■アヴァロン
2001年1月25日 AMCイクスピアリ16(現:シネマイクスピアリ)

 『攻殻機動隊』で『マトリックス』を始めハリウッドに多大なる影響を与えた押井守監督の野心作。脚本は『ガメラ3』の伊藤和典、音楽は『さくや 妖怪伝』の川井憲次が担当。文化庁メディア芸術祭デジタルアート・ノンインタラクティブ部門の優秀賞を受賞。2001年、日本=ポーランド合作(製作:バンダイビジュアルほか)。カラー・ビスタ。ドルビー・デジタルEX。上映時間106分。
 近未来のポーランドが舞台。セピア色の世界を戦車が突き進んでいく。戦車に追われ逃げまどう群衆。その群衆に逆らうように進む一人の女戦士がいた。彼女に気づいた兵士たちが銃を向ける。しかし、それよりも早く女の銃が火を噴いた。銃弾を食らった兵士は硬直し、まるでガラスのように砕け散る……。そう。ここは仮想現実ゲーム「アヴァロン」のゲームフィールド。リアルな戦争体験とゲーム内で稼いだポイントが現金化できるため、多くの若者から絶大的な支持を得ているゲームなのである。女戦士の名はアッシュ(マウゴジャータ・フォレムニャック)。達人級と賞賛される彼女の腕前は他のプレイヤーから一目置かれていた。ある日、アッシュと同じ戦法でクラスAのミッションをクリアする男ビショップ(ダリュシュ・ビスクプスキ)が現れる。挑戦的な態度をとられたアッシュはゲームマスター(ヴァディスワフ・コヴァルスキ)に彼のことを探らせる。しかし、彼に関するデータを見つけることはできなかった。不審に思ったアッシュは、偶然、かつてゲーム内でパーティーを組んでいたスタンナ(バルテック・シヴィデルスキ)と再会する。彼から、やはりパーティーの一員だったマーフィー(イエジ・グデイコ)が、ゲーム中に脳を破壊され廃人になっていることを知らされたアッシュ。無敵と言われたマーフィーの末路に興味を感じたアッシュは、彼が脳を破壊されたという幻のステージ・クラスSAへの移行条件をスタンナから聞き出す。
 実写映像を素材にアニメーション映画を構築したという野心的な作品。ディズニーのアニメ映画『ダイナソー』でも草木などに実写映像を使用していたが、あくまでも消極的な理由から使用しただけである(CGでは草木が風になびく様子が作れなかったそうだ)から、本作のスゴさがよく分かる。
 技術的な点ではエポックメイキングな作品だが、内容的にはどうだろう。まず、抑えた色調といい、輪郭のぼやけた感じといい、まるでセピア色の古い写真を思わせる映像が美しい。これにオペラ調の音楽を重ねるセンスはカッコイイの一言である。また、パソコンのコンソール画面を思わせる文字の滝をスタッフクレジットの演出に使用しているのもクールだ!
 だが、評論家の意見は「退屈」「イマイチ」というモノが多かった。確かに「映画」として観ると、物足りなく感じるかもしれない。しかし、それは『アヴァロン』という作品が、一つの芸術作品のような高潔な空気を、生まれつき持っているからではなかろうか。映画内の「ここが現実であって何の問題がある」というマーフィーのセリフに押井守の哲学を感じた。必見作。

●おすすめ対象
 展覧会やクラシックコンサートが好きな方へ。

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●一言で言えば……
 アニメ界から実写界への侵略。


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