Q熱とは HOME
1989年10月、アメリカで7歳になる少年が突然、「高熱」「頭痛」「寒気」「全身にわたるだるさ」などの症状を訴えだし、2ヵ月後には満足に身体を動かす事さえ出来なくなってしまったという。その後担当医師によって「慢性疲労症候群」と診断された。その数日後、なんと兄と両親にも慢性疲労症候群に似た症状が現れたのだ。それに加え、同じ場所に住んでいるわけではない、親戚にあたる15人にも、同時期に慢性疲労症候群のような症状が現れたのである。メイン州衛生局のキャスリーン・ゲンシャイマー博士は、15人が同時期に発症していることから、慢性疲労症候群に似た症状を引き起こす病原体がないかさまざまな検査を行った。そして細菌やウイルスなどの中から唯一、『Q熱』を引き起こす『コクシエラ菌』を見つけたのだ。
『コクシエラ菌』は、牛や羊など家畜の唾液や排泄物、またはダニを媒介して人間に感染する病原体である。この『コクシエラ菌』に感染することで発病するのが『Q熱』である。『Q熱』は感染後、数ヵ月から数年で「全身への倦怠感」などが徐々に現れ、「発熱」「頭痛」「筋肉痛」「呼吸器障害」などを引き起こすという。ゲンシャイマー博士は15人全員に血液検査を行った結果、なんと全員がコクシエラ菌に感染していたことを突き止めた。しかし、なぜ15人が同じ時期に『コクシエラ菌』に感染したのか?実は2ヵ月前、祖母の誕生日パーティーで一族15人がメイン州の祖父母の家に集まっていたことが判明した。そのため、博士は祖父母の家の周りを調査したが、コクシエラ菌の感染源となる家畜は全く存在しなかったのだ。そこで博士は、祖父母が飼っているペットの猫に注目、その猫の血液検査を試みた。すると、猫の血液からコクシエラ菌の抗体反応が現れたのだ。つまり彼ら15人は猫からコクシエラ菌に感染したと考えられたのだ。
日本国内ではこのコクシエラ菌は存在しないと考えられていた。しかし、2002年2月15日帝京大学医学部附属病院・松田重三教授は慢性疲労症候群患者138人の内30人、約22%の患者からコクシエラ菌の遺伝子を発見した。そこで、その慢性疲労症候群患者に、Q熱の治療薬である「抗生物質」を服用させたところ、症状が改善されたというのである。日本の事例の少年も検査を行ったところ、やはりコクシエラ菌に感染していることが判明。その後、抗生物質を投与したところ、慢性疲労症候群の症状が改善されたというのだ。北里研究所・生物製剤研究所の小宮智義研究員によるとペットの猫のコクシエラ菌の抗体保有率は約14%。そして、野良猫においては約41%、ペットの犬も約11%に上るという。そしてゲンシャイマー博士によると、コクシエラ菌に感染しているペットの犬や猫と、過剰なスキンシップをすることでQ熱を発症するケースがあるという。今回調査した中では慢性疲労症候群と診断された人のうち、一部がコクシエラ菌によるQ熱であったことが判明した。しかし、慢性疲労症候群と診断されている人のうち、すべてが、コクシエラ菌によるQ熱であるとは決して断言はできない。
厚生労働省によると、Q熱に関する「相談」が受けられるところとして、保健所や都道府県の保健関係部署などが全国に120ヵ所以上あるという。厚生労働省ではQ熱は「動物由来感染症」として扱っているので、疑問があるときは問い合わせることは可能である。また、Q熱に関する「診察」が受けられる病院としては、現在は、『帝京大学医学部附属病院/完全予約制』、『池袋病院(埼玉県・川越市)』、『静岡県立総合病院』などがある。
さらに自分のペットがコクシエラ菌に感染しているか調べるためには動物病院で血液検査を行えば判るという。ゲンシャイマー博士によると、コクシエラ菌は犬や猫の「唾液」「涙」「糞」「尿」などに多く含まれているため、コクシエラ菌に感染しているペットと舐めあうなどの過剰なスキンシップは感染してしまう危険性が極めて高くなってしまうという。しかし、犬や猫などのペットすべてを危険視する必要はない。ペットとの過剰なスキンシップを避け、Q熱を引き起こすコクシエラ菌に対する正しい知識と予防策を知っていれば、感染を防ぐことは充分可能なのだ。