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 Breath of Fire V


 そらへ



はじめの数歩這いずって引き摺った。よろけて泳ぐように浮遊、そらへ、そらを

存在意義。そら。そうして此処は澱んで暗い。ライフライン/メインシャフト<─data─ 時折降る青い燐光。
壁に、異形の体はぶつかり背脇からべしゃりと血痕を掃いてまた崩おれ
憎悪が足を動かして
空へむかう 
プログラム
治癒していく
再構成された半身も腕ももう再生した表皮もそのしたの肉も骨も
見た目だけはほんの数日前までの自分・3rdレンジャー/ボッシュ1/64と変わらない。
次第に
走る。
それは走ると形容するのは定義的な<─D-DASH─ 異なる行為かもしれない。
水になって水に運ばれるような、息切れも疲労も無い、時間の感覚も無い。ただ、
( わ か る ん だ。あ の 力 を 使 う た び。)
 恐怖は感じない。
( い の ち が 削 れ て い く の が )

 加速の恍惚。
 何者も己を遮る事も脅かすことも無い
 侵食され異形化する 恍惚
 恍惚
 憎悪が、或いは
 肥大化した自尊心が
 只のきっかけだったそれが
 純粋な狂気に昇華していく

チェトレとボッシュ1/64はリンクする。


 幼児趣味の変態が涎を垂らしそうな、見栄えの良いディグの少女といやらしいカラダのトリニティ・女犯罪者と連れ立って
 あのおんなたちを仲間とよぶ

(────相棒)

 他に誰にもオレのほかには構うヤツもいなくて
 いつもひとりで 居て
 レンジャーでも最低のD値・ローディ

 己を力で圧倒した

 憐れみ手を差し出した

 その手を取ってもいいと思った。




 おれのものだ。

 あれはおれのものだ
 あれはおれのものだ

そらはわたさない



侵食されていく。
侵食されていく。


そらへむかう。

(アジーン)


 あれはおれのものだ
 あれはおれのものだ
 あれはおれのものだ

アジーンには渡さない

 おんなにもディグにもわたさない




 あの眼、おれを憐れんだ眼。

( “ アジーン ” )

 おれをみた

 こんなことしたくない、と
 ディグをころすときの(いつもあの)かおで




上層街へ、電力公社、中央省庁、近づいてゆく

ゲートへ、そらへ

己の何かがひたすらに侵食されていき己と異なるものに書き換えられていく
                   (しかしそんなことは意識の端にものぼらない)





■■

咽喉が痛んだ。



(きっと生きている。)

いや、ほんとうには死んでいるのかもしれない。自分のように。ボッシュに一度殺された自分のように。だとしたら侵食は始まっている。
血溜り。
ボッシュはいま、ひとりだ。
自己が侵食される恐怖を命が蝕まれる恐怖をひとりで、ボッシュは?

リュウは意識せずまた咽喉を撫ぜる。
刺すように冷たく痛む。

隣を歩くニーナと、少し後ろを歩くリンの、微かな足音、あるかなしかの。

────きっと
ボッシュは追ってくる。
もし立ち止まり少しでも歩みを返すことがあれば、追いつかれてしまう。きっと。

いつも聞いていた、あの小気味良く硬い音、何かに誇らしげな踵音。


殺すために。自分を殺すために。
殺されてもよいかと自問する。
そうして(それはイヤだ、駄目だ)自答する。

ニーナを空へ。

“竜”に侵食される、己の死は逃れられない
オリジンが告げた。自分でも解る。実感が。侵食される。
残り少ない時間のうちにアジーンは生き絶える。でもその前に、適格値の低い躯も、分不相応なこの力に食い潰される。
その前にニーナを空へ

死なせたくない 無垢なものを 
死なせない事が今の 望み 最後まで遣り遂げること
死なせたくない 罪のないもの、弱いもの そらを必要とするもの


もう空を必要としない、自分とボッシュは、死のう。

■■■


「少し休もう」

リンは言う。
何度目かわからないが、それでも言う。
リュウは振り返り、おとなしいカオで肯わない。
ニーナが、振り返り、リュウにしか肯わない無言でリンを見る。
だからリンも黙る。
二人の背に、首を振る。
泣く余力もない。
感情にさく時間もない。



■■■■

あのとき

赤い腕

背後の闇に

落ちた。


高楼の足場を蹴り
シャフトの巡る虚空へ走った。
救えば、また憎まれる 殺しにくる
掌に張り付いた剣を振り捨てた。
意識の外で、鉄の硬い響きがその意味が谺した。走る。

ボッシュ1/64を、死なせたくないのだ。

死なないで
死なないで
死なないで
死なないで




狂わせた。
アジーンが、チェトレを、くるわせた。
自分が、ボッシュを、くるわせた。


うなずいてよかった。
時間が、あのレールの先、暗闇へ奔る輸送列車、あの瞬間に戻る。
いっしょにいて、────残酷なところがすきじゃなかった。
でも、これからも、そういわれたとき
うなずいて、よかった。

手をとって



記憶がもどる。
宿舎のあの部屋
薄暗がりで、みた白い顔

息苦しく

飽和する
勝手に泪が溢れる




■■■■■



最後の螺旋の底円形の端
リンは目を逸らした。
骨を砕き肉を貫くなまなましい音を捉える耳。
すがりつく少女の掠れた吐息。
リンは頭を振る。くちびるを噛み、拳に抓め立てる。


ああ────────

あれもこれも出来て択べるなんて



はじめから知っているじゃないか。
この世界に生まれたときから。


はじめから、削ぎ落としてしかいかれない。
それでも、これでも、おのれ等は必死で行こうとしているじゃないかと。
なにもかもを択べるなんて
おもってない
おもってないけれども
あんな覚悟に、しずかに無言になる必要が何処にあるか




ボッシュという少年は、救いをもとめていた。
リンはかれのことなど知りはしないから、彼の妄執をうとましくおもう。
敵だと思う。
ただ、リンにとってはとても耳障りに名を呼ぶかれのこえは
相棒、と少年をよぶ彼の声は



(アジーン)

救う事は殺めることだった










表情もかえない。

少女を救うためにそらをひらいたことを信念に従ったことを
リンの知るリュウは後悔しない。後悔などするものか。

ただ
屠ったことを
救えなかったことを
後悔しないことを
死なせたことを
何もかもを、


レンジャーの仲間。ゼノという剣の師も
択ばず択べずぎりぎりの抑制で屠ったものを。
泣きも叫びもせず屠ったものを

リンの知るリュウが

いとおしんでいなかったはずがない。














咆哮。凶光が迸る。
終に静けさが戻る。


螺旋からはひかり。
そらはひらかれた。
ひかりさしこむそこ
だいすきだったやさしいともだちが
すこしは楽になったろうかと、猫の尾が一度振り向いた。

 



 EDで起き上がらないほうが好みなんです。えへへ…。

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