イラク・女性の意志委員会から日本の反戦運動への連帯メッセージ

以下に紹介する文章は、3月19日にイラク開戦2周年を記念して、大阪平和人権センターおよび「しないさせない戦争協力!」ネットワークによって扇町公園で行われた反戦集会に向けて出された、イラク・女性の意志委員会からの連帯のメッセージです。

できるだけアラビア語の原文に忠実な訳にしてある分、日本語のニュアンスとして若干違和感のある箇所もあるかもしれませんが、イラクの人たちが被占領下で考えていることの一端が伝わればと思います。

とりわけ、彼女達が、戦争を潜り抜けてきたイラク人として日本の平和憲法を非常に貴重なものとしてとらえている点、自衛隊のイラク派兵は、日本が植民地主義から脱却した証としての平和憲法に矛盾すると考えている点は、イラクでの署名呼びかけ文と同様、私たち日本人がしっかりと受け止めなければならないメッセージだと思います。




日本の母親たちへ
平和の作り手である女性たちへ
広島、長崎、そして恐ろしい植民地時代の子孫である、日本の皆さまへ
日本の国会議員の皆さまへ


 女性の意思委員会は、占領の積み重ねや戦争という文化が残した遺産、そして私たちを取り囲む戦争の下から生まれ出たものです。委員会は、アメリカや他の多くの国による侵略の当然の結果というべき(イラク)女性への攻撃を監視し、女性や家族や社会を襲った死や破壊の規模を明らかにし、そしてナジャフ、カルバラー、ファッルージャ、ラマーディー、ハイト、モーセルでは人々の生活や意思の強奪という事実を調査してきました。私たちの委員会は皆さんに、母の心と、命と家族の作り手である女性の魂をもって考えていただけるようにお願いすることが必要不可欠だと考えています。何故なら母の心と子宮は人種や宗教や国籍の境界を知りません。そしてまた母の心と子宮は命を清らかにすることの他は知らないのです。このような心や子宮こそが、戦争や占領の希求から最も醜い形で発生した死という文化に対して抵抗する考え方を必ずや生み出すことができるのです。

 私たちが皆さまにご紹介する光景はある衛星放送局のカメラが撮ったもので、占領がイラクやイラク人に対して行ったにもかかわらず知られることのなかった犯罪を余すところなく明らかにしてくれます。

 その(アル・ジャジーラの)カメラは9か月にもならない赤ん坊が家の瓦礫の下敷きになっている映像を撮りました。その赤ん坊はおむつ以外は裸でした。救助にかけつけた人たちは彼女にもう1度命を吹き込もうと人工呼吸を試みましたが、その努力はむなしく終わりました。

 私たちは、この光景が何度も問いかけていることを確信しています。「一体どんな女性が、命が始まる前にその命を殺すでしょうか?」。

 世界は女性の医師、芸術家、詩人、学者、大臣、そしておそらく女性の首相の権利までも失ったのではないしょうか。

 この赤ん坊を殺すことによって、未来を殺したのは誰でしょうか。ブッシュがイラクにもたらし、そして生まれる前に殺した女性の自由権とはどこにあり得るのでしょうか。

 私たちは次の質問を日本国民の代表に投げかけます。もしも自由・民主主義・人権というスローガンが新しいイラクと新しい世界の表題であるのならば、なぜアメリカとアメリカを支持する日本や他の国々はイラクへ来たのでしょうか。憲法を押し付け、その後占領軍の兵器の元で選挙を押し付けて、新たな形で自由を殺すためでしょうか?

 なぜ女性は、占領軍に支援された宗教反動勢力が広める思想的なテロによって選挙へと連れ出されるのでしょうか。私たちのもとには、女性たちが離婚を恐れながら選挙へ行ったという報告が来ています。なかには(候補者)リストの169という番号を投票しなかった女性は夫から離婚されると宣告した者もいました。また、女性でも本人の許可なしに、つまり知らせなかったり同意を得なかったりしたまま候補者リストに載せられた女性の名前も報告されています。他方では、占領と共に来たテロ行為が女性たちに選挙における意思表示を行なわせず、選挙に行かなくなるように抑圧しました。これが占領の無秩序状態が作り上げた『自由』の1つの形なのです!!! ブレマーの憲法と法律は選挙に行かせたり行かせなかったりするために押しつけられたものなのです。

 イラクには民主主義が生まれましたが、公式な統計数ではイラク国民の42%が選挙へ行くことに反対しました(現実の数はもっと多く、でっち上げたものとはほど遠いはずです)。占領下で投票することを拒んでいるためです。ブッシュはシリアの占領下にあるレバノンでの選挙は許されないと、最近言った人ではなかったでしょうか。

 これがイラク国民をエスニシティや思想、宗教で分けた、イラク人に押し付けられた民主主義の姿です。その一方でイラク人は引き裂かれた社会を解放する糸口を探し、安全で1つにまとまった我が家を見つけ出そうとしているのです。

 一体私たちがどのようにして人権という基本理念を守ることができるというのでしょうか、生存の権利からはじまって仕事の権利から選択の権利、自己決定権までもが侵害されているというのに?。

 都市社会機能の中で一定の地位を築いている私達の委員会も、今日まで占領の暴力の下に置かれている女性たちの数を把握しきれていません。彼女たちは男性の女性に対する暴力について私たちに語って欲しいと願っており、女性、子ども、家族に対する占領の暴力を明らかにする私たちの仕事を頼りにしています。

 そうした例を1つ見てください。1ヶ月前、アザミーヤ(地名)で私たちがデモを行った時のことです。私たちは、誘拐されたイギリス国籍をもつイラク人女性活動家の解放と、ファッルージャの包囲を解除し攻撃・侵攻を行わないことを求めていました。アメリカ軍の戦車が私たちを取り囲んでおり、デモの行進者と私たちが合流しようとするとそれを制止し、さらに兵士と国民護衛隊と呼ばれる人たちが私たちに武器を向けました。それにもかかわらずデモ隊は私たちと合流し、占領軍撤退を叫び始めました。この光景は複数の衛星放送局のカメラの前で起きました。しかしこれらの衛星放送局は、アメリカと占領軍による暫定政府の情報独占によってこれを放送しませんでした。アル・ジャジーラだけが妨害を受けた後にほんの短い時間これを報じ、撮影用のカメラが壊されそうになる場面を映し出していました。

 親愛なる日本国民の皆さん

 母の心になってみて考えて下さい。そしてあなた方の軍隊がどんな形であれアメリカの占領軍と協力しないことの大切さに気づいてください。

 日本の憲法に反する形での日本軍の駐留はイラク国民を助けはしません。それどころか政治的にも道徳的にも、そして軍事的にも占領軍を守る事になるのです。日本軍の司令官は、軍は復興のために来たと言っていますが、しかし軍はいずれ脅迫的な攻撃にさらされるでしょう。なぜこのようなジレンマが起こるのでしょうか。

 文明の発達した日本社会は理性的に歴史的教訓を良く読み取り、むしろこれを反映して、日本の憲法はたとえ防衛のためであっても戦争や占領に日本軍が協力することを禁じています。日本の悲劇的な歴史の教訓は、広島と長崎の惨劇から、尊厳の喪失と降伏という悲劇を教えてくれます。

 植民地主義の衣を脱ぎ、平和の空と豊かな生活の大地へと出ようと努力しした日本が、どうして日々アメリカ占領軍の戦車と銃で殺されている私たちイラク人のところへ来たのですか。どうして日本は、占領にとっての人道主義という覆いとなるために私たちのもとへ来たのですか。広島と長崎の記憶を持っている日本の母親に聞いてください、何も知らない国で占領の手助けをするために子どもを送ることに同意しますか、と。母親の意見を聞いてみてください。そして彼女たちにイラク人はムスリムもキリスト教徒も世俗的な人も『ア・ッサラーム・アライクム(あなたの上に平安あれ)』という言葉であいさつを始めるのだということを言ってあげてください。

 父親や身内の若者をもつ、全ての日本女性の心に問うてみて下さい。「イラク民衆を、犬死に、飢え、失業、心との精神の略奪によって苦しませているそのアメリカ軍を、あなた方の軍隊が助けることを望んでいるのですか?」と。

 私たちはまだ、占領と全ての外国軍の駐留反対の署名を集めていますが、その中で私たちは日本軍の存在を特別に扱っています。何故なら昨年8月にあなた方の許を訪れた時、私たちは日本の市民が穏やかで、平和を保って戦争を嫌う人々であり、そして女性は意識が高いことに気づいたからです。私たち(日本人とイラク人)は戦争、核爆弾、生物兵器、クラスター爆弾が引き起こす悲劇によって共に血を流したのです。大量破壊兵器によってファッルージャがどうなったのか、北はモーセルから南はナジャフまでの他の都市がどうなったのかを明らかにするために、そしてどんな違法な兵器によって、子どもが、女性が、老人が、統計数に入ることなく死んだのかを明らかにするために、あなた方の代表たちを送って下さい。

 2003年3月19日の侵略開始から数えられていない犠牲者もいます。占領軍がおこなった時限爆弾攻撃による犠牲者の数を、誰も数えてはいません。人生を知る前に人生を去った赤ん坊たちの数を、誰も数えていません。誰かの恋人か妻か母親か友人か、或いは指導者になるかもしれないという女性たちが、ばら色の未来の夢に永遠に別れを告げ、連れ去られ、殺され、投獄されましたが、誰もその数を数えていません。

 親愛なる日本国民の皆さん

 私たちと共にいてください。私たちを支援して下さい。私たちの母親の心を持ってください。私たちの女性と共に夢を見てください。私たちの子どもを守ってください。私たちを支えてください。

 そして、現代史上最悪の植民地主義的帝国主義を支援している、あなた方の軍隊のイラク駐留を止めてください。

 人類の時代が末永く続きますように
 民衆の時代が末永く続きますように
 公正な平和のために手を取り合いましょう


ハナー・イブラーヒーム
イラク・女性の意思委員会

(翻訳・森田亜紀子、田浪亜央江)
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