遺跡の前。今から中に入ろうとするパーティーが1組。
「いいか、できるだけ個人行動は避け、俺から離れないでくれよ」
従者ソルシアス・アーケン。彼は先ほどから同じ言葉を幾度も繰り返している。
相手はウー・フーという少年。
「うん、分かった」
そう返事をしながらも、ウーは早速ウロウロし始めている。
「・・・大丈夫なのかなぁ」
しかし放っておくわけにもいかない。
「行くぞ。入る前から油を売ってどうする」
そこに厳しい一言を浴びせたのは、後から同行を願い出た葉山甲斐だった。
「あ、ああ」
甲斐に急かされ一行は内部に足を踏み入れた。
しばらくは探索済みの道が続く。ソルシアスは有志軍から手に入れた地図を確認しながら、用心深く進んだ。
「全く情報がないのにこういうのも何だが・・・
俺は、ここが神殿じゃないかと考えてる」
壁画のもとに来た一行。ソルシアスの意見に甲斐も頷いた。
「ああ。おそらくはな」
ウーは二人の会話を首を傾げて聞いている。
「ねぇねぇ、早く先に行こうよ」
「落ち着けよ。目的は宝物捜索じゃなくて、遺跡の謎を明かすことなんだ。もうちょっとじっくり見せてくれ」
ウーは落ち着きなく辺りを見回す。甲斐はどちらにも興味なさそうに、腕を組んでじっと奥を見つめていた。
「ノワールの神殿、という説も出てるようだな」
壁画を調べながら、ソルシアスは甲斐に話しかける。甲斐は見ていた奥の闇と同じ色の目を、彼に向ける。
「・・・・そうかもな」
適当な相槌をつきながらも、甲斐の中ではそれはほぼ確定だった。
遺跡に入ったという香夜という名の女性。本当に彼女が自分の憎んでいる一族の者なら、ノワールを信仰しているだろう。
ノワール信仰の人間が、神殿ではないかと言われる遺跡に来ている・・・・それだけで充分ではないか。
(カヤ・・・)
その名前を思い出し、甲斐は再び遺跡の奥に目をやった。
この奥にいるのは、自分の探している『カヤ』なのだろうか・・・?
成竜の倒れていた大きな扉の前。
「とりあえず進むか。ここにいても仕方ない」
手裏剣を拾い、夜文千空は扉を越えた。
「ここからはより気合いれて行かないと危なそうだな」
有志軍さえ入った事のない領域。ガウィーク・エンドは身を引き締めた。
「ええ。敵や罠も増えそうですね」
ルークも真剣な眼差しになる。
「珍しいお宝、ありそうだね」
ただ一人、好奇心に胸を躍らせていたのはユアン。
先が全く分からないというのに、むしろ楽しんでいるようだ。フィエットが呆れた目で彼女を見上げた。
「ここから先は地図もないからな」
言って千空は明かりを掲げた。それまでの洞窟風景とは打って変わって整然とした壁が続く。
「まさか、ダンジョンってことは・・・ないよね?」
はぐれたり迷ったらひとたまりもないだろう。ユアンが引きつった笑いを浮かべた。
「さあな。その可能性もあるかもよ」
ガウィークはそんなユアンを脅す。しかし口では茶化しながらも、彼はフィエットから離れない。
敵に遭遇した場合、まだ幼いフィエットが人質にとられることもなくはない。
そんなガウィークの気配を察したのか、フィエットも大人しく彼についていた。
しばらく進むと、道は右と左の二手に分かれていた。
「どっちに行く?」
それぞれ顔を合わせるが、提案はない。
「じゃ、こいつにきくか」
言うと千空は持っていたランスをその場に立て、手を離した。
「そんな原始的な・・・」
さすがにユアンも開いた口が塞がらない。
ランスは軽く音を立てて右に倒れた。
「よし、右だ」
「・・・・それでいいの?」
「いいんじゃない?」
千空の断言を肯定したのはフィエットだった。彼女の一言は妙に説得力がある。
「罠とかなけりゃいいんだけど・・・」
ガウィークが無言でクローを構える。それを見て皆が口をつぐんだ。
「・・・・いるな」
しんと静まり返った辺りに、何かを引きずるような音が聞こえる。
音はだんだんと近づいてくる。確実にこちらに向かっているが、明かりはまだ届かない。
「やっとモンスターのおでましって?」
不敵な笑みを浮かべるユアン。彼女とガウィークが前衛に立つ。
じりじりと壁伝いに進む。
「!!」
突然、声にならない声をあげてルークの姿が消えた。
「え、何?ちょっと!?」
戦闘態勢を崩すわけにもいかず、目でそちらを追うが、既にルークはいない。
「罠か!?」
「来たぞ!」
千空がルークのいた場所に駆け寄ろうとするのと、ガウィークが叫んだのが同時だった。
明かりの下に現れたのは、体中を包帯で巻かれた人型。
「マミーってやつか」
素早い動きはしそうにない。ならば先手必勝と、ガウィークとユアンは左右から襲いかかった。
「ちっ」
千空が舌打ちをする。とりあえず今は目の前の敵をどうにかしないと、ルークを助けることはできない。
そんな彼の後ろで、フィエットがじっとマミーを見つめている。
怖がっているというのではなく、観察している、に近い。
「ほらほら、遅い遅い!」
マミーの攻撃を避け、ユアンが余裕を見せる。
ガウィークも、相手の攻撃は一つもくらっていない。
「けどこいつ、全くダメージを・・・・」
彼の言葉にユアンも眉をしかめる。
確かに何度も拳を叩き込んだものの、一向に倒れる気配はない。
「これじゃ持久力勝負になっちゃうよ」
「火・・・」
と、フィエットがぽつりともらす。千空が気付いて振り向いた。
「何だって?」
「こーゆーのは火に弱いって、前にシヤンが言ってた」
「火、か・・・」
しかしこのメンバーの中で火招が使える者はいない。
「勿体無いけど、この際仕方ない」
千空は持っていた明かりをフィエットに預けると、荷物の中からランタン用の油を取り出した。
「ガウィーク、ユアン、避けろ!」
言って二人が身をかわすや否や、千空は油をマミーに振り掛けた。
「フィエット!」
そして彼が名を呼ぶと、フィエットが渡された松明を投げつける。
「うわっ、危ねぇっ」
突然の火の手にガウィークが身を引いた。
「よしっ」
千空が小さくガッツポーズをとった。思った通り、マミーは炎に包まれようやく動きを止めた。
「真っ暗になる前に・・・と」
炎が消える前に、ユアンが新しく明かりに火をつけた。
「ルークはどうなっちゃったの?どこに行ったワケ?」
その頃、ガオン、ネル、シャオのパーティは大きな扉の前に着いていた。
「なんなんだよ、これは・・・」
扉と、倒れた竜。
「ノラ竜か?」
ガオンがいつぞやのユアンと同じ表現をする。
「いいえ、それにしちゃ不自然よ」
否定したのは、厳しい表情のシャオ。肩の上のフェイロンもじっと竜を見ている。
「不自然?」
ガオンの後ろからネルが恐る恐る竜を覗く。
「こんな洞窟の中で・・・しかも長い間発見されずに竜がいたなんて。
まるで、そう・・・・この門の番でもしてるみたいじゃない?」
背丈の倍はゆうにある扉。
「番だか何だか分からないけどさ。開いてるってことは、先に行った人物がいるってことだろ?
だったら俺達もグズグズしてる場合じゃないぜ」
「まぁ、そういうことになるわね」
扉に向かおうとしたシャオが、ふと足を止める。
幼竜のフェイロンが何かに反応を示している。
「フェイ?」
「敵か!?」
ガオンがシャオとネルをかばう様に前に出る。
「・・・いえ。さきほどの獣のようね」
振りかえるシャオの目線の先は、ただの闇。
「ついて来てるってことか?」
しばらくの無言。
やがて、闇の中から銀色の毛並みをした一匹の狼が現れた。
「狼?」
ガオンが怪訝そうな表情をする。モンスターでないのは一安心だが・・・。
「か、噛みつかないですかぁ?」
ネルがガオンの背から様子をうかがう。
「狂暴そうには見えないぜ」
ガオンは言うが、まだネルは狼に近寄らない。
シャオが無言で狼に近づく。
「シャオさん、危ないですよぉ」
「大丈夫よ。これでも獣術は持ってるしね」
彼女は膝を折り、狼と目の高さを合わせる。
銀狼も分かったのか、大人しく彼女に近づいてきた。
「敵じゃないんだったら味方だろ。
人間だろーが狼だろーが戦力は多い方がいいや」
ガオンの言葉に、狼は仲間に加わることになった。
(とりあえずは狼のフリをしておきましょうかね。
この人達も害はなさそうだし・・・)
誰も銀狼がライカンスロープのギル・ネッターだとは思っていないようだった。
遺跡の最深部。突き当たりの壁を前に女性は笑みを浮かべた。
「ここが・・・祭壇ね」
目の前には、大きな壁画が描かれている。
二人の人間が互いに背を合わせて逆の方向を見ている。
それぞれ、形は違うものの剣を一本づつ手にしている。
「クラルテの剣とノワールの剣」
女性・・・香夜は右側の人物の持っている剣に触れる。
「これさえ手に入れば・・・」
香夜は手を離すと、周囲の壁を調べ始めた。
やがて彼女の手は、壁画の下部で止まる。
よく比べてみなければ分からないが、一部分だけ他の壁と色が違う。
「仕掛け・・・ね」
そこに手を当てたまま少し考えて、香夜は再び手をどけた。
「罠、ということもあるわね。それに・・・」
ふと自分の来た道を振り返る。相変わらずの闇ばかりで、人影はおろか何も見えない。
「あの人達も来てるだろうし」
香夜の口元に不敵な笑みが浮かぶ。
「でも、ここは譲れないわ。あちらには・・・」
彼女は自分の腰に巻きつけていた赤い布を外すと、その場に無造作に置いた。
「しばらくは身を隠して様子を見るべきかしら」
その姿は闇に消える。
遺跡入り口。すっかり冒険者達が中に入った今、そこには二つの影があった。
一人は無表情で中をじっと見つめる男性。
その雰囲気や年頃は、ソルシアスやウーと共に入った葉山甲斐に似ている。
彼の腰には、香夜と同じく赤い布が巻かれていた。
そこへもう一人。
青みがかった黒い髪の青年。こちらは多少息せき切らしている。
「フィエットの奴・・・・本当にここへ一人で入ったってのか?」
彼の名はシヤン。フィエットの拾い主であり保護者である。
シヤンはそこに立っている男性に気づくと、深く考えずに声をかけた。
「黒い髪の、これぐらいの少女を見かけなかったか?フィエットっていうんだが・・・」
男性は無表情のままシヤンを見ると、軽くかぶりを振った。
「いや。俺も今来たところだ」
「そっか・・・・ってことは、やっぱり入るしかないか。大丈夫かな、フィエット」
一人で呟き、足早に入ろうとするシヤン。彼にとってはここが遺跡であろうと何であろうと関係ないようだ。
「あ、あんたも入る?一人よりかはいくらか心強いだろ」
シヤンの言葉に青年は意外そうな顔をしたが、それもすぐに消える。
「そうだな。どうせ俺も中にいる人物に用がある」
二人は足早に入っていった。
「俺はシヤン。あんたは?」
「俺は漉也(ロクヤ)」
シヤンは笑みを浮かべて手を差し出す。即席パーティだが仲間だ。
だが漉也はそれをちらりと見ただけで、すっと進んで行った。
「?なんだぁ?」
愛想のない人間だな、と思いながらもシヤンも後に続いた。
しばらくルークを探していた一行だが、やがてそれは諦めに変わる。
「全く分からないな」
壁を触りながら、千空は舌打ちする。どういう仕掛けか、とにかく別の道に通じているようだ。
「でもさ、とりあえず命に別状はなさそうなんでしょ?」
ユアンがそんな千空の背中に話しかける。
「多分な。隠し通路とかそういったものだろう」
「じゃあ大袈裟に心配することないな」
ガウィークも少し安心したようだ。
「だったら、ここでいても仕方ないぜ。どうせルークもどうにかして先を探しているはずだ。俺達も進もう」
「賛成」
一行は先へ行くことにする。もう奥は深くないはずだ。
数分進むと、そこはまたT字になっており、左右に道が分かれていた。
「今度はどっち?」
ユアンが千空に目で問う。彼は少し嫌そうな表情をしたが、再びランスを倒した。
「左だとよ」
言ってガウィークは左に明かりを向け、軽く吐息をついた。
「残念、行き止まり」
左の道は数歩進むと行き止まりになっていた。しかしそこには・・・・。
「たからばこっっ!」
ユアンが嬉しそうに声をあげて駆け寄った。
「おい、罠があるかもしれない・・・」
千空が止めるよりも先に彼女は宝箱へと辿りついていた。
「ね、開けていい?」
振り返るユアンの目はかなり輝いている。
「開けれるのか?こうゆうのって鍵とかかかってないのか?」
「あったら壊す」
ガウィークの問いにも適当に答える。
「まぁ、ちょっと待ってみろって」
ガウィークが近寄り、箱に鼻先をくっつける。
「怪しい匂いはないな」
ライカンスロープの彼にとっては、魔法うんぬんは分からない。
千空とフィエットが無言で顔を見合わせ、頷いた。能力者にも魔法は使えないが、悪い予感めいたものはない。
「じゃ、開けるよ?」
一通り確認をして、ユアンが箱に手をかけた。
鍵はかかっていなかったようだ。箱は古ぼけたギィ・・・という音を立て、埃をあげた。
中には、いくつかの装飾品と、両手のひらに乗る大きさの球が一つ。
「これ、何?」
ユアンはその球を取りだし、皆の前にかざした。
黒っぽい色をした、半透明の球。これが透き通っていれば、さながら占い師の使う水晶球に似ている。
「宝石?」
ガウィークが言って自分の言葉に首を傾げる。
鉱物にしては加工されている。しかし装飾品にしては大きい。
「魔石、とか・・・でも大きすぎるよね」
ユアンも同じ反応。例え宝石だったとしても、これは4種類の魔石のどれにも属さない。
「でもまあ、持っておけばいいんじゃないか?街に帰って鑑定士に見てもらえばいい」
千空の判断に全員が頷いた。
と、フィエットがふいに顔をあげ後ろを振り向いた。
「何?どうかした?」
ユアンが装飾品をしまう手を止める。
「誰か、いる・・・」
「敵か!?」
また戦闘か。ガウィークが笑みを浮かべクローを握り締めた。
「ううん、人間。何か分からないけど、声が聞こえたの」
それにならい、耳を澄ます。しかし声どころか物音一つしない。
おそらくフィエットの言う『声』は話し声ではなく、交信によって何事か聞こえたのだろう。
「まだ何かいってる?」
「ううん。もう聞こえない。けど、遠くない。近くに、誰か一人・・・」
「ルークか?」
「違う。女の人」
フィエット以外がそれぞれ顔を見合わせた。女性一人がこんな奥にいるのか?
「探してみる?」
「その価値はありそうだな」
宝箱の中身をすっかり袋に入れ、彼らは再び進み始めた。
いくらマッピングをしながら進んでも、どこがゴールか分からないのだから、今現在どれだけ進んでいるのか分からない。
それはある意味迷っている、に近いかもしれない。
そんなことを考えながら、シャオは吐息をついて手元の地図を見た。
扉をくぐって最初のT字。彼女達は左の道を選んだ。
少し進んでは戻り、逆の道を進んでは戻り・・・・。
そんな手間をかけた地図だ。
今のところ地図上に怪しいところはない。神殿の構造らしく、綺麗なシンメトリーをしている。
「はぁ、赤字か・・・」
呟いてガオンが新しい松明に火をつけた。彼の良心から、売り物を明かりにしている。
「怪しいものとか、何もないですね」
ネルが呑気な感想を言った。心の奥底では宝物を狙っている。
銀狼のギルも鼻をひくつかせるが、気になる匂いはない。
(それにしても、お宝、本当にあるのかなぁ・・・)
ネルとギルが内心でハモる。
「ネルの弟さんも、随分奥深くまで行ったようだな。全然会わないし」
「え、ええ・・・」
ガオンの優しい言葉に一瞬動揺するネル。自分が『弟探し』の名目で来た事を忘れていた。
と、ふいに銀狼が何かを嗅ぎつけ、小走りで前に出た。
「お、何だ?」
ガオンが続く。狼が足を止めた先には、赤い布きれが落ちていた。
(人の匂いですね。それから・・・・血の匂い?)
ギルは眉をしかめる。が、狼なのでそれを上手く伝えることはできない。
「何でしょう?」
ネルが手に取る。全く普通の素材でできた、何の変哲のない布。
「よく分からねぇが、遺跡のものじゃないだろ」
布は、明らかに最近置かれたものだ。
「誰かが落としたのかなぁ?」
一通り詮索するが、結局布について結論は出ない。
「それよりも、見て・・・!」
シャオが目を見張って指差したもの。それはさきほどまで香夜が前に立っていた壁画だった。
「二つ目の壁画・・・」
目の前は、行き止まりになっている。
そこに、大きな壁画が描かれていた。
「行き止まりの上にこれ見よがしな壁画かぁ?胡散臭すぎ」
ガオンが苦笑するが、確かにここに何かあるのは間違いなさそうだ。
「となると、ここにあったこの布も何か意味があるんですかねぇ」
ネルが心の奥でほくそ笑んだ。どうやら面白そうな展開になってきた。
「よし」
ソルシアスの了解を聞いて、ウーは座っていたその場を立った。
彼の探索とマッピングは細かく正確である。
が、それゆえに、終了までの時間をウーは退屈してしまう。
「じゃ、早く奥に行こうよ〜」
言う彼の足は軽い。
「まあまあ、そう焦るなってば」
一行はやっと大きな扉の前に着いた。
開かれた扉。先客がいることは百も承知だ。
「・・・ん?」
ウーがふいに後ろを振り返った。
「どうした?」
ソルシアスも不審そうに見る。前しか見ていなかった好奇心旺盛な少年が振り向くとは珍しい。
「誰か、来るよ。二人」
ウーの言葉にソルシアスと甲斐が顔を見合わせる。
「・・・分かるのか?」
「うん」
甲斐の問いに最小限の返事を返す。ライカンスロープ特有の冴えた五感のせいだろう。
ウー自身が警戒していないということは、敵ではないはずだ。しかし身を引き締めて三人は後ろから来るだろう影を待った。
やがて、松明の明かりが見えた。
そして照らされる顔。
「・・・シヤン?!」
ソルシアスの声に、向こうもいくらか驚いたようだった。
「あんたは、マイスで・・・」
「何?知り合いなのぉ?」
シヤンとソルシアスを見比べ、ウーが嬉しそうに割り込む。
「と、そちらは?」
シヤンと共にいた男性に目で問うソルシアス。
「離れろ!」
途端、鋭い声がかかり、男性に近寄ろうとしたソルシアスは足を止めた。
声の主は、葉山甲斐。
彼は今までに見たことのない、感情をあらわにした様子だった。
怒り。それを発しながら男性を見ていたのだ。
「貴様・・・・」
甲斐は呟きながら左脇に差した刀に手を伸ばす。
男性、漉也も彼の様子に目を細めたが、すぐに事を悟ったようだった。
「なるほど。北派も馬鹿ではなかったということか・・・」
「ホクハ?」
漉也の言葉にウーが首を傾げる。ソルシアスを見るが、彼も知らないらしい。どうやら甲斐と漉也にだけしか通じない言葉らしい。
「貴様達が何を考えているのか知らないが、それもここで終わりだ。
ここを生きて出られると思うな」
甲斐はカタナを抜き、ゆっくりと構えた。
「その言葉、そっくり返そう。ここで朽ちるがいい」
押さえられた声で漉也も同じくカタナを抜いた。