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雑誌記事
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HiVi 2002年11月号 p224〜225
あいかわらずスキャナーがないので、手打ちに手描きです。
絵が下手なのは、流してください。
(株)徳間書店 スタジオジブリ事業本部
本部長
鈴木敏夫
さん
1948年愛知県生まれ。 72年徳間書店入社。のちに月刊「アニメージュ」の発刊に参画。 宮崎駿特集などを手がけ、その後、編集長を務めることに。 89年にスタジオジブリへ移籍してからは、長編アニメーションのプロデューサーとして活躍。 現在、スタジオジブリ事業本部部長にして、(株)徳間書店の常務取締役。
本誌8月号でも取り上げたDVD「千と千尋の神隠し」に対して、 発売直後から色調に関する指摘の声があがり、 本誌編集部にもわずかだが問合せが寄せられた。 一部新聞報道、あるいはインターネット掲示板における匿名投稿などには、 「制作者の意図でありディスクに問題はない」と繰り返す 販売元への不信感を募らせる記事や意見もあり、ファンとの間に、 行き違いがあったことが伺える。 では、DVD「千と千尋の神隠し」における制作者の意図とは何だったのか。 編集部では、
8月号
の特集を補う追加記事として、スタジオジブリの総責任者である 鈴木敏夫さんへのインタビューを行うと同時に、この作品に特徴的に表れている 映画のビデオ化につきまとう問題点について考えてみることにした。 本誌:木村雅樹
――鈴木さんはスタジオジブリが手がける長編アニメーション映画のクレジットに、必ずお名前が登場しますが。
鈴木
そうですね。劇場用映画の制作者として、長年、スタジオジブリ作品のプロデュースを手がけてきました。 DVD制作でも同じです。 ただディスク制作の場合、別に実務担当者がおりまして、 彼と緊密に相談しながら制作を進めてきた、というのが経緯です。
――HiVi8月号で取材に応じてくださった川端さんですね。
鈴木
そうです。今は、彼が全てのビデオソフト制作の実務を受け持っています。 アニメーションの制作現場での経験が豊富なこと、オーディオビジュアルへの知識があること、 仕事が実直で緻密なこと、などを考慮して任せています。 96年、ディズニーを通じてビデオソフトを販売することが決って、 そのマスターをどうしたらよいかと彼に尋ねたとき、高画質であることや、フォーマット変換の容易さなどから、 ぜひハイビジョンマスターをつくらせてください、と提案があったんです。 コストがかかることなのですが、同時にゴミ取り処理などもやっておきたいというので、 その意見も採り入れました。 以来、スタジオジブリのビデオソフトは、ていねいに製作されたハイビジョンマスターからつくられています。 この体制は、ここ6年間変わっていません。DVDも同様です。
――映画「ホーホケキョ となりの山田くん」以来、スタジオジブリはデジタルによる映画づくりに 挑戦し続けていますが。
鈴木
ええ。「〜山田くん」のときには、彼が監督と一緒になって色調整を行ったりして、 NTSCとしては、最高レベルの画質を持つDVDができあがったと思っています。 私自身の経験でいえば、84年当時、「風の谷のナウシカ」をビデオ化することになって、 はじめてその作業に立ち会ったんですが、 それはもうたいへんでしたよ(笑)。 フィルムとビデオというものの特性がこんなに違うものなのか、 ということを思い知らされました。 単純にビデオ信号に置き代えただけでは、空が青くならない。 で、そこを直すと、暗部がつぶれてしまう。 最終的には、ほとんどカット毎に色や階調表現を調整した覚えがあります。 「天空の城ラピュタ」をはじめてビデオ化するときには、 トリミングの問題もありました。 プロデューサーだった高畑勲さんと相談して、「〜ラピュタ」のときには、上下の黒を少し残しながら、 左右を少し切ったんです。 するとラスト近く、ムスカとシータがフレーム両側で言葉を交わすシーンでふたりともいなくなっちゃうんですよ。 宮崎駿という人は、ビスタのフレームの端から端まで、縦横に使って映画を作るんです。 だからこんにち、トリミングの問題がなくなってホッとしている、というのが本音ですね(笑)。 以来18年、スタジオジブリ作品のビデオ化に携わってきたことになります。
当時の技術は、長足の進歩を遂げて、 今日ではデジタルデータから直接DVDビデオをつくることができるところまできました。 しかし、その高度な技術をもってしても、フィルム情報の全てがビデオに入るわけじゃない。 だから補正が必要なんですよ。
宮崎駿監督の意図を
できるだけ活かしたい
それは当然のことなんです
――「千と千尋の神隠し」は、その最新技術を使ったフルデジタルプロセスによって DVD化された最初の作品になるわけですが、色調に対して、一部不満の声もあがりました。
鈴木
ご承知のとおり、日本のNTSC方式における、テレビ放送の色温度の基準は9300K、 ハイビジョンのスタジオ規格は6500Kです。 「ホーホケキョ となりの山田くん」から始まるジブリ作品のDVD化は、 ハイビジョンマスターからNTSCへと、色温度変換も含めて単純にダウンコンバートした 素材を使って行ってきました。 で、その素材を9300Kのモニターで確認する。 今までは、それで極端な色調の不満は感じられなかった。
スタジオジブリ事業本部にて。 鈴木さんの仕事場には、パイオニア50V型プラズマやBOSEの 5.1chスピーカーパッケージがセットされている
宮崎駿は、劇場公開用の、「千と千尋〜」の製作段階で、 とくに冒頭シーンで千尋の気分を出すことにこだわり、 ある種類の赤い色を加えているんです。 当然、色の責任者にしろ、撮影監督にしろ、監督がそういう部分にこだわっていることを 知っていますから、DVDでもできるだけそれに近づけたいと思うわけです。 で、まずは単純なダウンコンバートと色温度変換をやってチェックしてみたところ、 ひとことでいって青っぽかった。 これはフィルムと違うということになり、通常はやらないことなんですが、 NTSC上でも、さらに色調整を行ったんです、フィルムでの色に近づけようと。 宮崎駿監督の制作意図に応えるために、DVDの現場スタッフががんばったんですよ。 私たちにとって、あたり前のことですから。
――宮崎駿監督がこだわったものはなんだったんでしょうか?
鈴木
全体の色調ですね。 単純にいえば、明快ではっきりしちゃうと「ある感じ」が失われてしまう。 これは、本来、監督の好みでもあるんです。 「千と千尋〜」に限っては、千尋の心情を全体のトーンで表し
たかった。 そこでいつもとは違う色に挑戦したんです。 劇場公開された「千と千尋〜」のフィルムでは、そのあたりが明快なので、 ご理解いただけると思います。 それをDVDでも再現したかった。
特典ディスクに収められている予告編と色調が違うというご指摘もいただいてますが、 厳しいスケジュールのなかで本編制作の合間に作らなければならない予告編の場合、 色調の管理や補正までこなす余裕がないというのが正直なところ。 デジタルデータをそのまま使って仕上げるのが通例なので、 本編と色が違うということはしばしば起こります。 もちろん本編の方が正しい色です。
――「千と千尋〜」の発売後、一部の新聞紙上で色に関する指摘が取り上げられました。
鈴木
私たちは、オリジナルのフィルムが持つ情報を、今のDVDという規格で、 最大限に再現したいと考えてビデオソフトを制作しています。 マスコミで騒がれた後には、全関係者に集まってもらい、再調査もしました。 その結果、DVD「千と千尋〜」の制作過程において、 何ひとつ誤りはなかったということが改めてハッキリした。 だから公式見解として、「現状で最高品質のものを出しました」とアピールしたんです。 当時のマスコミの論調では、受け取り方によっては、言い訳と取られたり、 誤解を招きかねないという判断もあり、そのアピールに止めたという経緯があります。
――DVD「天空の城ラピュタ」が発売されましたが。
鈴木
ここまでお話したとおり、私たちは、色の管理について、充分に注意を払っています。 「〜ラピュタ」でも、もちろん同じです。 ただ、世の中にあるテレビの画質があまりに千差万別なので、正直、私たちのこだわりが 正しく理解されないこともあり得るんだ、ということも考えておかなければなりません。 この部屋にもプラズマディスプレイがあるんですが、これで見るのと、 フィルムで見るのとでは、まるで違う。 DVDの制作過程では、さまざまな家庭用テレビでも視聴してみますが、 世の中にあるすべてのモデルで試すわけにはいきませんし……。 色の管理については、われわれも本当に頭を悩ませるところです。
――DVDの試作盤が出来上がったとき、宮崎駿監督はチェックなさるんですか?
鈴木
いえ、しません。最終的な確認とGOサインは私が出します。 もちろんDVDの制作途上、ポストプロダクションのモニターで確認してからの話ですから、 ディスクでのチェックは、念のための再確認程度のものですが。
――米国盤のDVD「千と千尋〜」はいつごろ発売になるんでしょう?
鈴木
目下のところ未定ですが、そう遠くない時期にリリースされると思います。 日本盤とは大元のハイビジョンマスターは同じですが、 色温度6500KのアメリカにおけるNTSC規格に合わせて、当初の意図をできるだけ 忠実に再現できるよう努力するというのが、基本的な方針です。
(ブエナビスタ VWDZ-8036)\4,700 ●カラー(16:9/ビスタ) ●ドルビーデジタル2.0ch(日本語ステレオ/フランス語ステレオ)、DTS-ES6.1ch(日本語) ●片面2層/本編124分 ●01年日本作品
――色温度6500Kが標準の米国向けテレビセットで出画した場合、 日本盤を9300Kのディスプレイで再生したときと同じ色調として再現されるはずですね。
鈴木
理論的にはそういうことになります。
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今回のインタビューを通して、DVD「千と千尋の神隠し」の制作スタッフが、 いかに宮崎駿監督の制作意図に忠実であろうとしたかがよくわかった。 正しく調整されたAVシステムで視聴する限り、本作が高画質なDVDであるという われわれの認識は今も変わりない。 ただし、史上空前の販売枚数を記録したディスクだけに、鑑賞に使われるテレビはさまざま。 世のテレビすべてが宮崎駿監督の意図どおりの絵を映しているとも思えない。 本誌視聴室で使う、ごく限られた種類のディスプレイの間にさえ、色表現には明確な個性がある。 問題の本質のひとつはそこにあろう。
趣味として映像作品を楽しんでいるわれわれにとって、それが制作者の意図だとすれば、 甘んじて受け入れなければならない部分があるのも事実。 DVDをはじめとする映画ソフトが、あくまで「複製物」だという観点に立てば、 超えられない限界がある事も、わたしたちは理解しておかなければならないだろう。 しかし、それがすべてをねじ伏せるような事もあってはならないと思う。 ディスプレイの色調が千差万別なら、ある範囲の寛容度も必要だ。 フィルムに対してDVDの器はあまりに小さく、 そこに限られた情報しか記録することができない以上、いかに映画らしく見せるかは、 制作者側の腕の見せどころでもある。 高画質を維持しながら、多くの視聴環境において満足のいくパッケージソフトづくりを、 制作各社にはお願いしたい。
ツッコミ所満載ですが、とりあえず微妙にミス(つまり環境次第で赤く再生されること)を認めた形となっております。
ちなみに担当の木村氏はHiVi編集長、
例の 編集後記(K)
の方と思われます。
追記
02/12/24になってなぜか、
HiViホームページ上
に記事が全文掲載されました。
2ヶ月もたってから、ナゼ。