を与えるもの。 ユリによる演奏の音楽的表現としては(優しさ・厳しさ、哀しみ・慟哭、寒さ・暖かさ 不安、暗さ、余韻)などが、かもしだされるという。 2.演奏関係・・・ユリの代表例 (1)「慷月調」(明治36年・1903) (2)「石清水」(明治37年・1904) (3)「寒月」 (明治44年・1911) (4)「木枯らし」 (5)「峯の月」(大正12年・1923) これまで、何気なく、聞いていた尺八の演奏も、このような色々な奏法に区分し、かつ 例題も示していただく解説で、大変解りやすい尺八技法解説になりました。 簡単な形状の楽器だけに演奏者の個人的技量の深さが深くなり、かつ巾広くなる楽器である ことがわかります。 目次に戻る
<尺八の音の世界の広さ>
尺八が明治時代以前の明暗寺院30数ヶ寺を中心とした普化宗の法器から発展して、 明治中期(明治四、五年〜明治十四、五年)一般大衆化されてから、大凡130年近く 経っています。現在でも、一般の日本人には、「尺八」といえば、虚無僧に代表される 宗教世界の音楽というイメージと重なっています。 一方「三曲」のうち、尺八以外の箏(琴)、三味線の邦楽の世界は、一般大衆化がかなり 早くから進行していました。 近年、宮廷の音楽・雅楽の諸楽器も含めて、これらの楽器で演奏される音楽分野と演奏する 奏者の世代拡大がみられ、新たな日本の代表的な音楽に定着しつつある点に関しては、すでに 前回の連載で言及したところです。 洋楽に於ける各種の楽器も種類によっては、かなり古い歴史を有する物もありますが、 尺八もその原形が、正倉院の御物として伝承されているように、大変古い楽器の一種で、 大凡千三百年間、殆ど基本的な構造を変えないで、伝承されてきたわけです。 尺八の発祥元の中国では、すでに尺八の原型が消滅し、唯一日本に於ける尺八のみが、 古代の音楽を伝えているので、「日本民族の楽器」となっていることを前回の公開講座の 時に聴講しました。 竹で出来たこの尺八という楽器は、どことなく鄙びた感じの音の世界を醸し出すので、 どうも日本人の感性にあっているようです。星田先生の解説に依りますと、尺八を演奏する ことによって、心が落ち着く、精神統一が出来る、精神が安定する、安眠療法にも効果があり 活用されているようです。 今回の尺八特殊奏法を拝聴しますと、「尺八の音の世界の広さと深さ」が確認できました。 簡単な楽器構造であるだけに、簡単に人に感銘を与える演奏は、難しいものであることも 納得できます。 解説された色々な「ユリ」を使いますと、一段と尺八音楽の人に訴える力が計り知れない 広さと深さを有していることがわかります。演奏者が尺八という楽器を使って言葉では言い 表せない「人の心の揺れ」を音として外部に引き出しているとも言えましょう。目次に戻る
<「尺八文化」伝承への提言>
楽器としてこれ程魅力に満ちたものを「日本の伝統的楽器」として、今後もますます その存在価値を高めるために、次のようなことをあれこれ模索してみました。部分的には 既に確立されているかもしれませんが、列挙しますと、次の通りです。 1.学校教育に於ける音楽講座の開設 (1)現在義務教育期間に楽器に接する機会は、「リコーダー」の演奏授業のようです。 その目的と効用は如何なるものか、また採用にはどのような観点から為されたのか、 確認しておりませんが、リコーダー一辺倒ではなく、尺八もその中に含めてはどうかと 考えるところです。 (2)現在国立の音楽大学は、名目上無くなりましたが、東京芸術大学を始めとする公的な 音楽教育機関で、邦楽部門の音楽講座は存在するでしょうが、民族文化伝承の観点から 充分な物心両面の支援や保護活動がなされているか、甚だ気になるところです。 邦楽学科ではなく、「尺八学科」ぐらいに考えたいところです。 私立の音楽教育機関では、それ以上に熱心に邦楽教育プログラムを開講しているところも あるでしょうが、「尺八学科」までに至っているところはないのでは、と推測します。 (3)フランスのパリ音楽院は、音楽教育機関としては世界最古の歴史を誇っているところ で、これまでも、新しい楽器に対して積極的に音楽教育の対象として採り上げている実績が あります。19世紀のサキソフォン、20世紀のオンドルなど、めざましい取り組みです。 ここで、21世紀の企画として、尺八学科設立を考えてみてはいかがと提言します。 ジュリアード音楽院でも結構ですよ。(極端すぎるでしょうか?) 2.尺八協会と尺八コンクールの開催 (1)現在非営利団体として尺八を活動の主体に採り上げている団体は、どの程度有る のでしょうか。インターネット検索による情報例としては次の通りです。 「尺八の手ほどき」(石倉光山氏):http://home.att.ne.jp/green/kozan/ 「尺八吹奏研究会」(貴志清一氏):http://bmbnt.com/shaku8/ 国際的な活動としては、 「国際尺八研究館」( ):http://www.shaku8.com/kenshukan/ 「尺八ステーション」(谷藤紅山):http://www.phoenix-c.or.jp/~watarun/ 現在、尺八の流派は、琴古流、都山流、上田流、竹保流、など様々のようです。 流派を組むことは、奏法の維持と伝承には適しているかも知れませんが、どうしても 排他的になり、音楽芸術としての尺八の一般化、あるいは、普及には、最適のシステムか どうか、いろいろ課題を含んでいるのでは、と考えます。 楽界あるいは連盟活動を展開しているのは、都山流系統の次の団体です。 財団法人・都山流尺八楽会 社団法人・日本尺八連盟 関係団体として 日本民謡協会などがありますが、尺八を主体に考えて団体活動であるか どうかは、要確認です。 (2)日本音楽コンクールには、洋楽の各種部門の演奏競技はありますが、尺八の部門は どうなっているのでしょうか。海外でのヴァイオリンやピアノなどの伝統有る国際コンクール への登竜門として、このコンクールの大変熱が入っているようです。加えて、最近 若いしかも10代の若者の活躍が目覚ましい物があります。であれば、尺八の分野においても 日本が国際コンクールを主催して、演奏者のレベル向上を図ってはどうかと思うところです。 日本音楽コンクール・尺八大賞などはいかが。 3.洋楽とのコラボレーションによる尺八名曲選 (1)戦前、昭和の初めに、箏曲の大家宮城道雄がフランスのヴァイオリニストとの共演で 「春の海」を発表して、一度に箏曲の名曲になり、現在でもお正月には、毎年あちこちで 聞かれるところです。このような洋楽器との合奏による尺八の名曲選を期待したいところ です。 (2)日本人作曲家の尺八名作品として、さしずめ、武満徹さんあたりがこの分野に名曲を 残してくれたらと思うところです。氏の作品には、当然尺八は活用されているのでしょうが。 この種の動きに関連していると思われる日本現代音楽協会(林光氏)(国際現代音楽協会 日本支部)が、尺八を中心とし多音楽作りと演奏のワークショップを2005年度事業と して展開しているようです。関連するURLは次の通りです。 http://www.jscm.net/ed/html さらなる活動の拡大と展開を期待したいところです。目次に戻る
<(参考メモ)尺八事典>
「日本で生き延びた尺八」の頁であげた尺八に関する一般知識を再度掲載しておきます。 引用参考文献(平野健次ほか「日本音楽大事典」(1992年9月)平凡社) 現在の楽器を分類すると、弦鳴楽器、気鳴楽器、体鳴楽器、膜鳴楽器になり、気鳴楽器は、 さらに、「笛」と名のついたいろいろな構成の楽器があります。 一例、龍笛、高麗笛、神楽笛、篠笛、明笛、清笛、ビービー笛、さらには、草笛、指笛、 口笛があり、古いところでは、石笛、土笛、チャルメラ、ラッパ、能管、オカリナ、など。 日本風な楽器としては、尺八、一節切、ひちりき、笙などがあります。 洋楽では、オーボエ、フルートなどが代表的な楽器です。 尺八の起源は、唐朝貞観年間(627〜649)呂才なる中国人が長短十二種の縦笛を 制作したと伝えられています。館長が最長で一尺八寸であったので、尺八の語源となった ようです。 宋代以降は、各種の縦笛が出てきて、尺八の伝統はなくなったそうです。しかし、日本には、 中国よりもたらされてから伝承され、今日に至っています。 現存の尺八の分類は、六種(普化尺八、古代尺八、天吹、一節切り尺八、多孔尺八、 オークラウロ)ですが、一般には、普化尺八の代名詞になっています。 これらの尺八の特徴は、次の通りです。 管上端切り口前側が歌口となること、 歌口は管外面を斜めに削り落とし、出来た孤形の鋭い角に息を吹き付けることによって、 音をだすこと、 音高の変化は、指孔開閉と息の圧力と角度によって付けること、 息の変化は、音色の変化を伴うこと その他、公開講座で聴講した内容 *七節の中に五穴(一から四穴まで表、五穴は裏)あり、歌口が管上部に付いている。
*尺八(一尺八寸)の名前の由来もさることながら、いろいろな4種の長さ(二尺三寸〜 一尺三寸)の尺八が正規の一式であること。
*真竹材が正式な素材であるが、簡略に木材の物もある。 (価格は数万から十数万、高価な物は百万単位のものまで)(木材ものは2万円ほど) *江戸時代まで尺八は、法器扱い(普化宗僧侶に限定されていた)で、明治4年から 一般人も扱えるようになった。(楽器の歴史としては、いまだ100年少し) *都山流は、明治29年に大阪枚方在の中尾金蔵氏が創始者で、平成8年で、 ようやく100年目を迎えた。琴や三味線は、500年以上の歴史を有するのに比して、 まだ歴史は浅い。
尺八で演奏される曲は、宗教音楽、芸術音楽、民族音楽、通俗音楽などあり、 本曲(尺八のみの尺八のための音楽)と外曲(他の楽器の曲を尺八音楽に編曲した物)に 分かれ、その範囲は、かっての普化宗の法器であった頃とは、比較にならないほど、 広範囲な音楽世界になっている。 (参考ホームページ例)尺八史(津田陽彦氏) http://www.yo.rim.or.jp/~kosyuuan/kosyuan2.htm目次に戻る
平成17年6月10日 *** 錦生如雪 ***
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