新婚旅行―― この、甘く美しい響き。 新困旅行―― その、なんとなく意味がわかるような気のする響き。 貧困旅行―― それ自体に問題はないが、新婚旅行にそれを持ち込むと甚だヤバい雲行になりそうな響き。 結婚式から5日後、左手薬指にはまる拘束輪以外、なんら変わりのない生活を営んでいたぱんだは、D氏のある一言を受けて、思わず連想ゲームをした。その時点で自分がすでにD氏の掌で踊らされ始めているということに、ぱんだは気づいていなかった。
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プロローグ / Dの啓示 |
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物語はいつものように、D氏の一言から始まる。 D氏 「なぁ、ハウステンボスってどう思う?」 ぱんだ 「え゛!!あそこってまだつぶれてなかったの!?」 ぱんだならずとも、ここはそう返すところであろう。獲得支持率には自信がある。 D氏 「それがまだあるんだな。……行ってみたいと思わんか?」 ぱんだ 「……行きたくないこともないこともないこともない。」 引き金に手をかけてから発砲するまでの時間の短さには定評のある、D氏の行動力を身にしみて知っているぱんだは、慎重に言葉を紡いだ。 ぱんだ 「新婚旅行は春(今は11月)にと、言っていたはずだが……」 D氏 「それが、今、行きたくなったのだ。」 ぱんだ 「ハウステンボスはやはり、チューリップの季節だと思うのだが……」 D氏 「それが、冬は冬なりに、盛り上がってるようなのだ。」 ぱんだ 「…………」 D氏 「今!今が旬なんだーーーっ!!」 ぱんだ 「……俺様(D氏)の中でか?」 D氏 「さすが、解っていらっしゃる。」 強引さと追従が絶妙に同居する、それがD氏のひととなりなのであった。
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準備 /  往路の安心、復路の恐怖 |
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Dの啓示を受けたものの、左手薬指にはまる拘束輪以外、なんら変わりのない生活を営んでいたぱんだの元に、1枚の紙片が突きつけられた。 D氏 「見よ!これが『旅の栞』だっ!!」 移動距離・移動時間・移動手段・交通費・宿泊費・おこづかい……etcetc。それらが詳細に綴られた、まるで「修学旅行の栞」のようなその紙を見て、ぱんだは目を瞠った。 ぱんだ 「いつもと違う……これは一体どうしたことだ。」 D氏 「ふはははは!!俺様だってやるときゃやるのよ!!」 全10日間の旅程にザッと目を通し、ぱんだはさらに目を瞠った。 ぱんだ 「5日目以降の予定がない……これは一体どうしたことだ。」 D氏 「ふはははは!!帰りの道筋はテキトーよ!!」 ……旅に必要なものは計画性ではない。いかなる事態にも対処する強靭な精神力でもない。 やっぱり今回も食料かな…… ぱんだは出発までの数日の間、スーパーの食料品棚に目を光らせまくった。
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旅路前 /  切なる乙女心 |
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旅行啓示から3日目、出発の3日前。ぱんだを様々な感情が襲った。 「うぅッ、なぜか美容院に行きたくなってきた……」 美容院があまり好きではなく、生まれてこの方10回くらいしか行ったことのないぱんだにとって、この感情は驚異だった。 「うぅッ、なぜか治療済みの歯が痛くなってきた……」 かつて治療済み虫歯が再発し、頬がぼっこり腫れた経験を持つぱんだにとって、この状態は脅威だった。 「なぜにこのタイミング……」 ぱんだは旅を前にして思わぬ動きを見せる自分の心身ではなく、旅を一念発起しておきながら、のんびりとゲームなどを楽しむ万年健康優良児のD氏を恨んだ。 「うぅッ、歯医者……行きたいけど行きたくない……うぅッ、美容院……行きたいけど行くところが見つからない……うぅぅッ、あと1週間!!あと1週間くれーぃっ!!」 「『ブレストファイアー』発射っ!!」(ゲームの音) ぱんだの懇願は却下された。
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● 持ち物リスト ● |
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スナックいっぱい(備えあれば憂いが薄まることもたまにある。) スーパーミントキャンディ(ぱんだの居眠り防止)   カップ麺少々 りんご 紅茶 コーヒー 水筒 包丁(修羅場注意報発令) デジカメ・三脚(新調しました♪) ノートパソコン 全日本地図1/45000 ハウステンボスガイドブック(他の場所のガイドブックは……ない) ハウステンボスでのホテルチケット(この旅唯一の定宿) その他必要装備
新婚旅行でカップ麺は食いたくないな……
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