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星の瞬く中、俺は家に帰っていた。 9時近く。 |
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その日は俺の誕生日で、みんなで海遊びをした(10月なのに!)。 そして何故だかアサリのみそ汁で祝った(時期は…?)。 100円均一で、しかも3個買えば更にお値打ち! という値段で売られている安っぽい椀でみそ汁の乾杯をした。 …バネさんは、自分の椀のあさりをほじくっては俺の椀に入れたくれたし、ダビデは『アサリはアッサリ味〜』なんて下らないダジャレ飛ばして空気凍らしてくれたし、ルパンは何だか知らないけど女子高生に張り手喰らって、挙げ句に並に連れて行かれていた。 まあ、それなりに楽しいと言える誕生日で。 祝ってくれる人がいることは嬉しいことで。 そんなわけで、俺はとっぷり日の暮れて星がきらきら輝く中帰途についていた。 そんな時。 細い路地を入ったところで異常にでかい外車があった。 黒塗りツヤツヤピカピカのそれは、ぎりぎり一車線分しかない路地を埋め尽くし、あまつさえ太田さん(仮名)のブロック塀をあっさりとブッ壊していたが全く気にした様子もない(不思議なことに、夜で目が利かないとしても外車には傷ヒトツ見受けられない。…装甲車か?)。 見覚えのある、道を完全に塞いだ外車の前に俺が呆然としていると、ドアが開いた。 …勿論、既にイッパイイッパイな通路で簡単に開くハズがなく、ドアが開くと同時に木村さん(仮名)の家の垣根も、何の感慨もなく破壊された。 「よう」 そして現れたのは旧知の人物。 「跡部…」 外車を見た時点で想像できたとは言え、ある意味で想像外の人物に俺は素っ頓狂な声を上げた。 …みっともないけどさ。わかってよ。 「久しぶり…」 「てめぇ、確か誕生日だったなァ?」 何とか事態の異常を飲み下した俺の言葉にかぶせて、跡部が言う。 「…ま、そうだけど」 何かくれるの、という俺の言葉は次の跡部の行動に一切封じられた。 だって。 「じゃあ、仕方ねえ」 言う為り、跡部は開いたドアに再び頭を突っ込む。 「ほら、リボン結んでやっから大人しくしてろ…解いちまったからな」 「………」 「よし。立てるか?」 しばしごそごそとしていたかと想うと。 「こんばんわ〜」 頬から耳朶までピンクに染まった不二が跡部の手に支えられて出てきた。 首に可愛らしくリボンを結んで。 ………。 ある意味、最も想像しがたい展開にボーゼンとする俺に、跡部は傲岸不遜に鼻で笑った。 「祝いだ。俺の一番の宝物、今日が終わるまで貸してやる」 ………! 「や、あの」 言いたいことは百万有った。そりゃあもう原稿用紙にして10枚分以上はあった。 だけれども。 「マジでいいの?」 咄嗟に出たのはこれだけだった。 いや、だってさ。だってだよ? 「ああ。…てめぇの帰りが遅いんでちょっと味見したが、文句はねえな?」 「え? 俺を待っていたっていつから?」 「お昼の、12時…」 跡部から渡された不二は腰が立たないらしくぺったりと俺の腕にしがみつく。 小さなためいきが甘く耳に絡みつく。 上気した膚。あたたかな躰。 「佐伯くん、来てくれないからぁ…んっ」 ふるふるっと震える細い躰を抱き取って。 「じゃあな。特別に今日の12時まで貸してやる」 そう言ったかと想うと、ガリガリガリッとご近所の壁や垣根を破壊しながら巨大な外車は走り去る。 絶対…、今後何があっても知り合いなんて言えない。 しばらく呆然としていた俺は、それでも 「さ…佐伯くん」 ぺったりと腕に縋る感触に、他はどうでも良くなった。 「不二」 「…んっ?」 いったい「俺が帰ってこない」時間になにをされたんだか…いや、明らかにナニしかないけど…既にとろとろの不二に囁きかける。 「いいの?」 問いかけに、ただ不二はほうっと熱を逃がすようなためいきをついた後ぎゅうっ抱きついた。 「景吾がね、いいって言ったの。何でもして? 佐伯くんのして欲しいこと、何でもする」 上目遣いの台詞に、これはもう何を置いても頂くしかないと不二の手を握って家へとダッシュをかけた刹那。 「ジブン、しあわせそうやなァ」 ぬいっと現れた人物に、衝突を避けたいという理由で佐伯は躰を捩った。 (勿論、不二は抱きかかえて) 「君は…」 自軍の木更津(兄)程ではないにしろ長めの髪、メガネの似合う顔立ちには覚えがあった。 「忍足…?」 「そや」 「悪いけど、そこどいてくれない…」 「俺もなぁ、何度も何度も跡部に頼んだんやで。1日でエエから不二を貸して欲しいて。いかがわしいこと何もせんから、もーカワエエ服着せて写真取るだけでエエからって何度も何度も頼んだんやけど、ダメやってん。手縫いでな、スモックとかエプロンドレスとかぎょうさん用意しとったんのにな、ダメやってん」 ほろほろと涙にくれる忍足(はっきり言えば不気味だ)から、極ッ力みえないように不二を背に隠しつつ俺は。 「だったら、忍足」 ちょいちょいと指先で招いて。 「良い案があるんだけど。…あのさ」 「何や?」 うまうまと寄せられる顔に。 「ラアッ!」 迷わず拳を叩き込んだ。 メガネが壊れて俺の指にも破片が入った代わりに、忍足の顔にも相当ヤバイ辺りに破片が食い込んだようたが気にしない! もんどり打ってのたうち回ってるけど気にしない! むしろ何か有ったときには、ご近所破壊の罪は全部被せる! 俺はこの辺りじゃ「品行方正で爽やかで礼儀正しい佐伯さん家の息子さん」で通っているから無問題と書いてモウマンタイ! 「じゃあ、不二」 そうして振り返れば目の縁を赤くして微笑む可愛い顔。 「佐伯くん…っ」 少しばかりとろーんとしすぎているが…まあ、気にしない。 いよいよ今夜不二を…と想った瞬間。 『時間切れだ』 低い声が響く。 しかも、姿はないのにどこからともなく。 特撮の悪役か、アイツは。 「跡部! 不二は貸してくれるって…」 「10/1まではな。てめぇの時計を見ろ」 言われてケータイを見ると、確かに日付は10/2になっていた。 …何で? ついでに何故か唐突にゴーンゴーンと鐘が鳴り始める。 何でだよ。シンデレラかよ。大晦日じゃないんだよ。安眠妨害かよ。住宅街なめんな。 「な……ッ! あっ、でも不二は返さない! おまえのトコの忍足の所為で何もしてないんだ。祝うって言うなら…」 「へぇ、…じゃあそれはくれてやる。好きにしな」 俺が断固として言い放つ言葉に、異常なほどあっさりと跡部は退いた。 「じゃあ、家に行こうか」 ほっとして、腕に縋った不二を振り返ると。 そこには、跡部の後ろにいつもついている巨大な2年生(樺地)がいた。 「ウス…」 「ッ―――――――――!!」 …そんな夢を見て目が覚めた。 佐伯虎次郎15歳の朝。 |
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『ハッピーバースディ』 |
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